ワセリンとヒルドイドはどう違うの?
こんにちは。橋本です。
病院で処方される保湿剤の二大勢力といえば、「ワセリン」と「ヒルドイド」です。
このワセリンとヒルドイド、どっちがよくて、どっちが悪いということはありません。
ただ、初診から、ずっと1つの保湿剤だけを使っていると、もう一方の保湿剤がどんな感じのものなのか、なかなか想像しにくいですよね。
そこで、「ワセリン」と「ヒルドイド」はどう違うのか、少しポイントをおさえておきますね。
ワセリン → 水分の蒸発をおさえ、刺激を与えない
「ワセリン」は、保湿剤というより、保護剤です。
肌への役割をみると、ですね。
なぜかというと、ワセリンは、塗ってもほとんど肌内部には浸透しないからです。
ほんとうに、肌の表面を保護する役割のみ、に近いんですね。
浸透しないので、刺激を与えるリスクがとても少ない、とても安全な保湿剤。
それも、ワセリンが幅広い症状に使われる理由のひとつです。
さらに、ワセリンは、肌表面を強力にカバーすることで、水分蒸発をおさえます。
ワセリンが肌内部に水分を閉じ込める能力は、あなどれません。
ホホバオイルの3倍以上、オリーブオイルの5倍以上、肌内部に水分を閉じ込める能力があるという測定データもあるからです 1,2) 。
これ以上、肌をフタする能力が高い保湿剤は、ほかにありません。
ヒルドイド → 肌の内側で水分をキャッチする
一方、「ヒルドイド」は、肌内部での保水性が期待できる保湿剤です。
有効成分のヘパリン類似物質がうまく水分をキャッチしてくれるので、肌の保水性をアップできるだろう、というわけですね。
ヒルドイドの製品タイプは、3種類あります。
・ ヒルドイドクリーム
・ ヒルドイドソフト軟膏
・ ヒルドイドローション
この中でも、ヒルドイドソフトがいちばんしっとり感が長続きしますが、少しベトつきます。
ローションはさらっとしていて、塗り広げるのも楽なんですが、しっとり感が比較的、長続きしません。
浸透性が高いローションは、肌への刺激になって、かゆみにつながる場合もあります。
どのタイプを選ぶかは、症状や好み、季節なども目安にして決めるのがいいですね。
ヒルドイドクリームがあまり使われていない理由は、こちらでお話しています。
デメリットをさけるには
経過に合わせて、保湿剤を変えるというのもありです。
たとえば、症状がひどくて、刺激を与えたくない頃は、ワセリンを使う。
ケアを続けてよくなってきたら、ヒルドイドにする。
そして、すべすべ、モチモチの肌になってきたら、保湿剤なしでOK。
こういう流れ、こういう具合ですね。
こうすんなり順調な経過をたどるとは、かぎりませんが、保湿剤を変えることでケアがしやすくなるケースはあります。
ワセリンの保湿効果はあるけど、体の熱がこもって、かゆみが増す、アトピー、湿疹が悪化するというケース。
服やベッドを汚してしまうことになる、ベタつくワセリンを、ヒルドイドにすることで楽に過ごせるようになった、というケースもあるわけです。
また逆のパターンで、ヒルドイドの血流が良くなる作用が合わないケース。
ワセリンにしたら刺激が少ないせいか、肌がしっとりしてきたよー、というケースも考えられます。
もうほんとに、体質、症状、経過によって、様々ですね。
保湿剤は変えてもらえるの?
あの病院では処方できる薬が、この病院では処方してもらえない。
そういうことが、時々あります。
すべての種類の薬をそろえている病院ばかりではなく、処方できる薬がある程度、限定されている病院も多いのが実際です。
保湿剤にしても、そうです。
しかし、「ワセリン」や「ヒルドイド」については、処方できない病院はまずありません。
ただ、お医者さんも、とくに患者さんの希望がないのに、「この保湿剤に変えてみませんか」とすすめることは、なかなかできないもの。
保湿剤を変更することで、症状が劇的に変わることは、そうないですからね。
なので、保湿剤について、「希望」「好み」などがあれば、遠慮なく、先生に伝えるのがベストです。
保湿剤を変えてみるのもいいのか?いや逆に、変えると困るのか?
積極的に聞いてかまいませんよー。
その相談に、きちんと答えてくれるのが、信頼できる先生です。
参考文献:
1) 西山 聖二, ほか: クリームによる皮膚水和の研究: O/Wクリーム成分の皮膚水和に与える影響, 日本化粧品技術者会誌 16: 136-143, 1983.
参考データ:
2) 水分閉塞能(occlusivity): ワセリン 93.8, 流動パラフィン 86.0, ホホバ油 29.0, オリーブ油 18.0: 単位[(H2Og/cm2/hr)-1・g-1].