抑鬱亭日乗 -3ページ目

抑鬱亭日乗

複数の精神疾患を抱える者の独言を忌憚なく収録する
傾いた視線からこの世はどのように見えるのか

 実らぬ努力ほど空虚なものはない。

 必死で実現させようと努めるが、うまくはいかぬ。

 打ちひしがれた小生の精神は、湖に沈殿した泥のよう。

 このような状態になるのは久方ぶりである。

 

 自分は何のために努力をしているのか。

 何のために生きているのか。

 わからない。

 

 このような精神状態で盆を過ごしている。

 

 先日は二ヵ月に一度の診察日。

 

 また医者が変わった。

 もう何人目の医者なのかよくわからない。

 短期で他の病院に転職する医者、医大の医局から仕方なく来ている医者、院長として引き抜かれた医者、独立開業を果たす医者。

 医者も諸般の事情により、在籍する組織を転々とするようだ。

 医者は本気で治療する意思があるのだろうか。

 

 今回の医者もどこかからやって来たようだ。

 ということは、いずれどこかへ去っていくのかもしれない。

 

 「初めてですよね」という医者。

 初対面以外に何がある。

 先方は過去世で小生と関与した記憶があるのだろうか。小生は覚えていない。

 

 医者の質問に答える小生の言葉をパチパチとパソコンに入力する。

 医者は「アンタを診てやってるのだ」という表情を浮かべている。本人は意識していないだろう。

 

 医者が小生に質問する。

 「今、10点中、ココロは何点ですか」と。

 長く精神科の医者に接してきたが、この質問は初めてである。

 「7~8点くらいですね」と返す。

 即座に医者は「その2~3点は何ですか」と小生に返す。

 言語化できない感覚がその2~3点である。まずこのような議論をする前に「10点の定義」を明らかにすべきである。

 小生は「その10点の定義は何ですか」と愚問を発した。

 医者は気を悪くしたらしい。初対面で「その10点の定義は何ですか」と問うドアホに初めて会ったのだろう。

 

 患者として医者と良い関係を築きたいが、初対面で先方はココロにシャッターを下ろしたかもしれない。

 「10点の定義」を明確にしたうえで、現在の点数を答える方が医者に精神状態が通じやすくなるのではなかろうか。

 

 精神状態に点数をつける発想は好きになれない。

 購読している地方紙に再び見覚えのある顔写真が掲載されていた。

 以前に登場願った中学生3年の時の英語の先生である。

 「大学受験で第一志望には合格できない」と信じて止まない御仁である。

 この4月から任期3年の地方公共団体の高いポジションに就いている。

 

 小生はこの人物を忘れることはないだろう。

 「大袈裟な」と思われるかもしれないが、あの出来事は数分前の記憶のように完全に定着している。

 

 場所は富士山の河口湖にある旅館の一室。

 修学旅行で前日は東京を見物し、この日は河口湖付近の旅館に宿泊した。

 残念なことに田舎のアホな中学生は発想が貧困である。知的な時間の過ごし方ができないのである。

 数名の人物が「野球拳をしよう」と言い始めた。

 小生は拒否したが、参戦することになってしまった。

 この時に断固拒否していればあのようなことは起こらなかっただろう。

 

 ルールは誰でも知っている。

 それに加えて敗れた御仁は全裸になり、その場で両手を挙げて手のひらを合わせる。

 その状態でその場ででグルグルと3回まわらねばならない。想像すると滑稽な状態である。

 アホにしかできない発想である。

 

 当初、参戦を拒んだ小生だが、およそ10名で繰り広げられる男の野球拳に狂ってしまった。

 およそ10名がジャンケンをすると、勝敗はなかなか決まらない。

 数えきれないアイコの後に突然、勝敗が決する。

 現場のボルテージは自然と高まり、興奮し、大声を出して野球拳に興ずる。

 やがて1名が敗退し、その場で全裸となり両手を挙げて、手のひらを合わせ、3回転する。

 腹の底から出される笑い声はとてもうるさいらしい。

 

 突然、ドアが開いて「お前ら、うるさいぞ」と英語の先生が大声で注意しに来た。

 野球拳を急遽中止し、テレビを閲覧するが、再び時間を弄ぶ。

 ある御仁が「小声で野球拳したらええやん」と提案し、再び野球拳が開催された。

 小声だったのは最初だけだった。

 

 次第に白熱した展開となり、気付かぬうちに大声を出してしまう。

 ついに小生が敗退してしまった。全裸になり、その場で3回転しなければならない。

 覚悟を決めた小生は、全裸となり、両手を挙げて手のひらを合わせ、回転し始めた。

 

 悲劇は突然、訪れる。

 「お前ら、うるさいぞ、何回同じこと言わせるねん、静かにしろゆうてるやろ」と部屋のドアが開いた。

 小生は最もドアに近い場所でプレイしていた。ドアが開いた瞬間、小生はドア側を向いていた。

 ドアを開けた先生は、全裸の小生と鉢合わせになる。お互い、対面している状態である。

 人間は驚くと、そこで動きが止まるらしい。小生は動けなくなった。

 ドアを開けた先生も驚いたのだろう、微動だにしなかった。両者は数秒間見つめあった。

 「お前ら、うるさいゆうてるやろ、ん、おい、○○(小生の苗字)、おまえ何してるねん、パンツぐらいはかんかい」と大声で注意を受けた。

 

 その時の記憶が色濃く今でも残っている。

 高いポジションに就いた先生は覚えていないだろうが、小生にとっては終生、忘れることができない出来事であった。

 この事実は数日の間に3年生、全員が知ることとなってしまった。

 

 職務上の事情により、書類を郵送することがある。

 書類関係は電子メールに添付して送信する方が速く、確実に届く。

 この場合、アドレスを間違えて送信しなければよい。

 政府はペーパーレス社会の実現を目指すが、まだ官公庁に書類で提出することは多々ある。

 

 2024年10月から郵便物の送料が値上がりした。

 書類を郵送する場合、定形外で50g以上100g以内なら180円の切手を貼らねばならぬ。

 最近の米の価格も高いが、郵送料も高い。

 定形外で3通の郵便物を郵送せねばならぬ事情があったので、職場にある切手を探す。

 

 発見できたのは、50円切手と10円切手である。他にはない。

 定形外3通で540円を要する。

 郵便物1通につき、50円切手を2枚、10円切手を8枚、合計10枚を要する。

 A4の封筒に10枚の切手を素早く貼らねばならぬ。

 

 あの日、多くの切手をレロレロした。

 郵送中に剥がれぬように入念に切手をレロレロせねばならない。

 レロレロしすぎると、切手の両端が反り返り、封筒に貼りにくくなる。

 縦に5枚まとめて切手をレロレロしたが、途中で舌が乾いてくる。

 30枚の切手をレロレロし終えた頃には口内が乾燥していた。

 二等兵はこういった雑務もこなせねばならぬ。

 

 レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ

 

 最後にもう一度、レロレロ

 

 京都の地方紙を購読している。

 紙面の端にカラーで顔写真が印刷されている。

 桂小枝に似た60代のオッサンである。

 

 その記事を読むと、中学生の時の英語の先生ではないか。

 校長を務め、定年退職は隠居生活を送っているものと思っていたが、教育に関する活動に携わっているようだ。

 任期は3年と記されていることから、何らかのポジションに就いたと考えられる。

 

 この先生にはいくつかの忘れられないエピソードがある。

 

 中学3年の1学期、最初の英語の授業で先生は警告した。

 「おい、この中で大学受験を考えてる奴はいるか?」

 小学生の頃から、小生は大学へ進学すること決意していたためか、今でも鮮明に覚えている。

 

 「大学入試ではなぁ、第一志望に合格することはでけへんのやぞ。覚悟しとけ」

 「俺はなぁ、第6志望の大学に行ったんや、第1志望にから第5志望まで全部落ちたんや」

 「結局なぁ、京都〇国〇大学にしか行けへんかったんや」

 「大学入試は厳しいぞ」

 

 大学進学を考えていたため、これらの先生の言葉が脳に突き刺さった。

 小生は中学卒業後、当時スパルタ教育による国立私立難関大学への進学実績を誇っていた高校に入学した。

 高校3年間を受験勉強に費やした結果、運よく第一志望の大学へ進学することができた。

 先生の嘘つき。

 3年間、しっかりした指導を受けると、成績は伸び、合格できるではないか。

 

 先生の第一志望はどこの大学だったのだろう。

 中学生の時に本人に聞かなかったのが今でも悔やまれる。