これはZEPHYRスタッフの薫葉豊輝君にも話したし、彼も自身のブログで書いていたことなのだけれど、「ノー・ソリューション」には名探偵が存在しません。
私は今書いている論考「デウス・エクス・マキーナ」で、日本人にとって名探偵というのは特別な意味がある存在だということを知りました(自分が書いていることに教えられるという、変な逆転現象が起きました)。
ゆえに本格ミステリーに限らず、ある種のタイプのミステリーには名探偵はあったほうがいいと考えるようになりました。
このへんのことをお知りになりたい方は、また「デウス・エクス・マキーナ」が上梓されましたら、お読み頂ければ幸いです。
しかし、「ノー・ソリューション」には名探偵はいない。
登場人物の誰かが謎を解く役割は持っていますが。
なぜなのか?
単純です。
名探偵は謎を解いてこその名探偵で、そのシーンがない「ノー・ソリューション」には登場させても意味がないのです。
また名探偵を登場させるということは、絶対的に犯人ではあり得ない人物を物語に一人増やすことにもなります。
つまり限られた枚数の中で、その人物の説明やら設定やら、名探偵だから容疑者のリストには入らないんだということを読者に納得させるための説明、またその人物の行動や言質など、さまざまな描写が必要になってきます。
これは短編や中編では、マイナスに働きかねません。
それでなくとも他の容疑者たちの説明や、言動をちゃんと書いておきたいし、伏線も張っておきたいわけです。
なのに、重要なラストの謎解きもしない登場人物を、無駄に出演させても……。
これが「ノー・ソリューション」が「ノー・ディティクティヴ」な理由です。
でも私は名探偵が好きです。
コードネーム、名探偵 Kはそのうちに動き出すでしょう。
それに……いやいや、今はいわないでおきましょう。