ホセ・フェルナンデス ; GAPストアを買い占めて | Peanuts & Crackerjack

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陽気なドミニカン・フリースウィンガー

その一方で聖書を愛読し、その教えに基づいた深い哲学的な思考から
ウィットに富み、そして含蓄に富んだコメントを数多く残すことでも知られる大砲、

ホセ・フェルナンデスこと Jose Mayobanex Fernandez Rojas 選手。

マリーンズから始まり、ライオンズ、イーグルス、バファローズ、
そして再びライオンズとパ・リーグの球団を渡り歩く journey man として
今シーズンでNPBでのキャリアも9年を数えるまでになりました。

その長い活躍のおかげで今シーズンには出場登録日数が8年に達し
国内FA権を取得、2012年シーズンからは日本人選手扱いとなるとともに

昨シーズン1,000本安打を達成したのに続き今シーズンには1,000試合出場、200本塁打達成
押しも押されもせぬ大ヴェテランとしての輝かしい功績を誇るまでになりました。

一方で一塁への全力疾走をしない、早打ちで併殺打が多い、守備に難を抱えるなど
特に集中力を欠いている時には非常に緩慢なプレイを数多く披露するという
大きな短所をも併せ持つという、ある意味非常に極端な両面を持つ選手であることも確かですが

今シーズンのライオンズにとってもそのほぼ全試合といってもいい142試合に出場し、
そのほとんどのゲームでラインアップの中軸を任されていき

157安打、うち21二塁打・17本塁打を放ちながらみごとに81打点を叩き出したその成績は
その数多くの短所を補って余りあるだけの、その抜群の魅力を、長所
余すことなく発揮し、私たちにじゅうぶんに魅せてくれたと高く評価していいものです。

ナカジさん100打点、剛也さん116打点、そしてホセさん81打点の中軸
まず間違いなく今シーズン、リーグ1位となるであろう571得点を叩き出した

まさにリーグ最高といっていいライオンズ攻撃陣の心臓部といってよく

このエントリーではその一翼を担ったホセさんについて
以前シーズン途中にナカジさん、クリさん、そして剛也さんを分析していったものと同じ手法を用いて
そのスタイルをカウント別にわけながら詳細に見ていきたいと思います。


(参照:【苦しむ中島裕之選手、その原因を探る】
    【栗山選手の打席におけるアプローチに迫る】
    【円熟の域を目指し、たゆまぬ進化を続ける中村剛也選手】


それではまず、2008年から2011年までの4年間のNPBにおける打撃成績について、
年度別に打率・出塁率・長打率の推移をグラフにて示しました。
(※破線で示しているのは、ここまでのホセさんのNPBにおけるキャリア成績です)

$ピーナッツとクラッカージャック-Fernandez2011a

(※2010年はシーズン後半から終盤にかけての243打席という限られたチャンスの中でした)

その経過をみていくと、まずはやはり基本的には他の打者と同じように
その出塁率・長打率は打率の増減によって増減するということ、

そしてその上で

①出塁率と打率の差(IsoD, Isolated Dicipline)はおおよそ.060あたりで安定しており

 いわゆる典型的なフリースウィンガー・タイプの残すIsoD(おおよそ0.30あたり)と比較すれば
 言われるほど、印象ほどそこまでいつ何時でも初球から振り回していくスタイルではなく

 ある程度状況に応じて忍耐強く闘う打席をも創り出し、織り交ぜている打者であること

②長打率と打率の差(IsoP, Isolated Power)について見てみると
 NPBキャリア平均で.206を記録してくる素晴らしい中長距離打者であり、

 これこそがホセさんが長きにわたってNPBで活躍し続けることのできる
 最大の要因、そして最大の魅力であり特徴であると言ってよく

 ただし2008年.174、2009年.161、2010年.199、2011年.136と
 限られた期間だけの出場だった2010年を除けば
 やはり今年で37歳を迎えることもあってか少しずつその力の衰えを見せ始めており、

 特に統一球や広いストライク・ゾーンなどでNPB全体の長打率が急落した今シーズンは
 81打点という大きな貢献を残したもののその一方で、もちろん打率面でも苦しむものの
 それ以上に自分の最大の特長である長打を数多く魅せることに非常に苦しんだこと

この2点が特徴として浮かび上がってきます。

つまりは状況や局面によっては忍耐強く闘い、四球を奪い出塁を奪うことももちろんしますが
基本的に四球を奪って出塁率を向上させることでチームに貢献するスタイルではなく

とにかく初球から積極的に自分の打てると思った球を強いスウィングで打ち返していき
その鋭い打球で数多くの長打を放っていくことこそホセさんのスタイルであるといえますね。


さてそれでは続いて、どれだけ初球から積極的に打ち返していっているかを見るためにも
その打撃スタイルに最も関連性の深い“打席でのアプローチ”について
2010年シーズンのデータと2011年シーズンのカウント別データを比較しつつ

その打撃スタイルにどんな変化が浮かび上がってくるのか、そして
その特長は何かを見ていきたいと思います。

$ピーナッツとクラッカージャック-Fernandez2011b

まずは、ホセさんがどのカウントで“投手との勝負の結果”を残したかを
全打席に占める割合で2010年、2011年ともにあらわしました。

特筆すべきは、打率・出塁率・そして長打率とすべてにおいて抜群の成績を残した2010年度に
2球以内の勝負が約42%と実に半数に届こうかという多さであったこと、そして
2ストライク以降の勝負が約35%と1/3を少し超えるに留まる少ないものであったことに観られるように

ホセさんが抜群の成績を残す時には初球から積極的に打ち返していき
その勝負は概して非常に早い、ということが伺えますね。

一方で2010年に比べその打率が大幅に落ち、また長打も思うように積み重ねることができなかった2011年には
2球以内の勝負が約31%に減り、また2ストライク以降の勝負も約43%に増えますが
さてその変化はホセさんにとって“望ましい”ものだったのかどうか。


さてそれでは次に、そのあたりの変化がホセさんの成績に与えた効果を観るためにも
ホセさんのカウント別OPSを2010年と2011年の成績で比較してみましょう。

ピーナッツとクラッカージャック-Fernandez2011c

ピーナッツとクラッカージャック-Fernandez2011d

このデータを観ると、
2011年には2010と比べて全体に占める割合の減った2球以内の勝負でいずれも成績を落としており

また一方で、2ストライク以降の勝負において1ストライク以内の勝負に比べ
2010年、2011年共に概ね変わらずにその成績は悪いことがくっきりと現れていますね。

そのあたりをもう少しわかりやすく見るために、上のカウント別の表を
1ストライク以内と2ストライクの2つの部分にまとめてみます。

$ピーナッツとクラッカージャック-Fernandez2011e

やはり、打率、出塁率、そして長打率すべてにおいて2ストライク以降は明らかに悪化しており
特にホセさんの売りである長打率を観ていくと2010年で.260、2011年で.163と
かなり悪化していることも明確にデータが示してくれています。

これをみると、ホセさんの特長である長打をじゅうぶんに発揮しチームに貢献するためにも
今シーズンで37歳を迎える大ヴェテランが今からスタイルを劇的に変えていくことは現実的ではなく

やはり彼を必要不可欠な戦力として起用する以上、
どんどん積極的に初球から打ち返していくことを推奨すべきであり

早打ち凡打、併殺打の多さなどはその大きな魅力と表裏一体のリスクとしてはじめから計算に入れ
割り切りながらチーム全体でその短所をどうカヴァーすべきかを考えるべきでしょう。

そもそもホセさんのこの短所は、その主眼が【素晴らしい活躍を魅せる日本人選手たちを数多く育て上げる】ことにある
NPBにおける“ガイコクジン”の役割を考えれば当然のことであります。

四球を選び、出塁率を残してチームに貢献するスタイルの選手や
打率を残し、その素晴らしいスピードで次々と進塁するスタイルの選手は
いくらでも若い日本人選手が台頭してくる分野であり、そこには彼らに対する需要はなく

なかなか順調に、次々と優秀な日本人選手が台頭していくことがまだまだ難しい
数多くの長打を残していく長距離打者だからこそ彼らは愛され、また長年にわたって活躍できるのであり

逆に言えばその他の分野でどれだけ優秀な成績を残そうが
IsoPに代表される長打部門で結果を、実績を安定して残さなければ

“ガイコクジン”である彼らは真っ先に、時期を問わずスグに解雇されるでしょうし
日本人のようにそのキャリアを終えた後、日本野球業界で生活していくことも非常に稀であるため

当然彼らもどれだけ早打ちと言われようが、併殺打を数多く喫しようが意に介することなく
とにかくそのバットで長打を数多く産み出し、そしてその上で打率を残し
打点を数多く稼いでいくことに特化していき適応していくことになります。

こういった彼ら“ガイコクジン”の立場に立ってその事情を視野に入れていくと
こういった彼らの力を借りていかなければならない以上、

日本人選手たちの短所を彼らの突出した素晴らしい特長で、魅力でカヴァーしようとするのですから
その代わりにその大きな短所をいかにうまく他の選手たちがその特長でカヴァーできるか

つまりは彼らの短所を極力目立たないようにするための
チーム構成、そして攻撃陣のラインアップ構成こそ非常に重要であって

そういった意味では今シーズンのライオンズのラインアップを見ると
クリさん、原さん、そして剛也さんと打席で忍耐強く闘う打者が1・2・4番に座ることで

3番・5番に座るナカジさん、そしてホセさんと言った比較的積極的に打ち返す打者が
より活き活きと活躍できたと言えるでしょう。

もうすぐ37歳を迎える、既に大ヴェテランと言っていいホセさんですから
ここ数年で劇的に、その短所を改善してくることはまずあり得ないと明確に言ってよく

安定して、信頼して5番を任せられる日本人打者が台頭してこない限り
少し衰えの兆候を見せているとはいえ、まだまだこれだけ
数多くの長打と打点とを稼ぐことができるという抜群の魅力を持つホセさんは
現在のライオンズ攻撃陣にとって必要不可欠な戦力であり

凡打を打った後、一塁に全力疾走を見せないホセさんに対して
「あれは一種の病気みたいなものだ」と土井コーチがコメントしたように

確固たる人生観とNPBにおける成功哲学とを併せ持つ、37歳にもなろうとする大ヴェテランをつかまえ
頭ごなしに叱り飛ばして今、一から矯正させるなんてことはハッキリ言って不可能で

彼個人に対して非難し、文句を言ったとしても暖簾に腕押し、ムダなのですから

彼を起用する必要がある以上、同時に覚悟すべきリスク要因としてはじめから割り切って
その部分は他の選手たちの特長でカヴァーするチーム構成こそ

うまくやりくりし、マネージメントすべき重要なポイントとして
最優先に私たちも着目していきたいところですね。

そしてホセさんに対しては、とにかく長打を数多く生み出していき、その上で
平均以上の打率とじゅうぶんな打点を残していく限りは彼のNPBでのキャリアは続くでしょうから

統一球などの影響で今後も本塁打に関してはまだまだ思うように量産できづらい時期が続くでしょうが

そんな中でも9/27イーグルス戦の6回に魅せた2打点付き右中間二塁打や
 (※ホセさんのコメント:GAPストアに行って2袋分の洋服を買ってきました。)
翌日、9/28イーグルス戦の3回に魅せた2打点付き左越二塁打のように
 (※ホセさんのコメント:昨日、GAPストアに行って買い忘れたので、もう一度行ってきました。)

強いスウィングで内野手の頭上を鋭いライナー性で通過し
外野手の間(GAP)へと運んでいく打球を数多く放っていきながら

ありったけのGAPストアをすべて買い占めるくらいの勢い
どんどん数多くの二塁打を、そして打点をも積み重ねていってほしいですね。