今回で8回目となる、この「蒼きヤマトへの憧憬」シリーズは、基本的に初期設定のヤマト(「蒼きヤマト」と勝手に命名)再現を目指す目的で書いていますが、今回の第一艦橋に関しては、初期版はさらりと流して、最終決定デザインに重点を置いて書きたいと思います。
初期設定版
窓枠が決定稿の5つではなく、4つでした。
以上。
……では、さすがに寂しいので、窓枠4つのままの実例を紹介しておくと、
まずは資料や図面。
↑線画(上)に着彩しただけだから(下左右)、窓の数が同じなのは当たり前。
↑上面から見たとき、前方に向かって艦橋がすぼまっている(上の図の赤線)のは、窓の数が4つだからで、本編本設定では5つになって、艦橋の形状も幅増しされた方形になる。
本編や製品での第一艦橋4つ窓は枚挙にいとまがないし、単なる間違い探しにしかならないので、割愛。
さて、初期設定の第一艦橋で、形状的に面白くて目を惹くのが、横に張り出した(レモン絞り器の中央部分を上下ひっくり返したような)パーツ=赤い部分(と、その周囲を取り囲んでいる方形プレート=青い部分)である。
↑その形状が一番よくわかる、初期設定の俯瞰気味パース図。
↓艦長室の時にもあてにならなかったが、この張り出したパーツに関しても、他の図面や設定画とはやはり辻褄が合わない、正面図(上)と後面図(下)。
まあ、忘れずに描き込んであるだけでも、よしとするしかないね。
↓設定用側面図にも、外観図、内部構造図を問わず、このパーツがきちんと描き込まれている。
※↑この上下の側面図の塗り分けは、自説補強のため都合よく行っており、必ずしも原図に忠実でもなく、また塗り分けが適切とは限りませんので、ご注意ください。↓
流線形カプセル構造の艦長室に関しては、着眼点の鋭さと確かさを見せた、ひあおきらのマンガ版。
しかしこの張り出し部分に関しては、該当する絵柄はただ一コマ、これのみ。
でもまあ、他には誰も描いてないから、えらいといえばえらい。
画面登場最終確定版
↓初期設定図面ではのっぺりしていた第一艦橋側面(パープルの部分)が、
↓最終設定では、色々とディテールが加わっている。
個々のディテールは、単なるデザイン的な飾りなのか、それとも機能や役目を割り当てられているのか?
その答えを探っていこう。
新規ディテールのいくつかは、第一艦橋内部設定との兼ね合いで加えられたことは、意外と知られていない。
そこでまずは、第一艦橋の室内の様子をながめてみると、
↓実際に使用された背景原図
↓全景を倍寸効果で書き上げたもの
室内と外観の関係がわかりやすいように、色分けしてみました。
まず、前方両肩の丸窓(赤で示した部分)
この両肩の丸窓は、わかってる人は必ず描き込んでいる。
↓松本零士も自作マンガの中で。
↓加藤直之のイラストでも。
↓「さらば」以降、心を入れ替えた(笑)ひおあきらも。
次は、艦長席両脇のフロアに開いた丸窓(水色で示した部分)
まずは何より、ここに窓があるってスゴイことですよね!
これはたとえば、「キャプテンハーロック」の
アルカディア号の展望床窓とか、
あるいは東京タワー大展望台1階の、足下を覗ける窓みたいに、
床下が見下ろせるってことですよね。
高所恐怖症の人には、耐えられないんじゃ……
(もっともヤマトの場合、この下は船体が待ち受けていて、奈落の宇宙空間が見下ろせるわけではありませんが)
で、この床穴型の丸窓ですけど、ちゃんと描き込まれてるんですよ。
設定資料にも。
本編劇中にも。
次は黄緑の丸窓ですが……
外観に反映した絵は、1点も見つかりませんでした。
なので省略。
最後は、後方両脇のくの字型二連窓(=黄色で示した部分)ですが、
まずはその部分の拡大図を見てみると、
こちらは左舷ですが、右舷も対称形で基本的には同じ形です。
BとCは窓ですが、Aはガラスがなく、厚みのある壁面になっていて、開閉用の操作盤らしきもの(矢印で示した箇所)が近くにあります。
ということは、これは窓ではなく緊急脱出用のエアロックで、扉はその形から判断するに、フスマとか障子みたいに横にスライドして(壁部分は艦の前方へと雨戸のように)収納されるのではないでしょうか。
そうなると、Aは外から見てガラスが素通しで艦橋内部が見通せるのもおかしいし、また外観から、この裏にあたる開放口が顔をのぞかせているのもヘンだと思います。
いくら緊急脱出口とは言え、いきなり真空の宇宙空間に開放されたら、艦橋内の空気は一気に抜けて、全員窒息してしまいます。
なので、第一艦橋から退避してこのAの扉から出たクルーは、艦橋両脇に設置された一時退避ブロックに逃げるのではないでしょうか。
↓というわけで、赤枠内は緊急退避ブロックと推測
資料や劇中の画によっては、二連窓の前方脇の外壁に、(ためらい傷のように)並んでいる方形の凹み(下の設定画2点に確認されるもの)は、厳密に考証すれば不適切ということになります。
↓黄色が窓枠の位置、赤枠が緊急退避ブロックを示します。
「ふん、そんなこと言ってんのはお前だけで、上の公式設定画だって、外側に三つ「く」の字窓を並べてんじゃん!」
「そうだそうだ! 『さらば』の松本零士版マンガだって、縦窓は3つだぞ」
↑小さくてよくわからないが、
↓拡大したら、3つでした。
「そうそう。それに、この前再販された1/700のバンダイキットだって、
その位置に3つ縦窓がモールドされてるぞ!」
という、そこのあなた!
(↑いや、そんなこと言う人はいないだろうけど、いちおう話の都合上)
いえいえ、縦窓は2つであるべきってことに気がついてる人は、他にもいるんですよ。
これをご覧ください。
↑やはり「さらば」の「冒険王」連載時に、松本零士が描き貯めしたうちの一点ですが、
↓例の部分を拡大してみると、
印刷のつぶれを補正したので、自説に都合よく直したかもしれませんが、3つでないことだけは確かです。
まあ、松本零士は、描く画ごとに細部が異なるアバウトさなので、この一点をもってして、「わかってる」と断定はできませんが、だったらこれは?
↑「復活篇」(2009)のために、小林誠が描き直した設定画。
↓その該当箇所のアップ。
これに伴い、本編に使用されたCGモデルも、オレンジに光る縦窓が2つ並ぶデザインになっている。
さて、このように第一艦橋は、作図的には、つまり平面デザイン的には相当に煮詰められているのに、模型でこれを満足に立体化したものが見あたらない。
リバティプラネットの1メートルは、この部分の接写資料がなく、
前からの写真で、窓枠が3つと推測できるし、
究極の決定版、バンダイのDVD付属(新)1/700でも、
どうやら窓枠は2つらしいが、パーツの合わせ目の箇所でわかりにくく、しかも直下の水平翼がつかえて、床下の丸窓の視界が完全に遮られてしまっていて、これでは床窓を設置した意味がない。
↑部品構成の関係で現状になっているが、本来水平翼は、もう少し前についているはず。
とまあ、そんなこんなで、究極のヤマト立体を追求する作業というのは、DVDキットで打ち止め、というわけではないというお話でした。
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