初めての方は、このブログを通して貫く基本概念である主観と客観との違いについての説明をしている以下の記事をご覧ください。

 

 主観と客観

 客観についての補足

 外国人には思い遣りがガチでないという事実

 優しさ(主観的)と思いやり(客観的)

 二種類の「正しさ」

 日本の常識は世界の非常識、日本の非常識は世界の常識

 

 エマニュエル・マクロンが39歳の若さで史上最年少のフランス大統領に選出された。当初から最後まで一貫して「極右」とラベルを貼られてマスコミから叩かれたルペン候補は破れた。アメリカの大統領選挙やブレグジット(英国のEU脱退に関する国民投票)のケースと比べて、結果は当初よりもより鮮明であった。アメリカの先回の大統領選挙では、マスメディアが叩けば叩くほどトランプ候補の支持が上がるという従来にない様相を呈したりしていたが、今回のフランス大統領選挙は従来通りの様相だったといえる。ただはっきりと違うのは、一定の数の国民が、明らかにEUと移民の従来のような受け入れ体制にNOを表明したという点であろう。

 

 フランス人を何人か知る身として言えるのは、彼らは日本人などが想像できるよりもはるかに人種の違いについてシビアであるということである。つまりは、人種による差別をはっきりとする人々である。これは日本人はよくわからない感覚である。確かに、日本人にも人種により区別をする人もいるが、そこにはなんらかの「理由」があったりする。その理由は、現に敵意をむき出しにされたりした経験であったり、あるいはなんらかの警戒心を抱かせられる経験だったりする。そうした理由なしに、いきなり人種で区別する人もいるにはいるであろうが、筆者の肌感覚からすると、そういう人はフランス人や他の国民に比べると圧倒的に数は少ない。もちろん、いることはいるが。

 

 今回は、EUを抜けることに対する恐怖をマスコミが煽りに煽ったことが功を奏した結果となったし、またルペン候補へのネガティブキャンペーンが功を奏したとも言えるが、だからと言ってフランス人が現在の状況に満足しているわけではない。ルペン候補に投票していない人の中にも、EUの規則に縛られることで生じる経済的に理不尽な状況に不満を抱く人は多い。具体的にいうと、自国通貨を持たないことで生じる金融政策の不在、EUの規則により国債の発行すらままならないという財政政策の制限などであるが。

 

 フランスでの移民問題は誠に深刻である。これはフランスに限りらず欧州全体に言えることであるが、住民のフラストレーションは既にピークに達しており、これが大統領選挙に直接に反映されなかったとはいえ解消したわけでは全くなく、むしろ今後、こうした問題は膨らんでいくものと予想される。

 

 今後の展開に注目したい。

 

 今回もお読みいただき、ありがとうございます。


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