抑鬱亭日乗 -31ページ目

抑鬱亭日乗

複数の精神疾患を抱える者の独言を忌憚なく収録する
傾いた視線からこの世はどのように見えるのか

 帰ってきた。

 精神と肉体に想像以上の大きな負荷がかかった。

 中途覚醒が再発したが、どうやら自然治癒力で治った。

 現在、冬眠中の昆虫の幼虫のような状態である。

 

 なぜか道行く人が輝いて見える。

 何だろう、この感覚は。

 「大阪の環状線に特攻してやろう」と破滅的な発想が浮かんでは消える。

 「今の苦は今生限りや」と地蔵菩薩が語りかける。

 

 本日は月に一度の通院日。

 予約時間の10分前に受付を済ませる。

 コロナ対策のためなのか、スピードガンのような体温計で体温を測定される。

 その体温計で体の各部位の温度を測定して遊んでみたい。

 

 待合室で場違いな御仁が座っていた。

 もじゃもじゃの金髪で、鎖のようなネックレスをしている。腰から鎖がぶら下がっている。

 白の革靴にダメージジーンズ。

 なぜかポッコリ腹。

 自分の何かを隠すために、そのような服装をしているのだろうか。

 

 呼ばれて診察室に入ると、小さなスピーカーが設置されている。

 医者の声がスピーカーから聞こえてきた。

 患者と医者を遮蔽して、感染拡大の予防が過剰になってきた。

 いつものように問診のみで診察を終える。

 

 今月の処方は下記の通り。

 ・パキシル 40㎎

 ・トフラニール 200㎎

 ・ドラール 15㎎

 ・メイラックス 2㎎

 ・下剤

 マスクが十分に供給され、地方の薬局でも購入できるようになった。

 朝から晩までマスクを着用して仕事をするのだが、途中でアタマが熱くなる。

 少し息苦しいのも悩みのたねである。

 

 トフラニールを愛飲しているため、すぐに喉が渇く。

 人と会話をすると、口が渇く。

 外出には、茶を入れた2本のペットボトルを欠くことはできない。

 

 だが、マスクをすると喉や口の渇きが消えた。

 顔面とマスクの間に残留する空気を常に吸うことから、湿気のある空気を吸っているのだろう。

 マスクの着用でトフラニールの一部の副作用を回避することができる。

 この原理はSSRIの脳内の作用に通ずるように思う。

 水蒸気の再取り込みで喉の渇きが解消された。

 

 マスク生活はいつまで続くのだろう。

 今年の2月中旬頃、一人の老人が現れた。

 この老人は過去の記事でも出演している。

 

 その老人は「ワシ、もう死ぬんですわ」と元気に話していた。

 癌が見つかったが、手遅れで治療はできないと医師に告げられた。

 「できれば東京オリンピックを観て死にたいんですわ、グワハハハ」と言っていた。

 

 先日、その御仁の体調が急変しお迎えが来た。

 その数日前まで仕事をしていたようだ。

 あのようなエネルギッシュな御仁も病には逆らえないらしい。

 

 人には生まれる前からそれぞれ寿命が決まっているのだろうか。

 あの快活な御仁が体調を崩し数日でこの世を去った。

 

 日頃から抑鬱気味の小生は自分の寿命を知ることが怖い。

 

 毎年、寓居にツバメさんがやって来る。

 子育て中にカラスに襲撃される年があれば、総員が無事に育つ年もある。

 カラスに襲撃される年の方が総員が巣立つ年よりも多い。

 カラスにもそれなりに守る生活があるのだろう。

 自然は厳しい。

 

 先日、巣の下にヒナが落ちていた。

 拾い上げると、まだ生きている。

 しかし、明らかに衰弱し動きが鈍い。

 親が弱いヒナを巣から落としたのだろうか。

 脚立に上り、巣に入れてみた。

 

 数時間後、再びツバメさんの巣へ行くと、先ほどのヒナが巣から落ちている。

 手に取ると、既に息絶えている。

 寓居に来たのは、何かの縁だろう。

 埋葬することにした。

 

 掘った穴に死骸を埋め、「野鳥院つばめ居士」と院号の戒名を記した割り箸を穴の横に立てた。

 この世に院号の戒名をもらうツバメさんのヒナは他にいまい。

 自然はとても厳しい。