村人を救った犬のはなし ~ 吉野郡 十津川村 玉置神社 犬吠桧 | 奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ

村人を救った犬のはなし ~ 吉野郡 十津川村 玉置神社 犬吠桧

わぉぉぉーーーーん

   わぉぉぉーーーーん


十津川の山々に、犬の鳴き声が木霊します。

その鳴き声は、ひどく村人たちの心をうちました。

ここ数日、村の上空を暗雲がすっぽりふたをしています。

うんざりするほど、ながいあいだ雨がふり続いていました。

ところでは地滑りをしたなど、悪いうわさばかり聞きます。

そんな不安がたかまったときでした。

いつも霧におおわれている玉置山のいただきから、

わぉぉぉーーーーん

   わぉぉぉーーーーん

と、切迫した犬の鳴き声がとどろきます。

人々は、これはなにかあるなと、とるものもとりあえず、いっせいに玉置山にのぼりました。

すると、なんということでしょうか。

山々の向こう、遠く熊野の海が高々ともりあがり、巨大なバケモノのような大津波が姿を現しました。

あぜんとする人々。

山を、川をのみこみながら、津波が、村めがけておしよせてくるではありませんか。

ゴウゴウととどろきながら、津波が村を呑みこんでしまいました。

犬の鳴き声が、あたかも、津波のバケモノを威嚇するような声にかわります。

グルルルルゥ・・・

ウワン! ウワン! ウワン!

ウワン! ウワン! ウワン!

ウワン! ウワン! ウワン!

断続的に、攻撃的に吠えたてる声がつづきます。

するとどうでしょう。

雨がやみ、空がにわかに晴れ渡り、津波が熊野のほうへとひいて、山をかけおりていくではありませんか。

村はめちゃくちゃになってしまいましたが、村のみんなの命はすくわれたのでした。

あたりに静けさがもどります。

村の娘が、おおきな桧(ひのき)の枝に、犬をみたというではありませんか。

人々は、その桧のそばに集まりました。

すでに犬のすがたはありません。

これは玉置神社の神様が、犬のすがたをかりて、村人たちを救ったのだろうといいました。
奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ-玉置山 玉置神社

みんな玉置神社にお礼をしました。
そして村の復興に尽力したのでした。


今も玉置山をのぼる道を「犬吠道」と呼びます。
犬が吠えたてたと伝えられる桧は、今は株だけで、「犬吠桧」(いぬほえひのき)という碑がたっています。


熊野本宮大社旧社地 大斎原(史跡)―熊野紀行(略)2010

忠義の人片岡八郎利一 【太平記「大塔宮熊野落ち」より】3



星2009年10月に玉置山に訪れたときの記事です。
(1)玉置神社におとずれました。
 吉野郡大峰山系の南端に位置する玉置山へ真夜中に車を走らせました。
 皺のような山の崖道を通りぬけ、なんとか翌朝到着。
 訪れる人を選ぶという強烈な神社に、無事に選ばれた瞬間です。
(2)神武東征 玉置神社の由来
 玉置神社神武天皇の伝説について語っています。
(3)神代杉と遭遇 玉置神社
 神々しい姿の神木「神代杉」と遭遇。
(4)そして蒼天に月のぼる玉置神社
 あこがれの玉置神社に参拝です。疲労困憊したね。
(5)1000年物語 大杉 そして玉置山山頂へ
 玉置山を散策です。県下一大きい1000年杉「大杉」とご対面です。




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