交流戦を終え、ライオンズは48試合を消化し
これで今シーズンの日程のちょうど1/3が終了したことになります。
ここで、“イメージ”として悪評のすっかり定着してしまったライオンズ救援陣について
果たしてそれは主観的なイメージだけではなく客観的なデータとしてもあらわれているのか、
またそうならば一体ライオンズのリリーフ陣のどの部分のデータが最も悪く
これから集中的に改善していくべきなのかを詳細に見ていきたいと思います。
【防御率について】
投手を評価する指標として最も用いられるのが防御率ですが
この指標はある程度1人で長いイニング、連続して打者と対戦する先発投手用の指標であり
かわるがわるマウンドに上がり、人数をかけて失点を防いでいく救援投手にとっては
非常に不適切な指標だと判断し、ここではばっさり切り捨てております。
※失点、自責点ともに打者でいう“得点”-つまり「被得点」-であって
本来は打者と同じように“打点”-つまり「被打点」-のほうがより重要。
さらに言うと、打者の打点がランナーを置いての打席の多い打者に多くなるのと同じように
投手の「被打点」もランナーを置いての登板が多い救援陣に多くなるのもあたりまえで
よってこの投手の「被打点」もデータとして比較して使用するのは意味がない。
だとすれば、ライオンズ救援陣を評価するデータとして何を抽出するか。
・・・答えは代わる代わる打席に立つ、打者用に築きあげられた指標を
投手用にひっくり返して用いること、となります。
【まずは、生データを】
※なお、ここでいう先発陣とはゲームの最初にマウンドに登り投球した投手で
それ以外の2番手以降の投手はすべて救援陣に含めております。
ですので、平野さんとミンチェさんは先発陣にも救援陣にも両方に名を連ねております。
さて、ではこのデータを少しわかりやすく加工します。
【9イニング=1試合へ換算する】
まずはここまでのライオンズ投手陣の分担イニングをそのまま9イニングに凝縮します。
そうすると、結果9イニングあたり先発陣 6 5/8 イニング・救援陣 2 3/8 イニングとなり
平均して先発陣はおおよそ7回の2アウトまでを担い、そこで救援陣に交代し
救援陣はそこから9回終了までの7つのアウトを担っていることがわかります。
そしてそれぞれの担うイニングを消化する過程において
それぞれがどれだけの打者と対峙し、いくつの安打を浴び、いくつの四死球を与えるかが
その右のデータのあらわす数値となります。
これを見ると、ライオンズ救援陣は7回2アウトからの 2 1/3 イニング、
つまり7つのアウトをとる過程で平均10.2人の打者と対峙しており
四死球を1.0個与え、安打を2.4本浴びそのうち二塁打以上の長打は0.7本で
奪三振は1.6個ということになりますね。
うーん、これは失点の匂いがプンプンしてきますね。
次に、先発陣と救援陣の残してきた成績を比較しやすくするために
どちらも9イニングを先発陣だけ、もしくは救援陣だけで担当したと仮定した場合の
それぞれの安打数、四死球数などの平均本数、個数を表示します。
これは、、、救援陣の成績の悪さが一目瞭然ですね。
唯一被二塁打が先発陣より少ないだけで後はすべて先発陣が優秀な成績、
特筆すべきは先発陣より1.4個も多い四球の数、敬遠分の差0.3を除いても
それでも9イニングあたり1個以上の差があるのは心配。
また、安打数でも9イニングあたり1本の差を記録しており
三塁打・本塁打が多いのも心配ですね。
【パ・リーグの各球団および平均データとの比較】
最後に、ライオンズ内での比較だけではなく
パ・リーグ5球団のデータと、またライオンズを含んだリーグ平均のデータとの比較を
様々な指標を使って行っていきます。
※なお、ライオンズ以外の他チームおよびリーグ平均のデータは
えるてんさんがプロ野球 ヌルデータ置き場にて集計なさったものを利用させていただきました。
この場を借りて心より御礼申し上げます。
※文末に指標の算出方法とその意味するところを簡単に記しておりますので併せてご確認ください。
さて、、、いやというほどライオンズ救援陣の危うさが浮き彫りになるデータですね。。。
与四球、被本塁打が極めて多く投手の純粋な投球のみの成績であるFIPが跳ね上がり
被BABIPがそれほど悪くないのに被打率・被出塁率・被長打率・WHIPを跳ね上げる大きな要因となっています。
やはりライオンズのリリーフ陣が最も改善すべきは
①FIP、つまり四死球数を減らし本塁打数を減らすこと。
まずはこれが優先順位のトップにくるべき課題ですが
ホークス、ファイターズの被BABIPの優秀さと
それと連動した被打率・被出塁率・被長打率・WHIPの優秀さを見ると
②被BABIP、つまりチームの守備力を改善することも
ライオンズのリリーフ陣の成績を向上させるためには非常に効果的だといえるでしょう。
さて、シーズン1/3消化時点でのデータを詳細に見て一応の結論を導き出しましたが
今後も引き続き今シーズンのライオンズ救援陣のデータ、見守っていきたいと思います。
≪終≫
■ WHIP ■
Walks plus Hits per Innings Pitched の略。
(被安打数+与四球数)÷投球回数 で算出し
1イニングあたりどれだけの安打および四球を許すかを意味します。
概念としては、被出塁率に限りなく近いと言っていい指標ですね。
■ 被BABIP ■
BABIP は Batting Average on Balls In Play の略。
(被安打数-被本塁打数)÷(被打席数-与四球-与死球-被本塁打-奪三振) で算出し
本塁打を除きフィールド内に飛んだ打球のうち安打になった割合を示します。
守備指標DER(Defense Efficiency Ratio)が同じ概念から出発し
1-被BABIP の近似値であることからもわかるように
他チームとの比較において被BABIPが低ければそのチームの守備力が高いといえます。
■ K/9 ■
9×奪三振数÷投球回数 で算出し
9イニングあたり何個の三振を奪ったかをあらわします。
■ BB/9 ■
9×与四球数÷投球回数 で算出し
9イニングあたり何個の四球を与えたかをあらわします。
■ HR/9 ■
9×被本塁打数÷投球回数 で算出し
9イニングあたり何個の本塁打を浴びたかをあらわします。
■ FIP ■
Fielding Independent Pitching の略。
{被本塁打数×13+(与四球数+与死球数-敬遠四球数)×3-奪三振数×2}÷投球回数+3.12 で算出し
野手(投手を含む)の守備による影響を受けない
純粋に100%投手の担うべき結果(被本塁打、三振、四死球)のみで投手を評価したもの。
もちろん値が低いほど、その投手陣は優秀な投球を展開していることを表します。