『養生訓』 丹田に気を集める(巻二48) | 春月の『ちょこっと健康術』

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「臍の下三寸を丹田という。腎臓の動気といわれるものはここにある。『難経』という医書に、「臍下腎間の動気は、人の生命なり。十二経の根本なり。」とある。丹田には生命の根本が集中している。

 気を養う術は、つねに腰を正しくすえて、真気を丹田に集め、呼吸を静めて荒くせず、事にあたっては胸中からしばしば軽く気を吐きだして、胸中に気を集めないで、丹田に気を集めるとよい。こうすれば気はのぼらないし、胸は騒がないで、身体に力がみなぎる。

 身分の高い人にものを言うときも、大事の変に臨んで多忙なときも、このようにするがよい。やむを得ず人と是非を論じるときも、怒り過ぎて気を損じたり、気が浮くようなことにもならず、間違いは生じない。芸術家が芸術に励み、武家が武術に励んで敵と戦うときにも、皆こうした心がけを主とするがよい。これは事に励み、気を養うためのよい術である。

 およそ技術を行う者、特に武人はこの方法を知らなくてはいけない。また、道士が気を養い、僧が坐禅するのも、みな真気を臍の下に収める方法である。これは邪念を去って心を静かにする工夫であって、術者の秘訣といえるものであろう。」


気功や太極拳などで言われる丹田呼吸。それが重要視されるのは、このためなんですね。東洋医学の五臓は、心、肝、脾、肺、そして腎。腎は精を蔵し、生命をつかさどります。腎陰と腎陽は、体内の陰陽の根本。その腎が位置しているのが、臍下丹田であり、気の流れにそうのが十二経脈です。


『難経』(なんぎょう)は鍼灸の臨床指南書で、斉の医者、秦越人の書いたものです。漢方学や鍼灸学の基本となる書は、『黄帝内経』(こうていだいけい)であり、『難経』はその解説書と言えるものなのです。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』


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