※追記修正による再掲記事です。
はいどうも。
今回は、今はなきディズニートゥーンスタジオが残した大きな遺産「ディズニーフェアリーズ」シリーズについても順に語っていきたいと思います。
ディズニー・トゥーン・スタジオ
まずディズニー・トゥーン・スタジオについて、プーシリーズの記事で再三触れていますが軽くおさらい。
ディズニー・トゥーン・スタジオは1990年に設立されたディズニーアニメーションスタジオの一つで、主に本家スタジオの低予算続編、ビデオ映画、短編映画、テレビスペシャル作品を製作していた言葉を選ばずに言うとサブスタジオとも言うべき会社。
いっとき巷に溢れた所謂「ディズニーヒット作のひどい続編」の主犯でございます。
結局2007年にディズニーアニメーションスタジオ全ての最高責任者に就任したジョン・ラセターの手により大幅なテコ入れが行われ、2018年に彼のディズニー退社と時を同じくして閉鎖となってしまいました。
しかし、これは声を大にして言いたいんですがこのサブスタジオ、地味にですが本家に負けないような良い映画も何本も残しています。
前記事で散々語ったプーさんシリーズや「グーフィー・ムービー ホリデーは最高!!」「バンビ2」「リロ&スティッチ2」「ライオン・キング3-ハクナ・マタタ-」「シンデレラ3」辺りは今でも評価の高い力作ですし、日本でも劇場公開された「ピーター・パン2」は個人的には最高の続編でした。
この作品内のピーター・パンとウェンディの再会シーンはディズニーアニメーション史上に残る名シーンだと評価する声も少なくありません。
いやもちろん確かに酷いものも沢山ありますが…
ジョン・ラセターが就任した後は制作中だったほぼ全ての作品を中止させられ、ひたすらピクサーのカーズのスピンオフを作らさられそして閉鎖という仕打ちを受けたこのスタジオですが、そんな中で唯一生き残ったのがこちらの作品でした。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
ティンカー・ベル
(原題:Tinker Bell)
2008年
監督
ブラッドリー・レイモンド
データ
「ピーター・パン」シリーズに登場する妖精ティンカー・ベルが彼に出会う前の物語を描いたシリーズの第一弾。
最初からシリーズ化を念頭に置いて企画されたトゥーンスタジオ勝負の一大プロジェクトでした。
ジョン・ラセター就任後に一時は他作品同様中止を命じられるも(ちなみにこの時当時のトゥーンスタジオ社長は更迭されています)、ラセターの指揮下という条件のもとプロジェクトはなんとか再開。
メディアミックス「ディズニーフェアリーズ」との同時展開や媒体を劇場用ではなくソフト用作品に統一する、初作の結果次第ではシリーズ化を中止、、等諸々のテコ入れを行ったすえ、なんとか発表にこぎつけた一本。
ちなみにこの作品は本国では前述の通りビデオスルーでしたが、日本ではそのティンカーベル人気もあり劇場用作品として全国公開。
これはなかなか珍しい現象でもありました。
妖精の谷ピクシー・ホロウを舞台に、生まれたばかりのティンカー・ベルが妖精として成長する様子を描いたファンタジーアドベンチャー。
原作は無くディズニーのオリジナルストーリーですが、このピクシー・ホロウでのティンカー・ベル達の物語はメディアミックス【ディズニーフェアリーズシリーズ】として文庫小説でシリーズ化されこちらも人気を博しました。
監督はブラッドリー・レイモンド。
「ポカホンタス2」や「ライオン・キング3」等を手掛け、以降のティンカー・ベルシリーズにも深く関与していく事になる方です。
脚本はジェフリー・M・ハワード。
同様に以降の同シリーズや「プレーンズ」シリーズの脚本を主に手掛けました。
音楽は実に様々なディズニー続編作品を手掛け、以降のティンカー・ベルシリーズにとって無くてはならない存在となるジョエル・マクニーリー。
又メインテーマであるミシェル・トゥームスが手掛けた「fly to your heart」をセレーナ・ゴメスが歌い大きな話題となりました。
この楽曲では東京ディズニーシー等のパーク音楽としても採用され現在でも高い人気を誇る一曲となっています。
挿入歌はロリーナ・マッケニットによる「To the Fairies They Draw Near」。
ティンカー・ベル役を務めたのはテレビや映画で女優としても活躍するメイ・ホイットマン。
日本語版はオーディションで大抜擢された新人の
深町彩里さん。
さらに「ディセンダント」のクリスティン・チェノウェスや今や売れっ子女優の一人でもあるルーシー・リュー、「アグリー・ベティ」のアメリカ・フェレーラ、数多くのディズニーキャラクターをこなすベテラン声優ジェフ・ベネット等脇を固めるメンツにも実力者が揃い踏みしています。
公開に漕ぎ着けるまで紆余曲折あった本作ですが【喋るティンカー・ベル】に多少の賛否はあったものの、予想を遥かに越える高収益と好評価を獲得し、当初の構想通りシリーズ化が正式決定。
当初は四季を描いた4部作の予定でしたが結局好評につき6本もの長編が制作される事になり、2009年と2010年には東京ディズニーシーにてティンカー・ベル達フェアリーズが主役となった春のイベントも開催。
【ディズニーフェアリーズ】は人気コンテンツへと成長していきました。
日本でも子供たちを中心にフェアリーズ人気が高まり、一時は【ディズニープリンセス】と肩を並べる程の人気カテゴリーに。
特にこの1作目は全国劇場公開された事もあり視聴した人が非常に多く、現在では大人達やファン達による再評価も進み未だに人気の高いシリーズとして続編を望む声も上がり続けています。
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あらすじ
ネバーランドにある妖精の谷「ピクシー・ホロウ」。
ここで暮らす妖精は人間の赤ちゃんが初めて笑う時に一人に一つ才能を持って生まれる。
そして世界の季節を作り届ける仕事をしながら暮しているのだった。
ある日ロンドンのとある赤ん坊の笑い声から新たにティンカー・ベルという妖精が産まれた。
ピクシー・ホロウでは新たな仲間を迎え入れる儀式が行われ、ティンカー・ベルに与えられたのは「もの作りの才能」だった。
妖精としてのルールやもの作りの仕事について学ぶティンクだったが、そんな中で【迷い物】という人間世界から流れ着いたガラクタに興味を抱き、次第に人間界に惹かれるようになる。
しかしそんな時「もの作りの妖精」は四季を届けにメインランド(人間の世界)へ行くことができないという事実を知りショックを受けてしまう。
ティンカー・ベルは「私に相応しいのはもの作りじゃない。」と、他の才能を見つける為に悪戦苦闘し、仲間の妖精達もそれに協力する事になった。
しかし、この彼女のワガママがやがてピクシー・ホロウを揺るがす大事件に発展していく…。
感想
ピーター・パンの相棒としてとっても有名な人気キャラクターであるティンカー・ベル。
そのティンカーベルの、ピーター・パン原作小説でもあまり深くは描かれていなかった生い立ちとそのバックボーンを、原作の「鋳掛け屋の妖精」「ビクシーホロウ」等のキーワードをたくみに広げて一つの作品として構築しようという、実はかなり大胆なチャレンジ精神に満ちた作品です。
実は個人的にこのシリーズ…めちゃめちゃ大好きなんですよ。
地味ですがディズニーの新たなラインを見出したというか…そういうシリーズだったと思うんですよね。
これまで散々言われてきたトゥーン・スタジオが最後に意地を見せた。
そんな力作シリーズだったと思います。
「ティガー・ムービー」と並んで同スタジオが残した最大の功績の一つと言えますね。
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所々に見られる詰めの甘さ
まずはマイナス面をサクッと。
一つ目はアニメーション。
フルCGアニメーションなのですがまずCGのクオリティーに関してはピクサーや現在の本家ディズニーにはやはり全く及びません。
ディズニーチャンネルのソフィアとかレディーバグとかのテレビ用クオリティー…
とまでは言いませんがそれに毛が生えたレベルかと。
ティンクの表情とかピクシーホロウの情景とか力が入ってる部分は素晴らしいですが、ちょこちょこちょっと残念な部分も。
そしてメインストーリープロットの雑さ。
特にこの1作目は正直全体的に薄く、ご都合主義も結構激しめのどちらかと言うと子供向けウェイトな内容。
まぁだからこそ子供人気が急上昇し人気シリーズと成り得た…とも言えますが。
ティンクが自分の才能である「ものづくり」の重要性に気づくまでの過程の描写がちょっと雑なのが一番気になりました。
ここをもう少ししっかり描いていれば大人にも刺さる内容になり得たんですが…。
魅力的なキャラとディティール
何よりまずは世界感の作り込みが素晴らしいですよね。
原作で少しずつ言及されていた妖精関連の情報をうまく使いながら壮大な「ピクシーホロウ」という一大コミュニティーを細部まで見事に作り上げました。
さずがシリーズ化を念頭に制作されただけのことはあります。
「人間界に季節を届けているのは実は妖精の仕事」という古くからの概念とピーター・パンの世界をうまく結びつけ、ピクシーホロウ全体を季節作りの仕事をしている妖精達の一つの集団・会社に擬え、その仕組みや成り立ち方、物語に直接関わらない裏設定まで非常に作り込まれています。
非常に魅力的なのですが、そこをあえてあまり作中で説明しずぎていないのも個人的によかったです。人によっては「分かり辛い!」となるとこかも知れませんが。
魅力的なキャラとディティール
キャラクター達もティンクの仲間の水・光・植物・動物、そして今作ではヴィラン的立ち位置でもあった風のヴィディアら各妖精達がそれぞれ個性があってとても魅力的です。
さらにおとぼけ担当のもの作り妖精の仲間クランクとボブル、そしてそれをまとめるフェアリーメアリー、粉の番人テレンス、ピクシーホロウの女王クラリオン、、
などなどこれから活躍しそうな丁寧にデザインされた良質なキャラクター達が次々に顔を見せますが今回物語に深く絡むのはヴィディアくらい。
この小出し感それも含めてこの先のシリーズ展開に非常にワクワクしました。
それと小道具関連、妖精達の集落や住む家、ティンクの作るアイテム等も非常に凝った作りとデザインで、素晴らしかったです。
特にティンクのモノ作りシーンはわりと力学等をちゃんと盛り込んだ本格的なもので見応えがありました。
兎に角ディテール作りが素晴らしい映画なんですよね。
それをもうちょっとこの一作目でアピール出来ていたらなぁ…。
ティンカー・ベルの誕生
それとやはりあの人気キャラクターであるティンカー・ベルの生い立ちを思い切って描いたこと。
これには素直に賞賛を送りたいです。
オープニングの赤ちゃんが笑いそこからティンクが生まれるまでのシークエンスは美しく、見応えたっぷり。
そしてこれはファンサービスでしょうがピーター・パン本作との絡みを最後の最後で見せてくれる憎い演出。これも良かったです。
それとティンカー・ベルのキャラクター、原作やピーター・パンと違う!
ティンクはこんなんじゃない!
という意見もあるようですが、いや相当頑張ってると思いますよ。
短気で怒りっぽくプライドが高い。
一途で一つのことに熱中すると全力で一生懸命に取り組む。
彼女のアイコンとも言える特徴の全てが今作の行動や態度に上手に反映されています。
誰でも楽しめる作品ではありますがあえて言えばティンクの性格をある程度理解したうえで見たほうがより楽しめるかもしれませんね。
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まとめ
上で語り忘れましたが音楽も非常に良かったですね。ティンカー・ベルの代表曲と言える存在ともなったセレーナ・ゴメスの「fly to your heart」は本当に名曲ですし、ジョエル・マクリーニーの劇伴はピクシー・ホロウの世界にピッタリと合っていて、今後このシリーズのほぼ全ての劇伴を担当したのも納得のハマり具合いでした。
総じてやはり今までのトゥーン・スタジオには無かった程の、いや、ティガー・ムービーやピーター・パン2の時のような種類の意気込みや熱量をそのディテールの作り込みから感じれる、個人的には本家にも負けない力作だと思いますね。
ただ、その始まりとなる初作としては、その折角拘った部分や情熱を注いだ点の使い方や魅せ方が少しうまくなかった事が本当にもったいなかったです!
ストーリーは基本はまぁまぁ子供向け、ただ縦軸の繋がりや小ネタ、その各種ディティールは大人向けになっていて両者が違った視点で楽しめるようになっています。
この後作られたシリーズ5作品も、期待通り各作品作り込まれたディテールやキャラクター達を活かした素晴らしいものとなりましたが、スタジオの閉鎖によりこのシリーズの本当のラストは制作されず仕舞に…。
これは本当に残念だったなぁ。
なんとか最後のピーター・パンとの出会いまで描いて欲しかったです。
まさにトゥーン・スタジオ最後の輝きと言えるこのシリーズ。
まぁ続編に関してはまた一作ずつこれからゆっくり語っていきたいとは思いますが、まずはこの一作目。
【ピーター・パンは好きだけど所詮子供向けのスピンオフでしょ…】と手を出していなかったそこのあなた。
だまされたと思って一度観てみて下さい。
そこには美しいピクシーホロウと可愛らしい妖精達が待っていますので。
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