【夕顔58-2】「なむ」の識別☆
源氏物語イラスト解釈です
受験生のみなさん、勉強がんばってますか?
読解マーク問題は、選択肢の中から、
「よりマシな」ものを選ぶんですよ!
では今日も行ってみましょう~♪
ヽ(○・▽・○)ノ゙
――――――――
今回の源氏物語
――――――――
「なほ言ひ寄れ。尋ね寄らでは、さうざうしかりなむ」とのたまふ。
訳と内容が不明確の人は、まずイラスト訳からどうぞ☆
夕顔58のイラスト訳はこちら
これまでのあらすじ
天皇(桐壺帝)の御子として生まれ、才能・容姿ともにすぐれていたにもかかわらず、亡母(桐壺更衣)の身分の低さにより臣籍降下して源氏姓を賜った光源氏。
ただ今、「4.夕顔(ゆうがお)」の巻です。源氏が新たな恋人、六条御息所の所に通っていた夏の頃の話。源氏の従者である惟光の母は、光源氏の乳母でもありました。この乳母が病に臥していた見舞いに、源氏は五条まで出かけます。家の門が開くのを待つ間、夕顔の花が咲く隣家に目をとめ、その花の名を尋ねたことをきっかけに、その家の主人夕顔が和歌を寄越してきました。興味を持った光源氏は返歌をし、その後、今夜の目的であった六条御息所のもとへ訪れますが、心の隅に、五条の隣家のことが残るのでした。従者、惟光は、隣家のことを調べて光源氏に報告します。
―――――――――
☆ 「なむ」の識別 ☆
―――――――――
「なほ言ひ寄れ。尋ね寄らでは、さうざうしかりなむ」とのたまふ。
問)傍線部の「なむ」と同じ用法のものを、次の中から1つ選べ。
1.すべきやうもなし。我は往なむ。
2.分け入りたまふにつけても、いと恥づかしうなむ。
3.「われも人も別るることあらば解けなむ」とちぎり給ふ。
4.徒歩人の渡れど濡れぬえにしあればまた逢坂の関は越えなむ
5.この隣の男のもとよりかくなむ。
「なむ」の識別は、基本的には次の3つ☆
分かりやすい例でいうと、
1.咲かなむ。
⇒未然形+「なむ」=願望の終助詞
2.咲きなむ。
⇒連用形+「なむ」=確述用法
3.花なむ咲く。
⇒係り結びの法則=係助詞
ですが、
これは一般的な基本原則であって、
実際の入試問題では、もっとややこしい古文で出て来ます。
( ゚ ▽ ゚ ;)
今回の「なむ」はというと…
「なほ言ひ寄れ。尋ね寄らでは、さうざうしかりなむ」
直前の「さうざうしかり」が
形容詞「さうざうし」の連用形であることが
まずは判別のポイントです。
でも、直前が連用形の(可能性のある)選択肢は…
2.分け入りたまふにつけても、いと恥づかしうなむ。
3.「われも人も別るることあらば解けなむ」とちぎり給ふ。
4.徒歩人の渡れどぬれぬえにしあればまた逢坂の関は越えなむ
選択肢2は、
シク活用形容詞「恥づかし」の連用形ですが、
ウ音便となっていますね。
(;゚;∀;゚;)
選択肢3と4は、
「解く」「越ゆ」は下二段活用動詞なので、
未然形か連用形か、文脈判断を要します。
(;゚;∀;゚;)
はてさて……
――――――――――――――――――
☆ 形容詞連用形に続く なむ」の識別 ☆
――――――――――――――――――
形容詞には、本活用と補助活用があります。
2つあるうちの、
右が本活用(ク活用)、
左が補助活用(カリ活用)です。
そして、「なむ」に接続する場合、
この、本活用か、補助活用かが、
大きな判別ポイントになるんです。
(σ・∀・)σ
つまり、
付属語に接続する場合は
補助(カリ)活用を用いる。
この基本の法則を念頭に置くと、
「なほ言ひ寄れ。尋ね寄らでは、さうざうしかりなむ」
問題文の傍線「なむ」は、
直前の「さうざうしかり」が補助(カリ)活用なので、
確述用法(強意の助動詞+推量の助動詞)
のはずです。
しかし、
2.分け入りたまふにつけても、いと恥づかしうなむ。
選択肢2は、
「恥づかしく」+「なむ」
と、本活用(ク活用)に接続しているので、
「なむ」が確述用法や、未然形接続の終助詞とは
考えられません。
よって、この選択肢2の「なむ」は、
直前の接続に関わりのない、
省略可能の係助詞「なむ」
ということになるのです。
ちなみに、
選択肢5の「なむ」も、
「かく(=このように)」という指示副詞につながり、
係り結びの法則、結びの省略
となっています。(・∀・)
――――――――――――――――――
☆ 下二段活用動詞に続く なむ」の識別 ☆
――――――――――――――――――
では、選択肢3,4の場合、
下二段活用に接続する場合は、
どのように判別するのでしょうか?
3.「われも人も別るることあらば解けなむ」とちぎり給ふ。
4.徒歩人の渡れどぬれぬえにしあればまた逢坂の関は越えなむ
下二段活用動詞は、
未然形も連用形も、「―e」という形なので、
願望の終助詞(未然形+「なむ」)なのか、
確述用法(連用形+「な」「む」)なのか、
直前のつながりだけでは判別できません。
文脈判断を要するわけです!
ヽ(*'0'*)ツ
…こういうの、選択肢で出て来たら、
イヤですよねぇ~;;
3.「われも人も別るることあらば解けなむ」とちぎり給ふ。
これ、2005年のセンター古文に出て来たものですが、
品詞分解してみますね♪
われ(=私)
も(=列挙の係助詞)
人(=あなた)
も(=列挙の係助詞)
別るる(=ヤ下二「別る」連体形)
こと(=事)
あら(=ラ変「あり」未然形)
ば(未然形+「ば」=もし~ならば)
「私もあなたも、もし別れることがあれば」
ここまでは、品詞分解で
かんたんに解釈できますね。
で、
「解けなむ」が願望の終助詞なら、
「解けてほしい」と訳しますし、
「解けなむ」が確述用法なら、
「きっと解けるだろう」と訳します。
…何が「解け」るんでしょうか?
「赤い糸」…かな?
(;゚;∀;゚;)
※実際は、直前の文脈で帯を結んでおりますが、
この一文ではわかりませんね^^;
「私もあなたも、もし別れることがあれば」
⇒解けてほしい
⇒きっと解けるだろう
さあ、…どっちも不自然でない気がしますが…
(;゚;Д;゚;)
あとに「とちぎり給ふ」とあるので、
「私もあなたも、もし別れることがあれば」
⇒解けてほしい
⇒きっと解けるだろう
と約束しなさる。
「約束」するんだから、
願望のほうがよさそうな気がしませんか。
(;´▽`A``
4.徒歩人の渡れど濡れぬえにしあればまた逢坂の関は越えなむ
『伊勢物語』(69段)の中の和歌です。
品詞分解してみますね~!
徒歩人(=徒歩で行く人)
の(主格の格助詞:=~が)
渡れ(ラ四「渡る」未然形)
ど(=逆接の接続助詞:=~けれど)
濡れ(ラ下二「濡る」未然形)
ぬ(打消の助動詞「ず」連体形=~ない)
えにし(=縁:「江にし」との掛詞)
あれ(ラ変「あり」已然形)
ば(順接:=~ので)
また(副詞:=また)
逢坂の関(歌枕)
は(強意の係助詞)
徒歩で行く人が渡るけれど濡れない入江のような浅い縁なので、また逢坂の関を
⇒越えてほしい
⇒きっと越えよう
この和歌は、
上の句が女、下の句が男の贈答歌です。
下の句が男の贈答歌だと分かれば、
すぐに後者の確述用法だと判別できるんですが、
今回のように、何も注がない場合は
非常に難問でございます;;
(ㆁωㆁ*)
徒歩で行く人が渡るけれど濡れない入江のような浅い縁なので、(あなたに)また逢坂の関を
⇒越えてほしい
もし、女の和歌と捉えたら、
下の句のような歌意にするには、
上の句の序詞&掛詞が、
ぜんぜん活きてきてません!
(。+・`ω・´)
徒歩で行く人が渡るけれど濡れない入江のような浅い縁なので、私はまた逢坂の関を
⇒きっと越えよう
うんうん。
こちらの方が、女の否定的な序詞&掛詞を
男が受け流して自分の主張に切り替えた
と捉えられますよね!
(;´▽`A``
1.すべきやうもなし。我は往なむ。
⇒ナ変動詞「往(い)ぬ」の未然形活用語尾+意志の助動詞「む」
2.分け入りたまふにつけても、いと恥づかしうなむ。
⇒強意の係助詞「なむ」(結びの省略)
3.「われも人も別るることあらば解けなむ」とちぎり給ふ。
⇒願望の終助詞「なむ」
4.徒歩人の渡れどぬれぬえにしあればまた逢坂の関は越えなむ
⇒確述用法(強意の助動詞「ぬ」未然形+意志の助動詞「む」)
5.この隣の男のもとよりかくなむ。
⇒強意の係助詞「なむ」(結びの省略)
正解……4