川口市 草加市の税理士/相続税・遺言・成年後見ブログ  -2ページ目

不動産オーナー入門

1.相続した財産をどこに運用するか 

相続した財産や退職金の運用先
1. 預金などにして寝かせる(財産凍結し、生活費へ充当)
2. 株など金融資産に投資する
3. 不動産事業などを行う


財産凍結のメリット・デメリット
1. 将来の生活不安・年金不安に備えられるメリットあり
2. 2次相続などにおいて 税金流出するデメリットあり
3. キャッシュがあれば、相続トラブル・納税資金不足は回避しやすい


金融資産投資のメリット・デメリット
1. リスクとリターンから、商品を選べるメリット(低リスク商品で生活不安をカバーし、高リスク商品で次の投資資金をつくれる)
2. 税金流出、商品の複雑さ、自己責任のデメリットあり
3. 営業マンの情報力、信用性がリターンを左右する


不動産事業のメリット・デメリット
1. 税金をコントロールしながら、財産を子孫へ承継できる
2. 初期投資が大きいデメリット
3. 優良物件なら初期投資は早期回収できるが、不良物件なら回収に時間がかかる(管理会社がリターンを左右)
4. 相続トラブル・納税資金不足が生じやすいデメリット
5. 金利・景気に関係なく、安定利回りを獲得



2.相続財産で不動産オーナーになる 

相続財産に賃貸不動産がある場合
1. 物件別の貸借対照表、損益計算書を作成し、収益性を検証(空き室状況、広告・管理状況を把握)
2. 管理会社に相談し、リフォーム(追加投資)による事業計画を策定 (低収益の場合 売却により 高収益物件に組み換えることも検討)
3. 被相続人の住居や遊休不動産についても 収益化を検討(低収益だが、青空駐車場も選択肢の1つ)


相続財産で家賃保証付き賃貸不動産を購入する場合
1. 8千万円の相続財産で 土地5千万円、建物3千万円のアパートを購入し 税金支払後の手取りを 年310万円と予測した場合
2. 30年後に建物を取り壊した場合 8千万円の現金が 9300万円の現金と土地5千万円(取得価額)に代る


相続財産3千万と借入金5千万で不動産を購入する場合
1. 30年ローン(金利年100万円、年返済元本160万円)とし、借入と税金を支払後の手取りを 年80万円と予測した場合
2. 30年後に建物を取り壊した場合 3千万円の現金が 2400万円の現金と 土地5千万円(取得価額)に代る
3. 土地の時価により 投資回収率が変わるが、財産を含めた利回りという意味では、金融資産と比較して、安定高利回りといえる(インフレや不況にも強い)



3.賃貸不動産を購入する前に   

投資(お金を出す)だけでなく、事業として考える
1. 現場の管理業務や面倒な税金計算は、専門家に任せながら、専門家から多くの選択肢を引出し、自分で判断
2. 株や不動産で損する人は、全てを自分でやりたがる人と、全てを他人任せにする人


不動産会社相談前に、事業イメージつくり
1. まず希望手取額を設定(年金相当額や次投資見込額を考慮して算出)
2. 希望手取額÷(1-実効税率)より、税引き前の目標利益を算出(実効税率は各々異なるが、所得税率・住民税率から算出。目安0.4など)
3. 目標利益÷利益率より、目標賃貸料を算出(利益率は物件により各々異なるが、管理会社手数料、修繕費から算出。目安0.7など)
4. 目標賃貸料をもって、不動産会社に相談
5. 不動産会社から、サブリースや中古物件毎の初期投資額と事業計画修正案の提案を受ける
6. 10年~30年単位で、投資回収を再計算


事業をバックアップする専門家探しがポイント
1. 出来れば 特定の不動産会社と付き合いのない税理士に相談した方がいい
2. 仲介会社・管理会社探しは、地元と大手の両方に相談(税理士に立会を依頼したり、数字を検証してもらう)

 


4. 専門家選びのポイント

信頼できる不動産仲介者・管理者選び
1 都道府県で宅建業者の名簿を閲覧
2 更新回数から 経験年数を見る
3 取引実績、決算状況から 財務健全性を見る
4 行政処分の有無から 信頼性を見る


不動産仲介者・管理者との契約の留意点
1 管理契約書の署名前に 弁護士による契約書チェックや税理士に立会を依頼するなど リスク対策が必要
2 夜逃げや家賃滞納者を想定して 対応をマニュアル化してもらい 双方ともマニュアルに沿って行動(費用負担の問題も含めて契約書に織り込む)
3 空室対策として 具体的に 何を どれくらいの費用をかけて行うかも 事前に決めておく
4 収支報告書、リフォーム報告書を写真つきで 毎月確認できるようにする
5 誠実に履行されなかった場合 契約解除条項を確認


他の専門家の必要性
1 不動産と税金は関係性が強いので、相続や不動産に強い税理士と 細くて長い付き合いを継続した方がいい(確定申告や税務相談だけでもいい)
2 借主トラブル対策として、管理会社側の弁護士に任せるより、自分の相談窓口があった方がいい(このときの費用負担を管理契約でも 話合う必要あり)

 
5.ターゲット物件が決まったら事業計画書を作成

現地調査をして、事業計画を自分で作成 
1. 中古物件の場合 その物件の過去の空室率、1室あたりの居住年数、リフォーム代、家賃滞納の実績データ
2. 近隣の賃料・敷金相場と人口増加率、年齢層データ、生活圏調査、空室調査
3. 家賃保証の検討


賃貸収入の検証ポイント
1. 空室率(入居率)は妥当か(楽観案と悲観案を作成)
2. 賃料は妥当か(時の経過に伴い賃料は逓減予測をし、修繕費は逓増予測した方が安全)
3. 礼金、更新料は妥当か(仲介手数料は考慮しているか)


経費の検証ポイント
1. 滞納や夜逃げを想定した費用(家財整理費用、クリーニング費用)は考慮しているか
2. 不動産取得時の不動産取得税、登録免許税、売買契約書上の印紙、仲介手数料、司法書士手数料、借入手数料、借入保証料を考慮しているか
3. 固定資産税、借入利息、管理手数料、損害保険料、税理士手数料を考慮しているか
4. 建物の減価償却計上、キャッシュフローにプラス


キャッシュフローの検証ポイント
1. 収入と経費の差額から、所得税・住民税と借入返済元本を引いた金額が その年の手取りキャッシュ増減
 


6.物件別の貸借対照表を作成する 

貸借対照表の構成要素
1. 資産は、財産(預金、土地、建物)が構成
2. 負債は、借入金、預かり敷金が構成
3. 資本は、自己資金投資額、生活費・持出用の事業主勘定、事業利益の累積が構成
4. 物件別の通帳を作り、収入・経費を通帳で管理するのがポイント
5. 確定申告に際し、物件別の貸借対照表を作成し、資産利益率(3%~が目安)を検証


投資回収額と貸借対照表の関係
1. 預金額は、事業利益累積-借入返済額の残であり、投資回収額(借入がなくなれば、事業利益分の財産が増えることになる)
2. 土地は、事業撤退しても残るため、再運用して事業利益を得るか、売却により回収できる


利回り計算の意味
1. 物件別の事業利益(青色申告特別控除前)+減価償却-借入返済元本-所得税・住民税=税引き後の利益
2. 税引き後の利益÷自己資金投資額=手取り利回り


自己資金が多いほど、事業利益の財産増加効果が高い
1. 相続した財産を、不動産取得の自己資金に投入すれば、事業利益や税金減少分の財産が、留保される

 


7. 税金流出をコントロールして財産を承継

不動産(土地)承継が最も税金対策が行いやすい
1. 預金、株などの金融資産は、時価そのまま課税
2. 不動産は、一般的に時価の7~8割が相続税評価
3. 不整形の土地は、形状により  さらに1~3割評価減
4. 賃貸不動産(貸家建付地)は、さらに21%評価減(借地権割合が70%の場合)
5. 一定規模以上の賃貸不動産は、一定の地積まで さらに50%評価減
6. 相続税の金銭納付が困難な場合 低収益物件などによる物納の余地あり
7. 眠っている財産を不動産にして、税金対策を慎重に行いながら、子孫に承継する方が現行法では有利


不動産は、生前の税金対策が行いやすい
1. 一定規模以上の不動産賃貸事業について、専従者給与により、所得移転の節税可
2. 黒字になりやすい不動産事業と、赤字事業の損益通算を利用して節税可
3. 不動産管理会社を設立して、親族への所得移転、生命保険を原資とした退職金非課税枠の利用、自宅の社宅化など トータル節税可
4. 高収益物件、長期保有物件を法人へ売買することにより、個人・法人トータル節税可
5. 不動産管理会社の株を、暦年贈与や相続時精算課税により 計画的に後継者に事業承継可
6. 不動産事業により 税金流出を抑えながら財産承継可 


8.法人なりで節税と事業承継 

税率の差・非課税枠を利用した節税
1. 法人税率と所得税率は、事業利益が高いほど、法人の方が節税(事業利益は法人に留保)
2. 子が株主、地主(父)が社長の不動産管理会社を設立し、父の賃貸収入の一部を、法人に管理費として移転し、所得税節税
3. 事業利益を、子・母などの職対対価(給与)支給することにより、所得税の分散節税
4. 留保した事業利益を、税率の低い退職金により 父・母・子へ還元することにより 所得税節税
5. 法人契約で 父が被保険者の生命保険を支払い 法人税節税(個人契約は経費にならない)した上で、相続時に 退職金原資に充当し、退職金の非課税枠により 相続税節税


建物を法人に売却・一括貸することによる節税
1. 自宅を法人に売却し、社宅に係る費用を経費にすることにより、法人税節税(給与課税、借地権課税に注意)
2. 賃貸不動産を法人に一括貸し後に、子に建物を贈与することにより、相続税節税(借地権課税に注意)
3. 賃貸不動産を法人に売却し、通常地代+一定額を収受することにより、借地権を法人に移し、相続税節税
4. 賃貸不動産を法人に売却し、通常地代を収受し、無償返還届を税務署に提出することにより 相続税節税
5. 時価が低い不動産を、法人に売却し、所得税の負担を抑えながら、税率の低い法人税へシフト

相続と遺言制度

1. 相続が起きたら いつまでに何をするか  

相続が起きたら いつまでに何をやるか
1. 相続7日以内に、市町村へ死亡届を提出
2. 年金停止・寡婦年金移行、葬儀給付・高額医療費の請求を 市町村・社会保険事務所で相談・手続する
3. 相続3月以内に、財産調査、遺言書の確認、預金閉鎖、生命保険請求→債務が過大の場合 相続放棄・限定承認を弁護士に相談
4. 相続4月以内に、所得税申告書を税務署へ提出し、所得税を納付(事前に税務署・税理士へ相談)
5. 相続10月以内に、相続税申告書を税務署へ提出し、相続税を納付(事前に税務署・税理士へ相談)
6. 相続1年以内に、遺留分減殺請求


遺言書がない場合
1. 相続放棄、限定承認を選択しなかった場合、債務も含めて財産を承継(単純承認)
2. 相続人全員で遺産分割協議を行い、協議が整った場合は遺産分割協議書に署名・押印
3. 協議が整わない場合は家庭裁判所へ調停を検討


遺言書がある場合
1. 公正証書遺言の場合 遺言執行者により 遺言執行
2. 自筆証書遺言などの場合 封をしたまま、家庭裁判所に検認を請求
3. 遺言書に記載のない財産がある場合、遺言による取得を望まない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う


2.遺言書がある場合の相続・相続税

遺言による財産取得は 相続税の対象となる
1. 個人の死亡により、個人が相続・遺贈・死因贈与により財産を取得した場合 相続税の対象となる
2. 遺贈とは 遺言により 財産を無償で与えること(遺言者の死亡により、遺贈の効力が発生する)
3. 相続権がなくても 遺贈により財産を取得した場合 取得した者(受遺者)は 相続税の対象となる


遺贈制度のあらまし
1. 受遺者は 遺贈を放棄できる(遺言を開封して初めて財産取得を知るケースもあるため)
2. 受遺者が相続人の場合 遺贈放棄は 遺言を白紙にして、相続人全員と分割協議をすることを意味する
3. 受遺者が相続人以外の場合 遺贈放棄は 遺産放棄を意味する
4. 遺言者の意思を 制限するため 一定の相続人には遺留分制度(詳細後述)がある


遺贈方法・遺言内容のあらまし
1. 遺言者の全財産を 取得者ごとの取得割合(100%含む)により 遺贈する包括遺贈と
2. 特定財産を特定者に遺贈する特定遺贈 がある
3. 負担をつけて、財産を遺贈する負担付遺贈もある
4. 包括遺贈の受遺者は 遺贈でなく、相続の承認・放棄手続(詳細後述)を経る
5. 遺言執行者などが 遺言内容を実行する


3.相続人の修正と相続税(1) 

相続人は、配偶者と先順位の血族相続人
1. 被相続人に子(孫)がいる場合 配偶者と子(孫)が相続人。後妻の連れ子は 相続人でない
2. 被相続人に子がいない場合 配偶者と被相続人の父母(祖父母)が相続人。配偶者の父母は相続人でない
3. 被相続人に子と父母がいない場合 被相続人の兄弟が相続人。兄弟が死亡していた場合 子が相続人 


養子縁組・遺言により相続人を増加するケース
1. 内縁関係にあり、(父が)子を認知していない場合 遺言により認知して、相続権を与えた上、トラブル回避のため 遺言により 相続財産を指定
2. 後妻の連れ子を養子縁組により相続権を与えた上、トラブル回避のため 遺言により相続財産を指定
3. 生活介護をしてくれた長男の嫁などに 遺言による遺贈をする(養子縁組により相続権を与えても可)


相続人が増加した場合の相続税計算
1. 相続税計算上 非課税枠(5千万円+1千万円×法定相続人数)あり
2. 法定相続人数が養子縁組により増加した場合 1人(実子がいない場合 2人)まで 非課税枠計算に算入可
3. 孫養子、兄弟など一親等以外の者は 通常の相続税に20%加算する(一親等の代襲相続人は加算なし)
4. 一親等の者とは 被相続人の子、養子(孫養子除く)、父母をいう


4.相続人の修正と相続税(2) 

相続人に一定の非行があれば相続権を廃除できる
1. 特定の相続人に、虐待、重大な侮辱、著しい非行がある場合が対象
2. 生前または遺言により、家庭裁判所に申立て、家庭裁判所が相続人の廃除を認めた場合、相続権を失う
3. 廃除された相続人は 遺留分請求権がない→遺言者の自由意思による財産承継が可能
4. 一定の犯罪行為をした相続人に対して、家庭裁判所の判断なしで 相続権を奪う相続欠格制度もある
5. 相続権を失った相続人に子がいる場合 代襲相続あり


相続人が減少した場合の相続税計算
1. 相続税計算上 非課税枠(5千万円+1千万円×法定相続人数)あり
2. 相続権を失った相続人分は非課税枠計算に算入しない
3. 相続権を失った相続人に子がいる場合 代襲相続人は 非課税枠計算に算入できる


生前贈与・死因贈与による財産承継割合の修正
1. 相続権の修正が困難な場合、相続財産の取得割合の修正で対応
2. 贈与者と贈与を受ける者の合意(死因贈与の場合 書面)により、財産を贈与できる
3. 生前贈与は贈与税、死因贈与は相続税が課税
4. 相続3年以内の贈与、相続時精算課税制度の贈与は相続税計算し、納付した贈与税を引いた金額を納付


5.相続人の修正と相続税(3) 

相続人は相続を放棄できる
1. 相続開始3ケ月以内に、家庭裁判所へ申述することにより、相続財産(債務含む)の取得を放棄できる
2. 債務を相続したくない場合、特定相続人のみに相続させたい場合(ほかの相続人が放棄する)に利用
3. 相続人各人でも 相続放棄の申述ができる


相続を放棄した場合の相続税計算
1. 相続税計算上 非課税枠(5千万円+1千万円×法定相続人数)あり
2. 相続放棄がなかったものとして、法定相続人数を計算


相続人は限定承認できる
1. 限定承認とは 取得した財産を限度として、債務を引き継ぐこと
2. 相続人全員が 相続開始3ケ月以内に、家庭裁判所に申述することにより、限定承認できる


限定承認の場合の税金計算
1. 限定承認の場合 被相続人に譲渡所得税が課される
2. 相続財産の相続時の価格(相続税法評価ではなく)から取得費等を控除した金額(含み益)に対して課税
3. 譲渡所得税の特例のうち 親族間譲渡適用不可のもの(居住用財産特例など)は、適用不可

相続放棄、限定承認を選択しない場合 単純承認となる


6. 相続財産の持分調整と相続税 

寄与分により貢献度を反映できる
1. 被相続人の財産増加・維持に 特別貢献した相続人には、寄与分を加算調整できる
2. 寄与分は相続人の協議により決まり、協議しない場合 家庭裁判所が決める
3. 被相続人:社長 、子:役員のケースで、子が社長の財産(事業利益)の増加に貢献した場合などが該当


相続税計算の考え方(寄与分について)
1. 相続税は 財産取得の割合に応じて負担する(寄与分により相続財産が増加した場合 相続税も増加)
2. 配偶者には 法定相続分(また1.6億円)まで課税されない減額制度がある→一定の寄与は反映


相続対策では 特別受益持戻し制度のケアが必要
1. 特別受益持戻しとは、過去の贈与財産を 相続財産に取り込んで、相続人の相続持分を計算すること
2. 被相続人から子への住宅資金や事業資金援助、被相続人が負担した医学部など高額な学費などが該当
3. 遺言書に 持戻免除の意思表示をできる


相続税計算の考え方(特別受益持戻しについて)
1. 相続時精算課税制度による贈与分について、持戻して相続税を計算
2. 暦年贈与分のうち、相続前3年以内の贈与分のみ 持戻して相続税を計算


7.相続財産の分割と相続税(1) 

3つの分割方法
1. 現物分割(相続財産を現物で相続人に分割する)
2. 換価分割(未分割のまま 相続財産を金銭化して相続人に分割する)
3. 代償分割(相続財産を現物で取得した相続人が、バランスをとるため、他の相続人に代償金を払う方法)


遺言により分割方法を指定できる
1. 遺言により分割方法を指定した場合、遺言執行者が指定された分割方法(指定分割)により執行する
2. 遺言により分割方法の指定がない場合 相続人の協議により分割(協議分割)する
3. 相続人の協議がまとまらない場合 家庭裁判所の審判により分割(審判分割)する
4. 審判分割は 原則 現物分割による


遺言と代償分割により、法定相続割合を修正する
1. 遺言により、相続人の持分を指定する
2. 遺言により、代償分割を指定する(指定持分と法定相続割合の差を代償金で調整)
3. 持分>法定相続割合の相続人の代償金原資を、生命保険金や生前贈与で準備(遺言により持戻し免除)
4. 後継者に不動産・自社株を 遺言により 指定相続する場合、相続トラブル回避のため代償分割を検討
5. 代償金原資を 固有財産(相続財産含む)の譲渡により調達する場合 譲渡所得税に注意


8.相続財産の分割と相続税(2) 

相続財産が分割しない場合の相続税デメリット
1. 法定相続割合(また包括遺贈割合)で相続税計算
2. 配偶者の税額軽減・小規模宅地評価減など 節税対策に有効な制度が使えない
3. ただし申告期限から3年以内は適用余地あり
4. 物納・納税猶予など納税対策に有効な制度が使えない


分割協議を修正した場合の注意点
1. 民法上 分割協議のやり直しが認められるのは 民法上無効とされる事由のある場合(法定解除)と全相続人の合意がある場合(合意解除)のみ
2. 錯誤等で分割協議が無効判決になった場合 更正の請求(嘆願含む)により 相続税計算修正
3. 全相続人による合意解除は、贈与税、譲渡所得税(特例なし)になる可能性あり


遺言と異なる分割協議も有効だが
1. 申告期限後の場合 贈与税が課税されるケースあり


相続時精算課税制度を活用した生前分割
1. 相続時精算課税制度は生前贈与を一律20%贈与税で相続人に生前分割する制度
2. 相続時に贈与財産(贈与時評価額)を相続財産に加算して相続税を計算し、贈与税との差額を納付する
3. 不動産や自社株など相続トラブルが事業に影響を与え、かつ評価が高くなるものの生前分割制度として有効

生前相続税計算

1.生前相続計算のススメ 

自分の相続を考える
1. 主目的はトラブル回避。トラブル回避のポイントは意思表示とバランスの提示
2. 事前の家族会議、公正証書遺言、生前贈により、意志表示とバランスを提示するのがトラブル回避のコツ
3. いくらの財産を だれに引継ぐのか を明確に意思表示することにより 意思表示とバランスを提示
4. 家族の仲がいい、財産が少ないなどの場合も 家族の環境が変われば相続トラブルは生じる


生前相続計算までの流れ
1. 相続人を調べ、基礎控除、生命保険等の非課税枠計算
2. 財産と債務を記憶・記録、通帳履歴、通知から調べる
3. 財産目録を作成し、財産を評価する
4. 税金を計算し、今後の対策を考える


生前相続税計算の流れ
1. 純財産を計算する(財産評価額-債務額)
2. 課税遺産総額を計算する(純財産-基礎控除額)
3. 課税遺産総額を各相続人の法定相続割合に分ける
4. 3の金額に税率をかけて各相続人の相続税を計算
5. 各相続人の相続税を合計する(相続税の全体を掴む)
6. 分割案をいくつか作成し、相続割合に応じて相続税を按分した際の各相続人の納税負担を考える
7. 本相続までに解決すべき事、評価を減らす工夫、生前贈与や遺言による外堀対策を考える


2.基礎控除と非課税枠を計算する   

まずは戸籍謄本で自分の相続人を調べる
1. 子(孫)がいる場合、実子と養子、結婚内の子と婚外の子(非嫡出子)を問わず、配偶者と子(孫)が相続人
2. 子がいない場合、配偶者と自分の親(実父母、養父母問わず)が相続人
3. 子と親がいない場合、配偶者と自分の兄弟が相続人
4. 後妻の連れ子、非認知の婚外の子、介護している長男の嫁、孫などと法定相続人とのバランスを考慮(養子により相続権を与えるか、遺言により財産を与えるか)


基礎控除を計算する
1. 基礎控除=5千万円+法定相続人×1千万
2. 内縁関係の妻は法定相続人に該当しない
3. 養子がいる場合 基礎控除計算上の法定相続人にカウントされるのは、他に実子がいる場合1人まで、他に実子がいない場合2人までに制限
4. 特別養子制度の養子、後妻の連れ子の養子には 基礎控除加算の制限なし
5. 子が先に亡くなった場合 孫が法定相続人にカウント(孫が複数いる場合 人数分の基礎控除が加算)
6. 申告まで出生していない胎児はカウントされない


生命保険と退職金の各々の非課税枠を計算する
1. 500万円×基礎控除計算上の法定相続人数
2. 保険証券(自分が被保険者)の保険金額-非課税枠が相続税の対


3.自分の財産の棚卸をする(1)

所有不動産の資料を収集し、財産目録を作成する
1. 土地、建物は固定資産税納付通知明細書から 所在地を確認し、法務局で不動産登記簿・公図を取り寄せる
2. 図書館、法務局に備付けの住宅地図がある場合コピー
3. 不動産購入時の売買契約書、売買価格のわかる資料を整理し、ない場合 建築会社などから取り寄せる
4. 上記より財産目録に 所在地、地積、共有割合を記載
5. 不動産購入のローンがある場合 ローン残を債務として記載(生命保険付ローンの場合 同額を財産へ記載) 
6. マンション所有者は敷地権(建物床面積に応じた土地部分)か土地を区分所有しており、両方とも土地に該当


預貯金の名義と残高を確認し、財産目録を作成する
1. 各金融機関名、口座番号、残高を財産目録に記載
2. 妻の固有財産(妻が働いていた頃の預金、妻の親から妻が相続した預金など)は夫名義の預金と区別
3. 所得のない妻や子が口座名義人の場合 夫の財産として財産目録に記載(贈与課税していないもの)


自分しか知らない財産を財産目録により家族に知らせる
1. 上場株・公社債の銘柄、数を財産目録に記載
2. 書画骨董、美術品、ゴルフ会員権、貴金属の明細、美術年鑑などによる相場がある場合 その価格を記載
3. 知人・会社へ貸付金がある場合 契約書を整理し、残高を財産目録へ記載



4.自分の財産の棚卸をする(2) 

未上場株も相続財産として財産目録に記載
1. 直近3年間の決算書・申告書・株主名簿を取寄せ、法人名と株数を財産目録に記載
2. 今後のため相続が生じた場合の買取の有無、買取価格の算出方法を、事前に法人と話合い文書化しておく
3. 配当や経営決議など株主の権利がない場合 買取検討
4. 経営中枢にいる場合 定款の整備、株贈与・売却、事業承継税制など計画的な活用が必要


生命保険・傷害保険も財産目録に記載
1. 保険証券を請求もれが生じないように別管理し、保険会社、保険証券番号、保険金額を財産目録に記載
2. 保険契約者(保険料支払者)、被保険者、保険金受取者により、税目(所得税、相続税、贈与税)が異なり、税率や課税時期も違うので 要注意(詳細後述)
3. 被保険者が自分以外の生命保険は、相続時に保険金はおりないが、解約返戻金相当の財産価値はあるので財産目録に記載(生命保険に関する権利という)


次の財産も、忘れずに財産目録に記載
1. 退職金見込額(退職金規定を確認)
2. 定期給付契約、信託財産契約による見込収入額
3. すでに生前贈与している財産(贈与契約書、贈与税申告書を整理・保管)
4. 特許権、著作権
5. 個人事業用機械・備品(確定申告を整理・保管)


5.生命保険のポイント 

被保険者が父の各ケース
1. 保険料負担者が父のケース 保険金は父の相続財産(みなし相続財産)
2. 保険料負担者と保険金受取人が母のケース 母の財産であり、母に一時所得課税あり
3. 保険料負担者が母、保険金受取人が子のケース 母から子への贈与であり、子に贈与課税あり


被保険者が子の各ケース(掛捨て保険以外)
1. 保険料負担者が父、保険契約者が子のケース 保険の解約返戻金相当額が父の相続財産(みなし相続財産)
2. 保険料負担者と保険契約者が父のケース 保険解約返戻金相当額が父の相続財産
3. 保険料負担者が子、保険契約者が父のケース 子に課税なし



6.財産を評価して3つに区分する 

財産を3つに区分する
1. 不動産等、未上場株、金融財産の3つにグループ分け
2. 税制改正の影響を回避するため、各グループにバランスよく対策を施すのがグループ分けの目的


財産の概算評価方法(一例)
1. 不動産等は国税庁HPで公表されている路線価(土地が面している道路の1㎡あたり価格)×地積により評価
2. 未上場株は決算書の純資産の部÷発行済株式数×所有株式数により評価
3. 金融財産は現在のキャッシュ価値(相場)により評価


評価にあたり説明すべき事項
1. 不動産等は評価方法により評価額が異なり、特例制度の活用により評価が大幅減するため、評価が変動することについて説明が必要
2. 不動産等と自社株は評価相当のキャッシュ価値があるとはかぎらず、納税資金対策や相続バランスについての説明が必要


評価したら3つのグループ小計と総財産合計を算出
1. 3つのグループごとの財産シェア(グループ小計÷総財産合計)を算出し、自分の財産の運用状況を確認し、今後 どうシフトしたいか検討
2. 3つのフループごとの相続トラブル回避策、相続税対策(評価引下げ策、納税対策)を検討


7.相続税計算の特例のあらまし 

不動産評価減の特例のあらまし
1. 間口距離、奥行距離を実測図、歩測で計算出来る場合 評価補正あり(普通住宅地域で最大20%評価減)
2. 不整形地の場合補正あり(500㎡未満の普通住宅地域で最大40%評価減)
3. 貸アパート等の土地の場合評価減あり(借地権割合70%の土地の場合 最大21%減) 


一定要件をみたす不動産の評価減特例
1. 自宅の土地評価を240㎡まで最大80%減
2. 事業用店舗の土地評価を400㎡まで最大80%減
3. 貸アパート等の土地評価を200㎡まで最大50%減
4. 上記特例適用可能面積上限は400㎡のため 自宅、貸アパート等を所有している場合 どの財産にどの特例を使うのが最も納税最少か検討する必要あり


配偶者の税額軽減
1. 配偶者が取得する分のうち、総財産の法定相続割合分 か 1.6億円のうち小さい金額に係る相続税は軽減
2. 戸籍上の配偶者のみ適用(内縁関係には不適用)
3. 配偶者が取得した財産と配偶者の固有財産を含めて2次相続対策が必要


贈与された財産を加算し、贈与時支払った贈与税を控除
1. 相続開始3年前からの贈与、相続時精算課税適用分の財産を加算し、贈与税を相続税から控除



8.概算相続税計算のポイント 

純財産を法定相続割合に分けて税率をかける
1. 純財産=総財産-特例適用額-基礎控除-保険金・退職金非課税枠 を計算
2. 純財産を各相続人の法定相続割合に按分する(純財産÷法定相続割合合計×各相続人の法定相続割合)
3. 各相続人の按分財産額に 税率をかけて一定金額を控除し、各相続人分を合計したものが相続税基準額
4. 各相続人の按分純資産が1千万円以下の場合 税率10%、3千万円以下の場合 税率15%、5千万円以下の場合 税率20%、1億以下の場合30%など
5. 上記相続税基準額を実際の財産取得割合に按分したものが各相続人の相続税額
6. 配偶者には配偶者の税額軽減特例あり(前述)


相続税の納税対策
1. 生命保険、同族会社の未上場株を所有している場合 退職金による原資捻出
2. 不採算の不動産の売却による原資捻出
3. 延納・物納の事前検討
4. 値上がりが見込まれる財産(自社株、不動産)の生前贈与(贈与税率が相続税率を上回らない範囲で)
5. 孫養子など養子縁組(相続税の2割加算により税額が大きくならないのを確認した上で)
6. 内縁関係から戸籍婚へ変更、後妻連れ子を養子縁組
7. 公正証書遺言の作成(分割がスムーズにいけば相続税の特例を受け納税額を減らせる)

遺言と成年後見

1. 遺言書がある場合とない場合の相続の流れ 

遺言書がない場合の相続の流れ
1. 相続人は、3ケ月以内に相続放棄か限定承認を検討(債務がある場合 要注意)
2. 相続放棄、限定承認を選択しなかった場合、債務も含めて財産を承継する(単純承認)
3. 相続人全員で遺産分割協議を行い、協議が整った場合は遺産分割協議書に署名・押印し、協議が整わない場合は家庭裁判所へ調停を検討


遺言書がある場合の相続の流れ
1. 公正証書遺言の場合 遺言内容が遺留分(一定の相続人に最低限保証される遺産相続分)を侵害していないか確認の上、遺言執行者の記載がある場合 遺言執行者により 遺言執行
2. 自筆証書遺言などの場合 封をしたまま、家庭裁判所に検認を請求した上で、その遺言書が法的に適正に行われたか確認
3. 遺言内容より、相続人全員が納得できる分割案がある場合、遺言書と異なる遺産分割協議書を作成
4. 遺言書に記載のない財産がある場合、遺言による取得を望まないため放棄した場合、相続人全員で遺産分割協議を行う


遺言書の留意点
1. 公正証書遺言の存在が不明の場合、公証役場で存在確認できる(要身分証明書)


2.公正証書遺言で財産を守る

遺言執行者を遺言書に指定して、財産を守る
1. 被相続人の意思が実行されるように、相続人代表となる長男や専門家などを遺言執行者として指定
2. 遺言執行者は、財産調査、名義変更手続き書類の取寄せ、財産目録の作成・報告を行う
3. 相続人は遺言執行者の行為を妨害できない効果あり


相続人以外に遺贈をして、財産を守る
1. 内縁関係にあり認知していない子(父の場合)、養子縁組をしていない前妻の連れ子、介護をしてくれた長男の嫁、娘の夫で事業承継者など相続人には該当しないが、遺言書を通して 財産を分けることができる
2. 一定の相続人には、遺留分(相続権の最低保証分)が認められているので、要注意
3. 生前より戸籍謄本から、相続人を確定しておき、認知や養子縁組、婚姻などを検討しておくのがポイント(遺言書に認知の記載もできる)


相続財産を指定して、財産を守る
1. 法定相続割合と異なる割合により、財産を分割できる(財産を守ってくれそうな相続人には多めに分割)
2. 著しい非行がある相続人を相続人から廃除できる制度や、犯罪行為をした相続人の相続権を奪う相続欠格という制度もある
3. 遺産分割を一定期間禁止することもできる
 

3. 公正証書遺言の誤解 

遺言は訂正・撤回できない? 
1. 遺言は自由に訂正・撤回できます
2. 遺言作成後の心境の変化や財産の変動に応じて、訂正・撤回でき、新しい遺言書が有効
3. 古い遺言書のうち、一部を有効にするか、全部無効にするか、新しい遺言書に記載した方がいい


病気になったら書けばいい
1. 判断能力がある者が書いた遺言のみ有効(判断能力のない状態で書いた遺言は無効)
2. 事前に文書を公証人役場で作成し、自筆するのは署名のみ(公証役場に行けない場合 出張も可)
3. 口がきけない、耳が聞こえなくても、筆談できれば可
4. 判断能力があるとは、精神上の障害のないことをいい、病気の状況によっては、病気になってから書いた遺言は無効になるケースもある


公正証書遺言は高い?準備が面倒?
1. 手数料は法律で決められていて、遺言の対象となる財産価額により決まる
2. 財産が3億円だと、概算手数料10万円~(その他 証人や専門家へ払う手数料・遺言管理手数料・遺言執行手数料ある)
3. 戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、実印、固定資産税評価証明書などを準備



4.遺言で財産を守る 

遺言でオーナー会社を守る
1. オーナーの事業を承継する後継者候補が複数いる場合、会社を事業ごとに分割し、後継者候補を各会社の事業部長にした上で、その会社の株を遺言により分割
2. 後継者候補が1人の場合、株とその会社が利用している事業用不動産を、遺言により分割
3. 後継者以外の相続人には、事業用財産以外の財産を、遺言により分割
4. 普通株と議決権制限株を発行し、遺言により、後継者に普通株、後継者以外の相続人に議決権制限株を分割


遺言で不動産を守る
1. 住宅地を配偶者特別贈与制度を活用して、生前贈与した上で、遺言により子に分割されるようにする
2. 遺言により、共有になるように分割し、自由に売買できないようにする
3. 不動産を承継する相続人を受取人とする生命保険に加入し、納税資金・管理コストの原資を用意した上で、不動産に対する思い入れを遺言に付記する
4. 貸地について、生前から借主と話合い、今後の対応を遺言に付記する


遺言が有効なケース
1. 子供のいない夫婦(夫の財産が妻にいくように遺言)
2. 内縁関係の夫婦(子がいる場合 要検討)
3. 再婚した夫婦(子がいる場合 要検討)


5. 成年後見制度のあらまし 

成年後見制度とは
1. 判断能力が不十分な成人者の身上監護と財産管理をサポートする制度
2. 家庭裁判所が一定事由により、サポート者(後見人)を選任する法定後見制度と、本人が予め選任した後見人による任意後見制度の2つがある


認知症対策として機能
1. 判断能力が不十分な場合、本人であっても、医療・介護サービスを受ける契約、財産を管理・処分する契約ができない場合がある
2. 判断能力が不十分なため、悪徳商法による財産被害が起きる場合がある 
3. 自分の判断能力が低下したときに、自分に代わって後見人に契約や財産管理を委任することが 任意後見制度の目的 


遺言制度と任意後見制度の併用により、財産を守る
1. 財産管理について、自分が亡くなった後の意思表示は遺言で行い、認知症など判断能力が不十分になった後の意思表示は任意後見制度を活用する
2. 身体的・精神的に自分の意思を表示できない状態になっても、自分の財産行為についての意思表示が可能
3. 自分の財産を守るポイントは、リスク対策と税金対策


6. 任意後見制度の仕組み 

任意後見人に何をサポートしてもらうか
1. 財産管理と介護等手続きの2つがメイン
2. 財産管理は、不動産・預金・年金の管理、税金・公共料金の支払管理など
3. 介護等手続きは、介護サービス機関・医療機関との契約、介護費用の支払など


任意後見制度の特徴
1. 判断能力が低下したときに備えて、本人が後見人を選任(後見人に資格不要)
2. 後見人の権限濫用を防止する仕組みが複数ある
3. 任意後見契約が公正証書で行われ、登記されるため、一般契約より安全


後見人が権限を濫用できない仕組み
1. 何をサポートするか(後見事務の内容)を、代理権目録により明示
2. 家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見人の職務をチェック
3. 後見監督人が選任前であれば、公証人の認証により 任意後見契約を解除できる
4. 後見監督人が選任後であれば、家庭裁判所が、任意後見契約を解除できる
5. 複数の後見人や法人の選任により、濫用抑止できる


7.任意後見制度の実務 

手続きの流れ
1. 本人と任意後見人の双方で、任意後見契約を結ぶ
2. 公証人により、公正証書にすると同時に、任意後見の登記が行われる
3. 判断能力が低下(法定後見の補助要件程度以上の精神上の障害)したとき、本人・配偶者・一定親族・後見人が家庭裁判所に 任意後見監督人の選任を申し立てる
4. 任意後見監督人の選任と同時に、後見人の後見事務がスタート
5. 任意後見監督人・本人などにより解任される場合、家庭裁判所が解除する場合、法定後見が開始した場合、亡くなった場合、任意後見契約終了


登記事項と個人情報保護の関係について
1. 後見人が行う財産取引について、その権限の有無を確認し、取引の安全を確保するために、登記制度がある
2. 本人、任意後見人の氏名・住所、任意後見人の代理権の範囲などが登記されている
3. 登記事項証明書、登記されていないことを証明する書類を本人・任意後見人・一定親族などが取り寄せできる


任意後見契約にかかる費用について
1. 公証人への手数料は 3万円くらい、任意後見監督人への報酬は 家庭裁判所が財産に応じて決めた金額、任意後見人への報酬は自由(相続人の場合 遺産相続に配慮)


8.任意後見で財産を守る 

オーナー会社を守る
1. オーナー社長の判断能力低下に備えて、任意後見人に株主権を行使できるように、代理権目録に記載
2. オーナー社長の判断能力が低下したとき、代表取締役を解任できるように、後継者に普通決議分を計画的に生前贈与したり、定款変更をしておく
3. 退職金規定を作成し、生命保険を原資として確保


不動産を守る
1. 遺言書により不動産の承継者を決めたうえで、財産を処分するケースを列挙しておく
2. 不動産の賃貸収入と管理コスト、金融機関への借入返済、貸地契約の更新など、運用予測を専門家と話し合っておき、様々なケースの対応策を列挙しておく


その他どのような代理権を与えるか
1. 本人が生活に必要な物品を購入する権利
2. 税金、公共料金、保険料などを支払う権利


任意後見契約と委任契約の併用
1. 判断能力はあるが、身体的に不自由になる場合に備えて、任意後見制度と同じ効果を得るため、委任契約を併せて、締結しておくことも有効

分割遺産整理

1.遺産整理のあらまし 

遺産整理の手順
1. 相続財産の調査と確定、財産目録の作成
2. 分割協議の上、遺産の承継人を確定
3. 分割協議の通り、遺産承継人へ名義変更


遺産整理を誰に依頼するか(主観)
1. 相続財産の調査が困難で、分割協議もまとまらない可能性が高い場合、弁護士など
2. 相続税申告がある場合、税理士
3. 相続税申告がなく、不動産の登記のみの場合 司法書士など。ただし、不動産については 税金が大きく関係してくるので、税理士への相談も有効
4. 金融財産が多い場合、信託銀行


遺産整理を相続人本人が行う場合
1. 相続財産を相続用通帳経由で、遺産整理をする
2. 現金での葬儀関係の支払、香典収入なども相続用通帳に預入、引出をする
3. 相続人代表が相続用通帳の管理をして、管理手数料分の遺産上乗せは 事前に話しておく
4. 相続人が高齢の場合、平日に動ける相続人か、外部専門家に委託


遺産整理のポイントは分割協議(相続人間の調整)
1. 相続人への説明と同意を、話合いのつど行う
2. 専門家、相続人の連れなど 登場人物を増やさない
 


2. 相続人と相続財産の確定

戸籍謄本から 相続人を確定
1. 戸籍謄本は、市町村の窓口で手続き(遠方の場合、市町村役場に連絡し、郵便小為替により取り寄せ可)
2. 各相続人が、自分の戸籍謄本を取り寄せる
3. 子は既にいないが、孫がいる場合、父母はいないが、祖父母がいる場合、養子がいる場合、離婚をして先妻の子と後妻の子がいる場合など 早めに専門家に相談


預金通帳と 送られる通知書から 相続財産を確定
1. 預金通帳の取引から、生活用か事業用か判断し、各金融機関に 残高証明書発行と相続に伴う閉鎖手続き書類 を郵送してもらうように連絡(担当者名を控える)
2. 郵便貯金は直接、各郵便局へ問い合わせ
3. 証券会社、信託銀行からの通知書がある場合、残高証明書発行と名義変更手続き書類を郵送してもらう
4. 過去の確定申告書、固定資産税通知書から、不動産の物件明細、株など金融財産を把握
5. 不動産登記簿を法務局で取り寄せ


ローンがある場合 要注意
1. 何のローンか(事業用不動産、居住用不動産、生活資金)を把握することにより、分割協議に役立つ
2. 預金閉鎖手続きと同時に 相続管理通帳からローン返済をして、延滞利息など生じさせない
3. 財産の概算額が、ローン未満の場合、相続の放棄を早めに検討


3.相続人間の話合い   

相続人と相続財産が確定したら、税金を考える
1. 相続時点の預金残高、不動産評価額(市町村で固定資産税評価証明書を取り寄せ)、株・投資信託の残高証明書から、財産合計を算出
2. 基礎控除(5千万円+相続人数×1千万円)を計算する
3. 財産合計が基礎控除以下なら、相続税はないので、遺産整理のポイントは、分割トラブルを回避すること
4. 財産合計が基礎控除を超える場合、遺産整理のポイントは、分割トラブル回避と節税のバランス


税理士に遺産整理を依頼した方がいい場合
1. 相続税が生じる場合、納税最少分割や2次相続税試算が分割協議をまとめるキッカケになることが多い
2. 不動産が相続財産にある場合、相続税が生じなくても、分割トラブルになりやすく、不動産活用ノウハウがトラブル解決のキッカケになることが多い


分割協議前の相続人の話合い事項(専門家依頼前も可)
1. 事前話合いで、相続人代表(事務作業を行い、相続人をまとめる人)を決定
2. 不動産について、被相続人の意思(誰に相続してもらいたかったか)の表示があったのかの確認
3. 次の話合いで、財産目録(財産評価)を提示し、いくつか分割案を話合い、分割案ごとの税金、考えられるリスクの提示を受ける



4.預金の遺産整理の注意点

預金の相続財産は、当面の資金対策がポイント 
1. 預金は相続手続後、凍結されるので、当面の資金をどうするかから考える
2. 被相続人名義の預金を残して(相続手続をしないで)、その口座で当面の相続収支を管理するか、相続人代表名義の預金通帳を作り、相続手続前に当面資金を振込
3. 各金融機関、証券会社へ相続手続書類の送付を依頼
4. 相続手続書類の添付書類(印鑑証明書、戸籍謄本、住民票)を 市町村で 必要部数を取り寄せる(多めに取り寄せても、期限もある場合があるので、その都度 まとめて取り寄せた方がいい) 
5. 自動引落となっている公共料金、ローン返済は、引落先に連絡し、相続手続をする(引落を相続用通帳にする)
6. 信託銀行との付き合いがある場合、遺言信託を確認


金融機関ごとの分割協議書を作成する
1. 分割協議が長引き、当面の資金が不足した場合、充当可能な預金の分割協議書を作成し、預金凍結を解く
2. 不動産、株の全体評価が出ないと、預金の分割は協議しないことが多いため、当面の資金対策を優先
3. いったん 相続人代表に預金を分割協議して、相続人代表に預金名義を変更し(預金凍結し)、相続人代表が各相続人に代償金(現金)を振込のも有効


相続直前から分割までの相続に関する収支を明らかにすることが、トラブルのない分割協議の条件


5.株と生命保険の遺産整理の注意点 

上場株の遺産整理手続き
1. 売却価額と取得価額を証券会社に問い合わせる
2. 特定口座の場合、口座移管手続き(被相続人の取得費引継)か、一般口座のどちらが有利か確認の上、相続手続き書類を送付してもらう
3. タンス株(被相続人が管理している株)の場合、発行会社か名義書換代理人(信託銀行)に相続手続きを依頼


未上場株の遺産整理手続き
1. 発行会社に連絡し、過去3年分の決算申告書、直近の株主名簿を取り寄せ、買取希望者(他株主、発行会社)がいるか確認
2. 株主名簿の変更を依頼(または希望者へ売却)
3. 一定期間内に発行会社へ譲渡した場合、取得費加算の特例により、譲渡益の税負担が軽減
  
生命保険の遺産整理手続き
1. 保険証券を見て、被保険者が被相続人の保険について、保険会社に保険請求手続きをする
2. 被相続人が保険料を負担している保険のうち、被相続人以外が被保険者の保険の場合、保険会社に解約返戻金の計算書を依頼する
3. 2の生命保険に関する権利は、分割協議の話合いにおいて、被相続人に生前贈与したものとして扱うのがよい
4. 株、保険とも、換金できるものは、換金した方が分割協議は、まとまりやすい


6.生前贈与、遺言があった場合の遺産整理 

生前贈与があった場合の遺産整理の注意点
1. 生前贈与された財産を 贈与時期に関わらず、相続財産に含める(生前贈与は、相続の前渡しと考える)
2. 過去の贈与税申告書、名義預金(名義は家族名義だが、管理状況から被相続人の財産と推定される財産)から財産目録を作成する
3. 生活費、教育費などに充当した金品は贈与でないが、車、株、不動産の購入などに充当した金品を支払う場合や、借入を肩代りした場合、贈与に該当する
4. 相続税法上、相続開始前3年以内の生前贈与を相続財産に加算するが、それ以前も 多額の預金引き落としがある場合、使途を知る必要がある
5. 相続トラブル防止のため、今のうちから 預金通帳の摘要に使途を書くことをお勧めします


遺言書がある場合の遺産整理の注意点
1. 法的要件を充足した遺言書がある場合、遺言書に沿った相続財産の承継手続きをする
2. しかし、遺言書により財産取得を指定された人(受遺者)は、財産取得を放棄することが出来る
3. 受遺者の遺贈財産放棄により、遺言書と異なる遺産分割協議を 相続人間で行うことができる
4. 遺言書がある場合、開封せずに弁護士に相談し、財産調査の上、遺言書通りに分けるか、遺贈を放棄して分割協議をするか、早めに判断する
 
7.不動産の遺産整理の注意点 

まずは不動産に関する次の資料を収集する
1. 不動産の売買契約書、測量図など取得時資料、過去の確定申告書
2. 固定資産税納付通知書の財産明細から、不動産登記簿、公図、測量図を法務局で取り寄せ、市町村で固定資産税評価証明書を取り寄せる
3. 不動産を賃貸している場合 不動産賃貸借契約書


不動産評価が遺産整理のポイント
1. 不動産評価方法は複数あり、評価方法により評価額も異なり、評価額で売却できるとは限らない
2. 相続税計算上の不動産評価は、画一的であるが 時価の70%~80%と言われている
3. 不動産鑑定士による不動産評価や近隣の公示価額、地元不動産業者への売買相場なども参考になる
4. 分割協議の話合いにおいては、不動産と金融財産は分けて考える(相続財産合計で考えると、不動産を相続する人は バランスが悪くなる)


円滑な遺産整理のポイント
1. 不動産を承継する相続人は、その不動産に係るローンと合わせて承継する
2. 不動産を今後どうするのか(譲渡して金銭に代えるか、運用して果実を得るか、物納するか)考える
3. 様々な税金の特例制度を検討する
4. 遺産整理と一緒に、契約や権利関係の見直しをする


8.不動産の遺産整理のポイント 

分割が協議しないと、相続税が高くなる
1. 配偶者の税額軽減制度が使えないため、相続税が高い
2. 相続税の納税資金がない場合 延納による分割納付などにより、本税以外の納税コストがかかる(物納不可)
3. 小規模宅地の特例が使えないため、不動産評価(相続税)が高い


親子共有・兄弟共有のメリット・デメリット
1. 共有不動産は、共有者全員で管理し、処分する権限がある(全員で果実を受け、コストを負担し、全員で売却)
2. 2次相続を考慮した親子共有は、2次相続において単独所有の分割協議がしやすく、取得時期なども引き継げるため、長期保有による税金の優遇を受けられる
3. 不動産の共有分割は、相続トラブルを次世代に遺すリスクがあり、不動産の賃貸借関係が複雑であり、状況に応じた対策が出来ない(兄弟分割はトラブル多い)


不動産ごとの収益性、今後の運用の判断がポイント
1. 高収益(利回りの高い)賃貸不動産、値上がりが予測される不動産は相続人へ、低収益不動産などは物納検討
2. 相続した高収益不動産を、子供への生前贈与(相続時精算課税制度の活用)や、同族会社へ譲渡により、所得移転による節税効果あり
3. 相続3年以内の譲渡、5年超所有(被相続人が取得してから)の譲渡、居住用財産の譲渡などの場合 所得税の特例により、税額が軽減

不動産の税金

1.不動産の税金のあらまし 

下記ポイントにより税金、減税制度が違う
1. 取得したのは、消費者か事業者(個人事業者、法人)か
2. 金銭による取得か 相続・贈与による取得か
3. 不動産により 果実(所得)を得たか
4. 売却したのは 消費者か事業者か
5. 売却したのは 住居か それ以外か
6. 売却不動産は いつどのように取得したか


不動産を取得した場合の税金
1. 不動産を相続、贈与により取得した場合 取得した消費者、個人事業者は相続税、贈与税を払う(詳細後述)
2. 不動産を金銭により取得した場合 取得した消費者、個人事業者、法人は不動産取得税、消費税を払う(詳細後述)ほか 登録免許税、印紙税も必要
3. 不動産を所有している場合 固定資産税、都市計画税を払う


不動産から果実をえる事業者(個人事業者、法人)の税金
1. 個人事業者は 不動産の果実(所得)に対して所得税、住民税、事業税、消費税(詳細後述)を払う
2. 法人は 不動産の果実に対して法人税、住民税、事業税、消費税を払う


不動産を売却した場合の税金
1. 売却益に対して 所得税、住民税を払い、売却対価に対して消費税を払う


2. 不動産を金銭により取得した場合

個人(消費者、個人事業者)、法人が取得した場合
1. 対価が1億円(土地7千万円 建物3千万円)の場合、不動産取得税(=固定資産税評価×3%)は概算200万円(住宅や新築・中古に特例計算あり)
2. 固定資産税評価額は、対価と異なり、法令により計算された価額(時価の6~7割と言われている)
3. 取得日から30日以内に都道府県へ不動産取得税申告書を提出(売買契約書、登記簿謄本添付)
4. 税計算は都道府県が行い、通知書が取得者に送られる
5. その他、取得者は 売却者に 消費税150万円(=建物対価×5%)を払う


法人、個人事業者が取得した場合(課税売上事業)
1. 法人、個人事業者が消費税の課税事業者の場合 払った消費税150万円を 事業により預かった消費税から控除できる(預かった消費税が100万円なら 50万円還付できる)
2. 法人、個人事業者が消費税の免税事業者の場合 届出により、課税事業者を選択することにより 上記還付を受けることができる(提出期限、翌年の消費税課税など慎重に専門家と話合いながら 判断すること)


消費者が取得した場合
1. 売却者が預かった消費税(消費者が払った消費税)は売却者が  国に納付する



3.不動産を相続・贈与により取得した場合   

個人(消費者、個人事業者)が相続により取得した場合
1. 事業用土地、住居用土地は 一定面積以下 について 相続税評価を50~80%減らせる評価減制度あり
2. 配偶者が取得した財産価格が、1.6億円(また総財産×法定割合)まで 相続税は課税されない減税制度あり
3. 相続税評価は 法令により計算した価額であり、前記の不動産取得税計算における固定資産税評価と異なる(時価の7~8割と言われている)


事業用不動産の相続の場合 消費税課税に要注意
1. 被相続人の過去の消費税申告書、届出書を用意し、相続人に、消費税の納税義務があるか、ある場合 どの方法が消費税納税有利か 専門家にすぐ相談
2. 準確定申告を、相続人自ら作成するケースは要注意


個人(消費者、個人事業者)が贈与により取得した場合
1. 暦年贈与制度(相続税評価額-110万円)×税率
2. 婚姻20年以上の配偶者から住宅を取得した場合、(相続税評価-2110万円)×税率の贈与税を払う
3. 一定の親から不動産を取得した場合、(相続税評価額-2500万円)×20%の贈与税を払い、親の相続時に 課税精算(相続財産に加算し、贈与税を控除)


法人が贈与により取得した場合
1. 受贈益として 法人税、住民税、事業税課税(他の損益と通産)


4.不動産に居住する場合

固定資産税・都市計画税を市町村へ払う 
1. 1月1日に不動産を所有している個人、法人は その年の4月から1年分の固定資産税、都市計画税を払う
2. 固定資産税評価額×概算1.7%の納税通知書が5月頃届く(申告は不要)
3. 住宅土地については 2/3以上の固定資産評価減特例があり、新築住宅については 1/2の固定資産税減税などがある(一定床面積まで、3年間、新築住宅の固定資産税を減免する市町村もある)


住宅ローン控除を年末調整(確定申告)で受ける
1. ローンを利用して、住宅を取得した場合(新築、中古問わず)、ローン残×1%(居住年、控除期間により逓減)の所得税を 上限50万円(居住年、控除期間により異なる)控除できる
2. 一定のバリアフリー工事、省エネ設備にも控除制度あり
3. 所得金額が3千万円以下である個人が 金融機関から10年以上の約定返済による場合のみ
4. 19年から 控除税率1%(7年目から0.5%)を10年受けるか、控除税率0.6%(11年目から0.4%)を15年受けるか選択可
5. 初年度は確定申告により、2年目以降は年末調整により控除可
6. 年末調整で源泉徴収票上の源泉所得税が0の場合、市町村に確定申告を提出することで 住民税が減額する余地あり


5.個人が不動産を賃貸する場合 

所得税・住民税を確定申告により払う
1. 不動産所得(=収入-経費)は、給与や年金、事業などの一定所得と合計する(所得金額という)
2. 不動産所得が赤字の場合 所得金額をマイナス(損益通算という)し、所得税、住民税が減る
3. 所得金額から 医療費控除、扶養控除など一定控除を引いた金額に 一定税率(概算15%~50%)を乗じて所得税、住民税を計算
4. 上記所得税、住民税から住宅ローン控除などの一定控除をした金額を払う
5. 不動産収入と不動産経費の把握が節税ポイント


不動産収入と不動産経費(詳細後述)の範囲
1. 不動産収入は 権利金、更新料、礼金を含む(平均課税という方法により 節税余地があるので要注意)
2. 不動産経費は 固定資産税、修繕費(リフォーム代、クリーニング代)、不動産管理会社への管理費・広告費、損害保険料、借入利息、損害保険料、減価償却費など
3. 固定資産税は賃貸不動産に係る部分のみ
4. 修繕費は現状回復費(価値の増加、使用年数の長期化させる修繕費は資産計上し、減価償却により経費化)
  
不動産経費になる消費税と事業税
1. 事務所、倉庫として賃貸する場合 消費税の課税対象(納税義務があるかどうかは 2年前の課税売上による)
2. 住宅10戸以上などの場合 事業税課税


6.不動産賃貸に係る経費の注意点 

事業に直接関連性のあるもが経費
1. 個人が事業のために払った費用は、原則 経費になり、事業と家計の区別ができない費用は経費にならない
2. 交際費、会議費などは事業の明確性が必要
3. 事業用と家計用の通帳を分ける、事業用金庫により小口現金を管理するなど 事業としての管理が必要


青色申告65万円控除を受けるには
1. 一定規模の不動産賃貸を行い、日々の取引を複式簿記で行っている場合 65万円の概算経費が計上できる
2. 一定規模とは、貸間・アパートなら10室、一戸建てなら5棟が目安になる(それ以下でも検討余地あり)
4. 簿記の知識がない場合でも 会計ソフトにより 事業用の現金預金を出納帳入力すれば、複式簿記になる
5. 経費を集計しただけでは、65万円控除は受けられないが、青色申告申請をしていれば 10万円控除可


不動産所得が赤字となった場合
1. 退去時リフォーム代など大型修繕支払があった場合 現状維持、改修の範囲であれば 経費であり、不動産所得が赤字になるケースも多い
2. 他の所得との損益通算により 減税効果があるが、不動産所得赤字のうち、土地取得に係る借入利子は 損益通算対象外となる
3. 青色申告申請をしていれば 不動産所得の赤字を 翌年から3年間の所得から控除できる 


7.個人が不動産を譲渡した場合 

不動産を譲渡する前に、専門家や税務署に相談
1. どの特例を使えるのか(高所得者には使えない特例あり)、消費税の納税はあるのかがポイント
2. 譲渡対価から 購入価額(または譲渡対価の5%)と仲介手数料、測量費、取壊費、立退料など譲渡のために要した経費を 控除した金額(譲渡所得金額という)の20%の所得税・住民税を払う
3. 取得から 譲渡年の1/1までの期間が5年以下の場合 39%の所得税・住民税を払う


自宅(土地・建物)を譲渡した場合の特例
1. 譲渡所得金額がプラスの場合、3千万円控除できる
2. 取得から 譲渡年の1/1までの期間が10年超の場合、譲渡所得金額から3千万円を控除した金額(6千万円まで)の14%の所得税・住民税を払う
3. 自宅を譲渡し、新しい自宅を購入した場合 譲渡所得金額がプラスでも課税しない特例がある
4. 5年超所有した自宅を譲渡し、新しい自宅を住宅ローンで購入した場合 譲渡所得金額のマイナスを 給与など他の所得と通算し、翌年以降に繰り越せる
5. 5年超所有した自宅(住宅ローンが残っている)を譲渡した場合 譲渡所得金額のマイナスを 他の所得と通算し、翌年以降に繰り越せる


国や都市再生機構、都市計画法の開発許可などによる土地等の譲渡にも 特例あり


夫婦間贈与の注意点

1.名義変更の注意点 

名義変更があった場合 原則 贈与
1. 夫の株や不動産の名義を 妻に変更し、対価を受け取らなかった場合 夫から妻への贈与となり、妻が贈与税を払う
2. 名義変更行為は 原則 贈与行為になります
3. 名義変更が 一時的に名前を借用しただけの場合 贈与税課税は ありませんが、贈与の取消など 贈与されていないことを 証明する必要があります


贈与は 双方の合意により成立
1. 双方の合意があれば、贈与契約書など文書を交わさなくてもいい(口頭による贈与も有効)
2. 双方が合意していれば 不動産などの財産を 実際引き渡す必要はない(実務では 不動産の場合 登記により贈与履行されたと考えて 登記時に贈与税課税)

夫が 法人に 不動産を贈与した場合
1. 会社に法人税課税(時価相当)
2. 夫に譲渡所得課税(時価相当)
3. 一般的に 相続税評価額の方が 時価より低いため 過大の税金となり、さらに 双方で二重課税される
4. 不動産でなく 現金を贈与した場合 会社のみ課税
5. 会社から 妻に不動産を贈与した場合 会社に時価課税され、妻に一時所得課税がされる


2. 贈与を取消した場合の注意点 

贈与税は 財産を受けた側が納税
1. 夫が妻に 財産を贈与した場合 妻が贈与税を支払う
2. 妻が 納付すべき贈与税を納付しなかった場合 贈与した夫にも連帯して 納付する義務があり
3. 夫が贈与税を肩代わりした場合 夫は妻に その返済を求める権利(求償権)を持つ
4. 夫が 税負担を約束して 不動産を贈与した場合 不動産+税負担分に対して 贈与税が課される
  
贈与契約を 取り消す場合
1. 夫から妻に贈与した後に 贈与の取消により 妻から夫に 財産が戻った場合
2. 取消が 法定事由のときは 贈与は初めからなかったものとされ、妻が納税した贈与税は 更正の請求により 還付余地がある
3. 取消が 法定事由以外のときは 妻から夫に再贈与があったものとして 夫に贈与税が課される 
4. 夫が 妻の承諾なしに 不動産の名義変更をした後に 妻が拒否したので 取り消す場合 再贈与の余地があり夫婦ともに課税される場合もある


贈与取消の法定事由
1. 詐欺・脅迫による贈与の取消
2. 夫婦間の契約取消権によるもの(租税回避目的でないもの)
3. 未成年者の行為取消権によるもの


3.離婚に伴う財産分与の注意点 

夫から妻への財産分与の取扱
1. 離婚による財産分与請求権に基づき 分与される財産は 原則 贈与税の対象には ならない
2. 夫が妻に 金銭を財産分与した場合 課税されない
3. 夫が妻に 不動産を財産分与した場合 夫に含み益(譲渡所得)課税されるので 要注意
4. 離婚による財産分与制度を利用して 相続税などの節税を図る場合、財産分与した財産が 慰謝料などの部分を 超えている場合 贈与税課税あり 


財産分与なら夫に課税 贈与なら妻に課税
1. 夫が課税されることを知らずに 不動産を財産分与した場合 (夫が 妻に贈与課税がされると 勘違いしていた場合) 裁判において 契約に錯誤があるとして 無効の判決もある
2. 内縁関係の解消についても 離婚同様 財産分与制度は利用余地あるが、愛人関係の精算に伴い財産を与える行為は 贈与税課税あり


財産分与による不動産譲渡の特例適用余地
1. 含み損のある不動産の場合 他の譲渡益と相殺可
2. すでに離婚をしていれば、居住用財産譲渡の3千万円控除、10%軽減税率の 適用余地がある


4.妻名義の財産の注意点

妻名義の預金は 誰の財産か
1. 名義上の財産所有者が 妻であっても、実際 お金を負担し、その財産を管理していたのが 夫の場合 夫の財産とみなされることがある
2. 夫の預金口座から 専業主婦の妻の預金口座へ 移った金銭は 夫の財産を 妻に贈与したことになる
3. 相続の場合 妻名義の財産のうち 夫の財産とみなされたものは 相続税か贈与税が課税される


夫の婚姻期間中の財産は 夫婦共有とは限らない
1. 収入のない妻が 自分の財産であることを証明するには、妻の過去の財産状況、所得状況、相続・贈与の資料が 税務上、必要な場合がある 
2. 夫からの送金で 生活実費などについては 贈与されることは ない
3. 株や不動産の場合も 名義者が妻であっても 実際 夫の財産とみなされる場合がある


はじめから贈与として申告するのがよい
1. 毎年非課税枠110万円を利用して、贈与税申告を行う
2. 預金通帳を通してお金を動かす、登記をするなど 足跡が残る贈与を行う
3. 利息や不動産収入など運用益は 財産所有者が取得し、税金や費用も財産所有者が負担する


5.賃貸アパートを贈与する場合の注意点 

夫が アパート建物を 妻に贈与 
1. 夫の土地に 妻のアパート建物があり、妻が不動産収入を得るケース
2. 高収益の物件の場合 所得移転による節税効果あり
3. 贈与直前に 修繕など固定資産税評価を上げないような 建物改修を行うのも 相続税対策上 効果あり


通常 妻は夫に地代を払わない方が安全
1. 夫に 地代を払わない(使用貸借)場合 借地権の贈与課税は ない
2. デメリットは 夫の土地の相続評価に 貸家建付地の21%評価減が 使えないこと(100%評価のみ)
3. 土地と建物を 贈与することにより 夫の相続財産の対象外となり、妻の相続評価に 貸家建付地の評価減が使えるため 相続税対策として有効


夫の土地に 妻の事業用建物でも 評価減できる
1. アパートなど 賃借人が頻繁に代わる場合 貸家建付地の評価減 の余地はない
2. 賃借人が 同族会社など 長期間変わらない場合  土地の相続評価に 貸家建付地評価減 の余地がある 


借地権課税を生じさせない届出もれに注意
1. 土地所有者と建物所有者が異なる場合、借地権課税を回避することから 考えること


6.妻の債務を肩代わりした場合の注意点 

妻の債務を 夫が引受した場合 原則 贈与
1. ただし 妻に債務弁済資力がなく かつ 扶養義務者に肩代わりしてもらった場合 妻が弁済困難な部分は 贈与税が課税されない
2. 妻に 近い将来も含めて 借入や働けないなど収入が見込めない、実際 債務超過にあるなどの条件が必要
3. 妻の債務と財産を 夫に贈与した場合(負担付き贈与) 夫は 財産の価額(不動産の場合 時価 他の財産の場合 相続税評価額など)から 債務の額を 引いた額に 贈与税が 課される


共稼ぎ夫婦が 住宅を借入購入した場合の注意点
1. 共稼ぎ夫婦が 住宅を購入し、夫婦共同の収入から 借入返済がされている場合 夫婦の所得に応じた返済負担をする
2. 妻が 一切負担していない場合、1年間の返済額×妻所得金額/夫婦所得金額 に贈与税が課される
3. 夫婦の負担額に応じて 共有持分登記すれば 贈与税リスクは なくなる
4. 共有持分を放棄した場合 贈与税が課される


妻に無利子で 金銭貸付をした場合の注意点
1. 利息相当額について 贈与税が課される
2. 利息相当額が少額の場合 課税しなくてもいい


7. 生命保険契約の注意点 

契約によって 保険金が贈与税対象になる
1. 契約者(保険料負担者)・被保険者が 夫、受取人が妻の満期保険金は 保険金受取時 夫から妻への贈与として 贈与税が課される
2. 上記契約で 夫が死亡したことにより 妻に給付された死亡保険金は 相続税が課される 
3. 契約者(保険料負担者)・受取人が 妻、被保険者が夫の死亡保険金は 妻に所得税が課される
4. 契約者・被保険者が 夫妻以外の誰か、保険料負担者が夫、受取人が妻の死亡保険金は 夫から妻への贈与として 贈与税が課される


信託も契約によって 贈与対象になる
1. 信託を委託した人と 信託の利益を受ける人が 同一なら 贈与の問題はない
2. 夫が所有不動産を 信託会社に信託し、信託の利益を 妻が受ける場合、夫から妻への贈与として 贈与税が課される
3. 信託期間終了時に 信託不動産を妻に与える契約も夫から妻への贈与として 贈与税が課される


相続税の納税対策として有効な契約
1. 契約者(保険料負担者)が夫、被保険者・受取人が妻の保険について 夫相続時に 解約返戻金を受け取る権利を 妻が取得することにより 納税対策になる


8. 子供がいない夫婦の贈与の注意点 

子供がいる場合 と いない場合の相続人
1. 妻が亡くなった場合 子供がいれば 夫と子が相続人
2. 子供がいない場合  夫と 妻の親 が相続人、
3. 妻の親が既に亡くなっている場合 夫と 妻の兄弟姉妹が 相続人(このケースは対策が必要)


夫は 自分が亡くなった後の妻を心配して贈与したのに
1. 妻が先に亡くなってしまい、妻に贈与した財産が 妻の兄弟姉妹に分割される場合がある
2. 法定相続割合は 夫3/4 妻の兄弟姉妹1/4
3. 妻の兄弟姉妹には 遺留分(相続人に認められた最低保障額)がないので 遺留分侵害行為として 請求はできないが、分割の話合いは 実際困難


遺言制度を活用
1. 生前贈与を計画的に行うとともに 公証役場において 公正証書遺言を作成
2. お互いに 全ての財産を 夫(妻)に相続するように 遺言書に記載
3. 適正な遺言であれば、生前贈与した財産が 自分に戻ってくる
4. 意図していない兄弟姉妹に 流出しないで済み、分割協議の話合いも スムーズにいく
5. 財産を引き継ぎたい人との養子縁組も 選択肢の1つ


相続が起きる前に

1. 相続対策とは 

相続対策と相続税対策の違い
1. 相続対策は 争いを起こさないための対策
2. 相続税対策は 財産評価を引下げる策 納税資金捻出策 納税方法検討など


相続対策のポイントは遺言書作成と生前贈与
1. 相続が生じた場合 相続人間の話合いにより 遺産が分割されるが、遺言書があれば 被相続人の意思により 遺産が分割できる
2. 遺言書の効力は 遺言書が法的に有効であり 遺留分を侵害していなければ 原則保証される 


生前贈与により 生前に財産移転するのも効果的 
1. 贈与がされれば 贈与税が 贈与される側に課税
2. 贈与税には 暦年制度(非課税枠110万円)と相続時精算課税制度(非課税枠2500万円)の2種類
3. 相続対策を行う場合 相続税と贈与税の試算も必要  


相続対策の流れ
1. 何の財産があって 誰に分配するか検討(相続権のない人も含めて)
2. 相続権のない人について 養子縁組を検討
3. 遺留分計算(法定相続割合の1/2など) 誰に何を分配するか確定 (相続権のない人も含めて)
4. 公正証書遺言作成 生前贈与検討


2.相続税納税資金捻出策

原則 金銭納付
1. 終身保険などの生命保険や オーナー会社(不動産管理会社含む)の場合 退職金を納税資金とする
2. 保険金 退職金には 相続税非課税枠(500万円×法定相続人)があり有利
3. 相続財産が不動産などで金銭納付困難な場合 延納制度(年1の分割払い制度)や物納制度(相続財産の現物納付制度)も検討
4. 相続財産が売買できる場合 売買して納付可(相続税評価額が 売買対価より高い場合 物納検討)
5. 銀行金利が 延納利子税率(延納期間により異なる)より低ければ 借入して金銭納付が有利


オーナー会社を利用した納税資金捻出策
1. 被相続人が役員のオーナー会社において 被保険者を被相続人 受取人を法人とする保険加入
2. 被相続人相続時 保険金収入し 退職金として支給
3. 法人税法上 役員退職金の社会通念上妥当な金額は 月役員給与×功績倍率(代表取締役3倍など)×役員在位年数×功労加算金(1.3など)


生命保険を利用した納税資金捻出策
1. 契約者 被保険者 受取人を子供とした生命保険について 父から子へ保険料相当を贈与し、相続時解約
2. 契約者が父 被保険者 受取人が子の個人年金保険に加入し 相続時解約
 

3. 相続税引下げ策 

相続人の拡大 
1. 相続税の非課税枠(5千万円+1千万円×相続人数)や 保険金・退職金の非課税枠の計算上 実子がいる場合 養子は1人まで加算できる
2. 後妻の連れ子に相続権はないが 養子になると養子制限にかからない(実子と同じ)
3. 内縁の妻に相続権はないが 戸籍妻になると配偶者非課税枠(総財産×配偶者の法定相続割合と 1億6千万円のいずれか小さい方)が利用可


暦年贈与制度(非課税枠110万円)の利用
1. (贈与額-110万円)×税率=贈与税を 贈与を受けた人が 翌年2月~3月15日まで申告納付する
2. 贈与された財産は 相続税課税なし(3年以内贈与加算除き) 贈与税率が相続税率より低い範囲内で節税


配偶者贈与税制度(非課税枠2110万円)の利用
1. 婚姻期間20年以上の配偶者へ居住用不動産(購入資金)を贈与した場合 贈与を受けた人が申告納付


相続時精算課税制度(非課税枠2500万円)の利用
1. 適用財産は相続時に 相続財産に加算するので 値上がり財産の場合のみ 節税効果あり
2. 一人の親から1度のみしか適用できず 適用後 上記暦年贈与制度は適用できない


4.不動産評価引下げ策 

貸家建付地なら21%減(借地権割合70%の場合)
1. 貸家建付地とは 所有アパート等の土地のこと(所有者は土地建物とも 被相続人)
2. 更地だと100%評価なのに アパートを建てると その土地は 79%評価になる
3. さらに アパートとして貸付している土地200㎡まで その評価の50%減できる(小規模宅地の特例) 


不動産管理会社へ不動産売却
1. 株式を生前贈与しながら 相続時には 経営承継円滑化法により 相続税猶予
2. 親族へ給与を支給し 所得分散
3. 建物のみ管理会社へ売却する場合 借地権を生じさせず、 地代契約。 貸家建付地21%減となるように 契約関係を変えないのがポイント
4. 不動産の現物出資により 管理会社の株式を取得した場合 相続時の退職金により株価減


不動産管理会社へ転貸(土地建物の一括貸)
1. 貸家建付地の21%評価減可
2. 管理会社は 被相続人に賃料を払い 家賃収入を得る
3. 管理会社から 被相続人などに給与支給し所得分散 
4. 業務内容と職務対価の妥当性を検討する


5. 遺留分に関する民法の特例(経営承継円滑化法) 

内容
1. 生前贈与株式を遺留分計算から除外できる(除外合意)
2. 生前贈与株式の評価額を予め固定できる(固定合意)


適用による効果
1. 除外合意により 先代社長から後継者へ トラブルなく 自社株を生前贈与できる 
2. 固定合意により 後継者が 自社株の贈与を受けた後の株価上昇分は 遺留分計算の対象外となる 


遺留分制度について
1. 遺留分とは 配偶者、子など一定の相続人が 相続財産のうち保障される権利
2. 従前 遺留分計算は 生前贈与財産も含み、相続時の価額(株価上昇後)としていた
3. 除外合意により 自社株を遺留分から除外し、固定合意により 合意時の自社株の価額(株価上昇前)により遺留分を計算


後継者が単独で手続きできるのがポイント
1. 先代社長、後継者、全推定相続人が遺留分の特例について合意 
2. 後継者が 合意後1ケ月以内に経済産業大臣に確認申請し、確認日から1ケ月以内に家庭裁判所に申し立てる
3. 家庭裁判所の許可後に 合意の効力が生じる
4. 21年3月施行予定


6. 自社株に係る80%納税猶予(経営承継円滑化法) 

内容
1. 自社株の相続税価額80%の相続税の納税を猶予
2. 納税猶予は 要件をみたすかぎり相続税の納税は免れるが、要件をみたさなくなった時点で 納税
3. 平成20年10月施行予定(税制改正は21年度改正)


相続前に経済産業省の確認をとる
1. 相続前に行う手続きは 後継者の確定手続き(役員登記、自社株・事業用不動産の移転計画など提出)
2. 20年10月~22年3月の相続については 救済措置として 経済産業省の確認は 役員登記などで簡便化
 
相続申告前には経済産業省の認定を受ける
1. 認定要件は 中小企業基本法上の中小企業であること。上場会社でないこと。特定資産(株 不動産)保有会社でないこと
2. 社長 後継者は代表であったこと。同族グループで50%超保有し筆頭株主であること


相続申告後は5年 経済産業省に年1で次を確認。みたしていない場合 猶予税額を納付
1. 後継者が代表者であり 株を継続保有していること
2. 雇用の80%を維持していること


7.相続税を延納・物納で払うには 

延納するには
1. 延納とは 相続税の分割払い(年1回)制度
2. 相続税が10万円超で 金銭納付が困難と認められる場合のみ
3. 土地などの担保を提供すること
4. 延納申請書を期限内に提出し 税務署長の許可を受けること


延納した場合
1. 延納期間は不動産割合により決まる(75%以上の場合 最大20年まで分割可)
2. 利子税を合わせて納付する。(不動産割合75%以上の場合年利3.6% 公定歩合0.1%の場合 2.0%の特例あり)


物納するには
1. 物納とは 相続財産で相続税を現物納付する制度
2. 延納によっても 金銭納付できない事由があること
3. 物納申請書を期限内に提出し 税務署長の許可を受けること


物納できる財産
1. 国債 不動産などが 第一順位(物納したい財産が 物納できるかは 事前の検討が必要)


相続が起きたら 

1.  相  続  が  起  き  た  ら 

葬儀終了後に まず何をするか
1. 社会保険の給付手続(区市役所または社会保険事務所)
2. 生命保険の給付手続(生命保険会社)
3. 全預金の閉鎖手続(金融機関)
4. 公共料金、税金などの支払
5. 専門家さがし


専門家への相談に際しての留意点
1. 相続税問題は税理士 相続争い問題は弁護士 名義変更登記は司法書士
2. 本人が行う手続と 専門家に任せる手続は区別。専門家の数は増やさない。複数専門家が必要な場合 相談窓口は1人に絞った方がいい
3. 期限に注意。特に借入がある被相続人の場合 すぐに専門家に相談 
4. 税金 登記手数料 申告手数料など 事前に見積
5. 価格で決めるより、相続専門の専門家の方が長い目で見ていい
6. 税理士に関しては 不動産評価に知識経験の差が出る


相続にあたり 今後の心構え
1. 被相続人の意思(遺言書など) 法定相続割合 遺留分 財産評価を参考に 仲裁者 専門家に相談しながら 相続争いのない分割協議を目指す
2. 相続税申告書の提出期限に合わせて 分割協議を打ち切る必要はない
3. 相続税が最小の分割協議が最適とかぎらない。2次相続も考慮する 
 


2. い つ ま で に 何 を や る か 

相続7日以内
1. 死亡届(市区役)


相続10日(または14日)以内
1. 年金停止、寡婦年金移行(市区役所 社会保険事務所)
2. 葬儀給付、高額医療費請求(市区役所 社会保険事務所)


相続2~3ケ月以内
1. 財産調査 遺言確認(開封せず専門家に相談)
2. 生命保険請求
3. 預金閉鎖手続 残高証明書発行(全金融機関を一緒に閉鎖届をする)
4. 公共料金の支払名義変更
5. 相続放棄 限定承認(専門家へ相談の上 家庭裁判所へ請求)


相続4ケ月以内
1. 準確定申告(税務署) 


相続4~10ケ月
1. 遺産分割協議に署名・押印
2. 不動産など名義変更(法務局) 司法書士相談
3. 運転免許書、パスポートなど返却(都県 警察署)


相続10ケ月以内
1. 相続税申告書提出(税務署) 税理士相談


相続1年以内
1. 遺留減殺請求(内容証明郵便)



3. 社 会 保 険 手 続 に つ い て 

社会保険手続の流れ
1. 年金の受給(または支払)を止める
2. 給付金を請求する
3. 遺族が加入する


手続の留意点
1. 加入していた年金制度が国民年金の場合 市区役所へ 厚生年金の場合 社会保険事務所へ 事前連絡の上 相談
2. 事前連絡にあたり 年金手帳、戸籍謄本など必要書類を確認


年金の支給(支払)を止める手続について
1. この手続が遅れても 後日 過誤納分は精算される


給付金を請求する手続について
1. 国民年金の場合 遺族基礎年金(寡婦年金)の給付手続を市区役所で行う
2. 厚生年金の場合 遺族厚生年金の給付金手続を社会保険事務所で行う
3. 国民健康保険の場合 埋葬費の給付手続を市区役所で行う
4. 勤務先健保の場合 埋葬費の給付手続を社会保険事務所で行う
5. 加入履歴によって 相談窓口が異なることがあるので 事前に連絡した上で 「もらえる給付金の種類」「必要書類」について 相談窓口で確認 


遺族が加入する手続について
1. 国民年金 国民健康保険に加入する場合 市区役所で世帯主変更を行う
2. 低所得者、学生等については減免措置もあるので 相談窓口で確認
3. 遺族がすでに年金受給者の場合 自分の年金を継続するか 遺族年金に切替るか 所得税等を考慮して どちらの手取が多いか 相談窓口で確認



4. 遺 産 分 割 手 続 に つ い て 

遺産分割協議手続の流れ
1. 財産と相続人の調査、相続放棄の判断、準確定申告書の提出
2. 遺産分割の協議・署名・押印・保管
3. 名義変更、相続税申告書の提出


遺言書の確認
1. 遺言書がある場合 開封せずに専門家に相談。公正証書遺言以外の遺言書は家庭裁判所で検認を受ける
2. 遺言書の内容について 相続人以外の遺贈者の存在、遺留分侵害、遺言書の法的有効性について 専門家 遺言執行者 相続人 遺贈者で話合
3. 遺言書がない場合 直ちに 机 金庫などから財産資料を整理


財産と相続人の調査について
1. 財産より借入など債務が多い場合 相続放棄・限定承認(財産の範囲で 債務を引継ぐ)を 専門家に相談。相続放棄は個々の相続人 限定承認は相続人の総意で判断を要する
2. 分割協議後に判明した財産について 再協議か取得者を特定するか決める
3. 養子、離婚、認知などの事情がある場合 早めに専門家に相談
4. 被相続人へ非行行為をした相続人がいる場合 専門家へ相談


遺産分割協議について
1. 遺産分割が協議しだい 自署・押印の上 各自保管


名義変更手続について
1. 不動産名義変更は 司法書士に必要書類を事前確認



5. 相 続 税 等 の 申 告 に つ い て 

手続の留意点
1. 専門家から①どこまでが相続財産なのか ②相続財産の評価はいくらなのか  ③相続税をどのように支払うか のアドバイスを受ける
2. 相続人は相続した財産価額に応じて相続税を支払うが、各相続人には 他の相続人の相続税の連帯納付義務があることに注意
3. 1次相続で 配偶者の税額控除を利用する場合、2次相続についてのアドバイスを受ける 


準確定申告の手続について
1. 相続した年に生じた所得(給与、年金、不動産)については 相続税ではなく所得税課税がある
2. 生命保険契約上 契約者 被保険者 保険金受取人が誰かによって 相続税か所得税か贈与税のいずれかが課税。税理士に相談


相続税申告の手続について
1. 相続税申告書の提出期限まで 遺産分割が協議しない場合 未分割のまま申告書を提出の上 納税。分割協議後 再提出


相続税の計算方法について
1. 相続財産価額-債務控除-基礎控除に税率をかけたのが 相続税額
2. 基礎控除は 5千万+相続人数×1千万


相続財産の範囲
1. 被相続人の名義の財産のほか、無職の子供や妻名義の財産は相続財産
2. 相続前3年以内に贈与した財産は相続財産
3. 生命保険金・退職金のうち 500万×相続人数まで 相続財産でない
4. 香典収入、社会保険給付金などは 相続財産でない
5. 借入、未納税金、葬式費用、医療費は 相続財産から控除
6. 初7日以降の法要費用、香典返し費用、専門家への費用は 相続財産から控除できない



6. 申 告 準 備 資 料 一 覧 

準確定申告書の準備資料について
1. 給与や年金の源泉徴収票 保険料控除証明書、医療費領収書など
2. 不動産所得がある場合 収入、固定資産税納付書、管理会社の資料
3. 相続人のうち だれが支払(また還付を受ける)か その口座を確認
4. 消費税や所得税の届出がある場合 早めに税理士に相談


相続税申告書の準備資料について
1. 税理士との初めの相談では 遺言書、戸籍謄本、住民票(被相続人の除票及び相続人全て分)、固定資産税納付書の明細書などが必要
2. 過去の相続税申告書(親などの) 贈与税申告書 所得税確定申告書
3. 申告書添付資料として 印鑑証明書 死亡診断書が必要
4. 申告書添付資料として作成するのは ①学歴・職歴などの略歴図 ②遺産分割協議書 ③家系図(相続関係図)


財産別の準備資料について
1. 土地・建物について 登記簿謄本・測量図・公図(全て法務局取寄せ)、固定資産税評価証明書(都税事務所取寄せ) 取得時の資料
2. 上場株について 証券会社の残高証明書。未上場株については 発行会社の決算書3年分
3. 預金について 残高証明書、通帳3年分のコピー
4. 退職金の源泉徴収票、直近の給与明細票、保険金通知書
5. 貸付金・借入金について 返済明細書、契約書・覚書など
6. 医療費、葬儀費について 領収書、葬儀前後の現金収支のわかる資料


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