データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.3 & 牧田投手の先発・救援別成績 | Peanuts & Crackerjack

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ライオンズは昨日までで97ゲームを消化し
いよいよ今シーズンもあと1/3を残すのみとなりました。

今シーズン、48ゲーム(=シーズンの1/3)消化時点と
73ゲーム(=シーズンの約1/2)消化時点とにおいて

それぞれ、ライオンズ救援陣の残してきた成績をデータで示し
ライオンズ先発陣や他チーム投手陣のデータとの比較をしてきました。

( ※参照 : 48ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 】
        73ゲーム消化時点 → 【 データで見るライオンズ・リリーフ陣 vol.2 】

そこで、ライオンズがシーズンの約2/3を消化した
8/21の日程終了時点でも同じように救援陣のデータを示し、
ライオンズ先発陣や他チーム投手陣のデータとの比較を行いたいと思います。

また最後に、昨日のゲームレヴューでも少し触れましたが
牧田さんの先発登板時および救援登板時のデータを掲載しておきますので
あわせてご覧いただければと思います。


【 97ゲーム終了時点での生データ 】


$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011082101

  ※なお、ここでいう先発陣とはゲームの最初にマウンドに登り投球した投手で
   それ以外の2番手以降の投手はすべて救援陣に含めております。

   ですので、平野さん・ミンチェさん、そして牧田さんは先発陣にも救援陣にも両方に名を連ねております。


例によって、このデータを少しわかりやすく加工します。


【 9イニング=1試合へ換算する 】


どちらも9イニングを先発陣だけ、もしくは救援陣だけで担当したと仮定した場合の
それぞれの安打数、四死球数などの平均本数、個数を表したものを

48ゲーム消化時点 → 73ゲーム消化時点 → 97ゲーム消化時点 の順で示します。

■ 48ゲーム消化時点 ■

$ピーナッツとクラッカージャック-2011_OPP9-2

■ 73ゲーム消化時点 ■

$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011072403

■ 97ゲーム消化時点 ■

$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011082103

これを見ると、48ゲーム→73ゲームにおいて、先発投手陣の成績の落下もあり
だいぶ先発陣と救援陣との成績の差が縮まってきたこと、

そして73ゲーム→97ゲームにおいては成績の差は目立って増えたり縮んだりせず

また今でも48ゲームまでの成績が災いし、与四死球だけは今(シーズン2/3消化時点)でも
9イニング換算で1個以上という大きな差が未だにあることは非常に目立つままですね。


【パ・リーグの各球団および平均データとの比較】


次に、ライオンズ内での比較だけではなく
パ・リーグ5球団のデータと、またライオンズを含んだリーグ平均のデータとの比較を
様々な指標を使って48ゲーム消化時点 → 73ゲーム消化時点 → 97ゲーム消化時点 の順で行っていきます。

  ※なお、ライオンズ以外の他チームおよびリーグ平均のデータは
   えるてんさんがプロ野球 ヌルデータ置き場にて集計なさったものを利用させていただきました。

   この場を借りて心より御礼申し上げます。

■ 48ゲーム消化時点 ■

     $ピーナッツとクラッカージャック-2011_defense

■ 73ゲーム消化時点 ■

$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011072404

■ 97ゲーム消化時点 ■

$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011082104

  ※文末に指標の算出方法とその意味するところを簡単に記しておりますので併せてご確認ください。

48ゲーム消化時点 → 73ゲーム消化時点 → 97ゲーム消化時点とシーズンが進むにつれ
少しずつ少しずつ、どの球団も同じように成績を悪化させていっていますが

他球団の変化に比べ目立って急激には悪化したり、良化したりしていないようですね。

ですから、ライオンズ救援陣に対する改善策は今回も変わらずに

①FIP、その中でも特に四死球数を減らしていくこと

②被BABIP、つまりチームの守備力を改善すること


この2点であることは明確ですね。


【 牧田さんの先発登板時・救援登板時のデータ比較 】


それでは最後に、牧田さんの先発登板時および救援登板時のデータを掲載します。

$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011082105

  ※文末に指標の算出方法とその意味するところを簡単に記しておりますので併せてご確認ください。

参考までに、生データも掲載しておきます。

$ピーナッツとクラッカージャック-RP2011082106

昨日も言及した通り、被BABIPの急激な悪化については
それは基本的に“不運な”安打や出塁によるもので

それは様々な環境の変化、または疲労の蓄積などで
どんな投手であれ必ず同じように経験する試練であると言えます。

ただ、その不運な安打や出塁がある程度増えてきたからといって
すべての投手が大量出塁を許し、大量失点を喫し

自分の与えられたしごとを連続して失敗し続け
それ以降、以前の輝きを取り戻すことなく低調な成績で終わるわけではなく

長年にわたって素晴らしい成績を残し、活躍し続け
一流と呼ばれ、評価され続ける投手たちというのは

いい時は抜群にいいのだけれど、悪くなるとどうしようもなく失点を重ね
与えられたしごとを完遂できずに失敗を繰り返す投手では決してなく

むしろそういった非常に苦しい試練の時こそ大量失点を防ぎながら
最少失点にまとめ、なんとかうまくしごとをやりきりながら

一つ一つ勝ち星やらホールドやらセーヴやらを積み重ねていくことができる、
つまりマネージメントmanage=なんとかやりくりする)のできる投手たち。

だからこそ、クローザー登板時の牧田さんの四死球率の急激な上昇について
こちらはまちがいなく非常に危険なデータであるということは確かです。

そして、それにHR率の急激な上昇が加われば
ただでさえ不運な安打で相手攻撃陣の出塁が増えているのに加え

四死球で更に余計な出塁を許し、HRなどの長打を含んだ痛打を浴びて
大量失点、というパターンが残念ながらできあがる、ということですね。


-怖さが分かってきたから慎重になりすぎている。
 その辺がまだまだ勉強だね。
 最後は勇気を持って勝負しないといけない。-


この渡辺監督のコメントはほんとうにその通りで
先発登板時にはまず経験しなかった不運な安打や出塁を数多く経験し

常にランナーを得点圏に背負う苦しい投球を強いられてきたことが
徐々に牧田さんの自信を揺るがすようになり

そして一旦負けがついたり、大量失点を喫したりすると
さらに自信が大きく揺るぎ、自分の投球を疑い目先の結果を求め

針の穴を通すような制球小手先の技術に頼って
なんとか逃げながらでもかわそうと思ってしまう。

多彩な球種を持ち、下手投げからの打者のタイミングを外す技術も豊富な牧田さんですが
それでも投球の基本は自分の持てる最高の速球とそれを軸とした緩急のコンビネーション

いろいろな技術球種も、そして制球
自分の投球ができているうちは非常に効果的ですが

自分の投球ができていない時に苦しいからと言ってなんとかそれでかわそうとすると
それはまったく意味のない、いやむしろ百戦錬磨のベテラン打者なら逆効果になるもの。

三振が少なく、グラウンドアウトと共にフライアウトも多い牧田さんは
将来はおそらく素晴らしい“技巧派”投手へと成長していくでしょうが

技巧派投手とは“逃げてかわす”投球をする投手のことでは決してなく
ライオンズであれば西口さんや一久さんを見れば分かるように

軸はまちがいなく彼らの持つ最高の速球であり
それを軸にしながら多彩な、微妙に軌道の違う球種をどんどんとゾーンに投げ

攻めの投球を展開していく中で早いカウントから打者の打ち損じを誘発し
数多くのフライアウトを奪いながらイニングを消化していく投手のこと。


年齢をある程度重ねているとはいえ、プロでのキャリアは浅い牧田さんですから
最初から技術に頼りきりでは一流の技巧派投手になることも難しいもの、

今はまずは投球の基本である、自分の最高の投球を
どんなに緊迫の時や疲労の蓄積してきた時でも疑わず、迷わずに
ゾーンに大胆に投げ続ける
ということを骨の髄から浸透させてほしい。


There is no shortcut. Victory lies in overcoming obstacles everyday.


器用貧乏の罠にはまるな。今はまず自分を本格派投手だととらえ
どんどんと自分の持てる最高の球をゾーンに投げ込むことに集中し

その上でなんとか求められる役割を果たし、結果を残してみせよ。

これは牧田さんだけでなく、もちろんワクさんや岸さん、そして
雄星さんをはじめとした今後のライオンズを背負って立つ若い投手たち全員に

是非肝に銘じてほしい、肌で感じて骨の髄までしみこませてほしい
投球の基本ではないでしょうか。


≪終≫




  ■ WHIP ■

    Walks plus Hits per Innings Pitched の略。
    (被安打数+与四球数)÷投球回数 で算出し
    1イニングあたりどれだけの安打および四球を許すかを意味します。

    概念としては、被出塁率に限りなく近いと言っていい指標ですね。

  ■ 被BABIP ■

    BABIPBatting Average on Balls In Play の略。
    (被安打数-被本塁打数)÷(被打席数-与四球-与死球-被本塁打-奪三振) で算出し
    本塁打を除きフィールド内に飛んだ打球のうち安打になった割合を示します。

    守備指標DER(Defense Efficiency Ratio)が同じ概念から出発し
    1-被BABIP の近似値であることからもわかるように

    他チームとの比較において被BABIPが低ければそのチームの守備力が高いといえます。

    また、ある程度メンバーが同じであり守備力の変わりない同一チーム内での
    投手個々人の被BABIPについては長期的には一定の値に近づいていくため基本的に運の要素が強く、

    それは同一投手の期間ごとに分けた被BABIPについても同様です。

  ■ K/9 ■

    9×奪三振数÷投球回数 で算出し
    9イニングあたり何個の三振を奪ったかをあらわします。

  ■ BB/9 ■

    9×与四球数÷投球回数 で算出し
    9イニングあたり何個の四球を与えたかをあらわします。

  ■ HR/9 ■

    9×被本塁打数÷投球回数 で算出し
    9イニングあたり何個の本塁打を浴びたかをあらわします。

  ■ FIP ■

    Fielding Independent Pitching の略。
    {被本塁打数×13+(与四球数+与死球数-敬遠四球数)×3-奪三振数×2}÷投球回数+3.12 で算出し
    野手(投手を含む)の守備による影響を受けない
    純粋に100%投手の担うべき結果(被本塁打、三振、四死球)のみで投手を評価したもの。
  
    もちろん値が低いほど、その投手陣は優秀な投球を展開していることを表します。