蒼きヤマトも、今回で12回目。
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第6回
その形状にこだわった各部分析からでも、早くも6回目。
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第11回
そもそもなんでこれを延々とやってるかって言うと、ヤマトの原初形態だとか、あるいは設定のとおりに再現された立体を見たことないから、見てみたいなあと思って。
「何言ってんの? DVD付属キットが出たじゃん!
あれ以上の立体なんて、出るはずないよ」
……たしかに製品としては、あれ以上は望むべくもない。
「そのキットを生かし切った一品ものなら、
どろぼうひげさんが究極作例を、
そろそろ完成させるじゃん!
ディテールアップだけでなく、電飾までしてるんだから、アレで打ち止め。
今後もあれ以上のものは出てこないでしょ」
……たしかに現実を見れば、あれ以上はあり得ないとは思う。
ではあるんだが、初期設定や図面どおりのヤマトじゃない。
さて、ではどうして、DVDヤマトのキットも、どろぼうひげさんの作例も、初期設定や図面どおりではなかったのか?
理由は様々。
1.そもそも、そういうオーダーではなかった
DVDヤマトの原点は、庵野監督が真鍋正一氏に依頼した、1作目テレビシリーズ劇中のイメージ。
だから、その前のヤマトにはなるはずがなかった。
2.知らないことは造形に反映させようがない
設定にも変遷ごとに食い違いがあり、全てを同時に反映させることは不可能。
さらにその細かな設定だって、認知されてなければ造形に反映されるはずがない。
3.意義がない
一つにはサイズとの兼ね合い。
設定にある全てを盛り込んでも、肉眼で確かめられなければ意味がない。
ということで見送られた箇所がいくつかあるのを知っている。
もう一つは、設定どおりにやるのが不可能か、やることに意味がない=やってもサマにならない場合。
というわけで(相変わらず前置きが長いが)、今回は設定どおりにやるとサマにならない部分として、どの立体化でもことごとく見送られている、砲台、つまり副砲やパルスレーザー(機銃)群の土台の部分について。
まず細かな部分から見ていくと、
煙突ミサイル直下の楕円部分。
図面だとこの緑の円内部分。
↓こちらは透視図。
↓設定資料
↓劇中本編登場画像
ゼンマイヤマト(1975年発売)に続いた、バンダイのプラモ第2弾、通称イメージモデル(1977年発売)でも、
それと一部部品共用の1/500コズミックモデル(1978年発売)でも、
または、メカニックモデルとして1978年に発売された1/700とか、
リバティプラネットの1メートルでも、
例の船舶模型の図面でも、
↑貴重な図面?なので、目印の○はつけません。
ノイズが多くてすみません。
この部分は、楕円に井形(シャープマーク=♯)の窓枠が走ってる。
……あのー、もう充分にわかりましたけど?
だったらそういうことで、いいんじゃないですか?
ええ、つい10年ほど前までは、それでよかったんですよ。
ですが、ヤマト各部の形状にも流行廃り(はやりすたり)みたいなもんがありまして、PSゲーム用宮武リニューアル版(描いたのは1998年)以降は、ここは俵(たわら)型の救命カプセルになってしまったんです。
2001年発売のポピニカ魂↓でも、
2007年発売の1/350のプラモでも、
該当箇所は、ゴキブリの卵(あえて画像は載せません)みたいな形になっている。
あまりにも突然の設定変更に加え、妙に足並みがそろっているので、それはなぜなのか、松本零士先生のご意向なのだろうかと、直接ご本人に訊いてみた。(ポピニカ魂発売直後の、2001年頃)
もちろんこれを訊くのが本旨ではなく、リバティ以外の某社から1メートルヤマトをキットで商品化する企画があったため。
そしたら松本先生は、「ここは砲塔だよ」とおっしゃる。
納得いかない顔つきの私に、「ヤマトのことは、作った自分が一番知ってるからね」とのたまった。
……おかしいなあ……。
松本先生ご自身が、自分のマンガにもその形で描き込んでるんだけどなあ……。
↑初めて全景を描いたこのコマから、いきなりこれ。
↓その拡大部分。
これはバンダイの最初のヤマトプラモ(ゼンマイ版)にも再現され、
↑左上が製品。下の大枠はプロトタイプ。どちらも横に張り出した筒状の部品がある。
劇中でもたまに確認できる。
さて、楕円バルジではなく、船体の真横に伸びる管状に描かれた設定画が生まれた経緯は、たぶん以下のとおり。
↓順番に説明すると、まずは加藤直之の描いたこれがありまして、
↓該当箇所をアップにしてみると、楕円に♯の窓枠(=他の設定資料どおり)のつもりで描かれているのだが、
↓どの転載資料でも、ここがのきなみかすれていて、
↑外枠の赤、内部を走る縦線の青は読み取られたものの、緑の横枠線が読み取られずに、
(このことから、カラー図版は、元になった線図を描いた加藤直之本人によるものではない可能性が高い)
↓この、凹凸が逆転したカラー図版が完成すると、
そのまま、いくつかの画や模型に引き継がれた。
↑「ヤマト大図鑑」の見開き口絵の部分拡大。だけどこれも、加藤直之が描いてるはずなんだけどなあ……。
それにしても、該当部分は本当は展望窓だと思われるが、なぜ松本零士は、展望窓でも、(自分でマンガに描いた)横棒張り出し型でもなく、砲塔だと主張するのか?
答えは、最初期に描いた原図にあった。
↓ドーム型艦長室、第一艦橋の5つ窓、第二艦橋の下すぼまりの正面顔等、興味深い特長が確認できる。
↓後にアルカディア号に継承される、マストの掲揚旗。
で、これが問題の箇所。
たしかに松本零士本人としては、他の砲塔と区別して描いた様子はない。
しかし加藤直之がここを別の形状と捉えて、楕円に♯が誕生した。
なるほど、松本先生の主張は正しかったようです。
「男には、負ける(=聞き入れてもらえない)とわかっていても、主張しなければならない時がある」
ってことでしょうかね。
わー、ここだけで終わっちゃったよ!
次回は砲台の後編、語り終えなかったら〈その2〉とします。
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