『養生訓』 医学生の読むべき書(巻六50) | 春月の『ちょこっと健康術』

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「医書は、『内経(だいけい)』(『黄帝内経(こうていだいけい)』のこと)と『本草(ほんぞう)』(『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)』のこと)を根本とする(→「良医には医学十年の労」 。『内経』を学ばなければ、医術の学理、病気の根源を知ることはできない。『本草』に通じなければ、薬の性味を知らず、薬を処方することができない。その上に食物の性を知らずにいれば、適宜であるか禁忌であるかを定めることもできず、食事療法を指導できない。したがって、この二書を医学の基本としなければならない。この二書を学んだ後に読まなければならない書物は、次のようなものである。
◎秦越人(そん・えつじん;扁鵲ともいう;周代の医者)の『難経(なんぎょう)』
(→
「丹田に気を集める」

◎張仲景(ちょう・ちゅうけい;張機ともいう;後漢の医者)の『金匱要略(きんきようりゃく)』(→「菘(な)の調理」

◎皇甫謐(こうほ・ひつ;玄晏先生ともいう;晋の医者)の『甲乙経(こうおつきょう)』

◎巣元方(そう・げんほう;隋代の医者)の『諸病源候論(しょびょうげんこうろん)』

◎孫思ばく(そん・しばく;孫真人ともいう;唐代の医者)の『千金方(せんきんほう)』(→「気ままを抑える」

◎王とう(おう・とう;唐代の医者)の『外台秘要(げだいひよう)』

◎羅謙甫(ら・けんほ;元代の医者)の『衛生宝鑑(えいせいほうかん)』

◎陳無択(ちん・むたく;陳言ともいう;宋代の医者)の『三因法(さんいんほう)』

◎宋の恵民局(政府が運営する薬局)の『和剤局方証類』、『本草序例』

◎銭仲陽(せん・ちゅうよう;宋代の医者)の医書(『小児薬証直訣』のことか?)

◎劉河間(りゅう・かかん;劉完素ともいう;金元代の医者;寒涼派)の医書(→「天地陰陽」

◎朱丹渓(しゅ・たんけい;朱震亨ともいう;金元代の医者;滋陰派)の医書(→「天地陰陽」  

◎李東垣(り・とうえん;李杲ともいう;金元代の医者;補土派)の医書(→「天地陰陽」

◎楊しゅん(よう・しゅん;明代初めの医者)の『丹渓心法(たんけいしんほう)』

◎劉宗厚(りゅう・かんこう;劉景厚ともいう;明代初期の医者)の『医経小学』、『玉機微義』

◎熊宗立(ゆう・そうりつ;明の医者)の『医書大全』

◎周憲王(しゅう・けんおう;朱有燉ともいう;明初期の文人)の『袖珍方(しゅうちんほう)』

◎周良采(しゅう・りょうさい;明代の医者)の『医方選要』

◎薛立斎(せつ・りゅうさい;薛己ともいう;明代の医者)の『医案』

◎王璽(おう・じ;明代の医者)の『医林集要』

◎楼英(ろう・えい;公爽ともいう;明代の医者)の『医学綱目』

◎虞天民(ぐ・てんみん;虞搏ともいう;明末の医者)の『医学正伝』

◎李挺(り・てい;明代の医者)の『医学入門』(→「妊娠と房事」

◎江篁南(こう・こうなん;明代の医者)の『名医類案』

◎呉崑(ご・こん;明代の医者)の『名医方考』

◎きょう延賢(きょう・えんけん;明代の医者)の医書数種

◎汪石山(おう・せきざん;汪機ともいう;明代の医者)の『医学原理』

◎高武(こう・ぶ;明の博物学者)の『鍼灸聚英(しんきゅうじゅえい)』

◎李中梓(り・ちゅうじ;李士材ともいう;明代の医者)の『医宗必読』、『頤生微論』、『薬性解』、『内経知要』(→「天地陰陽」 である。
◎また、薛立斎の書に『十六種』がある。
◎『医統正脈』は四十三種あり、歴代名医の書を集めて一部としたものである。
これらはすべて医学生の読むべき医書である。年が若いときに、まず儒書を読んで記憶し、その学力をもって右の医書をよく読んで覚えるようにしなければならない。」


個々の解説は(  )内に入れました。→にあるのは『養生訓』の中ですでに登場していて、そちらに解説があります。


まず儒学書を読んで基礎学力をつけ、『黄帝内経』と『神農本草経』を読んでから、少なくともここにあげた30名ほどの医家や学者の著書に目を通すべきだとおっしゃっています。こう言い切る背景には、益軒先生ご自身がこれだけ読まれたということなんでしょうね。儒学者の自分が読んだのだから、医学生なら当然のことだというご主張でしょうか。儒学書で教養をみがくことについては、「儒学と医学」 でも力説されていました。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』

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