【空蝉95-2】なぜ空蝉に敬語を使っているのか?
源氏物語イラスト訳のあいです
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今回の源氏物語
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小君、かしこに行きたれば、姉君待ちつけて、いみじくのたまふ。
訳と内容が不明確の人は、まずイラスト訳からどうぞ☆
空蝉95のイラスト訳はこちら
では今日も、一気に行ってみましょぉ~♪
ヽ(○・▽・○)ノ゙
これまでのあらすじ
天皇(桐壺帝)の御子として生まれ、才能・容姿ともにすぐれていたにもかかわらず、亡母(桐壺更衣)の身分の低さにより臣籍降下して源氏姓を賜った光源氏。
ただ今、「3.空蝉(うつせみ)」の巻です。光源氏は、紀伊守邸での方違えの際、そこで寝泊まりしていた伊予介(紀伊守の父)の若妻(空蝉)と強引に契りを結びます。中流階級で凜(りん)とした空蝉に心惹かれた光源氏は、弟の小君を手なずけ、逢瀬の機会を執拗に求め続けます。とうとう光源氏は、紀伊守の屋敷に忍び込み、空蝉と軒端荻(のきばのおぎ・空蝉の継子)のいる寝所へ忍び込みますが、空蝉はこっそり寝所から抜け出てしまい、軒端荻と夜を共にします。その後光源氏は、空蝉の脱ぎ捨てた小袿を持って、小君とともに二条院へ帰宅し、空蝉へ宛てた和歌を詠みます。
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☆ 入試頻出! 敬語の種類と敬意方向 ☆
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小君、かしこに行きたれば、姉君待ちつけて、いみじくのたまふ。
問)傍線部の説明として最も適当なものを、次の中から1つ選べ。
1.「言ふ」の尊敬語。作者から光源氏への敬意を表す。
2.「言ふ」の謙譲語。作者から光源氏への敬意を表す。
3.「言ふ」の丁寧語。小君から空蝉への敬意を表す。
4.「言ふ」の尊敬語。作者から空蝉への敬意を表す。
5.「言ふ」の謙譲語。小君から空蝉への敬意を表す。
「のたまふ」は、
敬語の中でも、受験生なら当然覚えておくべきものですよね。
(▰˘◡˘▰)
【他動詞:ハ行四段活用】
①おっしゃる(「言ふ」の尊敬)
②申し聞かせる。言い聞かせる
*「学研全訳古語辞典(Weblio辞書)」より
この②の意味は、
上位の人との対話の中で、話し手が身内の者や目下の者に上位の人の言葉を「言い聞かせる」意で用いるものです。
つまり…
たとえば、こんなふうに、空蝉が上の立場の人の言葉を「申し伝える」場合。
ヽ(゚◇゚ )ノ
この場合は、
上の立場の人に対する謙譲的な用法です。
でも、今回の「のたまふ」は、
単に、空蝉が小君に言葉を発しているだけなので、
①の「言ふ」の尊敬語となります。
でも、ここで……
『源氏物語』をかじっているあなたなら、
少し戸惑いませんか?
あれ?
空蝉に尊敬語を使ってる?
(-_\)(/_-)三( ゚Д゚)
小君、かしこに行きたれば、姉君待ちつけて、いみじくのたまふ。
姉君(空蝉)は、受領の後妻――
中流階級なので、敬語は用いない、というのが、
『源氏物語』の基本姿勢です。
ですが、今回の箇所も含め、
空蝉にも何度か、尊敬語が用いられています。
たとえば、【帚木428】
「かかる御文見るべき人もなし、と聞こえよ」とのたまへば、
光源氏からの手紙をむげに断った空蝉の言葉☆
この前後にも、空蝉に尊敬語がちらほら用いられています。
また、この後に出てくる「西の君(軒端荻)」にも、
西の君も、もの恥づかしき心地してわたりたまひにけり。
伊予介の連れ子であり、
当然中流階級の軒端荻に対しても、
尊敬語が用いられていますね~!
…(゚ロ゚;))((;゚ロ゚)…
これ……、
『新日本古典文学大系』(岩波書店)では、
「敬語になっているのはやや不審」などと記されています。
けれども――
上の3箇所の、中流階級に敬語が使われている場面から考えてみると、
もしかすると、作者(紫式部)は、
光源氏に寵愛された女性に
敬語を用いたのではないか?
…という仮説が成り立ちませんか?
!Σ('◇'*)
光源氏には、身分からも、人間性からも
『源氏物語』では敬語が用いられる存在です。
当時の身分制社会において、
中流階級の空蝉や小君、軒端荻に対しては
地の文では敬語を用いませんが、
光源氏に寵愛された姫君
という人間性に対して、敬語が用いられている
…と考えると、説明がうまくいくと思いませんか?
(☆∀☆)
受験に出る、出ない、無駄な知識……
私たちの知的好奇心を妨げる誘惑のメソッドが非常に多い世の中です。
でも、とある英才教育の小学校では
受験に出ないような暗記訓練を、ゲーム感覚、知能訓練として
取り入れているそうです。
いずれにせよ、敬語は、
最終的には文法の基本法則に従って
判別してくださいねっ♪
(o^-')b
解答……4