おはようございます
みなさん、インペアード・パフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)ってご存知ですか?これという自覚症状がないうちに、脳の情報伝達パフォーマンスが下がってしまい、作業能力や集中力を失うというもの。これは、鼻炎薬として売られている抗ヒスタミン剤の研究でわかってきたことなんです。
2008年1月に山形県で起きた事故 、覚えておいででしょうか?かぜ薬を飲んだ高速バスの運転手さんが、運転中に突然意識もうろう状態に陥ったもの。この事故を受けて、東北大学で行われた実験でわかったことは、抗ヒスタミン剤を服用すると、たとえ眠気を感じなくても、蛇行運転する確率が高く、非常に危険であること。当時、ニュースでさわがれ、バス会社やタクシー会社などが、かぜ薬服用のガイドラインをつくったほどでした。
つまり、抗ヒスタミン剤の中には、鼻粘膜だけでなく、脳の中にも入り込んで、神経伝達を抑制してしまうものがあるという話。なぜそうなるか?を知っていただくには、神経の情報伝達のしくみからお話しないといけないんだけど、くわしいことはまたの機会にするとして、ごく手短かにご説明しますね。
神経に限らず、細胞と細胞の間の連絡には、生理活性物質と呼ばれる化学物質が働くの。Aという細胞が出した生理活性物質が、Bという細胞の受容体にくっつくことで、Bが活性化するしくみ。小売店が問屋に注文書を出すと、問屋が商品を発送するのと似ています。Aを小売店、Bを問屋とすると、生理活性物質は注文書ってこと。
生理活性物質には、ホルモン、オータコイド、神経伝達物質があります。脳みそは神経細胞の集まりですから、脳が働くときは、神経伝達物質が分泌され、反応を起こします。働く場所によって、アドレナリンとか、セロトニンとか、GABAとか、何種類もあって、実はヒスタミンもそのひとつなんです。
でね、市販薬でも処方薬でも、鼻水を止める抗ヒスタミン剤というのは、TVコマーシャルでも流れているとおり、ヒスタミンをブロックする。つまり、ヒスタミンが、細胞の受容体にくっつかないように、先回りしてふたをする。ふたをされると、ヒスタミンが注文書の役目を果たせないので、粘膜細胞は商品を発送する(鼻水を出す)ことがない。ってことになるでしょ?
抗ヒスタミン剤が粘膜だけで働いている分には、まぁいいんだけど、中には脳にまで到達してしまって、脳内のヒスタミンまでブロックしてしまうんですって。1度や2度なら、その時に眠くなったり、集中力がなくなったりするだけだから、運転とかしなければ、これもそう大きな問題にはならないでしょうけど、長期服用が問題なんです。
脳内の神経伝達に働くヒスタミンがブロックされ続けると、ヒスタミンを受け取る側が、「注文書はめったに来ないんだから、受取窓口の数を減らしても大丈夫ってことよね。」と判断して、受容体の数を減らしてしまうんです。わかります?ブロックし続けたことで、本来必要な受容体が減って、神経伝達が悪くなり、脳としての反応が鈍くなっちゃうんです。
脳の中で、ヒスタミンがどんなふうに働いているか?というと、
① 行動促進作用 … 学習と記憶の増強、自発運動や覚醒の増加
② 行動抑制作用 … 摂食行動、けいれん、ストレスによる興奮などの抑制
といわれております。
ヒスタミン・ブロックによって、これらの働きが低下してしまうと、
① 食欲が抑えられないのに、学習や運動、労働意欲が低下する → 太る
② 睡眠と覚醒のリズムがくずれる → 夜眠れない、昼眠くなる
③ 記憶力が低下して、やる気が出ない → うつや痴呆とまちがえられる
なんてことが、自覚のないうちに起こりうるんです。これが、インペアード・パフォーマンス。行動面にあらわれる副作用として、行動毒性とも呼ばれます。
では、脳内に入り込まない抗ヒスタミン剤はないのでしょうか?今のところ、アレグラ(フェキソフェナジン)は大丈夫らしい。危ないと言われているのは、ポララミン、レクリカ、タベジール、レスタミン、セルテクト、ザジテン、セレスタミンなどです。
花粉症の季節、鼻炎薬がなければ、QOLが下がってしまって困るという方も多いことでしょう。薬は飲まないに越したことはありませんが、QOLの低下で体力・免疫力がさらに落ちても困ります。もし、使われている薬に不安のある方は、かかりつけの医師あるいは薬剤師に、きちんと確認してくださいね。
今回参考にしたのは、姉(薬剤師)の話、心技体☆健康第一 (某クリニックのメールマガジン)、日々の考えをまとめたい (某病院薬剤師のブログ)、井蛙内科開業医/診療録 (某内科医師のブログ)、アレルギー性鼻炎とは (越井クリニックHP)でした。
一天一笑、今日もいい1日にしましょう。
石楠花(しゃくなげ)
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