夫婦間贈与の注意点 | 川口市 草加市の税理士/相続税・遺言・成年後見ブログ 

夫婦間贈与の注意点

1.名義変更の注意点 

名義変更があった場合 原則 贈与
1. 夫の株や不動産の名義を 妻に変更し、対価を受け取らなかった場合 夫から妻への贈与となり、妻が贈与税を払う
2. 名義変更行為は 原則 贈与行為になります
3. 名義変更が 一時的に名前を借用しただけの場合 贈与税課税は ありませんが、贈与の取消など 贈与されていないことを 証明する必要があります


贈与は 双方の合意により成立
1. 双方の合意があれば、贈与契約書など文書を交わさなくてもいい(口頭による贈与も有効)
2. 双方が合意していれば 不動産などの財産を 実際引き渡す必要はない(実務では 不動産の場合 登記により贈与履行されたと考えて 登記時に贈与税課税)

夫が 法人に 不動産を贈与した場合
1. 会社に法人税課税(時価相当)
2. 夫に譲渡所得課税(時価相当)
3. 一般的に 相続税評価額の方が 時価より低いため 過大の税金となり、さらに 双方で二重課税される
4. 不動産でなく 現金を贈与した場合 会社のみ課税
5. 会社から 妻に不動産を贈与した場合 会社に時価課税され、妻に一時所得課税がされる


2. 贈与を取消した場合の注意点 

贈与税は 財産を受けた側が納税
1. 夫が妻に 財産を贈与した場合 妻が贈与税を支払う
2. 妻が 納付すべき贈与税を納付しなかった場合 贈与した夫にも連帯して 納付する義務があり
3. 夫が贈与税を肩代わりした場合 夫は妻に その返済を求める権利(求償権)を持つ
4. 夫が 税負担を約束して 不動産を贈与した場合 不動産+税負担分に対して 贈与税が課される
  
贈与契約を 取り消す場合
1. 夫から妻に贈与した後に 贈与の取消により 妻から夫に 財産が戻った場合
2. 取消が 法定事由のときは 贈与は初めからなかったものとされ、妻が納税した贈与税は 更正の請求により 還付余地がある
3. 取消が 法定事由以外のときは 妻から夫に再贈与があったものとして 夫に贈与税が課される 
4. 夫が 妻の承諾なしに 不動産の名義変更をした後に 妻が拒否したので 取り消す場合 再贈与の余地があり夫婦ともに課税される場合もある


贈与取消の法定事由
1. 詐欺・脅迫による贈与の取消
2. 夫婦間の契約取消権によるもの(租税回避目的でないもの)
3. 未成年者の行為取消権によるもの


3.離婚に伴う財産分与の注意点 

夫から妻への財産分与の取扱
1. 離婚による財産分与請求権に基づき 分与される財産は 原則 贈与税の対象には ならない
2. 夫が妻に 金銭を財産分与した場合 課税されない
3. 夫が妻に 不動産を財産分与した場合 夫に含み益(譲渡所得)課税されるので 要注意
4. 離婚による財産分与制度を利用して 相続税などの節税を図る場合、財産分与した財産が 慰謝料などの部分を 超えている場合 贈与税課税あり 


財産分与なら夫に課税 贈与なら妻に課税
1. 夫が課税されることを知らずに 不動産を財産分与した場合 (夫が 妻に贈与課税がされると 勘違いしていた場合) 裁判において 契約に錯誤があるとして 無効の判決もある
2. 内縁関係の解消についても 離婚同様 財産分与制度は利用余地あるが、愛人関係の精算に伴い財産を与える行為は 贈与税課税あり


財産分与による不動産譲渡の特例適用余地
1. 含み損のある不動産の場合 他の譲渡益と相殺可
2. すでに離婚をしていれば、居住用財産譲渡の3千万円控除、10%軽減税率の 適用余地がある


4.妻名義の財産の注意点

妻名義の預金は 誰の財産か
1. 名義上の財産所有者が 妻であっても、実際 お金を負担し、その財産を管理していたのが 夫の場合 夫の財産とみなされることがある
2. 夫の預金口座から 専業主婦の妻の預金口座へ 移った金銭は 夫の財産を 妻に贈与したことになる
3. 相続の場合 妻名義の財産のうち 夫の財産とみなされたものは 相続税か贈与税が課税される


夫の婚姻期間中の財産は 夫婦共有とは限らない
1. 収入のない妻が 自分の財産であることを証明するには、妻の過去の財産状況、所得状況、相続・贈与の資料が 税務上、必要な場合がある 
2. 夫からの送金で 生活実費などについては 贈与されることは ない
3. 株や不動産の場合も 名義者が妻であっても 実際 夫の財産とみなされる場合がある


はじめから贈与として申告するのがよい
1. 毎年非課税枠110万円を利用して、贈与税申告を行う
2. 預金通帳を通してお金を動かす、登記をするなど 足跡が残る贈与を行う
3. 利息や不動産収入など運用益は 財産所有者が取得し、税金や費用も財産所有者が負担する


5.賃貸アパートを贈与する場合の注意点 

夫が アパート建物を 妻に贈与 
1. 夫の土地に 妻のアパート建物があり、妻が不動産収入を得るケース
2. 高収益の物件の場合 所得移転による節税効果あり
3. 贈与直前に 修繕など固定資産税評価を上げないような 建物改修を行うのも 相続税対策上 効果あり


通常 妻は夫に地代を払わない方が安全
1. 夫に 地代を払わない(使用貸借)場合 借地権の贈与課税は ない
2. デメリットは 夫の土地の相続評価に 貸家建付地の21%評価減が 使えないこと(100%評価のみ)
3. 土地と建物を 贈与することにより 夫の相続財産の対象外となり、妻の相続評価に 貸家建付地の評価減が使えるため 相続税対策として有効


夫の土地に 妻の事業用建物でも 評価減できる
1. アパートなど 賃借人が頻繁に代わる場合 貸家建付地の評価減 の余地はない
2. 賃借人が 同族会社など 長期間変わらない場合  土地の相続評価に 貸家建付地評価減 の余地がある 


借地権課税を生じさせない届出もれに注意
1. 土地所有者と建物所有者が異なる場合、借地権課税を回避することから 考えること


6.妻の債務を肩代わりした場合の注意点 

妻の債務を 夫が引受した場合 原則 贈与
1. ただし 妻に債務弁済資力がなく かつ 扶養義務者に肩代わりしてもらった場合 妻が弁済困難な部分は 贈与税が課税されない
2. 妻に 近い将来も含めて 借入や働けないなど収入が見込めない、実際 債務超過にあるなどの条件が必要
3. 妻の債務と財産を 夫に贈与した場合(負担付き贈与) 夫は 財産の価額(不動産の場合 時価 他の財産の場合 相続税評価額など)から 債務の額を 引いた額に 贈与税が 課される


共稼ぎ夫婦が 住宅を借入購入した場合の注意点
1. 共稼ぎ夫婦が 住宅を購入し、夫婦共同の収入から 借入返済がされている場合 夫婦の所得に応じた返済負担をする
2. 妻が 一切負担していない場合、1年間の返済額×妻所得金額/夫婦所得金額 に贈与税が課される
3. 夫婦の負担額に応じて 共有持分登記すれば 贈与税リスクは なくなる
4. 共有持分を放棄した場合 贈与税が課される


妻に無利子で 金銭貸付をした場合の注意点
1. 利息相当額について 贈与税が課される
2. 利息相当額が少額の場合 課税しなくてもいい


7. 生命保険契約の注意点 

契約によって 保険金が贈与税対象になる
1. 契約者(保険料負担者)・被保険者が 夫、受取人が妻の満期保険金は 保険金受取時 夫から妻への贈与として 贈与税が課される
2. 上記契約で 夫が死亡したことにより 妻に給付された死亡保険金は 相続税が課される 
3. 契約者(保険料負担者)・受取人が 妻、被保険者が夫の死亡保険金は 妻に所得税が課される
4. 契約者・被保険者が 夫妻以外の誰か、保険料負担者が夫、受取人が妻の死亡保険金は 夫から妻への贈与として 贈与税が課される


信託も契約によって 贈与対象になる
1. 信託を委託した人と 信託の利益を受ける人が 同一なら 贈与の問題はない
2. 夫が所有不動産を 信託会社に信託し、信託の利益を 妻が受ける場合、夫から妻への贈与として 贈与税が課される
3. 信託期間終了時に 信託不動産を妻に与える契約も夫から妻への贈与として 贈与税が課される


相続税の納税対策として有効な契約
1. 契約者(保険料負担者)が夫、被保険者・受取人が妻の保険について 夫相続時に 解約返戻金を受け取る権利を 妻が取得することにより 納税対策になる


8. 子供がいない夫婦の贈与の注意点 

子供がいる場合 と いない場合の相続人
1. 妻が亡くなった場合 子供がいれば 夫と子が相続人
2. 子供がいない場合  夫と 妻の親 が相続人、
3. 妻の親が既に亡くなっている場合 夫と 妻の兄弟姉妹が 相続人(このケースは対策が必要)


夫は 自分が亡くなった後の妻を心配して贈与したのに
1. 妻が先に亡くなってしまい、妻に贈与した財産が 妻の兄弟姉妹に分割される場合がある
2. 法定相続割合は 夫3/4 妻の兄弟姉妹1/4
3. 妻の兄弟姉妹には 遺留分(相続人に認められた最低保障額)がないので 遺留分侵害行為として 請求はできないが、分割の話合いは 実際困難


遺言制度を活用
1. 生前贈与を計画的に行うとともに 公証役場において 公正証書遺言を作成
2. お互いに 全ての財産を 夫(妻)に相続するように 遺言書に記載
3. 適正な遺言であれば、生前贈与した財産が 自分に戻ってくる
4. 意図していない兄弟姉妹に 流出しないで済み、分割協議の話合いも スムーズにいく
5. 財産を引き継ぎたい人との養子縁組も 選択肢の1つ