日本初公開!これが正真正銘、『ホンジュラスサッカー協会公認GKコーチングライセンス』じゃ! | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

日本初公開!これが正真正銘、『ホンジュラスサッカー協会公認GKコーチングライセンス』じゃ!


 昨年12月に日本人初!ホンジュラスのコーチングライセンスを取得しました!というブログを書きましたが、さすが無茶苦茶な国ホンジュラス…この時に取得した「はず」のライセンス…「これで一件落着。ハッピーエンド」…とは、いきませんでした。

 風の噂で聞いたところによると、あの時にもらった証書は「受講したライセンスのクラスの修了書」だったらしく、「本当のライセンスの証書は顔写真付きで、ホンジュラスサッカー協会の会長とNo.2の直筆サインが入ったもの」が別にあるようなのです。なるほど。確かにあの時にもらった証書には「DIPLOMA DE PARTICIPACION(参加証書)」という記載があったし、そこに書かれているサインはクラスの統括者とインストラクターのもので、協会の会長とNo.2のものではありませんでした。…てか、そんな事、クラスの時に統括者からもインストラクターからも全く何も説明なかったし!!だから他のクラスの受講者たちに聞いても「えっ!?そうなの!?」と、誰もこの事を知りませんでした。僕はたまたま偶然「風の噂」で聞いて知る事ができましたが、他のクラスの受講者たちは一体どうするのでしょうか…?

 …と、まあ、こんな感じで「ライセンスの証書」が別に存在する事が判明。日本でもクラスを受講した後に修了書をもらって、後日、別にライセンスが送られてくるので、ここまではホンジュラスも同じと言えば同じ。ただ、ホンジュラスが日本と違うのが、送られてくるのを黙って待っていても、届く保障がない事(多分、一生、届かない)。なので、自ら首都テグシガルパにあるサッカー協会に乗り込んで、この「ライセンスの証書」をもらってくる事にしました。


 普通であれば、1日もあれば終わる、簡単な手続き。


 ところが…。ここから信じられない「いばらの道」が始まる事となるのです…。


 行く前に前もってサッカー協会に電話で問い合わせると「来週の火曜日に来てくれ」と言われたので、その通り「来週の火曜日」に首都テグシガルパまでバスで片道10時間(!)かけて行き、サッカー協会に乗り込みます…。が…。誰も居ない…。てか、協会、閉まってる…。えっ…!?

 周囲の人間に聞き込みをしたところによると、この日は協会は祝日で休みらしい…。って、じゃあ、何で「来週の火曜日に来てくれ」って言ったんじゃ!?

 いきなり、出鼻をくじかれます。波乱のスタート…。しかし、これは、まだまだ「序章」に過ぎませんでした。


 翌日、水曜日…。やっとサッカー協会の幹部に会う事ができ、「昨年12月に取得したライセンスの証書を受け取りに来た」と伝えると、この人物の口から全く想像だにしなかった言葉が出てきたのです…。



 「サッカー技術、戦術、実技、フィジカル、心理学など合計40時間の追加クラスを受けろ。でないと、ライセンスは発行しない」





 
ぁぁぁぁぁぁあああああああああああああっ!!!???


 いやいや、もうクラスは全て昨年12月に受け終わってて、その証拠に「クラスの修了書」もここにあるんだ!!何でまた、40時間も追加クラスを受けんとならんのか!?

 そう必死に説明しましたが、全く聞く耳をもってもらえず…。「40時間の追加クラスを受けなければ、ライセンスは発行しない」の一点張り…。

 しかも、この「40時間の追加クラス」というのは、タダ(無料)ではありません。かなり高い。日本の同じようなライセンスの講習会の費用と比べても、同等かそれ以上の額(物価が日本よりも安いホンジュラスでこの額はありえない!!)。

 なるほど。そういう事か。要するに向こうの魂胆は、この追加クラスでかかる「お金」。それをボろうとしているんだな…。

 ふざけるな。誰が、そんな見え見えの魂胆に騙されるものか。その手には絶対に乗らないぞ…と、当然ながら思いましたが、ここはホンジュラス…。この国で「理不尽」な事が起こったら、大抵の場合は「泣き寝入り」するしかないのです…。解決策は、ない。日本の外務省の海外安全ホームページ(これを見たら誰もホンジュラスに行きたくなくなる)を見ても、「強盗に襲われたら絶対に抵抗せずにお金を差し出せ」といったような内容が書いてあります。


 ホンジュラスで「正義」は通用しないのです。


 この場合、相手は強盗ではなく協会なので、命を奪われる事はありませんが、追加クラスを受けない限りは「ライセンスの証書」を発行してもらえない…それは、何をどうやっても変えられません。いくら交渉しても駄目。どんなに理不尽でも従う以外に道はありませんでした。



 このような経緯があり、僕は「ライセンスの証書」を発行してもらうために、「40時間の追加クラス」を受講せざるを得ない状況となりました。

 「クラス(授業)」と言っても、普通のクラスではありません。僕のためだけに、特別に行われるクラス。そう…。僕以外に受講者は、いません。まさかの、僕とインストラクターの「1対1」。これが1日中、朝~晩まで約5、6時間…が1週間みっちり続きます(合計40時間なので)。



 こうして本来ならあるはずのなかった「クラス」がスタート。「何で、またクラスを受けんといけんのんか…」と目の前で起こる理不尽に納得いかない気持ちは当然ありましたが、それでも気持ちを切り換え「どうせクラスを受けるのなら前向きに取り組んで、たくさんの事を学んでやろう」という意気込みで臨みました。時には疲労で睡魔に襲われる事もありましたが、何せ「1対1」のクラスだけに、居眠りどころかコクリともする訳にはいきません。

 このように前向きに取り組んだおかげでクラス自体は非常に充実しており、多くの事を学べて良かったのですが…1つ生活を揺るがす重大な問題がありました。それは…「出費」

 前述したようにクラスの受講料で多額のお金がかかるのはもちろん、物価が高い首都テグシガルパのホテルでの宿泊費、食費、クラスに通うタクシー代、トコアから首都までの往復の交通費…などなど、何から何まで、通常の何倍もの出費がかさみます。しかも、パリーヤス・オネを解雇になった12月以降、レアル・ソシエダで給料未払い問題が発生し、この時の僕は収入が3ヶ月もない状態…。ホンジュラスで貯めた貯金はみるみるなくなっていき、生活の危機へと追い込まれていきました。


 ヤバイ。極めて、ヤバイ状況…。


 ホンジュラスの事なので、クラスが終われば今度は登録費だの何だのコジツケられてお金をさらに請求される…なんて事も、充分にありえます。正直、これ以上、お金を請求されても出せない…。果たして本当に、「ライセンスの証書」は無事にもらえるのか…?神様、そして天国のおじいさんに祈るしかありませんでした(実際に僕はおじいさんの遺影を首都まで持参し、毎日、朝と晩に手を合わせて「頼む、おじいさん…。頼むけえ、助けてくれ…」とお祈りをしていました)。


 お金が尽きるのが先か…?「ライセンスの証書」をもらえるのが先か…?


 そんな、ギリギリの状況の中…。それでも、何とか1週間、魂で持ちこたえ…とうとう無事に「40時間の追加クラス」をやり終えます。僕にとっては1ヶ月くらいに感じた、あまりにも長過ぎる1週間…。やっと、終わった。「1つ大きな事をやり遂げた」という達成感が、そこにはありました。これで、「ライセンスの証書」がもらえる…。よな…?


 「40時間の追加クラス」を全てやり終えた、翌日。サッカー協会に行くと、「まだライセンスの証書を準備しているところだ。また明日、来てくれ」と言われて、もらえません。


 翌日。再びサッカー協会に行くと、協会幹部の手には念願の「ライセンスの証書」が!!!やったー!!!ついに、もらえる!!!

 …と、喜んだのも束の間。よく見ると、協会の会長とNo.2のサインがない…。何で??協会幹部に聞くと「昨日から2人とも不在で、いつサインがもらえるか分からない」そう…。おおおいっ!!!!!エエ加減にせい!!!!!

 「こっちは自費で首都のホテルに宿泊して、ライセンスの証書をもらうのを待っているんだ。これ以上ここで待たされると、お金が尽きる。もう本当に資金的に余裕がない。早くしてくれ。頼む」

 …協会幹部に、魂の叫びを訴えます。



 すると、その翌日。やっと、協会の会長からのサインがもらえる!!ヨシッ!!

 ところが…。No.2のサインは、まだ、ない。「なぜなんだ!?」と理由を聞くと、何と、まさかの「No.2が急に体調を崩して緊急入院してサインがもらえなくなった」…!!?えええっ!?どうして、このタイミングに…。


 「ライセンスの証書」は、もう目と鼻の先にあるのに、最後の最後…「協会のNo.2のサイン」がもらえず、受け取れない…。近くて遠い、ライセンス入手までの道のり…。もう、限界…。


 「No.2の退院の見通しが立たないから、今回はトコアに帰って、No.2が退院し次第サインを書いてもらって、後日、ライセンスの証書をトコアまで送るよ。どうだ?」…と協会幹部に提案されました。しかし、僕はその提案を「いや、ライセンスの証書を受け取るまではトコアに帰らない」と、断固として拒否。なぜか…?

 僕の長年の経験上、ホンジュラス人と中国人の「後日○○するから」ほど、当てにならないものはない。後日、送る…?信じられない。このまま手ぶらでトコアに帰ったら、下手したら一生、ライセンスの証書を受け取れない可能性がある。それだけは何としても避けなければならない。生活の危機に陥るほどの出費をしてまで、「ライセンスの証書」を入手するために理不尽に耐え、「40時間の追加クラス」を受けてきたんだ。ここまできたら、何が何でも絶対にライセンスの証書を協会幹部の手から直に受け取る。それまでは、トコアに帰らない…。


 この僕の不退転の覚悟と、ライセンスに対する強い気持ちが通じたのか…。


 翌日…。


 再び協会幹部に呼び出されると、そこには、入院しているはずの「No.2のサイン」が書かれたライセンスの証書がありました。


 協会幹部がわざわざ僕のために、No.2が入院している病院の病室まで行き、ライセンスの証書にサインを書かせたのです。体調不良で入院している状況下でありながら、僕のためにサインを書いてくれたNo.2に心から感謝。本当にありがとうNo.2!!そして、いろいろあったけど、終わり良ければ全て良し…最後はちゃんと協力してくれた協会幹部、ありがとう!!



 こうして…。



 様々な紆余曲折を経て…。



 念願叶って、ついに僕は無事に、




 ホンジュラスサッカー協会公認GKコーチングライセンス』の『証書』を入手しました!!


 これで晴れて、正式ライセンス取得完了です!!




※日本初公開!これが「ホンジュラスサッカー協会公認GKコーチングライセンス」じゃ!日本人としてこれを取得したのは自分が初めてなのはもちろん、現時点ではホンジュラス人でも持っている人間はほとんどいません。「DIPLOMA DE ENTRENADOR DE ARQUEROS,QUE LO HABILITA PARA TRABAJAR EN LIGA PROFESIONAL,AMATEUR Y LIGAS MENORES」 翻訳すると→「プロリーグ、アマチュアと若年層リーグで働く資格を与えるGKコーチングライセンス」 つまりこれは、全てのプロチーム、そして、いかなるカテゴリーのチームで働く事も可能にする「プロGKコーチングライセンス」です。

ホンジュラスGKコーチングライセンス2014



 上の写真の僕の痩せコケた顔が、このライセンスに辿り着くまでの想像を絶する道のりを物語っています…(一体、どこまで痩せるんだ、俺…?) 人間、時には人生の中で、どんなに痩せコケてでも「絶対に手に入れたいモノ」があるのです。

 ちなみに向かって右下の複雑なサインが、前述の「No.2」のもの。このNo.2は、北中米カリブ海地区サッカー連盟(CONCACAF)でも「副会長」を務めるアルフレッド・ハウィット(Alfredo Hawit)です。体調不良で入院している身でありながら、病室からサインを書いてくれたハウィット…。魂が伝わってくるサインです。本当にありがとう、ハウィット!!※ハウィットは先週、無事に体調が回復して退院を果たしました。1ヶ月くらい入院していたので、どうなるか心配していたのですが…。無事に退院できて良かったです!!

 一方、向かって左下が、ホンジュラスサッカー協会会長ラファエル・カジェハス(Rafael Callejas)のサインですが…シンプル過ぎでしょ(「く」の字の反対のような1本線のサイン)。あのジーコのサインより、簡単。実はこのカジェハス…元ホンジュラスの大統領です。

 ところで証書の下の方に「10日間(diez dias)のクラス」といった内容が書かれていますが、このクラスは本来は「1日4時間×10日間=40時間」だったんです。それを僕が「10日間も首都に滞在するのは資金的にキツイから、『1日5、6時間×1週間=40時間』にしてくれ」と交渉し、日程を変更してもらったのです。



 クラスが終了した後に、心配されていた追加の費用をこじつけられてボられる…といった事も幸いなく、とうとう無事にライセンスの証書をこの手に受け取った瞬間は…本当に感動して涙が出そうになりました。

 1日で終わる簡単な手続きのはずが、まさかライセンスの証書を受け取るまでに2週間も首都から帰れなくなるとは…。ここに辿り着くまでの道のりは本当に想像を絶するものがありましたが、険しい道のりを経て取得したこの「ライセンス」が、今後、必ず僕の夢実現の道しるべになってくれると信じています。



 最後に…。ライセンスの証書を受け取るまでの過程で首都で大変な出費をする事になり、生活の危機に陥りましたが、トコアに帰還すると奇跡的にこれまで未払いになっていた1ヶ月分の給料がチームから支払われ、どうにか紙一重で食いつなぐ事ができました。ふぅ~…。いつも本当に崖っぷちの状況に追い詰められ、「今回こそ終わったか…?」と覚悟を決めた時に「奇跡」が起き、ギリギリのところで助かって、道が拓けています。

 家族、友人など多くの人々の支えはもちろん、僕には天国のおじいさんが助けてくれているように感じてなりません。おじいさんの遺影にお願いした事は、これまで全て実現しています。今回、紆余曲折を経ながらも何とか無事にライセンスの証書を受け取れたのも、天国のおじいさんが助けてくれたのだと信じています。

 おじいさんの葬儀に出席できなかったのみならず、おじいさんが亡くなった事を3ヶ月間も家族で僕だけが知らなかったという悲しい出来事はありましたが、おじいさんは亡くなってからも常に僕の側に居て、こうして助けてくれています。

 生きているおじいさんには恩返しらしい恩返しが何もできなかったので、天国のおじいさんにこれから少しでも恩返しができるよう、夢実現に向けて今後も全力を尽くしていきます。



おじいさんの遺影が見つかる!2012年4月1日(日)





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