日本は本当に「楽な組」なのか?ブラジルW杯2014、グループリーグ組み合わせ決定!! | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

日本は本当に「楽な組」なのか?ブラジルW杯2014、グループリーグ組み合わせ決定!!


 ついに、「ブラジルW杯2014」のグループリーグの組み合わせが決定!!

 日本でおそらく唯一の「ホンジュラス目線」でサッカー界の出来事を書く当ブログ(笑)。

 まず何よりも、ホンジュラスが「この場に居られる」事に、大きな幸せを感じずにはいられません。




 さあ、気になる我らがホンジュラスの対戦相手は…?







 スイス。




 フランス。




 エクアドル。






 …と、なりました!!!!!!!!!!!!!!





 ホンジュラスは出場国の中でも「挑戦者」の立場であり、基本的には3ヵ国とも「格上」…。簡単に勝てる相手など当然1つもありませんが「今のホンジュラスが持っている力を100%発揮できれば、決してグループリーグ突破も不可能ではない」組み合わせになったと、個人的には信じています。


 …てな訳で、ホンジュラスの対戦国3ヵ国を、簡単に(本当に簡単に)おさらいしてみたいと思います!!



 まず、スイス…。まさかの、「南アW杯2010」に続く、2大会連続での同組!!当時は第3戦目に対戦し「0-0」で引き分けましたが、果たして今大会ではどうなる…?シード国の強豪ですが、同じシード国のブラジル、ドイツ、スペインなどと同組になるよりは、幾分マシだと言えるのではないでしょうか?
スイスを率いる名将ヒッツフェルト監督は、前回の南アW杯でもスイスを指揮しホンジュラスとの対戦経験があります。当時とはお互いにメンバーも戦術も変わっていますが、彼にとってはホンジュラスは決して「未知の相手」ではないだけに厳しい試合になる事が予想されます。個人的には前回の南アW杯での対戦時に、少なくとも3度の決定的チャンスを外して勝てなかったスイス戦は本当に悔しく忘れられない苦い記憶なので、今大会では何とか勝って当時の悔しさを晴らしたいです。



 お次は、フランス…。W杯優勝経験もある強豪ですが、前回の南アW杯ではチーム内で内紛が勃発しグループリーグ敗退。今回の欧州予選もプレーオフでギリギリ勝ち上がってきており、ジダンなどが居た時代と比べれば、力は劣るはず。しかし、ホンジュラスからすると紛れもない「格上」である事には変わりないので、今大会でも「お家芸」の内紛が勃発してチーム力がダウンしてくれる事を切に願っています(笑)。


 そして最後は、エクアドル…。日本の皆さんからすると全く馴染みがない単なる「地味なカード」に過ぎないかもしれませんが、ホンジュラスとエクアドルの2ヵ国からすると、非常に感慨深く「運命的な対戦」。その理由は、両国の代表監督2人にあります。

 実は、現ホンジュラス代表監督のルイス・スアレスは、「元エクアドル代表監督」。ドイツW杯2006ではエクアドル代表を率いて同国史上初の「ベスト16進出」。エクアドル国民にとってルイス・スアレス監督は、歴史を塗り替えた偉大な監督なのです。

 対する現エクアドル代表監督は、何と「前ホンジュラス代表監督」のレイナルド・ルエダ!!レイナルド・ルエダ監督は4年前までホンジュラス代表を率いて、同国を「28年ぶり」のW杯出場に導いた、これまたホンジュラス国民にとっては忘れられない偉大な監督。未だにホンジュラス国民から愛され続けています。

 現ホンジュラス代表監督が「元エクアドル代表監督」で、現エクアドル代表監督が「前ホンジュラス代表監督」という奇跡の巡り合わせ!!しかも共にコロンビア人で、共に両国で歴史的な快挙を成し遂げている特別な存在。それがW杯という舞台で、まさか、あいまみえる事になろうとは…。両国民にとっては「運命」を感じずにはいられない対戦です。


※現エクアドル代表監督レイナルド・ルエダがホンジュラス代表監督だった時に、南アW杯前の国内合宿に訪問して撮った写真。当時、彼から「日本代表と親善試合がしたいから助けてくれないか?」と頼まれ、実際にホンジュラスサッカー協会の副会長からも日本サッカー協会宛の「親善試合要請オフィシャルレター」を預かり(なぜ俺に預ける!?)、帰国後、当時の僕の勤め先である立正大学体育会サッカー部の事務所からそのレターを日本サッカー協会にFAXで送ったら、後日、日本サッカー協会から「なぜか立正大学からホンジュラスサッカー協会のレターが届いたんですけど、どういう事でしょうか…?」という困惑の連絡がきたというエピソードがあります(笑)。…結局、自分の力が及ばず日本との親善試合を実現してあげる事はできず、レイナルド・ルエダ監督とホンジュラス代表の役に立てなかった事は、今でも心に引っかかっています。無念じゃ…。いつか必ず役に立つぞ!!

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -con Reinaldo Rueda en Morazan (2010.1.9)



※こちらは現エクアドル代表GKコーチで、前ホンジュラス代表GKコーチのペドロ・サペ。レイナルド・ルエダ監督とこのペドロ・サペ、そしてアシスタントコーチとフィジカルコーチの4人は基本、どこで働く時も常に一緒でセット。固い「絆」と「信頼」で結ばれています。だからこそ、いつも好結果を出せるのでしょう。近い将来、彼らと同じピッチの上で再会できるよう、全力を尽くしていきます!!

「日本→中国→アメリカ→イングランド→ホンジュラス→ジャマイカ→パナマ→オーストリア→南アフリカ→日本→シンガポール→日本…」 -con Pedro Zape en Morazan(2010.1.9)



 今大会では他にも、元ドイツ代表の偉大なストライカーであり前ドイツ代表監督でもある現アメリカ代表監督のクリンスマンが、グループリーグで母国ドイツと対戦。しかも現ドイツ代表監督は、クリンスマンがドイツ代表監督時代のアシスタントコーチであるレーブ。こうした人間ドラマもW杯の見所の1つですし、こうした人間ドラマを知っていれば、W杯を見るのが何倍も楽しくなります。ドイツはもちろんアメリカも非常に強いチームですし(今年行われた親善試合ではドイツに勝っている)、今から両国の対戦が楽しみでなりません!!

 ホンジュラスとエクアドルはサッカー面で国としての繋がりも強く、よく親善試合も行います。つい先日も中立国のアメリカにて親善試合を行い「2-2」で引き分けたばかり。この両国の対戦はグループリーグ最終戦なので、僕としてはそれまでにホンジュラスとエクアドルが力を合わせて欧州列強2ヵ国を倒し、共に揃ってグループリーグ突破を成し遂げて欲しいと心から願っています。



※先日、行われた「エクアドルVSホンジュラス」の親善試合です。ホンジュラスはレギュラーを3人しかスタメンで起用せず、後半から数人のレギュラーを投入しました。後半ロスタイムまでホンジュラスが「2-1」で勝っていたのですが、DFのクリアーミスから失点し引き分けに終わりました。その前に行われたブラジルとの親善試合でも、スタートこそレギュラーでしたが、後半15分から5人のサブ選手を次々に投入(しかもその後に3失点)するなど、「勝ちに行く采配」は皆無で、ルイス・スアレス監督にとっては親善試合は本当にあくまでも「テスト」の場に過ぎない…という事が分かりました。僕的には大差で負けると恥ずかしいので、ブラジル戦は最後までレギュラーで戦って欲しかったのですが…。ルイス・スアレス監督は勝敗を完全に度外視し、センターバックから何から出場機会が普段ないサブ選手を最強ブラジル相手に次々に5人も投入しました。ある意味、あのブラジル相手ですら「テスト」と割り切ってこんな采配ができるのは、凄いと思いました。





 現ホンジュラス代表監督のルイス・スアレスはエクアドルだけではなくホンジュラスでも昨年のロンドン五輪で同国を史上初の決勝トーナメント進出に導くなど、正に「史上初の決勝トーナメント進出請負人」。彼の率いる組織的で手堅いチームは、予選よりもむしろ本大会の方が力を発揮できる(スタイルがハマる)ので、今回のブラジルW杯でも世界を驚かせる好結果を出せる可能性は高いと、僕は見ています。

 ロンドン五輪でも、まさかホンジュラスが優勝候補筆頭のスペインを破って敗退に追い込みベスト8に進出するとは、誰も予想していなかったはず(ホンジュラス通の僕だけは、大会前からホンジュラスの躍進を予想していましたが)。メディアや他国の評価など、全く関係ありません。ホンジュラスはホンジュラスにできる事を最大限やって、結果を出すのみ。僕はホンジュラスなら、必ずやってくれると信じています!!




 さて。僕はホンジュラスのプロサッカーリーグでGKコーチを務める「ホンジュラス側」の人間ですが、生まれ育った母国である「日本」についても触れない訳にはいきません。

 日本のグループリーグの相手は、「コロンビア、ギリシャ、コートジボワール」となりました。

 この組み合わせを見た瞬間、僕は「厳しいグループに入ったな」と感じたのですが、思いのほか日本のメディアの間では「楽観論」があまりにも多くて自身の感覚と大きなズレがあり、大変、困惑しています。

 特にこの記事→【敗退は許されない‘‘楽な組’’に入ったザックジャパン。…】には、驚きました。「楽な組」、「3連勝すらあり得る」など、まるで日本の方が相手よりも「格上」であるかのような書き方がされており、「それはないじゃろう」と疑問を感じずにはいられませんでした。その中でも「(対戦相手からすると)日本を引いたのは唯一の不幸」というくだりには、疑問を通り越して、正直、呆れました。

 いつから日本は「世界有数の強豪国」になったのでしょうか?確かに親善試合でオランダやベルギーを相手に好結果を出しましたが、「親善試合」と「本番」は全くの別物であり、世界の中での立ち位置からすると、今の日本はまだ「挑戦者」の立場のはず。実際、コンフェデという親善試合ではなく「公式戦」の舞台では、過去最悪の状態にあり北中米カリブ海地区予選でもホンジュラスよりも下の4位だったメキシコにすら歯が立たずに敗れて「3連敗」を喫しています。この時はメディアもボロカスに批判していたはず。それが、オランダとベルギーを相手に好結果が出た途端、もう日本を「世界有数の強豪国」扱い…。

 サッカーに詳しい人が見れば「おかしいだろ」とみんな疑問に感じると思いますが、サッカーに詳しくない一般の人がこういった記事を見ると、本当に日本が「世界有数の強豪国」だと勘違いしてしまいます。国民に誤解を与えるような記事や報道は控えて欲しいですね。

 日本のメディアは「FIFAランク」が好きで、事あるごとに「FIFAランクでは日本より下の格下○○」という言い方をするのですが、今回のグループリーグの相手は全てFIFAランクで日本よりも上なのに、そういう時にはFIFAランクについて触れられず、根拠もなく相手を格下扱い…というのも「???」です。

 過去を振り返ってみると、今回と似たような「楽観的」な雰囲気の大会が、フランスW杯98とドイツW杯2006の2大会ありました。前者では根拠もなく「ジャマイカは弱い。ジャマイカには勝てる」と誰もが言い、後者では「黄金世代がピークで迎える過去最強の日本代表。特にオーストラリアは格下で絶対に勝てる」と誰もが思い込んでいました。

 ところが…。蓋を開けてみると、この2大会は共に1勝もできずにグループリーグ敗退…。けど、冷静に考えてみると、「日本が絶対に勝てる」なんて根拠は、実は何もなかった。ジャマイカを例に挙げてみると、当時の日本は誰1人としてヨーロッパでプレーしている選手がいない完全なる「国内組」(しかもプロリーグができて僅か5年目)だったのに対し、ジャマイカはイングランドなどでプレーしている「ヨーロッパ組」が居ました。それを冷静に考えれば、むしろ「ジャマイカの方が日本より格上だった」とすら言えるのですが、日本国民の誰もがそうは考えませんでした。僕もメディアの影響でジャマイカは日本より弱い」と信じきっていました。

 このメディアの「洗脳」が本当の意味で解けたのが、ドイツW杯のオーストラリア戦の敗北。自分にとっては衝撃的な試合で、これ以降、日本代表のみならず日本サッカー全体に対する見方が180度、変わりました。※当時の衝撃を生で綴ったブログは→【日本W杯史上最悪の試合。2006年ドイツW杯グループリーグ初戦「日本VSオーストラリア」


 上記の2大会とは対照的に「批判的」な空気の中で臨んだのが、日韓W杯2002と南アW杯2010だと思います。前者ではトルシエは日本のメディアに嫌われていたのか、どれだけ結果を出しても批判され続け、協会からも常に「解雇」をちらつかされていました(詳しくは→【オシムは本当に凄いのか?!&日本代表歴代最高監督は…??】。後者も大会前に連敗を喫し、岡田監督始めチームはボロカスに叩かれていました。

 しかし結果は共に「ベスト16進出」。僕は日本人のメンタリティ・国民性的に「謙虚に挑戦者の気持ちで逆境に立ち向かっていく」シチュエーションの方が、力発揮できるのではないかと思います。

 今回のブラジルW杯でも楽観的な日本のメディアの報道に洗脳されるのではなく、国民1人1人がしっかりと冷静に分析して相手の力を認めた上で、「謙虚」に「挑戦者」の気持ちで立ち向かっていって欲しい…。そうすれば、今の日本の実力なら、簡単ではないけどグループリーグ突破できる可能性はあると思います。

 ちなみに面白いのが、ブラジルのメディアの日本の評価。日本のメディアの評価とは見事なまでに正反対()。けど、これが世界の一般的かつ客観的な、現時点での日本の公平な評価だと思います。記事には「予想スタメンには未だに前田が名を連ねており、担当記者はコンフェデレーションズカップ時点の日本しか頭の中にない様子だ」とありますが、それくらい向こうの人は「親善試合はあくまでテストの場」過ぎないのであまり眼中になく、「公式戦」の結果を見て評価している証拠とも言えるのかもしれません。→【現地ブラジルが見たW杯展望。日本の勝ち抜け予想少なく「技術に欠ける」と厳しい評価


 いや~…今から来年のブラジルW杯が楽しみですね!!!!!


 僕はホンジュラス代表GKコーチになってW杯に出場し、日本を破ってベスト16以上に進出するという夢を実現するために今回ホンジュラスに来たので、可能性が1%でもある限りは諦めずに全力を尽くします!!今のホンジュラス代表には、当然ながらすでに別のGKコーチが居ますが、彼が大会前に骨折して離脱する可能性だって決してなくはないですからね(特に「普通じゃありえない」事が頻繁に起こるホンジュラスではべーっだ!)!!「ホンジュラス最高峰リーグ」でGKコーチをやっている限り、可能性はゼロじゃない!!…のですが、またまた今、自分の状況が訳わからん大変な事になっていて大ピンチ…。どうなるんじゃ、俺は…?って非常にヤバイ状況なのですが、成るようにしか成らないし、いつも何だかんだで成るように成ってきたので、「今、自分がやるべき事」に集中して全力を尽くし、天命を待ちます!!




◆連絡先メールアドレス: cafehondurasyoji@hotmail.co.jp