抑鬱亭日乗 -3ページ目

抑鬱亭日乗

複数の精神疾患を抱える者の独言を忌憚なく収録する
傾いた視線からこの世はどのように見えるのか

 数年ぶりに映画館へ行った。

 COVID19が地球を蔓延する前から訪れていない。

 最後に映画館で映画を鑑賞したのはいつなのか記憶にない。

 

 映画が上映さえる前に複数の作品予告が放映される。

 かつてこれを参考にして映画を観に行っていた。

 予告を観ていたかったら、その存在を知ることはなかった作品も多い。

 

 しばらく映画館へ行っていない間に映像技術や音響技術が大きな発達を遂げていたことに驚いた。

 かつて映画館で映画を鑑賞していた頃とは隔世の感がある。

 

 映画を鑑賞するにあたり、自分では解決できない大きな問題点がある。

 他の観客の民度の問題である。

 大きな問題点は映画が始まる前から世間話や噂話で盛り上がる御仁が後ろに座っていることである。

 上映時間前に噂話で盛り上がるのはその御仁の自由である。

 だが、シアターが暗くなり、予告が始まっても会話は止まらない。

 

 あまりにも賑やかなので、前に座っている御仁と隣に座っている御仁がその方向をチラチラとみる。

 おそらく大きなノイズを発する御仁への警告であるのだろう。

 しかし、オバハンは会話を止めようとはしない。

 小生も後ろから聞こえる大きな会話に怒りを禁じえなかったのでオバハンに言った。

 

 「黙って観られへんのんか」と他の観客にも聞こえるように。

 

 残念なことに、小生の警告は何の役にも立たなかった。

 他の映画の予告であっても、次に鑑賞する作品の参考になることが多い。

 それ故、映画の予告も小生は静かに鑑賞したい。

 

 本編の上映が始まってからはオバハンは黙り、作品を静かに鑑賞することができた。

 

 後になり、映画の予告はCMのようなものなので会話をするくらいなら何の問題もないのかもしれないという見方に気が付いた。そう考えると、小生の警告が他人の自由を侵害するのかもしれない。

 

 実らぬ努力ほど空虚なものはない。

 必死で実現させようと努めるが、うまくはいかぬ。

 打ちひしがれた小生の精神は、湖に沈殿した泥のよう。

 このような状態になるのは久方ぶりである。

 

 自分は何のために努力をしているのか。

 何のために生きているのか。

 わからない。

 

 このような精神状態で盆を過ごしている。

 

 先日は二ヵ月に一度の診察日。

 

 また医者が変わった。

 もう何人目の医者なのかよくわからない。

 短期で他の病院に転職する医者、医大の医局から仕方なく来ている医者、院長として引き抜かれた医者、独立開業を果たす医者。

 医者も諸般の事情により、在籍する組織を転々とするようだ。

 医者は本気で治療する意思があるのだろうか。

 

 今回の医者もどこかからやって来たようだ。

 ということは、いずれどこかへ去っていくのかもしれない。

 

 「初めてですよね」という医者。

 初対面以外に何がある。

 先方は過去世で小生と関与した記憶があるのだろうか。小生は覚えていない。

 

 医者の質問に答える小生の言葉をパチパチとパソコンに入力する。

 医者は「アンタを診てやってるのだ」という表情を浮かべている。本人は意識していないだろう。

 

 医者が小生に質問する。

 「今、10点中、ココロは何点ですか」と。

 長く精神科の医者に接してきたが、この質問は初めてである。

 「7~8点くらいですね」と返す。

 即座に医者は「その2~3点は何ですか」と小生に返す。

 言語化できない感覚がその2~3点である。まずこのような議論をする前に「10点の定義」を明らかにすべきである。

 小生は「その10点の定義は何ですか」と愚問を発した。

 医者は気を悪くしたらしい。初対面で「その10点の定義は何ですか」と問うドアホに初めて会ったのだろう。

 

 患者として医者と良い関係を築きたいが、初対面で先方はココロにシャッターを下ろしたかもしれない。

 「10点の定義」を明確にしたうえで、現在の点数を答える方が医者に精神状態が通じやすくなるのではなかろうか。

 

 精神状態に点数をつける発想は好きになれない。

 購読している地方紙に再び見覚えのある顔写真が掲載されていた。

 以前に登場願った中学生3年の時の英語の先生である。

 「大学受験で第一志望には合格できない」と信じて止まない御仁である。

 この4月から任期3年の地方公共団体の高いポジションに就いている。

 

 小生はこの人物を忘れることはないだろう。

 「大袈裟な」と思われるかもしれないが、あの出来事は数分前の記憶のように完全に定着している。

 

 場所は富士山の河口湖にある旅館の一室。

 修学旅行で前日は東京を見物し、この日は河口湖付近の旅館に宿泊した。

 残念なことに田舎のアホな中学生は発想が貧困である。知的な時間の過ごし方ができないのである。

 数名の人物が「野球拳をしよう」と言い始めた。

 小生は拒否したが、参戦することになってしまった。

 この時に断固拒否していればあのようなことは起こらなかっただろう。

 

 ルールは誰でも知っている。

 それに加えて敗れた御仁は全裸になり、その場で両手を挙げて手のひらを合わせる。

 その状態でその場ででグルグルと3回まわらねばならない。想像すると滑稽な状態である。

 アホにしかできない発想である。

 

 当初、参戦を拒んだ小生だが、およそ10名で繰り広げられる男の野球拳に狂ってしまった。

 およそ10名がジャンケンをすると、勝敗はなかなか決まらない。

 数えきれないアイコの後に突然、勝敗が決する。

 現場のボルテージは自然と高まり、興奮し、大声を出して野球拳に興ずる。

 やがて1名が敗退し、その場で全裸となり両手を挙げて、手のひらを合わせ、3回転する。

 腹の底から出される笑い声はとてもうるさいらしい。

 

 突然、ドアが開いて「お前ら、うるさいぞ」と英語の先生が大声で注意しに来た。

 野球拳を急遽中止し、テレビを閲覧するが、再び時間を弄ぶ。

 ある御仁が「小声で野球拳したらええやん」と提案し、再び野球拳が開催された。

 小声だったのは最初だけだった。

 

 次第に白熱した展開となり、気付かぬうちに大声を出してしまう。

 ついに小生が敗退してしまった。全裸になり、その場で3回転しなければならない。

 覚悟を決めた小生は、全裸となり、両手を挙げて手のひらを合わせ、回転し始めた。

 

 悲劇は突然、訪れる。

 「お前ら、うるさいぞ、何回同じこと言わせるねん、静かにしろゆうてるやろ」と部屋のドアが開いた。

 小生は最もドアに近い場所でプレイしていた。ドアが開いた瞬間、小生はドア側を向いていた。

 ドアを開けた先生は、全裸の小生と鉢合わせになる。お互い、対面している状態である。

 人間は驚くと、そこで動きが止まるらしい。小生は動けなくなった。

 ドアを開けた先生も驚いたのだろう、微動だにしなかった。両者は数秒間見つめあった。

 「お前ら、うるさいゆうてるやろ、ん、おい、○○(小生の苗字)、おまえ何してるねん、パンツぐらいはかんかい」と大声で注意を受けた。

 

 その時の記憶が色濃く今でも残っている。

 高いポジションに就いた先生は覚えていないだろうが、小生にとっては終生、忘れることができない出来事であった。

 この事実は数日の間に3年生、全員が知ることとなってしまった。

 

 職務上の事情により、書類を郵送することがある。

 書類関係は電子メールに添付して送信する方が速く、確実に届く。

 この場合、アドレスを間違えて送信しなければよい。

 政府はペーパーレス社会の実現を目指すが、まだ官公庁に書類で提出することは多々ある。

 

 2024年10月から郵便物の送料が値上がりした。

 書類を郵送する場合、定形外で50g以上100g以内なら180円の切手を貼らねばならぬ。

 最近の米の価格も高いが、郵送料も高い。

 定形外で3通の郵便物を郵送せねばならぬ事情があったので、職場にある切手を探す。

 

 発見できたのは、50円切手と10円切手である。他にはない。

 定形外3通で540円を要する。

 郵便物1通につき、50円切手を2枚、10円切手を8枚、合計10枚を要する。

 A4の封筒に10枚の切手を素早く貼らねばならぬ。

 

 あの日、多くの切手をレロレロした。

 郵送中に剥がれぬように入念に切手をレロレロせねばならない。

 レロレロしすぎると、切手の両端が反り返り、封筒に貼りにくくなる。

 縦に5枚まとめて切手をレロレロしたが、途中で舌が乾いてくる。

 30枚の切手をレロレロし終えた頃には口内が乾燥していた。

 二等兵はこういった雑務もこなせねばならぬ。

 

 レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ

 

 最後にもう一度、レロレロ