前立腺や膀胱の不調だとされるにもかかわらず、腸にも不調がある、膀胱も痛いが腸が痛いようにも感じる。
大腸もおかしい感じがするけれども、小腸もおかしいのではないか?
そんな自覚症状について東洋医学的にはどう考えられるのかという話題を記事にしてみました。
なにより自身の症状が最初は排尿時痛、膀胱痛、頻尿といった症状だったのが、1年、2年と経つうちに腸の痛みや不調も出てきて、次第に腸の不調のほうが前面に出てきた、という経過を辿りました。
最近話題にしているように、東洋医学の情報を色々調べていると慢性前立腺炎や間質性膀胱炎というのはおそらく肝の問題からきていることが多そうだという印象を持ちましたが、毎度以下の内容は素人の耳学問なので正確性は保障できませんことお許しください。
◆感染によらない膀胱炎、前立腺炎
まず、膀胱炎というと何らかの細菌・ウイルスによる感染から発症するというのが西洋医学的な見立てですが、東洋医学では必ずしも感染によらない膀胱炎もある、と考えるようです。
これは西洋医学でいう膀胱神経痛症とか慢性膀胱痛といったカテゴリーに入るのかもしれませんが、膀胱に絡む経絡(とそれに関連する臓腑)に問題があると感染によらない膀胱炎様の症状がでる、そして関連する臓腑として肝の失調が膀胱炎症状の原因のひとつにある、ということなのだと思われます。
湿熱というものが膀胱や前立腺に溜まると、炎症のような症状がでるそうで、これが排尿痛とか尿道の熱感、尿の色が濃くなる(熱で尿が煮詰まる)、ときに血尿や下腹の痛みなどになりうるそうです。
膀胱炎や排尿障害に効果があるとされる漢方は実にたくさんありますが、前立腺炎(の割と初期?)では竜胆瀉肝湯や大黄牡丹皮湯、黄連解毒湯などが適用するのではないかと言われていて、これらは湿熱を冷まして散らしたり、特に大黄牡丹皮湯では下すこと(下痢)で毒を排泄するそうです。
間質性膀胱炎と呼ばれる症状にも一定の割合でこれらの処方が効果するのかなと想像しています。
※その漢方薬に適用があるかどうかは専門家による問診や切診(腹診、舌診、脈診、ツボの反応等)を参考になさってくださいますようお願いします。
◆湿熱とは?
湿熱というのは、体に溜まった「余分な水分」などに「邪熱」が加わったもののようです。
余分な水分たる湿はどのようにできるかというと、内臓が有している栄養や水を裁く力が弱る結果、摂取した水分が排出できず、体の中にあふれてしまうことでできる、といえるのかも知れません。
小腸といった臓器が弱ると栄養や水をうまく分別したり裁けなくなるそうで、お腹をゆすると水で胃腸がチャプチャプ鳴るような体質(自身がこれ)だと、腸が停滞していると言えそうです。
水の飲みすぎが原因とかではなく、内臓が水を裁く機能が落ちる、というイメージです。
では、腸が停滞するような原因はどこにあるかというと、ひとつは肝の問題がありそうで、肝脾不和という現象なのかもしれません。
肝はたくさんの機能を持っていますが、「条達」といって、全身の機能を伸びやかにする働きがあるそうです。
また、肝は摂取した食物を栄養と毒に選別する機能ももっているので広い意味での消化機能も担っているそうです。
肝の機能が失調したり、肝気が高ぶり過ぎると栄養と毒の選別機能が落ち、肝の不調が胃を犯すと消化機能(脾の働き)も失調するそうで(ストレスで食欲不振になったり胃が痛くなる現象)、飲食をうまく消化できず、余計な水や未消化の栄養分が体のアチコチにこぼれ落ちてしまうのだとか。
こうした湿に熱(主には肝気による熱か?)が加わると痰湿というネバっこいむくみのようなものになったり、それが凝縮すると瘀血(カチカチに固まった血の塊)になって、これらが体のアチコチに溜まるのだとか。
とくに瘀血になると患部がゴリゴリと硬くなったり(自身は左の下腹にこれがあると思っている)、血流が阻害されることで痛みになったりするそうです。
大黄牡丹皮湯は瘀血を下して取り去る漢方ですが、それ以外にも瘀血を駆逐する漢方には桂枝茯苓丸とか桃核承気湯とかいくつかありますね。
瘀血体質になると、舌下の静脈が黒く、太く怒張していたり、肌膚甲錯といった地割れや鱗状のカサカサした肌質になることがあるとされています。
ちなみに食べ物では大根や海藻類が痰湿を取り去る効果があるそうで、自身も割と意識的に摂るようにしています。
◆ストレスと肝、肝の痛みは激痛化しやすい
東洋医学では肝の機能として、筋肉の収縮という作用もあるとされています。
肝が緊張すると、ギューっと筋肉が硬くなるような感じでしょうか。
で、肝経というのは足の親指のほうから膝の内側、大腿部の内側(股ぐら)、鼠径部、陰部、脇腹、胸郭の側面、頭頂部まで流れているので、これらの箇所に痛みや緊張、熱感を感じることがある、と。
脚部の内側というのは肝経が流れているラインとなります。
前立腺炎では陰部、鼠径部、膝、股の付け根が痛いということがありますが、それ以外にも腹直筋の左右(側腹)、肋間が痛いということもあるかもしれません。
こうした部位は大腿の内側、側腹部という点では肝経の流れに沿っています。
痛みを感じるのは肝経だけに限定されないかもしれませんが、鍼灸の知見に触れると、肝経の痛みというのは激痛になることも珍しくないようで、ときに強烈な痛みになることもあるのだとか。
かくいう自身は強烈な腹痛で思わず救急車を呼んでしまったという経験もあるのですが(汗)、診てくださった医療者の方は腹部のアチコチの痛みをして「これは膀胱の痛みではないですね。はて?」という感じでイマイチ要領を得ないという感じでした。
西洋医学的には膀胱痛が「放散」するという捉え方もあるようですが、側腹や胸郭、みぞおち周辺の痛みについては、肝経の痛みと称してもよさそうで、肝の気のめぐりをよくする四逆散といった漢方が即効性があって効果的でした。
間質性膀胱炎ではストレスが高まると症状が悪化すると言われていますが、これも肝の問題と言えそうで、何らかのストレスで肝気が高ぶると肝経に沿って痛みが出るといえそうです。
肝臓はイライラの臓器などと言われて抑肝散といった漢方も有名ですが、肝が高ぶるようなストレス要因には、心理的ストレスもありますし、食べ過ぎ・飲み過ぎ、ある種のNG食(アルコールや香辛料)も挙げられようかと思っています。
また、西洋医学的な慢性疼痛といった概念では、時に、病原はないのに脳がしつこく痛みを感じ続けている、というような解説もみかけますが、個人的にはこれについてはいささか懐疑的でして、「お腹のここがゴリゴリしていて押すと圧痛がある」とか痛む箇所が特定できる部位もあるので、やはり瘀血といった物理的な病因も痛みの原因にあるのではないかと思っています。
肝臓といった内臓が緊張したり腫れたりすると痛みがでる、ということもありそうなので、脳だけの問題には還元できないのかな、と。
なお、四逆散は脇腹の痛みやみぞおち、横隔膜の詰まり感のようなものに効果的で、大腸や小腸とおぼしき部位にも一定効果しそうな印象ですが、腸の痛みは四逆散のほかに、瘀血を下す漢方が効果的かもしれないとも思っています。
◆水分摂取、腸との関係
肝気が高ぶりすぎて、胃腸といった消化器を犯すようになると肝脾不和と呼ばれる状態になります。
胃腸が弱るので、摂取した栄養を裁ききれず、以前だったら何ともないようなちょっとした食べ過ぎ・飲み過ぎでも痰湿や瘀血を作ってしまうかもしれません。
腸の弱り、と聞くと腸活などの腸内細菌叢の改善が思いつきますが、腸を弱らせているのが肝だとしたら、するべきは腸活ではなく肝気の高ぶりを鎮めること、となりそうです。
肝気が高ぶるということは熱証ですから喉が渇くとか、冷たい飲食を好む傾向があるかもしれませんが、次第に胃腸が弱ってくるとむしろ水が飲めなくなってくるかもしれません。
自身も、発症の頃には水を全然飲まない(というか胃腸がチャプチャプで飲めない)傾向がありましたが、これも肝気の影響で腸が弱っていたのかも知れません。
肝気の高ぶりで熱を帯びるのに、脾の弱りで水を裁けず、水を飲みたくない・飲めないという状態になると、水分摂取も少なくなり、膀胱には少しの水しか溜まらず、しかもそれが熱で焦がされるような感じになるのかもしれません。
ふだんは湖に暖かな太陽の陽気が降り注ぐところ、この状態になると水たまりに灼熱の日差しが照りつけて、ジリジリと水たまりが熱せられる、と。
こうなると尿が煮詰まって、尿の色が濃くなるといったことになるのかもしれません。
◆排便異常はツボ押し現象? 宿便、ガスの関係は?
自身は、腸に便が溜まると腹痛、腰部・仙骨の痛み(これは神経的な放散痛と思う)、睾丸痛が強くなり、排便するとかなり楽になる、という現象を経験しています。
慢性前立腺炎や間質性膀胱炎では、こうした腸の不調を伴うことも多いと思います。
で、ここから先はかなりの想像ですが、腸の停滞状態というのは血瘀といった慢性の血行不良状態や瘀血といったゴリゴリを伴い、これが腹痛、陰嚢・睾丸の痛み、腰や仙骨の痛み、膀胱付近の痛みになってしまうのではないかと思っています。
想像している現象はいくつかありそうで、
・瘀血といった物理的なゴリゴリが陰部神経や血管を圧迫して痛みが放散、ないし持続する
・下腹や会陰部に流注する経絡が、便ないしは排便に関わる筋肉などに圧迫され、痛みが経絡に沿って出てしまう
といった感じです。
経絡に沿った痛みというのは例えるなら、前腕の曲池というツボをグーっと押さえると経絡に沿って肩のあたりまで響く、といった現象です。
経絡というのは神経支配と必ずしも一致しないのですが、あるツボを刺激するとそこから離れた部位に響いたり、筋膜のような組織が連動して動いたりする現象というのは確かにあって、排便するとキン○マや会陰部が痛いというのも、こうしたツボ押し現象に近いのかなと想像してしまいました。
また、下腹痛で外せないのは宿便とか便秘でして、自身も発症の頃には下腹が異様にポッコリしていて、これはガスか宿便か、内臓下垂といった現象かもしれません。
肝脾不和が進行して胃腸が停滞してしまうと宿便・便秘体質になりやすくなる、というのはあり得そうで、東洋医学的には瘀血を原因とする「少腹急結」と呼ばれるような下腹のゴリゴリも、宿便とかガスという可能性もあるかもしれません。
腸が停滞し宿便になると腸内で毒が発生し、これが炎症とか虫垂炎様のトラブルになることもあるかもしれませんし、単純に腸に溜まった便に尿道とか前立腺が圧迫されて尿が出にくいといった現象もあるかもしれません。
そうなると、やはり一つの方策としては大黄牡丹皮湯といった下す漢方で腸内を掃除するというのも、確かにありうる改善策かもしれません。
肝脾不和で腸が停滞し、それが陰部の痛みや不快症状にもつながっているケースであれば、竜胆瀉肝湯で肝気の高ぶりを抑えつつ、腸や膀胱の湿熱・瘀血(ないし宿便)は大黄牡丹皮湯といった漢方で瀉していく、というのは説得的な治療法のように感じられます。
◆トリビアとしての性行為、性感染症
慢性前立腺炎では性行為を契機とするかのような言説もあり、症状が尿路感染症に酷似しているのでSTDを疑うことも多いと思います。
性行為という点では、東洋医学的には過度の性行為・自慰は腎精を消耗すると言われていて、これで腎虚という状態になると、腎のクールダウン機能が失われ、肝気の熱を冷ますことができなくなり、肝気が自由気ままに暴れ回って熱によるいろんな症状になると言われています。
下焦の弱りとも言うそうですが、こうなると湿熱による膀胱炎、前立腺の炎症になりそうですし、それ以外にも、のぼせ、肩こり、頭痛、顔の紅潮、目の充血・ゴロゴロ感、他方で足腰に力が入らない、下肢の冷えとかになりやすいそうです。
慢性前立腺炎の多くが無菌性と言われており、このことからすると、性行為や加齢など何らかの要因で腎虚が亢進して湿熱により膀胱炎・前立腺炎になる、と言えそうです。
性行為との関係でいえば、普段からストレスがかかっていたりすると肝気が高ぶる傾向にあるでしょうから、これをクールダウンさせるために腎にも慢性的に負荷がかかっており、ここに性行為が重なると腎虚になってしまう、腎虚により肝気の熱が自由に暴れまわって膀胱・前立腺に熱が溜まる、というのが無菌性前立腺炎のひとつのストーリーです。
ただ、個人的には感染症説というのは依然として興味深く思っています。
いくつかの理由がありますが、泌尿器科の尿検査の多くは遺伝子検査ですが、この遺伝子検査の精度というのがどうも疑義なしとは言えなさそうであることは過去記事でも話題にしました。
また、東洋医学に従事する方の中には、検査で陰性であっても細菌なりが細胞とか組織にこびりついて症状を出している、という見方をする方もいらっしゃるようです。
感染症というのは菌が居て、その菌が症状を出していれば病原菌と「評価」されるわけですが、検体から菌が検出できないからといって体のどこにも菌が居ないとは限りません。
クラミジアもかつては常在菌扱いだったそうで、どの菌がどういう症状を出すかの観測と評価は時代によって変わりうるので、通常の尿検査のメニューでは検出できない菌なりウイルスが関与している可能性というのは否定はできないように思います。
とはいえ、感染症においては白血球の浸潤の有無というのは一つ手がかりではあろうかと思われ、これがないとなると感染症という線は薄くなるかも知れませんが。
また、ことさら感染症説を推すつもりもないのですが、前立腺炎で処方されやすい漢方である竜胆瀉肝湯というのは歴史的は性感染症(主には梅毒とか淋菌)の治療に使われていたそうです。
最近は戦前の鍼灸の本なども読んだりしているのですが、当時は感染症による前立腺炎を腺病毒と呼んだり、梅毒のことを「ひえ」と呼んだそうで、患者は足がもつれたり、めっぽう冷えに弱くなるのだそうです。
下焦の弱りで足腰が弱ったり冷えに弱くなる、という意味では無菌性前立腺炎も性感染症も似ているわけですが、処方も似ているという点では何やら感染症との関連を想起させないでもないです。
あるいは、何らかの「毒」(感染症、湿熱、宿便、精神的ストレス)にさらされると、肝臓の解毒機能が亢進して、肝気が高ぶるという点で無菌性前立腺炎も性感染症と似ている、と表現できるのでしょうか。
ちなみに読んだ本では、梅毒については関連するツボに鍼やお灸をすえて、下痢を誘発することで毒を下す、という治療がなされていたそうです。
各種の検査でSTDや大腸菌感染などが陰性、白血球の浸潤も認められない、上行感染といった波及的な感染症に発展しない、となると尿路感染症による前立腺炎の可能性は低いと言えますし、東洋医学では細菌だろうが何だろうが湿熱が炎症の要因とみるようです。
ですから漢方の処方も似てくるのでしょうが、個人的には感染症説というのはどうにも気になりますし、とりわけ発症初期の検査についてはグラム染色とか遺伝子検査の検査方法を変えるなどして検査の徹底をしたほうがよいと今なお思っております。
というわけで、話題は多岐にわたり、最近の記事と重複感もある内容でしたが、思う所を書いてみました。
自身は血が上半身に上って、足が冷えるという傾向が続いており、これを改善したいのですが、原因・背景がなんにせよ、気血の巡りをよくすることが改善の道なのだろうと思います。