データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.4 & RECAP | Peanuts & Crackerjack

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2011年のライオンズは11/5にプレイオフからふるい落とされ
144試合+プレイオフ5試合で全日程を終了しました。

シーズン中にも様々な形でそのstatsをまとめ、分析し考察を試みてまいりましたが
全日程が終了した今、改めてそのデータを詳細にまた俯瞰的に振りかえっていきたいと思います。

まずはじめに、“イメージ”として悪評のすっかり定着してしまっていたライオンズ救援陣について
果たしてそれは主観的なイメージだけではなく客観的なデータとしてもあらわれているのか、

またそうならば一体ライオンズのリリーフ陣のどの部分のデータが最も悪く
これから集中的に改善していくべきなのかを詳細に見ていきたいという動機から始めた

2011年シーズンのリリーフ陣の残した成績をデータで示し
ライオンズ先発陣や他チーム投手陣のデータとの比較で観ていくという分析について

今まで48ゲーム(=シーズンの1/3)消化時点、73ゲーム(=シーズンの約1/2)消化時点、
そして97ゲーム(=シーズンの約2/3)消化時点においてそれぞれまとめたものをも含めて

144ゲーム(=シーズンの全日程)終了時点においてその最終的な結果、成績を観ていくと共に
その成績の推移をも観ていければと思います。

( ※参照 : 48ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 】
        73ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.2 】
        97ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.3 & 牧田投手の先発・救援別成績 】


【 144ゲーム(全日程)終了時点での生データ 】


$ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen01

  ※なお、ここでいう先発陣とはゲームの最初にマウンドに登り投球した投手で
   それ以外の2番手以降の投手はすべて救援陣に含めております。

   ですので、平野さん・ミンチェさん・牧田さん、そして雄星さん・一久さんは先発陣にも救援陣にも両方に名を連ねております。


例によって、このデータを少しわかりやすく加工します。


【 9イニング=1試合へ換算する 】


$ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen02

まずはここまでのライオンズ投手陣の分担イニングをそのまま9イニングに凝縮します。

そうすると、結果9イニングあたり先発陣 6 1/2 イニング救援陣 2 1/2 イニングとなり
平均して先発陣はおおよそ7回の1アウトまたは2アウトまでを担い、そこで救援陣に交代し
救援陣はそこから9回終了までの8つまたは7つのアウトを担っていることがわかります。

そしてそれぞれの担うイニングを消化する過程において
それぞれがどれだけの打者と対峙し、いくつの安打を浴び、いくつの四死球を与えるかが
その右のデータのあらわす数値となります。

これを見ると、ライオンズ救援陣は7回1アウトもしくは2アウトからの 2 1/2 イニング、
つまり7つ~8つのアウトをとる過程で平均10.7人の打者と対峙しており
四死球を0.99個与え、安打を2.4本浴びそのうち二塁打以上の長打は0.62本
奪三振は1.7個ということになります。

次に、先発陣と救援陣の残してきた成績を比較しやすくするために
どちらも9イニングを先発陣だけ、もしくは救援陣だけで担当したと仮定した場合の
それぞれの安打数、四死球数などの平均本数、個数を表示します。

$ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen03

このデータを観れば、被打席・被安打・被塁打など
全体的に先発陣と救援陣との差はほとんどなくなってきていると言っていいのでしょうが

以前から継続して課題であった四死球数については144ゲーム、1シーズン終了時点でも
これまでと変わらず、9イニングあたり約1個の差があるままという残念な結果になってしまいました。


【パ・リーグの各球団および平均データとの比較】


次に、ライオンズ内での比較だけではなく
パ・リーグ5球団のデータと、またライオンズを含んだリーグ平均のデータとの比較を様々な指標を使って行っていき
また48ゲーム消化時点 → 73ゲーム消化時点 → 97ゲーム消化時点 → 144ゲーム消化時点 の順で
その推移をグラフにて追っていきたいと思います。

  ※なお、ライオンズ以外の他チームおよびリーグ平均のデータは
   えるてんさんがプロ野球 ヌルデータ置き場にて集計なさったものを利用させていただきました。

   この場を借りて心より御礼申し上げます。

まずはシーズン終了時点での各チーム、及びライオンズ先発陣/救援陣のデータを
表にてご覧いただきたいと思います。

$ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen04

  ※文末に指標の算出方法とその意味するところを簡単に記しておりますので併せてご確認ください。

今回は更に視覚的にわかりやすく観ていただくために
それぞれのデータの推移を折れ線グラフにて観ていただきながら比較考察していきます。

(※なお、厳密には他球団のデータに関しては48・73・96ゲーム終了時点ではなく
  その近辺でのデータになりますことを予めお断りさせていただきます)

まずは被打率から。
$ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen05

クッキリとあらわれてくるのは

① シーズンを通して圧倒的な好成績を継続しつけたホークス
② シーズンが深まるにつれ急激に成績を落としていったマリーンズ・ファイターズ
③ シーズンを通して安定してほぼ一定の値を記録し続けたバファローズ・イーグルス
④ 常にリーグ最下位の物足りない成績を記録し続けたライオンズ

そしてライオンズ救援陣について観ていくならば
(先発陣、そして全体でも同じような傾向にありますが)
⑤ シーズンもあと1/3を残すあたりからようやく何とかその成績を良化させることに成功した

このことにも触れておきたいところですね。

続いて、被出塁率被長打率については基本的には被打率の推移に大きく影響され
被打率の推移と似たような推移を描きますのでここではグラフで表すことはせず

かわりに被IsoD(被出塁率-被打率)、および被IsoP(被長打率-被打率)をグラフで表し
四死球による出塁率、および長打により稼いだ“余分な塁打”(extra bases)率の推移を観ていきます。

ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen06ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen07

まずは被IsoDについて観ていきますと

① シーズンを通して好成績を継続し続けたマリーンズ
② 当初は物足りない成績だったものの、一貫してその成績を良化させ続けてきたイーグルス
③ 常に物足りない成績だったバファローズ

ライオンズに関しては全体としては特に良すぎもせず悪すぎもせず、の成績でしたが
④ 救援陣に関してはシーズンを通して一貫して非常に悪い値を継続し続けていることが一目瞭然、

比較的非常に好成績を残し続けたライオンズ先発陣の成績の足を大きく引っ張ってしまう結果、

上述の分析でも述べました通り、来シーズンに向けての大きな課題になることでしょう。

続いて被IsoPについて観ていきますと

① シーズンを通して常に好成績だったファイターズ

そしてライオンズに関して、全体として常にリーグ最低水準をうろうろするという物足りないもの
② うち救援陣に関してはシーズン開始から1/3まで突出して悪かったものの
  その後なんとか概ねその成績を良化させ続けていくことに成功した

つまりはここでもシーズン中のブルペン陣の整備が概ね功を奏したと言えそうですね。

以上、ディフェンスを観るときに基本的な指標である被打率/被出塁率/被長打率について
ここでは被打率/被IsoD/被IsoPの推移を観ることでその特徴を観てきましたが

ここからは更に詳しく、細かくその成績を分類してそれぞれについて考察していきます。


【投手陣の担うべき成績について】


まずは基本的に投手陣の担うべき成績の指標であるK/9・BB/9・HR/9およびFIPについて
同じく折れ線グラフにてその推移を観ていきたいと思います。

ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen10 ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen11 ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen12 ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen13

まず、BB/9およびHR/9については基本的にはその指標の成り立ち上当然ではありますが
それぞれ被IsoDおよび被IsoPの値およびその推移と非常に親和性が高く
その特徴もよく似ておりますのでここでは省略させていただきます。

その上で残りましたK/9については
① 1シーズンを通して抜群の非常に素晴らしい成績を残し続けたホークス投手陣
② 常にリーグ平均以上の好成績を残し続けたバファローズおよびイーグルス投手陣
③ 当初は低迷していたものの、後半以降リーグ平均程度までその成績を改善したファイターズ投手陣
④ 常に一貫して物足りない成績を継続し続けたライオンズおよびマリーンズ投手陣

また、
⑤ ライオンズ先発陣・救援陣ともに同じように成績は悪くそこに大きな差はない

ことも観て取れます。

最後にまとめとして、FIPについて各チームの投手陣を観ていくと
① K/9もしくはHR/9において抜群の好成績を残し、他の部門でも弱点を見せなかった
  ホークスおよびファイターズ投手陣の成績がリーグ平均を上回る素晴らしい成績を残す

そしてライオンズに関してみてみると、
やはりK/9・BB/9・HR/9全てにおいて非常に悪い成績に終わった救援陣の成績に大きく足を引っ張られ
② 常にリーグ最下位の成績を継続し続ける

つまりは来シーズンのライオンズにとって先発陣は三振数を増やしていくこと、そして
救援陣は三振数・四死球数・本塁打数すべてにおいて改善していくこと
そのディフェンス面の強化のために大いに望まれるということになりますね。


【チームの守備力について】


それでは続いて、チームの守備力を表すとされる指標、被BABIPについて観ていきます。

ピーナッツとクラッカージャック-2011bullpen08

このグラフを観ると、上で示した被打率のグラフと非常に似通った推移および特長が観て取れますね。

つまり
① 常にシーズンを通して素晴らしい成績を継続したホークス
② 当初は素晴らしい成績を残していたものの、シーズンが深まるにつれ
  急激に成績を悪化させていったファイターズおよびマリーンズ
③ シーズンを通して安定してほぼ一定の値を記録し続けたバファローズ・イーグルス
④ 常にリーグ最下位近辺をうろうろする物足りない成績を記録し続けたライオンズ

また、ライオンズの成績の“推移”を観ていきますと、
● シーズン終盤まではマリーンズやファイターズと同じく急激に成績を悪化させていった
● シーズン終盤の残り1/3のゲームにおいて、他のどのチームにも観られないほど
  急激にその成績を良化させていった

この2つの傾向が観て取れ、シーズン残り1/3のゲームに置いて
大きく守備力を向上させたことが観て取れますね。

振りかえってみれば、
初めてクリさんを左翼手に、そして秋山さんを中堅手に起用したのが9/8(111試合目)
シーズン終了まで基本的にその守備位置を貫き通していくと共に

また別のエントリーで詳しく指摘していくと思いますが
外野守備で素晴らしい成績を残した浅村さんを右翼手に数多く起用していくことで
ライオンズ外野陣3人の守備が非常に安定したことや

またヤスさんの復帰とともに原さんを三塁手に、剛也さんを一塁手に起用していたのが
9/3(107試合目)~10/2(132試合目)であったように

原さんの攻撃面における成長によって
攻撃力を落とすことなく、内野守備に関してもケアできるようになったことが

この大きな向上をもたらしたのだろうと推察できますね。


【 まとめ 】


さて、様々な指標を使ってライオンズのディフェンスについて
先発陣・救援陣、そして守備陣についてその2011年シーズンの成績を推移とともに観てきましたが

まずは先発陣について
来シーズンに向けては三振数の向上を目指していってほしいこと、

そして救援陣については
特に、何よりも優先してまず第一に四死球数を大幅に減少させていくこと、
そしてその上で三振数を向上させていき
また、シーズン終盤に成功した本塁打数を含めた長打数を更に減らしていってほしいこと、

最後に守備陣についてはシーズン終盤の大幅な向上・改善を来シーズンも継続し
常に攻撃面・守備面両面で安定して素晴らしい貢献をできる選手たち
切磋琢磨の中で多数台頭させ続け、また多数起用させ続けていってほしいと思います。

ライオンズのディフェンスについてはいずれの項目においても等しく、
どの分野においてもリーグをリードしていくほどの突出して優秀な成績を残せておらず
あるのは平凡な成績の分野と、そして逆に突出して悪い成績を残した分野が多くあり

シーズン終盤に大きく改善した分野があったとしても
それは基本的になんとかリーグ平均の成績に近づいて行ったということでありますから

今シーズンの終盤にライオンズのディフェンスが安定したと言っても
それはまだまだリーグ最高水準を誇るライオンズ攻撃陣の貢献に支えられてのものであり

来シーズンのライオンズのディフェンスについて、
今シーズンの終盤の水準を維持していけばそれで素晴らしいディフェンスが完成するかといえば
おそらく今シーズンのホークスの素晴らしいディフェンスにはまず敵わないことは明らかです。

守備陣については、もちろん攻撃面での貢献も無視することはできませんが
その上で更に守備面での貢献にも意識を置いた選手起用を模索し続けていき
チーム内の競争を更に激化させていってほしいと思うと共に

投手陣についてはもちろん最初から、完璧に近い素晴らしい成績を残し続けた
2011年ホークスの投手陣をあれもこれも欲張って目指し続けるのではなく

まずは先発陣を中心にして例えば三振率や四死球数や本塁打数など
どれか1つの分野で突出した成績を残すことを目指していき

そうやってまずは2010年シーズンには特に見当たらなかった
ライオンズ投手陣の“特長”を確立していってほしいと思います。

そして、そのためにもまだまだ全体的に物足りない救援陣については
特に四死球数を減少させリーグ平均にもっていくべく

どんどん数多くの素晴らしい才能を起用し続け
大胆なトレードなどを含め更なる整備を継続していってほしいと思います。


≪終≫




  ■ WHIP ■

    Walks plus Hits per Innings Pitched の略。
    (被安打数+与四球数)÷投球回数 で算出し
    1イニングあたりどれだけの安打および四球を許すかを意味します。

    概念としては、被出塁率に限りなく近いと言っていい指標ですね。

  ■ 被BABIP ■

    BABIPBatting Average on Balls In Play の略。
    (被安打数-被本塁打数)÷(被打席数-与四球-与死球-被本塁打-奪三振) で算出し
    本塁打を除きフィールド内に飛んだ打球のうち安打になった割合を示します。

    守備指標DER(Defense Efficiency Ratio)が同じ概念から出発し
    1-被BABIP の近似値であることからもわかるように

    他チームとの比較において被BABIPが低ければそのチームの守備力が高いといえます。

    また、ある程度メンバーが同じであり守備力の変わりない同一チーム内での
    投手個々人の被BABIPについては長期的には一定の値に近づいていくため基本的に運の要素が強く、

    それは同一投手の期間ごとに分けた被BABIPについても同様です。

  ■ K/9 ■

    9×奪三振数÷投球回数 で算出し
    9イニングあたり何個の三振を奪ったかをあらわします。

  ■ BB/9 ■

    9×与四球数÷投球回数 で算出し
    9イニングあたり何個の四球を与えたかをあらわします。

  ■ HR/9 ■

    9×被本塁打数÷投球回数 で算出し
    9イニングあたり何個の本塁打を浴びたかをあらわします。

  ■ FIP ■

    Fielding Independent Pitching の略。
    {被本塁打数×13+(与四球数+与死球数-敬遠四球数)×3-奪三振数×2}÷投球回数+3.12 で算出し
    野手(投手を含む)の守備による影響を受けない
    純粋に100%投手の担うべき結果(被本塁打、三振、四死球)のみで投手を評価したもの。
  
    もちろん値が低いほど、その投手陣は優秀な投球を展開していることを表します。