火に油を注いでいないか?
こんにちは。橋本です。
「ステロイド外用薬をきちんと塗っているのに良くならない」
「ステロイド外用薬が、なんだか前より効かなくなってきたような・・・」
こういったことを感じるときが、どきどきあります。
ステロイドが効かないと感じるのには、いくつかの原因が考えられるのですが。
そのひとつが、「火に油を注いでいる状態になっていないか?」ということです。
ステロイド外用薬は効くのか?効かないのか?
ステロイド外用薬には、皮膚の炎症をおさえる力があります。
効果・効能では、抗炎症作用(こう・えんしょうさよう)といわれるものですね。
抗炎症作用があるといわれる薬は、植物、食品まで含めると、数限りなくあります。
その中でも、ステロイド外用薬の持つ抗炎症作用は、ただ単に、経験やフィーリングから、「抗炎症作用がありますよー」といっているわけではありません。
もっともらしい説明、メカニズム、理屈をつけて、「だから皮膚の炎症がおさえられます」といっているわけでもありません。
ステロイド外用薬が、皮膚の炎症をおさえる。アトピーの症状を良くする。
それは、薬の効果を厳密にみる方法、ランダム化比較試験というものを、いくつも積み重ねることによって、あきらかになってきたことなんですね。
消火活動にたとえると
で、このステロイド外用薬が皮膚の炎症をおさえる作用。
よく「消火活動」なんかに、例えたりします。
アトピーの症状がひどくなっている肌では、炎症がおきている。
つまり、火が燃え盛っているわけですね。
その炎症によって、湿疹や強いかゆみがおきてしまう、というのがアトピーを治療する上での大きな問題です。
火が燃え盛っている湿疹。
そこにステロイド外用薬を適切に塗ってあげれば、火が弱まってくる。
きちんと塗り続ければ、うまく火が消えてくれる、かゆみもおさまってくれるわけですね。
だからこそ、「火がきちんと消えるまで塗る」ということも大事です。
にもかかわらず。
火がくすぶっている状態で、「ああ、良くなってきた」と気を許して、すぐに薬を止めてしまう、というケースも実際にはよくありがち。
火がまだ、くすぶっている状態で、薬を塗るのを止めてしまうと、カンタンに湿疹がぶり返すことも多々あります。
症状に合わせたステロイド外用薬を処方してもらう。
そして、火がきっちり消えるまで、十分な期間塗る。
こういった消火活動をきっちりおこなうためにも、診察でのお医者さんとのコミュニケーションが、やはり大切になってくるわけですね。
ただ、お医者さんに言われたとおり、適切にステロイド外用薬を塗っても、なかなか症状が良くならないというケースもあります。
原因はいくつか考えられますが、ひとつが「火に油を注いでいる状態」になっているかもしれない、ということです。
「火に油を注いでいる状態」とは?
アトピーの治療中でいう「火に油を注いでいる状態」とは、悪化因子(あっかいんし)を放置している状態です。
アトピーは、アレルゲン、刺激、ストレス、ほかの様々な要因で悪化します。
いくら、ステロイドで皮膚の炎症を、適切におさえていても、こういった悪化因子が降り注ぐ状態であれば、まるでステロイドが効いてないように見える。
それが、「火に油を注いでいる状態」です。
お医者さんには見えないものだから
しかしながら、診察では、お医者さんは患者さんの生活状況、実際のおうちをのぞくわけにはいきません。
あくまでも、問診のやりとりで想像するしかないわけです。
それでは、現実を把握するには限界がありますよね。
残念ながら、お医者さんには、患者さんが、
・ どれだけ悪化因子に囲まれた生活をしているか?
・ どれだけ悪化因子を減らせているか?
実際には、目にすることができないのです。
しかも、何がアレルゲンになっているか、何が刺激になっているか。
こういったことは人によって大きく違う場合もあるし、多くの人は悪化因子が複数に渡ります。
そのため、何かひとつ、悪化原因をなくしたからといって、劇的にアトピーが良くなることが少ないのが、実際のところです。
「これが悪化原因だ」とはっきり特定させるのが難しいものもあります。
だからこそ、生活の負担にならない範囲で、悪化因子を取り除いていくということが大切になってきます。
・身の回りにアレルゲンがないか?
・日常生活で刺激を与えていないか?
たとえば、「かくこと」「ストレス」などに対しても、できる範囲でケアしていく。
そういったことも、ステロイド外用薬を使う上では、必要なことなんですね。
ただ単に薬を使うだけでもダメ。
必死になってアレルゲンを取り除くだけでもダメ。
スキンケアだけ頑張ってもダメ。
それぞれのケアをほどよいバランスで、根気強く続けるという、ごく当たり前の治療がやはり基本です。
「ステロイド外用薬をきちんと塗っているのに良くならない」
「ステロイド外用薬が、なんだか前より効かなくなってきたような・・・」
そう感じるときには、ぜひもう一度冷静になって、「火に油を注いでいる状態になっていないか?」ということも思い出してくださいね。
「あれがアトピーの原因に違いない」「これで悪化してたんだ、きっと」
そんな過度な思い込みをしないように、普段の生活を冷静になって過ごしていると、見えてくる悪化因子があるかもしれません。