ポーランドの首都ワルシャワで開かれている「第19回ショパン国際ピアノ・コンクール」の3次予選の結果が16日発表され、東京都出身の桑原志織さん(30)、愛知県大府市出身の進藤実優さん(23)が本選進出を決めた。18〜20日に実施される本選は11人のピアニストで争われ、最終審査結果は20日深夜(日本時間21日朝)に判明する予定。ー 日経新聞

 

ファイナリストは下記の11名である。

  • ピョートル・アレクセヴィチ Piotr Alexewicz (ポーランド)
  • ケヴィン・チェン Kevin Chen (カナダ)
  • ダヴィッド・フリクリ David Khrikuli (ジョージア)
  • 桑原志織(日本)
  • リ・ティエンヨウ Tianyou Li (中国)
  • エリック・ルー Eric Lu (アメリカ)
  • リュウ・ティアンヤオ Tianyao Lyu (中国)
  • ヴィンセント・オン Vincent Ong (マレーシア)
  • 進藤実優(日本)
  • ワン・ズートン Zitong Wang (中国)
  • ウィリアム・ヤン William Yang (アメリカ)

中国勢が大きく減り3名、日本2名、アメリカ2名、カナダ1名、マレーシア1名、ポーランド1名、ジョージア1名となった。前回同様にマレーシアやジョージアなど、あまり入賞者が出ていない国の才能を見出すために2名程度、入賞者が少ない国の出場者からファイナルに残しているのではないかと勘繰っている。

 

私が個人的に気になっていたピアニスト9名のうち6人が通過となった。ただ韓国のイ兄弟、牛田智大氏がファイナルに残らなかったのが残念だ。ただコンクールの結果は、あくまで審査員の好みもあるので、聴衆が気に入ったのであれば、応援すればいい話だ。コンクールは順位付けよりも、若き才能を世に見せるという側面に重きを置くべきだと思う。

 

そんなことをいいながらもやはり優勝者は、ショパンコンクールの歴史に名を刻むので、やはり気になってしまう。このままケヴィン・チェン氏が優勝しちゃうのかなって思っているが、桑原志織氏も日本人初の優勝者になる風格が備わっていると思うが、ファイナルの演奏に期待したい。予選で素晴らしい演奏だった進藤実優氏のコンチェルトも楽しみである。体調不良のエリック・ルー氏は、コンディションがやや心配である。

 

それにしても、ショパンらしい演奏か否かというと(特にマズルカ、ポロネーズ)、これは様々な見解があるが、今回のコンクールは従前にもまして、非常にレベルが高いと思う。ファイナルに残らなかったピアニストにも大勢の名演奏家がいた。ぜひ多くの人にお気に入りのピアニストを見つけてほしいものだ。

ポーランドの首都ワルシャワで開催中の「第19回ショパン国際ピアノ・コンクール」の2次予選結果が12日発表され、日本人3人を含む計20人が3次予選に進んだ。国別では中国が最多の6人、地元ポーランドが3人で日本と並び2番目に多かった。日本人3人は福島県いわき市出身の牛田智大さん(25)と東京都出身の桑原志織さん(30)、愛知県大府市出身の進藤実優さん(23)。ほかに米国やカナダ、韓国、マレーシア、ジョージアのピアニストが進出した。ー 産経新聞

 

ショパンコンクール二次予選が終了し、結果が発表された。一次予選では85人いたが、三次予選への出場者は20人にまで絞り込まれた。日本勢は13人から二次予選で一気に5人にまで減ったが、三次には5人が出場することとなった。それにしても、前回大会で推していたハオ・ラオが消えてしまったのが残念だ。そしてカイミン・チャンも名前が消えた。演奏自体は悪くないと思うが、相対評価でもあるので仕方がない。シビアな世界だ。

 

出場者の国籍をみると、優遇枠のポーランド勢を除くと、ジョージアの1名を除き、北米とアジア勢で占められており、地域バランスがかなり偏っている。聴いていると、やはり中国勢などは相当ストイックに仕上げてきたなという印象だが、欧州勢は難所で技術的な不安定さを感じる箇所もあり、コンクールにかける意気込みが違うのだろうと思う。

 

それにしてもコンクールは回を重ねるごとにレベルが上がっているように思う。音楽教育が普及して技巧がコモディティ化してきており、さらにYoutubeで名演も聴けるので、洗練させやすい環境のだろうと思う。今回のコンクールでは、名のある国際ピアノコンクールで上位入賞しており、すでにコンサートピアニストとして活躍している人も散見され、第一線の若手プロがしのぎを削っており、審査員が何を重視するかによって、誰が入賞してもおかしくはないと思う。前回に比べると、地域バランスは考慮されておらず(欧州勢は開催国ポーランド以外だとジョージアしか残っていない;ジョージアを欧州と区分するかはおいておいて)、正統派でありつつ、一定の独自性と個性を反映させたような演奏が評価されているように思われるが、これは前回大会で推測した通りだ。

 

三次とファイナルの演奏によるし、審査員が何を重視するかにもよるが、ケヴィン・チェン氏は入賞候補ではないかと思う。あのテンポで音楽的に破綻せずに、密度の濃い演奏をこなすなど常人ではない。驚嘆の才能だ。そして、桑原志織氏の演奏は円熟しており、素晴らしい風合いの演奏で、もはや大御所感のある安定性。イ・ヒョ氏とイ・ヒョク氏は兄弟だが、2005年に兄弟で第3位入賞のイム・ドンヒョク氏、イム・ドンミン氏の兄弟のように、兄弟入賞もあり得ると思う。それにしても兄弟でショパンコンクールの三次にまで残るなんて、どういう生育環境だったらそうなれるのだろう。方向性は異なるが、弟さんはまだ若く溌溂さがあるが、お兄さんは落ちついて音楽を見つめる達観さがある。入賞という意味ではお兄さんのイ・ヒョクが一枚上手だろうか。

 

それにしてもジョージアのダヴィド・フリクリ氏の音楽性は傑出していると思う;個人的には入賞候補に挙げたい。そして、中国のワン・ズートン氏は、一次から注目しているが、繊細な演奏と感性の豊かさが心地よい;技巧や完成度が三次でどうなるかだろうか。個人的に進藤実優は前回大会はさほどだったのだが、今回の二次はとにかく名演だった。ポーランド勢だと、ピオトル・アレクセヴィチの氏の演奏が色彩豊かで落ち着いていて好き。

 

ただYoutubeの再現された音と、現場の音には乖離があり、現場でも座席の位置で音響に差があるので、音楽の評価は難しい。コンテスタントたち全員に拍手を送りたい。三次の演奏に大いに期待である。

 

■三次予選出場者(20名)

★はブログ主が今回コンクールで特に気になったピアニスト(入賞候補と言っているわけではない)

  • Piotr Alexewicz ピオトル・アレクセヴィチ(ポーランド)
  • Kevin Chen ケヴィン・チェン(カナダ)
  • Yang (Jack) Gao ガオ・ヤン(ジャック)(中国)
  • Eric Guo エリック・グオ(カナダ)
  • David Khrikuli ダヴィド・フリクリ(ジョージア)
  • Shiori Kuwahara 桑原志織(日本)
  • Hyo Lee イ・ヒョ(韓国)
  • Hyuk Lee イ・ヒョク(韓国)
  • Tianyou Li リ・ティエンヨウ(中国)
  • Xiaoxuan Li リ・ シャオシュエン(中国)
  • Eric Lu エリック・ルー(アメリカ)
  • Tianyao Lyu リュー・ティエンヤオ(中国)
  • Vincent Ong ヴィンセント・オン(マレーシア)
  • Piotr Pawlak ピオトル・パヴラック(ポーランド)
  • Yehuda Prokopowicz イェフダ・プロコポヴィチ(ポーランド)
  • Miyu Shindo 進藤実優(日本)
  • Tomoharu Ushida 牛田智大(日本)
  • Zitong Wang ワン・ズートン(中国)
  • Yifan Wu ウー・イーファン(中国)
  • William Yang ウィリアム・ヤン(アメリカ)

仕事が忙しくブログ執筆が遅くなったが、第19回ショパン国際ピアノコンクール(ワルシャワ)の1次予選の結果が7日に発表された。2次予選進出コンテスタントは40人。一次から半分以上がバッサリと落とされたが、日本人も13人から半分を大きく超えて8人落とされて、二次予選は5人のみ。中国が最多で14人、地元ポーランドからは4人が進出、韓国・アメリカが各3人、カナダ・イタリアが2人。中国だけで35%、日中韓で55%を占めるので、半数が東アジア勢である。

 

日本人通過者は次の通り。健闘を祈りたい。

Shiori Kuwahara 桑原 志織(29)
Yumeka Nakagawa 中川 優芽花(24)
Miyu Shindo 進藤 実優(23)
Tomoharu Ushida 牛田 智大(25)
Miki Yamagata 山縣 美季(23)

 

それにしてもリーズ国際ピアノコンクール第2位・浜松国際ピアノコンクール第3位の小林海都氏が落選。私が好きな演奏の山﨑亮汰氏(ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位)も落選だったのが残念だった。正直、山﨑亮汰氏の演奏は、誠実で実直過ぎて、個性という点や、ショパン的な詩情と憂いという点が弱かったのだろうと思う。ベトナムのグエン・ヴィエット・チュン氏は前回のコンクールで好きな演奏で注目し、サントリーホールのコンサートにも訪問したが(その時の記事)、今回は一次で落選してしまった。個人的には、派手さがないが、真面目で素朴な演奏が好きだが、やはり出場者が多い大規模な国際的なコンクールだと、埋没してしまう。

 

聴いていて思うが、音楽教育が普及し、超絶技巧がコモディティ化している中で、日本勢はもう少しエッジの効いた個性がないと、審査員に訴求できないのだと思う。今回の中国勢の演奏のレベルの高さは想像以上で、安定した技巧と演奏に、個性というスパイスをまぶして存在感を放っていた(ただ果たしてショパンコンクールの入賞者として選定されるかどうかはまた別問題なのではあるが)。正直、日本勢で安定的で風格があるのは特に牛田氏と桑原氏であるが、ケヴィン・チェンのような異次元の天才肌の演奏との相対評価で、二次三次でどう評価がされていくのか気になるところだ。

 

話は変わるが、前回に続き、ヤマハが不調で、今回もヤマハピアノを選択したコンテスタントたちが次々に落選。二次ではヤマハ使用者は1名だけ。60%がスタインウェイで安定的だが、次ぐのがシゲルカワイで27.5%なのが意外。世界シェアではカワイはヤマハの後塵を拝するが、カワイピアノの上級モデルのシゲルカワイ(SK ‒EX)は躍進が止まらないのは面白い傾向だ。次ぐのがファツィオリで、ベヒシュタインは一次予選で姿を消した。やはりコンクールでは派手に豊かに響くスタインウェイが有利なのだと思う。

 

素晴らしい才能が集っているので、ぜひ推しのピアニストを見つけてほしい。二次予選でも全コンテスタントの健闘を祈りたい。

世界的ピアニストを多く輩出してきたことで知られる「第19回ショパン国際ピアノ・コンクール」が2日、ポーランドの首都ワルシャワで開幕した。予備審査を通過した世界各国・地域の84人のピアニストが参加予定で、このうち日本人は中国に次いで多い13人に上った。ー 日経新聞

 

さて、5年に一度のショパンコンクールがいよいよ開幕である。前回は反田恭平が第2位(日本人最高位)、小林愛実が第4位入賞で話題となった(以下、敬称略)。ショパンコンクールは世界三大ピアノコンクールに数えられ、歴代の上位入賞者にはアルゲリッチ、ポリーニ、ブーニン、アシュケナージ、ツィマーマン、ケヴィン・ケナー、内田光子など錚々たる面々が並ぶ。

 

YoutubeでLIVE配信しているので、予選から本選までリアルタイムで楽しめるので、ぜひ視聴して推しのピアニストを見つけてほしい。今回は予選から全員の演奏を聴こうと思っていたのだが、やはり仕事との関係もあり、さすがにそこまで時間が取れないので、第3次ぐらいから全員チェックできればと思う(;^ω^) とりあえず、気になるピアニストをピックアップして聞いておこうと思う。ちなみに、今回からベヒシュタインが使用ピアノとして半世紀ぶりに追加されて、スタインウェイ、ヤマハ、シゲルカワイ、ファツィオリ、ベヒシュタインから選べるようになった。

 

予備予選段階で、世界から642名のピアニストが応募があり、選考委員会による書類&音源審査を通過した28の国と地域の171名が予備予選に選ばれた。最も多いのは中国の67名で、次いで日本24名、韓国23名と続く(二重国籍を含む)。開催国のポーランドは、10名が出場。

 

予備予選でさらに絞り込まれ66名が選出され、これに19名の予備予選免除者とともに一次予選へと進んでいる。一次予選出場者の国別の内訳を見ると、最も多かったのは中国の28名、次いで日本・ポーランドが各13名、アメリカが5名、カナダが5名、韓国が4名と続く。韓国勢がかなり絞り込まれた印象だ。アメリカ・カナダの出場者もアジア系が多いので、それを考えると、半数以上がアジア系となっており、特に中国勢の台頭が著しい。

 

それにしても、今回の出場者には相当な実力者が含まれており、混戦が予想される。あくまでコンクールは水物で、審査員が変われば結果も変わる。何を重視するかというコンクールとしての意思表示である。別にコンクールの結果がすべてではない。ロンティボー優勝者の亀井聖矢は、今回は予備予選が通過できなかったが、エリザベート王妃国際コンクールのほうで第5位に入賞しているし、前回の予備予選で落選した久末 航は、エリザベート王妃国際コンクールでは第2位だった。

 

さて、今回のコンクールに相当な実力者が含まれていると書いたが、まずは、エリック・ルー(米国)だ。第17回ショパン国際ピアノコンクールで第4位に入賞しており、さらにリーズ国際ピアノコンクールでは優勝している。次に、ケヴィン・チェン(カナダ)。ジュネーブ国際ピアノコンクール及びルービンシュタイン国際ピアノコンクールの優勝者である。そして、パデレフスキ国際ピアノコンクール及びロンティボー国際ピアノコンクールの優勝者で、前回大会のファイナリストのイ・ヒョク(韓国)。

 

欧州勢だと、ヨナス・アウミラー(ドイツ)は、ブラームスコンクール優勝、仙台国際ピアノコンクール第2位、浜松国際ピアノコンクール第2位の実力者。ドイツ人はショパンコンクールでは上位入賞歴がないため、初の入賞が期待される。アルベルト・フェッロ(イタリア)は、ブゾーニ国際ピアノコンクール第2位、エリザベート王妃国際ピアノ・コンクールで第6位入賞。

 

日本勢も実力者が並ぶ。牛田智大は浜松国際ピアノコンクール第2位だが、すでにコンサートピアニストとして人気が高い。前回大会では第2次で落選したが、今回はコンサートホールの響きも把握しており、結果が期待される。桑原志織はルービンシュタインとブゾーニ国際ピアノコンクールにおいてそれぞれ第2位入賞、エリザベート王妃国際コンクールでも入賞(ファイナリスト)。山﨑亮汰は、ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位、ケアロヒ国際コンクールとクーパー国際コンクールでは優勝している。小林海都は、リーズ国際ピアノコンクール第2位(日本人最高位)、浜松国際ピアノコンクール第3位。

 

当然、コンクールは先述の通り水物であり、様々な要因により入賞が決まるので、いままでの経歴など参考情報にしかならないし、ラファウ・ブレハッチのように驚嘆する新星のような才能が見つかるかもしれない。いずれにしてもコンテスタントたち全員の健闘を願いたい。

 

 

トランプ大統領のワンマンのニュースを見て、米国大統領に興味を持ったので、本書を読んでみた。2016年発売のためオバマ大統領で終わっているが、アメリカ建国から歴代大統領についてA~Eの5段階で格付けしている。それにしても現在のトランプ大統領が第47代であり、1789年就任のワシントン大統領から数えて人数だと45人しかいないことに、日本人としては驚かされる。日本の総理大臣は、1885年就任の伊藤博文を初代に、現在の石破首相が第103代である。日本の総理がコロコロ変わり過ぎなのであるが。

 

歴代大統領についての略歴や評価に加えて、ファーストレディーについても言及しており、情報量が豊富。大統領について振り返ることは、アメリカ史を振り返ることと同義であり、米国史を大統領の切り口で振り返れて興味深かった。

 

それにしても一番勉強になったのは米国大統領制の原型は欧州の絶対王政にあるのだという。欧州では、国王は行政権を支配し、立法府の議会とは対立していた。この独立した行政権と立法権というのが、米国の政治制度に取り込まれたのだという(当時、独立を支援していたのは革命前のフランスである)。国王は血統によって王位を継承し、議会の信任とは関係がない。米国大統領も、議会の信任とは無関係である。よって議会は大統領を辞めさせる権能を持たないし、逆に大統領は議会の解散権も持たない。閣僚も、議会の政党に依存しないが、これは閣僚が国王の私設秘書団だったことに類似している。議会が可決した法案を、大統領が拒否できるが、これも英国では国王の玉璽を得ることで法律になるという制度の模倣だという。

 

英国では議院内閣制となり、日本もそれを輸入したが、そもそもなんでそんな制度ができたかというと、英国の1714年即位のジョージ1世(アン女王が崩御してステュアート朝が断絶したため、ステュアート家の血をくんでいたハノーファー選帝侯が英国王に即位した)がドイツ語しか分からず、政治をロバート・ウォルポール伯爵に丸投げしていたことから、国王の行政権が縮小し、議会の力が強まり、「国王は君臨すれども統治せず」という責任内閣制が育ったのだという。

 

欧州ではかつて国王が行政トップだったことから、行政を批判することは国王を批判すること、ひいては国家を批判することになるため、国家元首と行政権のトップは兼任しないことが原則だが、自由民主主義を標榜する米国においては、皮肉なことに行政権を支配し国家元首でもあるという絶大な権力を有する絶対君主の性格を有する大統領制が温存されているのだ。

 

この大統領の権限の絶大さは、現在のトランプ大統領をみれば一目瞭然である。まるで独裁者のようだが、それを可能にしているのは絶対君主のような政治制度なのだ。なぜ米国大統領はあんなに強大な権力を有するのかと思ったが、そういうことから腑に落ちた。そして、そんな政治制度を模倣したのがラテンアメリカや韓国である。いずれも独裁を経験した国であるが、これは米国の政治工作の影響も大きい。米国としては民主的に政権を選んで反米化・共産化するぐらいだったら独裁者のほうがマシという判断だった。こう考えてみると、米国のアメリカファーストは凄まじい。