東京オペラシティで鈴木愛美さんのコンサートへ行ってきた。毎度のことながら新宿駅での京王新線への乗り換えが時間がかかるので毎度、到着時間を読み誤る(;^ω^) 今回も電車遅延もあり、ギリギリ到着になってしまった。鈴木愛美さんは、第12回浜松国際ピアノコンクールで日本人初優勝、日本音楽コンクールピアノ部門優勝、ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリと、国内のコンクールの三冠王である。

 

(前半)

シューベルト:高雅なワルツ集 D 969 Op.77
フォーレ:主題と変奏 嬰ハ短調 Op.73
フォーレ:ノクターン 第6番 変ニ長調 Op.63
フォーレ:ワルツ・カプリス 第2番 変ニ長調 Op.38
(後半)
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第18番 ト長調 D 894 Op.78「幻想」

(アンコール)

リスト:ウィーンの夜会(シューベルトのワルツ・カプリス)S.427 より第6番

シューベルト:楽興の時第3番ヘ短調D780-3 Op.94-3

 

洒落たプログラムである。シューベルト「高雅なワルツ」にはじまり、フォーレの名曲が並ぶ。後半はシューベルトの晩年の傑作にして長大な「ピアノ・ソナタ 第18番」。アンコールでは、リストの「ウィーンの夜会第6番」が風雅に奏でられたのち、シューベルトの名曲「楽興の時第3番」でしっとりとまとめあげた。

 

23歳とは思えない落ち着いた演奏。インスピレーションが、美しい湧き水のように溢れてくるような瑞々しさがある。技巧や華美さではなく、柔らかく優しい響き。夕暮れ時、ふっと淡い夕日の光に包まれるような感覚がある。フォーレの曲想に非常にあっているように思う。まだ若い。

 

もし国際的に活躍されるのであれば、海外の国際コンクールにも挑戦してみてほしいなと思う。素晴らしい才能を国内にとどめておくのはもったいない。

 

アクションスリラーの社会派映画であるが、絶妙にブラックユーモアが織り込まれ、笑える人にはかなり笑える。米国では保守層は、左翼の暴力革命を正当化していると批判しているが、正直、過激派の左翼活動家も風刺しており、本作がテーマとしているのは、政党や主義など関係なく、極端な政治主義の滑稽さではなかろうかと思われた。なお、本作は小説「ヴァインランド」(トマス・ピンチョン作)にインスパイアされているそうだ(原作は未了)。

トランプ大統領当選前に撮影を開始しているようであるが、結果的には移民問題・人種差別・社会の分断など、トランプ政権によって特に浮き彫りになった現代アメリカの社会問題を風刺することになっており、社会風刺として面白い。映画のラストをどうとらえるかは人によるが、結局のところ、テーマは変われど、対立は続くということなのだろうと思った。

それにしても俳優陣の演技の見事さはさることながら、音楽の使い方が絶妙だと思う。物語の展開もどうなるかが読めず、160分ながら全く飽きることがない作品だった。社会風刺やブラックユーモアが笑える人なら楽しめる作品ではないかと思った。

【ネタバレ有り】
高尚な理想を追っていても、結局は小さく家庭に入ったディカプリオ演じる主人公のボブ。仲間との合言葉すらすっかり忘れてしまって、逆ギレしている必死さに会場から笑いがこぼれていた。おまけに逃走中になまった体が禍して哀れにもビルから転落してしまうマヌケっぷり。合言葉を忘れる迂闊さは笑えてしまうが、かくいう我々もあらゆるサービスのPWを全部覚えているかといえばNOだろう。自動入力ではなくアナログで入力を強いられれば、本作のディカプリオ状態になるだろうと思うと、主人公を笑っていられない。高尚な目的を持った革命家もただの人間なのだ。高尚な思想と現実とのギャップがなんとも哀愁が漂い笑える。

一方で、革命家を追う白人主義者のハードボイルドの軍人ロックジョー。ただその硬派さとは裏腹にドMで、黒人女性に恋に落ちてしまう。自身の思想には自信があり、白人主義グループへの所属を名誉に思っているが、最終的には本来的な性癖等がバレて拒絶され、始末されてしまう。思想の純粋性と生来的な性質との自己矛盾による破滅が滑稽で笑える。

結局、保守もリベラルもそれぞれ思想の崇高さと現実にはギャップがあり、それに真面目に取り組むほど、第三者的には滑稽にみえて、笑えてしまうのだ。ただそれをコメディタッチではなく、本作はどこまでもシリアスに描くので、ますます皮肉になっている。

シリアスな社会派映画になり過ぎず、アクションも交えつつ、ブラックユーモアもまぶしてと、絶妙にいい塩梅の映画だなと思った。さすが名匠ポール・トーマス・アンダーソン監督だ。

 

★4.2 / 5.0

クラシック音楽の世界三大コンクールの一つ「第19回ショパン国際ピアノ・コンクール」の最終結果が21日未明(日本時間同日午前)発表され、東京都出身の桑原志織さん(30)が4位に入賞した。コンクールは、ポーランドの首都ワルシャワで開かれていた。18~20日に行われた本選には桑原さんと愛知県大府市出身の進藤実優さん(23)が進出し、計11人で争われていた。ー 産経新聞

 

前回大会では反田恭平さんが第2位、小林愛実さんが第4位に入賞し、今年は桑原志織さんが第4位に入賞となり、二大会連続での入賞となり喜ばしい。ただ進藤実優さんが入賞にならなかった点が残念だった。進藤実優さんの演奏、特に三次予選は名演だっただけに悔やまれる。桑原志織さんもあの精度の貫禄ある演奏は、正直、もっと上位でもよかったのにと思う。

 

入賞者下記の通りだ。

 

第1位 Eric Lu エリック・ルー(アメリカ)
第2位 Kevin Chen ケヴィン・チェン(カナダ)
第3位 Zitong Wang ワン・ズートン(中国)
第4位 Tianyao Lyu リュー・ティエンヤオ(中国)/ Shiori Kuwahara 桑原志織(日本)
第5位 Piotr Alexewicz ピオトル・アレクセヴィチ(ポーランド)/ Vincent Ong ヴィンセント・オン(マレーシア)
第6位 William Yang ウィリアム・ヤン(アメリカ)

最優秀コンチェルト賞 Tianyao Lyu(中国)
最優秀マズルカ賞 Yehuda Prokopowicz イェフダ・プロコポヴィチ(ポーランド)
最優秀ポロネーズ賞 Tianyou Li(中国)
最優秀ソナタ賞 Zitong Wang(中国)
最優秀バラード賞 Adam Kałduński アダム・カウドゥンスキ(ポーランド)

 

まぁ、それにしても優勝はやはりエリック・ルーさんか。すでにショパンコンクール第4位の経歴で、リーズコンクールで優勝した実力者だが、やはり安定の演奏だった。そして、ケヴィン・チェンさんが第2位。おそらくエリック・ルーさんが出場していなければ、彼が優勝だったのではないかと思う。想像を絶する圧倒的な技巧と濃密な演奏だった。第3位には、私の推していたワン・ズートンさんが入賞した。正直、ファイナルの演奏的に入賞はどうかと思ったが、今回のコンクールでは予選の評価も反映されるので、第3位に落ち着いたようだ。繊細で温かな演奏が良かった。第4位には、桑原さんと同位で、16歳の中国の天才リュー・ティエンヤオが入った。コンチェルト賞も受賞しているが、若々しく活き活きとした演奏が魅力的だった。第5位もW入賞で、私の推しのピオトル・アレクセヴィチさんと、マレーシアからヴィンセント・オンさん。マレーシアからの入賞は初だろう。ピアノのますますの国際化を感じる。第6位はウィリアム・ヤンさん。成熟した落ち着いた演奏だった。

 

それにしても中国系の多いこと。第1位~第6位の入賞者8人中、桑原さんとアレクセヴィチさん以外は全員中国系。マレーシアのオンさんも華僑とのこと。マズルカ賞とバラード賞でポーランド出身者が入っているが、特別賞も5つ中3つが中国人の受賞。中国はロシアと同じく共産主義・社会主義的なエリート教育主義であり、また、人口も膨大なので母数が多いことも影響しているが、それにしてもこれは強い。かつて、ソ連・ロシアのピアニストが圧倒的だったが、ピアノ界はこれから中国の時代になるのだろうかと思わせられる。そもそも文化大革命がなければ、中国はもっとピアノ界でそれなりの勢力だったはずだ。

 

今回は韓国勢がだいぶ冷遇されて、ファイナルに残った韓国勢が0人で(少なくともイ・ヒョクはファイナリストでも良かったと思うが)、入賞者がこれだけ中国勢に偏ると、ちょっとなんか裏事情でもあるの?と勘繰ってしまう。ポーランド的な響きといわれればそれまでだが、ポーランド勢を一定数残したのは、運営上の配慮なのではないかと思う。

 

ガラコンサートが日本であるので、これからチケットの争奪戦が始まる。東京開催は平日なので、京都か大阪まで行ってこようかなと思っている。ただ本当にコンテスタントは、入賞者以外も素晴らしい演奏家ばかりなので、ぜひ入賞か否かにこだわらずにコンサートに多くの人に足を運んでもらいたいものだ。

本日は国立新美術館へ行ってきた。ブルガリの展示会があったためだ。ブルガリは、ギリシャ系イタリア人のソティリオ・ブルガリが、イタリア・ローマに1884年に創業した宝飾品ブランドである。現在、フランスの企業グループであるLVMHに属している。時間指定券なこともあり、日曜の午後2時頃と混む時間帯であるが、混雑しておらず、快適に鑑賞できた。ブルガリの数々の名品が眼福であるが、インスタレーション作品などもあり、感覚的にブルガリを体感できる良い展示会だと思った。

 

(公式HPの紹介文)

ローマのハイジュエラー、ブルガリ。その色彩を操る唯一無二の手腕に光を当てる「ブルガリ カレイドス 色彩・文化・技巧」展は、日本におけるブルガリの展覧会としては10年ぶり、過去最大のスケールとなります。

 

「美しい(カロス)」「形態 (エイドス)」を意味するギリシャ語にちなんだ展覧会タイトル「カレイドス」は、美と創造性が調和した、ダイナミックで変化し続ける色彩世界の旅を象徴します。ブルガリ・ヘリテージ・コレクションと貴重な個人コレクションから選び抜かれた色彩のマスターピースというべき約350点のジュエリーは、メゾンの始まりから現在までを跡付けつつ、イタリアと日本の深いつながりを浮き彫りにし、アートとデザインに対する両国共通の情熱や豊かな文化遺産を称えます。また、現代の3名の女性アーティスト、ララ・ファヴァレット、森万里子、中山晃子が、それぞれ色彩についての考察に基づく作品を展示します。

 

ハイジュエリー、ブルガリ・ヘリテージ・コレクションのクリエーション、現代アート、ブルガリ・ヒストリカル・アーカイブからの貴重な資料、そして没入型のインスタレーションが取り混ぜられた本展覧会は、さまざまな創造性と心を揺さぶる体験が次々と現れる万華鏡のような展覧会です。映像、インタラクティブな空間、芸術的な対話がブルガリの色彩の世界に命を吹き込む多面的な旅を通して、宝石と貴金属を自在に操るメゾンの卓越した技量を堪能していただけるでしょう。ー 公式HP

 

色彩が豊かで、モチーフも多彩で、大変良い刺激だった。それにしても創業者の実家は銀細工職人を営んでおり、宝飾品の素地には高度な銀細工の技術があるそうだ。ローマで創業されているが、東洋の影響などが興味深かった。本展示会では、エリザベス・テイラー所蔵だったエメラルドの首飾りなどは特に見ごたえがあった。ちなみに、写真も撮影可なのが良い。それにしても、個人保有の展示品もあるが、どんな大富豪なのだろう笑。大粒の宝石をふんだんに使った宝飾品を見るに、いかにラグジュアリーブランドが上流階級相手の商売なのかがわかる。日本は華族・財閥の解体で上流階級が、戦後に消滅したが、欧州では上流階級文化がまだ残っており、彼ら相手の商売だと思うと、納得の豪奢さである。ふだん見ることがない貴重な品々に癒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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※インスタレーションアート。ララ・ファヴァレット《レベル5》。

さて、行楽の秋ということで、水戸へ行ってきた。水戸というと、徳川御三家だった水戸徳川で有名だろう。水戸といえば水戸黄門も出てくるが、水戸の二代目藩主の徳川光圀のことである。”黄門”とは、水戸徳川の官職の中納言の唐名である。ちなみに、最後の征夷大将軍の徳川慶喜も水戸徳川家出身であり、弘道館で学んだ。水戸学といえば、明治維新において尊王攘夷思想という重要な学問的なバックグラウンドを担ったことでも有名である。実は御三家の中でも紀州・尾張よりも家格は下であったが、水戸徳川は参勤交代を免除され、江戸に常駐した定府大名であり、御三家の中で唯一、徳川宗家ではないが公爵に列している。

 

とはいえ、現在の水戸市は茨城県の県庁所在地とはいえ、人口26万人の中核市に過ぎない。栄枯盛衰を感じるところである。やはり政令指定都市と比べると、ワンサイズもツーサイズも小さな印象を受ける。ただ駅周辺は商業施設も充実しつつも、大きな混雑はなく、自然にも近く、とても住みやすそうな都市だった。正直、大都市へのアクセスが良いのであれば、快適に暮らすにはこれぐらいの都市の規模が最適解な気がする。

 

さて、駅に到着すると、水戸黄門の像がある。隣は助さん格さん。実際は全国歴訪の史実はないが、「大日本史」の編纂のために全国に使者をつかわしたので、そうしたイメージになったようである。助さん格さんは、「大日本史」の編纂に携わった、いまでいう学者である。

 

水戸城の大手門。2020年に復元されたもの。御三家とはいえ、水戸徳川家は参勤交代を行わない江戸定府の大名であり、居城として豪奢に整備されることはなく、比較的に質素だったようだ。天守閣もなく、また、建物は解体されたり、戦火にあいほとんど現存していない。

 

徳川斉昭。水戸藩の第9代藩主で、徳川慶喜の父。「日本三名園」のひとつとなる偕楽園を造園したり、藩校として弘道館を設立するなど、水戸の発展に寄与した。

 

こちらが弘道館であるが、水戸藩第9代藩主徳川斉昭が、1841年に開設した日本最大規模の藩校である。最後の将軍徳川慶喜もここで学んだ。戦火等で大半は焼け落ちているが、正門、正庁、至善堂は残存しており、国の重要文化財になっている。ただ日本最大の藩校だった割に、意外と建物はこじんまりとした印象だった。あくまで藩校に通えるのはごく一部だった。

 

内部だが、「尊攘」と掲げられている。武家ながら尊王攘夷思想になったのが興味深い。水戸学が明治維新における思想の下地になったのは違いがないが、一方で、徳川御三家の水戸藩は明治維新では重要な政治家を輩出できておらず、薩長土肥という田舎侍が大きな勢力となっている。そうというのも天狗党の乱など、内乱が起き、水戸藩は内部抗争で自滅してしまったからだ。

 

こちらは水戸東照宮である。意外と上野の東照宮と比較してもこじんまりとしていて、建物の装飾もプリント?のようで、意外と質素な印象だった。

 

茨城県立美術館の旧水海道小学校本館である。再建されたものだが、当時の擬洋風建築をいまに伝える。和と洋の意匠が調和している。水海道は、 現在の茨城県常総市だが、全国的主要都市というわけでもないにも関わらず、当時、田舎の方にまでこうした建築があることに驚かされる。

 

こちらは徳川ミュージアム展示の日本刀(撮影可)。水戸徳川の貴重な展示品に目を奪われるが、こじんまりしたミュージアムの割に入館料が2500円なのはなかなか高い・・・。私設でもあるし、維持管理のためには仕方がないにしても、なかなかの強気の価格設定だ。

 

こちらも徳川ミュージアムの展示品。当時としては非常に貴重な車を保有するなど、西洋かぶれといわれたそうだ。

 

こちら水戸駅ビルの蕎麦処のまち庵 で食べたランチ。秋の味覚の天ぷらが美味。

 

こちらは木内酒造が手掛ける茨城県産の銘柄豚を使ったとんかつを提供する「蔵+かつ」。これがなかなかの絶品。とんかつに納豆をあわせるのが水戸らしい。

 

木内酒造の常陸野ネストビール。クラフトビールとしては有名だが、とても飲みやすい。
 
やはり歴史散策は面白い。九州・四国はあまり行ったことないが、明治維新の歴史の深耕のためにも旅したいなと思う。