抑鬱亭日乗 -3ページ目

抑鬱亭日乗

複数の精神疾患を抱える者の独言を忌憚なく収録する
傾いた視線からこの世はどのように見えるのか

 購読している地方紙に再び見覚えのある顔写真が掲載されていた。

 以前に登場願った中学生3年の時の英語の先生である。

 「大学受験で第一志望には合格できない」と信じて止まない御仁である。

 この4月から任期3年の地方公共団体の高いポジションに就いている。

 

 小生はこの人物を忘れることはないだろう。

 「大袈裟な」と思われるかもしれないが、あの出来事は数分前の記憶のように完全に定着している。

 

 場所は富士山の河口湖にある旅館の一室。

 修学旅行で前日は東京を見物し、この日は河口湖付近の旅館に宿泊した。

 残念なことに田舎のアホな中学生は発想が貧困である。知的な時間の過ごし方ができないのである。

 数名の人物が「野球拳をしよう」と言い始めた。

 小生は拒否したが、参戦することになってしまった。

 この時に断固拒否していればあのようなことは起こらなかっただろう。

 

 ルールは誰でも知っている。

 それに加えて敗れた御仁は全裸になり、その場で両手を挙げて手のひらを合わせる。

 その状態でその場ででグルグルと3回まわらねばならない。想像すると滑稽な状態である。

 アホにしかできない発想である。

 

 当初、参戦を拒んだ小生だが、およそ10名で繰り広げられる男の野球拳に狂ってしまった。

 およそ10名がジャンケンをすると、勝敗はなかなか決まらない。

 数えきれないアイコの後に突然、勝敗が決する。

 現場のボルテージは自然と高まり、興奮し、大声を出して野球拳に興ずる。

 やがて1名が敗退し、その場で全裸となり両手を挙げて、手のひらを合わせ、3回転する。

 腹の底から出される笑い声はとてもうるさいらしい。

 

 突然、ドアが開いて「お前ら、うるさいぞ」と英語の先生が大声で注意しに来た。

 野球拳を急遽中止し、テレビを閲覧するが、再び時間を弄ぶ。

 ある御仁が「小声で野球拳したらええやん」と提案し、再び野球拳が開催された。

 小声だったのは最初だけだった。

 

 次第に白熱した展開となり、気付かぬうちに大声を出してしまう。

 ついに小生が敗退してしまった。全裸になり、その場で3回転しなければならない。

 覚悟を決めた小生は、全裸となり、両手を挙げて手のひらを合わせ、回転し始めた。

 

 悲劇は突然、訪れる。

 「お前ら、うるさいぞ、何回同じこと言わせるねん、静かにしろゆうてるやろ」と部屋のドアが開いた。

 小生は最もドアに近い場所でプレイしていた。ドアが開いた瞬間、小生はドア側を向いていた。

 ドアを開けた先生は、全裸の小生と鉢合わせになる。お互い、対面している状態である。

 人間は驚くと、そこで動きが止まるらしい。小生は動けなくなった。

 ドアを開けた先生も驚いたのだろう、微動だにしなかった。両者は数秒間見つめあった。

 「お前ら、うるさいゆうてるやろ、ん、おい、○○(小生の苗字)、おまえ何してるねん、パンツぐらいはかんかい」と大声で注意を受けた。

 

 その時の記憶が色濃く今でも残っている。

 高いポジションに就いた先生は覚えていないだろうが、小生にとっては終生、忘れることができない出来事であった。

 この事実は数日の間に3年生、全員が知ることとなってしまった。

 

 職務上の事情により、書類を郵送することがある。

 書類関係は電子メールに添付して送信する方が速く、確実に届く。

 この場合、アドレスを間違えて送信しなければよい。

 政府はペーパーレス社会の実現を目指すが、まだ官公庁に書類で提出することは多々ある。

 

 2024年10月から郵便物の送料が値上がりした。

 書類を郵送する場合、定形外で50g以上100g以内なら180円の切手を貼らねばならぬ。

 最近の米の価格も高いが、郵送料も高い。

 定形外で3通の郵便物を郵送せねばならぬ事情があったので、職場にある切手を探す。

 

 発見できたのは、50円切手と10円切手である。他にはない。

 定形外3通で540円を要する。

 郵便物1通につき、50円切手を2枚、10円切手を8枚、合計10枚を要する。

 A4の封筒に10枚の切手を素早く貼らねばならぬ。

 

 あの日、多くの切手をレロレロした。

 郵送中に剥がれぬように入念に切手をレロレロせねばならない。

 レロレロしすぎると、切手の両端が反り返り、封筒に貼りにくくなる。

 縦に5枚まとめて切手をレロレロしたが、途中で舌が乾いてくる。

 30枚の切手をレロレロし終えた頃には口内が乾燥していた。

 二等兵はこういった雑務もこなせねばならぬ。

 

 レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ

 

 最後にもう一度、レロレロ

 

 京都の地方紙を購読している。

 紙面の端にカラーで顔写真が印刷されている。

 桂小枝に似た60代のオッサンである。

 

 その記事を読むと、中学生の時の英語の先生ではないか。

 校長を務め、定年退職は隠居生活を送っているものと思っていたが、教育に関する活動に携わっているようだ。

 任期は3年と記されていることから、何らかのポジションに就いたと考えられる。

 

 この先生にはいくつかの忘れられないエピソードがある。

 

 中学3年の1学期、最初の英語の授業で先生は警告した。

 「おい、この中で大学受験を考えてる奴はいるか?」

 小学生の頃から、小生は大学へ進学すること決意していたためか、今でも鮮明に覚えている。

 

 「大学入試ではなぁ、第一志望に合格することはでけへんのやぞ。覚悟しとけ」

 「俺はなぁ、第6志望の大学に行ったんや、第1志望にから第5志望まで全部落ちたんや」

 「結局なぁ、京都〇国〇大学にしか行けへんかったんや」

 「大学入試は厳しいぞ」

 

 大学進学を考えていたため、これらの先生の言葉が脳に突き刺さった。

 小生は中学卒業後、当時スパルタ教育による国立私立難関大学への進学実績を誇っていた高校に入学した。

 高校3年間を受験勉強に費やした結果、運よく第一志望の大学へ進学することができた。

 先生の嘘つき。

 3年間、しっかりした指導を受けると、成績は伸び、合格できるではないか。

 

 先生の第一志望はどこの大学だったのだろう。

 中学生の時に本人に聞かなかったのが今でも悔やまれる。

 ようやく一年で一番厳しい時期が終わった。

 精神、肉体ともに疲弊している。

 この数日間、意欲が湧いてこない。

 これが一時的な現象であればよいが、長く続くとあの疾患の悪化を懸念せねばならない。

 

 最終日になり、多くの資料を持ち込んできた御仁がいる。

 その御仁は同業他社に依頼したのだろうを推測していたが、最終日の昼に現れた。

 当然、期限には間に合わない。

 期限後であるため、付帯税が課されることから、なるべく早く終わらせねばならない。

 それを二等兵の小生がやらされることとなった。

 即ち延長戦に突入である。

 

 

 現在、繁忙期を迎えている。

 やらねばならぬことが期日に間に合うかどうか不透明である。

 キャパシティーを大幅に超えているため、奴隷のように使われる。

 

 今年もあの現象が始まった。

 歩行者の信号機が夜になると走る。

 帰宅する頃に小生の乱視が悪化し、歩行者信号の脚が5本くらいに見える。

 漫画で描かれる走るシーンが現実のものとなっている。

 

 期限に間に合わないと、延長戦に突入する。

 これだけは避けたい。