【夕顔1-2】大弐の乳母はなぜ尼になったのか?
源氏物語イラスト訳のあいです
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今回の源氏物語
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六条わたりの御忍び歩きのころ、内裏よりまかでたまふ中宿に、大弐の乳母のいたくわづらひて尼になりにける、とぶらはむとて、五条なる家尋ねておはしたり。
訳と内容が不明確の人は、まずイラスト訳からどうぞ☆
夕顔1のイラスト訳はこちら
では今日も、一気に行ってみましょぉ~♪
ヽ(○・▽・○)ノ゙
これまでのあらすじ
天皇(桐壺帝)の御子として生まれ、才能・容姿ともにすぐれていたにもかかわらず、亡母(桐壺更衣)の身分の低さにより臣籍降下して源氏姓を賜った光源氏。
ただ今、「4.夕顔(ゆうがお)」の巻です。光源氏17歳夏。空蝉との逢瀬を果たせなかった光源氏は、同じ頃、六条御息所のもとにも通っていたようです。この巻は、その頃出逢った女とのお話です。
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国公立二次対策 ☆ 古文解釈問題 ☆
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六条わたりの御忍び歩きのころ、内裏よりまかでたまふ中宿に、大弐の乳母のいたくわづらひて尼になりにける、とぶらはむとて、五条なる家尋ねておはしたり。
問)傍線部とあるが、なぜ「大弐の乳母」は尼になったのか。
…こういう理由解釈問題は、
国公立二次の古文記述問題でよく出題されます。
ヽ(゚◇゚ )ノ
今回のような問題は、
センター試験では絶対に出て来ません。
なぜなら、本文のどこにも書いてないからです。
Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
だからといって、
難関私大や国公二次で出てこないとは限りません。
ましてや、文学部なんかでは……
(*。◇。)ハッ!
ですので、
このような古文常識を学んでいくことも、
大切なことだとお心得ください。
(。´・∀・)ノ゙
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1.「大弐の乳母」とは……?
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大弐(だいに)というのは、
「大宰府(だざいふ)」の次官の一つですが、
ここでは女房の呼び名と同じく、
乳母の一族の中で最も高い官職名なのでしょう。
【名詞】
①【乳母】…母に変わって子供に乳を飲ませる
②【傅】貴人の子を守り育てる任に当たる男。後見。養育係。守り役
*「学研全訳古語辞典(Weblio辞書)」より
「乳母(めのと)」という漢字が当てられているので、
「大弐の乳母」は、①の意味ですね。
平安時代の貴族女性は、
わが子に乳を飲ませず、
乳母に任せていたようです。
ましてや、光源氏の母、桐壺更衣は病弱です。
なので光源氏は、「大弐の乳母」に乳をもらっていたんですね。
ちなみに、後に出てくる「惟光(これみつ)」という家来は、
大弐の乳母の実子なので、光源氏とは乳兄弟ってことになるんです。
(σ・∀・)σ
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2.「大弐の乳母のわづらひて」とは?
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「名詞」+「の」+「用言」の場合の「の」は、
主格の格助詞です。
ヽ(゚◇゚ )ノ
【自動詞:ハ行四段活用】
①苦しむ。悩む。困惑する
②病気になる。病む
③煩わしい思いをする。苦労する
*「学研全訳古語辞典(Weblio辞書)」より
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3.なぜ乳母は「尼」になったのか…?
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上の流れから、
「尼(出家して仏門に入った女性)」とつながるには、
おそらく①や③の「煩ふ」の意を思い浮かべる人も多いでしょう。
これは、帚木の「雨夜の品定め」の中の
左馬頭の話にもあった、
当時の女性の仏教観とも関わってきます。
(※詳しくは「帚木120-2~平安時代の仏教思想」参照)
昔の女性は、男女の煩いのために尼になる例がかなりたくさんあります。
Σ(・ω・ノ)ノ!
今回も、そんなふうにも捉えられますが…
しかし、この直後に、
「とぶらひて」という文脈が来ます。
(; ・`д・´)
【他動詞:ハ行四段活用】
①尋ねる。問う
②訪れる。訪ねる。訪問する
③慰問する。見舞う
④探し求める
⑤追善供養する。冥福を祈る
*「学研全訳古語辞典(Weblio辞書)」より
もちろん、煩うことがあって尼となった乳母を慰問する、という意味にも取れます。
ですが…
大弐の乳母のいたくわづらひて尼になりにける、とぶらはむとて、
という流れからすると、
「わづらひ」⇒「病気になる」
と解釈するほうが、自然ですよね。
Σ(・ω・ノ)ノ!
ここで古文常識☆
実は…
当時の仏教思想では、
重い病気にかかった時、
その病を軽減するために
出家することも多かったようです。
─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ
解答
重い病気にかかってしまったために、その病を軽減しようとして仏道に救済を求めたから。