~「自己破産」で誤情報 TBSが訂正、謝罪~
http://sankei.jp.msn.com/topics/culture/2481/clt2481-t.htm
弁護士の立場からすると、元々放送された内容が誤っていたのはもちろんのこと、訂正された内容ですらその正確性には問題があります。
最近は、テレビに限らず、書籍や雑誌、そしてインターネットの各種サイトでも、様々な法律情報が飛び交っています。
その中には、残念ながら、正確性を欠くものが多く、完全に間違っているものも結構見受けられます。
その最たる原因の一つは、生半可な知識しか有しない者が、無責任に情報発信をしていることにありますが、そもそも法律情報を分かり易く、しかも正確に伝えることが困難であるという点も見逃せません。
私は、本業での法律相談等だけではなく、書籍やコラムの執筆もしており、各場面で、いつも法律情報を分かり易く伝えることを心がけています。
その際、分かり易く説明しようとすると、どうしても正確性をある程度は犠牲にしなければならないというジレンマがあります。
これが法律相談など対面での説明の場面であれば、あらかじめ「~という点で、正確には~となりますが、分かり易く言えば」と断ったうえで、相手の反応を見たり、こちらから誤解されていないかなどを確認しながら話すことができます。それでも、100パーセントの正確性を担保できるわけではないのですが、誤った情報を伝えたり、誤解されたりすることを、かなりの確率で回避できます。
ところが、メールでの問い合わせにメールで答えるというだけでも、対面で話をする場面と比べれば、正確性が低下します。ある情報を文字で説明する際には、ほんの些細な言葉の使い方や、句読点の使い方だけでも、文章の意味が読み手によって変わってしまうおそれがありますが、これが法律情報ではそのまま正確性という点に結びついてしまうのです。
そのため、ほとんどの弁護士は、原則として法律相談は相談者と面談して行うようにしているのです。
不特定多数人に情報を伝える書籍やコラムなどの執筆の場面では、さらに正確性の担保は困難となります。
こういった執筆の依頼を受ける際には、たいてい、できるだけ「分かり易く」お願いしますという注文がつきます。
いくら「分かり易く」とだけ言われても、専門家である以上、「正確性」を無視することはできません。
そして、文字数に制限がなければ、「分かり易く」と、「正確性」という二つの要請をある程度は充たすことができるのですが、残念ながら、当然、執筆に文字数や頁数の制限はつきものです。
そこで、「分かり易く」という要望に応えながら、どのレベルまで「正確性」を確保するのかで悩むわけです。
いずれにしても、巷にあふれる法律情報については、これを鵜呑みにすることはたいへん危険です。