『養生訓』 山中の人は長命(巻二20) | 春月の『ちょこっと健康術』

春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

「山中に暮らす人の多くは長命である。古書にも「山気は寿(じゅ)多し」といい、また「寒気は寿(いのちながし)」ともいう。

 山中は寒いので、人体の元気を閉じかためて、体内に保ち、外部に漏らさない。だから命が長い。暖かな地方では、元気が漏れて、体内に保つことが少なくなるため、短命となる。

 また、山中の人は、人との交際も少なく、静かにしていて元気を減らすことが少なく、万事において不自由であるため、欲も少ない。特に魚類を手に入れることがまれであり、肉を過食することがない。これが山中に住む人が長命になる理由だ。

 市中では、人との交際も多く、多忙にしていれば気が減る。海辺の人は、魚肉を常に多く食べるので、病いが多く短命になる。市中にいても、海辺に暮らしても、欲を少なくして、肉食を少なくすれば、害はないだろう。」


寿とは、めでたいこと、めでたいことを祝うこと、という意味のほかに、いのち、いのちの長いこと、長命という意味があります。益軒先生は、寿の一文字で長寿という意味で使われていますね。


寒気は、強過ぎれば寒邪として人体に悪さをしますが、そうでない場合はその凝集性によって、気を外側から固めるという作用を持っています。ただ、人の衛気が弱っていれば、寒邪として単に体表に入り込むだけでなく、直中(じきちゅう)といって、いきなり臓腑を直撃することもあります。(寒邪について→東洋医学講座 No.28


暖気は、強すぎれば暑邪になります。寒気と逆で、昇散性を持っていますので、気を上昇せたり発散させたりします。夏の陽気が強い時季には、汗を適度にかいて、体内に陽気がこもらないようにするのが、夏の養生法でしたね。(暑邪について→東洋医学講座 No.28 、夏の養生法→脾を養って梅雨~夏を乗り切ろう


山中の人は魚を食べないから肉食が少ない…とおっしゃっていますが、果たして本当にそうでしょうか?魚の代わりに、鳥やうさぎ、いのししなど食べていたんじゃないかと思いますけど。この点で、さすがに益軒先生といえど、この説にはちょっと無理があるように思います。森林浴は身体にいいですけどね。


山でも海でも、自然の厳しさを知っている人たちは、人間の欲の限界もまたよく知っていて、その点では違いはないようにも思います。益軒先生は、都会にいらした方ですから、市中に暮らす人たちへの警鐘という意味で、こんなふうに書かれたのではないかしら。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』


次→ 心の楽しみを知る(巻二21)


春月の『ちょこっと健康術』-カランコエ