相続が起きる前に | 川口市 草加市の税理士/相続税・遺言・成年後見ブログ 

相続が起きる前に

1. 相続対策とは 

相続対策と相続税対策の違い
1. 相続対策は 争いを起こさないための対策
2. 相続税対策は 財産評価を引下げる策 納税資金捻出策 納税方法検討など


相続対策のポイントは遺言書作成と生前贈与
1. 相続が生じた場合 相続人間の話合いにより 遺産が分割されるが、遺言書があれば 被相続人の意思により 遺産が分割できる
2. 遺言書の効力は 遺言書が法的に有効であり 遺留分を侵害していなければ 原則保証される 


生前贈与により 生前に財産移転するのも効果的 
1. 贈与がされれば 贈与税が 贈与される側に課税
2. 贈与税には 暦年制度(非課税枠110万円)と相続時精算課税制度(非課税枠2500万円)の2種類
3. 相続対策を行う場合 相続税と贈与税の試算も必要  


相続対策の流れ
1. 何の財産があって 誰に分配するか検討(相続権のない人も含めて)
2. 相続権のない人について 養子縁組を検討
3. 遺留分計算(法定相続割合の1/2など) 誰に何を分配するか確定 (相続権のない人も含めて)
4. 公正証書遺言作成 生前贈与検討


2.相続税納税資金捻出策

原則 金銭納付
1. 終身保険などの生命保険や オーナー会社(不動産管理会社含む)の場合 退職金を納税資金とする
2. 保険金 退職金には 相続税非課税枠(500万円×法定相続人)があり有利
3. 相続財産が不動産などで金銭納付困難な場合 延納制度(年1の分割払い制度)や物納制度(相続財産の現物納付制度)も検討
4. 相続財産が売買できる場合 売買して納付可(相続税評価額が 売買対価より高い場合 物納検討)
5. 銀行金利が 延納利子税率(延納期間により異なる)より低ければ 借入して金銭納付が有利


オーナー会社を利用した納税資金捻出策
1. 被相続人が役員のオーナー会社において 被保険者を被相続人 受取人を法人とする保険加入
2. 被相続人相続時 保険金収入し 退職金として支給
3. 法人税法上 役員退職金の社会通念上妥当な金額は 月役員給与×功績倍率(代表取締役3倍など)×役員在位年数×功労加算金(1.3など)


生命保険を利用した納税資金捻出策
1. 契約者 被保険者 受取人を子供とした生命保険について 父から子へ保険料相当を贈与し、相続時解約
2. 契約者が父 被保険者 受取人が子の個人年金保険に加入し 相続時解約
 

3. 相続税引下げ策 

相続人の拡大 
1. 相続税の非課税枠(5千万円+1千万円×相続人数)や 保険金・退職金の非課税枠の計算上 実子がいる場合 養子は1人まで加算できる
2. 後妻の連れ子に相続権はないが 養子になると養子制限にかからない(実子と同じ)
3. 内縁の妻に相続権はないが 戸籍妻になると配偶者非課税枠(総財産×配偶者の法定相続割合と 1億6千万円のいずれか小さい方)が利用可


暦年贈与制度(非課税枠110万円)の利用
1. (贈与額-110万円)×税率=贈与税を 贈与を受けた人が 翌年2月~3月15日まで申告納付する
2. 贈与された財産は 相続税課税なし(3年以内贈与加算除き) 贈与税率が相続税率より低い範囲内で節税


配偶者贈与税制度(非課税枠2110万円)の利用
1. 婚姻期間20年以上の配偶者へ居住用不動産(購入資金)を贈与した場合 贈与を受けた人が申告納付


相続時精算課税制度(非課税枠2500万円)の利用
1. 適用財産は相続時に 相続財産に加算するので 値上がり財産の場合のみ 節税効果あり
2. 一人の親から1度のみしか適用できず 適用後 上記暦年贈与制度は適用できない


4.不動産評価引下げ策 

貸家建付地なら21%減(借地権割合70%の場合)
1. 貸家建付地とは 所有アパート等の土地のこと(所有者は土地建物とも 被相続人)
2. 更地だと100%評価なのに アパートを建てると その土地は 79%評価になる
3. さらに アパートとして貸付している土地200㎡まで その評価の50%減できる(小規模宅地の特例) 


不動産管理会社へ不動産売却
1. 株式を生前贈与しながら 相続時には 経営承継円滑化法により 相続税猶予
2. 親族へ給与を支給し 所得分散
3. 建物のみ管理会社へ売却する場合 借地権を生じさせず、 地代契約。 貸家建付地21%減となるように 契約関係を変えないのがポイント
4. 不動産の現物出資により 管理会社の株式を取得した場合 相続時の退職金により株価減


不動産管理会社へ転貸(土地建物の一括貸)
1. 貸家建付地の21%評価減可
2. 管理会社は 被相続人に賃料を払い 家賃収入を得る
3. 管理会社から 被相続人などに給与支給し所得分散 
4. 業務内容と職務対価の妥当性を検討する


5. 遺留分に関する民法の特例(経営承継円滑化法) 

内容
1. 生前贈与株式を遺留分計算から除外できる(除外合意)
2. 生前贈与株式の評価額を予め固定できる(固定合意)


適用による効果
1. 除外合意により 先代社長から後継者へ トラブルなく 自社株を生前贈与できる 
2. 固定合意により 後継者が 自社株の贈与を受けた後の株価上昇分は 遺留分計算の対象外となる 


遺留分制度について
1. 遺留分とは 配偶者、子など一定の相続人が 相続財産のうち保障される権利
2. 従前 遺留分計算は 生前贈与財産も含み、相続時の価額(株価上昇後)としていた
3. 除外合意により 自社株を遺留分から除外し、固定合意により 合意時の自社株の価額(株価上昇前)により遺留分を計算


後継者が単独で手続きできるのがポイント
1. 先代社長、後継者、全推定相続人が遺留分の特例について合意 
2. 後継者が 合意後1ケ月以内に経済産業大臣に確認申請し、確認日から1ケ月以内に家庭裁判所に申し立てる
3. 家庭裁判所の許可後に 合意の効力が生じる
4. 21年3月施行予定


6. 自社株に係る80%納税猶予(経営承継円滑化法) 

内容
1. 自社株の相続税価額80%の相続税の納税を猶予
2. 納税猶予は 要件をみたすかぎり相続税の納税は免れるが、要件をみたさなくなった時点で 納税
3. 平成20年10月施行予定(税制改正は21年度改正)


相続前に経済産業省の確認をとる
1. 相続前に行う手続きは 後継者の確定手続き(役員登記、自社株・事業用不動産の移転計画など提出)
2. 20年10月~22年3月の相続については 救済措置として 経済産業省の確認は 役員登記などで簡便化
 
相続申告前には経済産業省の認定を受ける
1. 認定要件は 中小企業基本法上の中小企業であること。上場会社でないこと。特定資産(株 不動産)保有会社でないこと
2. 社長 後継者は代表であったこと。同族グループで50%超保有し筆頭株主であること


相続申告後は5年 経済産業省に年1で次を確認。みたしていない場合 猶予税額を納付
1. 後継者が代表者であり 株を継続保有していること
2. 雇用の80%を維持していること


7.相続税を延納・物納で払うには 

延納するには
1. 延納とは 相続税の分割払い(年1回)制度
2. 相続税が10万円超で 金銭納付が困難と認められる場合のみ
3. 土地などの担保を提供すること
4. 延納申請書を期限内に提出し 税務署長の許可を受けること


延納した場合
1. 延納期間は不動産割合により決まる(75%以上の場合 最大20年まで分割可)
2. 利子税を合わせて納付する。(不動産割合75%以上の場合年利3.6% 公定歩合0.1%の場合 2.0%の特例あり)


物納するには
1. 物納とは 相続財産で相続税を現物納付する制度
2. 延納によっても 金銭納付できない事由があること
3. 物納申請書を期限内に提出し 税務署長の許可を受けること


物納できる財産
1. 国債 不動産などが 第一順位(物納したい財産が 物納できるかは 事前の検討が必要)