美女と野獣 ベルの素敵なプレゼント
原題:Beauty and the Beast
The Enchanted Christmas
1997年
監督
アンディ・ナイト
データ
1991年に公開され大ヒットを記録し、史上初めてアニメーションでアカデミー作品賞にノミネートされるという快挙を成し遂げたディズニー屈指の名作「美女と野獣」の6年ぶりの続編作品。
ディズニートゥーン・スタジオ(の前身部門)により制作され1997年にソフト作品として公開されました。
監督はカナダのアニメーターでありテレビを中心に様々な作品を手掛けたアンディ・ナイト。
脚本は「ライオン・キング2」や「ノートルダムの鐘2」等の多数のディズニー続編を手掛けたフリップ・コブラーとシンディ・マーカス。
さらに人気テレビシリーズ「キム・ポッシブル」を手掛けた事でも知られるビル・モッツとボブ・ロス。
音楽は劇伴で様々な賞を受賞し、80年代から現在に至るまで第一線で活躍し続ける作曲家レイチェル・ポートマン。
前作の約1年後、そして前作中の空白の期間に起きた2つのクリスマスを描いたサイドストーリー。
野獣が人間に戻る前、城を抜け出し狼に襲われたベルを野獣が助け二人の距離が近付いた後からクリスマスまでの物語を描いています。
ベル役のペイジ・オハラ。
日本語版は伊東恵里さん。
野獣・王子役のロビー・ベンソン。
日本語版・山寺宏一さん。
ポット夫人のアンジェラ・ランズベリー。
日本語版・福田公子さん、歌・ポプラさん。
等、チップ役を除くとほぼ全キャストが前作から続投していて、非常に豪華です。
さらに新キャラクターのフォルテ役にはティム・カリー。日本語版は壌晴彦さん。
ファイフ役にポール・ルーベンス。日本語版を中尾隆聖さん。
アンジェリーク役にバーナデット・ピーターズ。日本語版に麻生かほ里さん。
とこちらも実力派が揃った豪華な布陣。
「アラジン」の続編シリーズが成功を収めた事を受けて、ディズニーヒットムービーのビデオ続編第二弾として企画・制作された今作。
しかしそのアラジンシリーズは、商業的な成功とは裏腹に評価面では非常に厳しい声が溢れ、【ディズニーの続編は信用できない】という論調が世間では早くも起こり始めていました。
そんな中公開されたこちらの作品。
新設されたカナダスタジオでの初作品という事で様々な面でアラジンシリーズの反省点を改善し、CG技術をビデオ用作品で初めて本格導入する等新たな試みも多く取り入れられた力作となりました。
しかしこちらも販売本数では好調を記録するものの、評価面は芳しくなく、アラジンシリーズ程ではありませんがそれでも否が多めの賛否両論という評価に落ち着いています。
それでもCGを使用した映像の工夫や画角や構成、背景等のアニメーションの健闘、そして一作目の出来事やキャラクターをしっかりと深堀りしたサイドストーリーとしてのプロットの上手さ等には肯定的な意見も多くあり、美女と野獣のコアなサイドストーリー作品として現在も一定の人気を獲得し続けています。
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データ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231203/09/yuzupill/64/71/j/o1080060715372231100.jpg?caw=800)
お城と野獣にかけられた呪いが解かれたたあの奇跡から約1年後。
お城ではクリスマスのパーティーが開催されていた。
無事にお城で再びクリスマスが祝えることを喜び合うルミエールやポット夫人たち。
ふと去年のクリスマスの件を思い出す一行。
興味を示したチップに、ポット夫人は去年ある人物の働きによってクリスマスが救われた時のお話を語り始めた…
話は城を抜け出し狼に襲われたベルを野獣が助けたあの日まで遡る…
徐々に距離を縮める2人を見て人間に戻れることを期待する家来たち。
しかしそんな中、とある理由から呪いが解け人間に戻ることを頑なに拒絶する一人の家来がいた…。
彼は野獣とベルの仲を壊すため行動を起こしはじめる…。
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感想
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231203/10/yuzupill/c9/ad/j/o0600037115372252468.jpg?caw=800)
決して素晴らしい出来とは言えませんが、アラジンの続編や リトルマーメイド2 などに比べればかなり健闘している作品だと言えると思います。
その内容的にも歴史的にもディズニーファンそして美女と野獣が好きな方にとって、一度は見ておいた方がいい作品にしっかりと仕上がっています。
これをクリアできているというのは実はトゥーン続編の中ではかなり大きいんですよね。
ぶっちゃけ、見なくてもいいもしくは見ない方がいいくらいの続編も結構あるので…。
トゥーンスタジオはやはり昔から、直接的な続編よりもこういう、ある種結末が決まっているサイドストーリー的な物語の方が圧倒的に得意ですよね。
一作目を上手く利用したプロット
クリスマスを題材にしたお話ではありますが決してそこに頼りきることはなく、前作「美女と野獣」で【描かれたこと】と【描かれていないこと】を非常に巧みに使ったうまいストーリープロットだと思いました。
1作目の隙間を埋める物語なので結末はもう分かっているんですがその中で、【野獣が王子だった頃の城内の様子や家来たちとのやり取り】、そして【城に魔法がかかった時の詳細】など、1作目を見た人が気になったであろう部分、見たかったであろう部分をうまく取り入れていて、前作のファンが興味を失わずに見ることができるよう工夫されています。
そして前作で描かれていたキャラクターの特徴もしっかり活かしていて、ベルが大好きな本と物語について歌うミュージカルシーン等はとても良かったと思います。
それだけのリサイクルで終わらず、新しいヴィランや新キャラクターもしっかり投入して物語に新鮮味を与えているのも果敢で良かったですね。
そして個人的に特に上手いと思ったのは、ベルと野獣の関係を縮める大きな要因となったきっかけとして【ベルが野獣に自分の願いを綴った本をプレゼントしていた】というプロット。
そして、人間に戻ることが100%の幸せとして描かれていた前作に対して【実は人間に戻りたくないと思っている者もいた】という設定。
この2点はお世辞抜きに本当にうまいし、良く考えられているなと思いましたね。
あとラストの野獣からベルへの意外なプレゼントもとても良かったです。
まぁただ全体の構成や演出としては、ちょっとイマイチな部分や無理矢理な部分、前作との整合性が怪しい部分も多かったとは思いますが…。
一番よくわからなかったのは、野獣が間違いに気付き牢屋のベルを助けに来る直前に突然挟まれるルミエールとコグスワースの【A Cut Above The Rest】という脳天気なミュージカルシーン。
これ何だったんでしょう。
いやこのシーン自体は別にあっても良いと思うんですが、明らかにタイミングがおかしいと思ったのは自分だけでしょうか。
物語がクライマックスに入り良い感じに臨場感が高まってきた時に急に始まるんでなんか拍子抜けというか、凄くわかりやすく展開の邪魔をしちゃってます。
ここだけに関して言うと正直こんな酷い構成見たことないですw
何がなんでもこのシーンを入れたかったんでしょうかね…。。(正直たいしたシーンじゃないと思うんですが…w)
あ、それと地味な要素ではありますがクリスマスを諦めていた新キャラクターのアンジェリークがベルの言葉によって希望やクリスマスの精神を取り戻す、、
というクリスマスらしいシークエンスがちゃんと導入されているのととても良かったですね。
作画・アニメーションの工夫と努力
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231203/11/yuzupill/59/ae/j/o1080060715372276217.jpg?caw=800)
これはかなり頑張っていたんじゃないでしょうか。
作画に関してはベルだけが終始イマイチで、崩壊してる箇所もありましたが、それ以外のキャラクターは比較的良く描けていたと思います。
特にトゥーンスタジオの最も苦手とする画角や構図が非常に工夫されていて、努力の跡がかなり伺えました。ちょっと違和感ある部分もありましたが色んな見せ方に果敢に挑戦しているのは良かったです。
そして何よりもヴィランであるパイプオルガンのフォルテ。
全編3DCGにて描かれていて、重量感や質感がしっかりと表現されています。
初のソフト作品へのCGの本格導入でありながら、安っぽさや2Dとの組み合わせの違和感もほとんどなく、彼の独特なキャラクター性も相まって、フォルテというキャラにヴィランとして大きなインパクトを残すことに成功しています。
ビデオ作品のサイドストーリーでありながらしっかりと新しい事に挑戦しているのが素晴らしいし、このフォルテというキャラはこの作品において最も特筆すべき点だったと思います。
不気味さと陰湿さ、そして悲哀を感じる素晴らしいヴィランだと思いますね。
同じく新キャラクターのアンジェリークもヴィジュアル・デザイン的にとても良かったんですが、こちらはイマイチ地味な扱いに終わってしまいました。
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まとめ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231203/12/yuzupill/79/19/j/o1080057815372291861.jpg?caw=800)
上では語れませんでしたが、レイチェル・ポートマンによる音楽もなかなか良くて、特にベルが本の世界について歌う【Stories】という曲と表題曲とも言える【As Long As There's Christmas】は流石の出来でした。
ちなみに【As Long As There's Christmas】という曲は今でもディズニーのクリスマス定番曲の一つとして東京ディズニーランドのクリスマスパレード等にも使用されているので、聴いたことがある人も多いかと思います。
フォルテが怒り狂うシーンでベートーヴェンの「交響曲第5番」が使用されているのとかも粋で良かったです。
ディズニートゥーン・スタジオの草創期の作品である為やはり作画や展開等に難がある部分が多いのも事実ですが、低予算・短期間での制作作品でありながらも、しっかりと熱意と情熱、そして「美女と野獣」へのリスペクトをこめて作られた作品である事は、見て頂ければわかると思います。
クリスマス映画としてお子様も楽しめるエンターテイメントにもなっていますし、大人には本編で語られなかった要素がしっかり描かれた貴重なサイドストーリーとして、十分楽しめる一本になっていると思いますね。
もちろん一作目と同レベルの作品ではありませんが、「美女と野獣」の余韻に浸れるファンアイテムとして、そして家族で楽しめるクリスマスムービーとして、ぜひ一度観賞してみては如何でしょうか?
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はい。
というわけで!
今回はこの辺で〜。
いつもこんな駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
では、また次回!
しーゆーねくすとたぁーいむ。