はーいどぉもおぉ。
さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史。時代は正にディズニー長編アニメーション黎明期。全てが始まり動き出した時代です。
史上初の長編カラーアニメーション「白雪姫」が空前の大ヒットを記録し、その勢いのままディズニーは続けざまに超大作「ピノキオ」「ファンタジア」を矢継ぎ早に発表。
いずれも好評価を獲得しますが収益面では大きな失敗に終わり、ディズニーの財政面は急激に圧迫されていきます。
もはや倒産寸前まで追い込まれる中、低予算短期間作業によるローコスト作品の制作が余儀なくされたディズニーは、過去の短編作品を想起させるようなシンプルかつカートゥーン味溢れる原点回帰の一本を公開します。
そしてそのローコスト制作された苦肉の一本が、窮地に陥ったディズニー社を救う救世主となるのでした。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231222/08/yuzupill/e1/33/j/o0765108015379916026.jpg?caw=800)
ダンボ
(原題:Dumbo)
1941年
監督
ベン・シャープスティーン
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ4作目の長編アニメーション。
第二次世界大戦が過激化を辿る1941年に公開されました。
監督は数々の短編作品に加え「ファンタジア」や「ピノキオ」等を手掛け初期のディズニー作品の中心的存在であったベン・シャープスティン。
脚本にはディズニー黎明期を支えた後1度退社、90年代にカムバックし「美女と野獣」「ライオン・キング」等でルネサンス期に大きく貢献する事になるジョー・グラントと、映画だけではなくディズニーの様々なマルチメディア作品を支えたディック・ヒューマー。
音楽は「白雪姫」をはじめ黎明期ディズニーの音楽の屋台骨を支えたフランク・チャーチル、そして今作をきっかけにこの後「シンデレラ」「ふしぎの国のアリス」「ピーター・パン」等ディズニー音楽を背負っていく事になるオリバー・ウォレス。
原作はヘレン・アバーソンとハロルド・パールによる1939年に発表されたばかりの当時無名だった児童書「空飛ぶゾウのダンボ」。
大まかな筋は踏襲してはいますが、キャラクターや設定等、所々に改変が加えられています。
移動サーカス団に所属する象ジャンボの子供であるダンボがコンプレックスである大きな耳を活かしてスターになるまでを描いたファンタジーミュージカル。
主人公のダンボには台詞がなく全てがパントマイムで表現されています。
ダンボの相棒であるネズミのティモシー役にはコメディ俳優のエドワード・ブロフィー。
日本語版はアリスの白うさぎ等様々なディズニーキャラクターを演じている牛山茂さん。
コノウトリ役には初代プーさん声優として知られるスターリング・ホロウェイ。このコウノトリはビジュアルもホロウェイをモデルとしてデザインされています。
日本語版は「ふしぎの国のアリス」チェシャ猫で有名な関時男さん。
ダンボを助けるカラスのリーダー、ダンディ・クロウを演じたのはクリフ・エドワーズ。初代ジミニー・クリケット役で脚光を浴びたばかりでした。日本語版は野村隆一さん。
前作「ピノキオ」の約1/3以下の制作費という圧倒的低予算、さらに世界大戦過激化という世相ながら作品は大ヒットを記録。
「ファンタジア」や「バンビ」等錚々たる顔ぶれの中今作は【1940年代で最も収益面で成功したディズニー映画】となりました。
評価面でもそのシンプルながら魅力的で親しみやすいキャラクターと沢山の人の胸を打つテーマやカタルシス、涙や笑いの中に盛り込まれた超現実的世界、個性的ながら人々の心に残る音楽は多方面から絶賛され、アカデミー賞の作曲賞も受賞。
1941年のタイム誌ではマン・オブ・ザ・イヤーとして1度選ばれる程の人気と話題を博します。
(※ギリギリになり真珠湾攻撃が発生した影響でマン・オブ・ザ・イヤーは急遽ルーズベルト大統領に変更されてしまいました。)
ディズニーパークでのアトラクション化やショーパレードへの採用、グッズ展開等も行われ、現在ではディズニーを代表する作品に成長し「ダンボ」は誰もが知る程の圧倒的知名度を誇るキャラクターとなりました。
日本でも【耳をダンボにする】という言葉が大衆に浸透するほどそのキャラクターとストーリーは広く知れ渡り【短所は長所に変えられる】という教訓の代名詞として、子供から大人まで広く親しまれ愛され続ける作品となっています。
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あらすじ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231222/17/yuzupill/4b/e5/j/o0638047715380073900.jpg?caw=800)
旅をするサーカス一座。
その中に我が子を待ち望む象・ジャンボがいた。
一座を乗せて街から街を移動する列車の中、そんなジャンボのもとに待望のコウノトリが赤ん坊を連れてやってくる。
待ち望んでいた我が子に「ジャンボ・ジュニア」と名付け愛でるジャンボ。
それを祝福する仲間の象たち。
しかし、その子象には耳が異常に大きいという特徴があった。
それを見るなり子象の大きな耳を蔑み馬鹿にし「ダンボ」とあだ名をつける仲間の象達。
しかしジャンボはそんな事は全く気に留めずダンボに愛を注ぐ。
しかし、そんな時街のサーカスで大衆にお披露目されたダンボは子供達に笑われ、石をなげられる等の悪意のあるイタズラを受けてしまいそれに怒ったジャンボは静止を振り払い大暴れし、サーカス団に拘束されてしまう。
悲しみにくれるダンボに追い打ちをかけるように陰口を叩く団員の象達。
そんなところに偶然通りかかったサーカス団員のネズミ・ティモシーはダンボを不憫に思い、行動を共にすることになった。
だが、ダンボをサーカスのスターにする為にティモシーが計画した作戦が、思わぬ事態を巻き起こすことになる……。
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感想
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20231222/19/yuzupill/03/bb/j/o0600045015380126099.jpg?caw=800)
この作品、現在でも批判家や同業者から非常に人気の高い一本なんですよね。
ティム・バートンをはじめ「マイ・エレメント」のピーター・ソーン、「リトル・マーメイド」のロン・クレメンツなどのディズニークリエイター達や映画評論家のレナード・マルティンなどなど、多方面から圧倒的な支持を集めています。
個人的にも往年の短編作品のようなシンプルさながらもエンターテイメント性に富み尚且つテーマやメッセージがわかりやすく添えられた傑作だと思いますね。
「白雪姫」で大成功を収めたディズニーが「より映画として質の高い」ものを目指して最新技術や大量の制作費を投入して作り上げた「ピノキオ」や「ファンタジア」。
しかしそれが(商業的には)失敗したことで開き直って【低予算のドル箱映画】に切り替えた事が、返ってクリエイター達の肩の力を抜きディズニーの持っていた本来の唯一無二の良さをいくつも引き出した、そういう奇跡的な作品だと思います。
原作がリリースされたばかりの無名の児童書だったのも返って良かったんだと思います。
ダンボという言葉を発しないながらもチャーミングな主人公、ジミニーの魂を継承したティモシーの存在、良質な音楽、低予算とは思えない滑らかなアニメーション。
何よりも魅力的なキャラたちによるドタバタコメディ、母子関係を見事に描いた泣き要素、ピンクの象による超現実的表現、【欠点を武器に】というカタルシス。
この4つが最高のバランスでおりませられた、アニメーションエンターテイメントの素晴らしさが凝縮された宝箱のような映画です。
このダンボとピノキオを見ると本当にディズニーの本来の根っこというのがここにあるなぁとつくづく思います。
この2作品がなければディズニー映画は間違いなく プリンセス一辺倒になっていたでしょう。
最近のアナ雪やズートピアに代表されるひねった 展開や複雑なテーマ、ファンが喜ぶような 緻密さも良いですが、個人的にはやはりディズニーの根っこはココなんですよね。
シンプルな設定と子供にも親しみやすいキャラクター性、楽しいコメディと音楽、美しいアニメーション、その中でさりげなくでもしっかりと伝えたい事を大人にも子供にも伝えるテーマ性の塩梅。
これだけでアニメーションって充分なんです。
特にダンボはローコスト作品ということもあり、そんなディズニーの根底が非常に色濃く・わかりやすく反映されている映画だと言えます。
ロジャー・ラビットでも言っていた【アニメの良さ・武器】というのがこの1本に詰め込まれている気がしますね。
シンプルながら秀逸なプロット
やっぱりなんといってもストーリーが秀逸です。
難しい事は全然やってないのにすんなりと心に入ってくるこの塩梅はほんとに凄い。
無駄がありそうで全くないんですよね。
観ている人が自然に誰もがタンボに感情移入し心から応援するように巧妙に仕組まれています。
まずあえて主役のダンボを喋らせなかったのがかなり大きかったと思います。
大成功でした。
最初のおばさん象たちのイジワル。
子供の非常なイタズラ。
ピエロになってからの不憫さ。
母子の愛。
そして極めつけのカラス達へのティモシーの演説。
そして最後の誰もが納得するようなカタルシス。
まさに完璧な流れです。
その中で、汽車での一団の道中やテント張りの迫力ある映像、そして伝説の【ピンクの象】と、遊び心やエンタメ性の提供もまったく疎かにしていない。
しかもこれを約60分という短い尺に完璧に盛り込んでるんですよ。
あっぱれですよ。
ちなみに「60分では短いからあと10分伸ばせ」と配給のRKOに依頼されたウォルトは「これ以上伸ばせば作品が崩れる」とキッパリと即答で断ったと言います。
もちろん制作費の関係もありますが。
とにかく、こんな見事なプロット構成の映画はなかなかお目にかかれません。
あと、肝心の【勇気と頑張りがあれば欠点は最大の武器になる】というテーマ。
これの魅せ方が全く説教臭くなくて、最高の匙加減なんです。
言葉には全く出していないのに、観ている人が自然と感じ取るんですよね。
重ね重ね見事としか言いようがありません。
ピンクの象
そしてこのダンボで避けては通れない話題がこの「ピンクの象」のシーン。
突然挿入されるストーリーに無関係なこのトリップシーンは業界に激震を走らせました。
今でもディズニー内外問わず様々なクリエイター達が参考とし影響を受ける「伝説のシーン」として語り継がれ続けています。
ディズニーでも以降から現在に至るまで、このピンクの象からインスパイアを受けた映画やシーンが数え切れない程作られました。
この自由な発想とアイデアによるクリエイター達の遊び心が凝縮された超現実的表現は「ふしぎの国のアリス」で一応の完成形となるまで、ディズニー映画の大きな一つの特徴として多用されていく事になります。
このシーンは何度見ても最高ですね。
最高に狂ってます。
そして無駄なのに無駄じゃない。
このシーンが無かったらダンボの評価は間違いなく天と地程変わっていたでしょう。
この可愛らしくシンプルなキャラクター達の物語にこのシーンをぶっ込むセンスと狂気。
これこそがディズニーの大きな武器なんですよね。
昔の記事でも語りましたが「夢と魔法」と「狂気」は正反対に見えて最高に相性が良いんです。
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まとめ
正に映画界が愛する映画「ダンボ」。
そしてコアなディズニーファン程、この作品を推す人が本当に多い気がします。
ディズニーの真髄、アニメの楽しさ、その全てが詰まった最高の作品です。
そして、ディズニースタジオを文字通り瀕死の状態から救った救世主でもありました。
実はこれと良く似た現象が2000年代にも起こっています。
当時CG化の波に飲まれ暗黒期と言われていたディズニーは完全に道に迷い、収益も低迷の一途を辿っていました。
そんな時ダンボの時と同じように低予算短期間で、主力じゃなかったクリエイター達が中心となり作り上げた作品が「リロ・アンド・スティッチ」です。
この作品は監督のクリス・サンダースが明言している通りディズニー映画史上最もダンボに影響を受け、ダンボを参考に製作された1本なんですよね。
低予算ながらこだわり抜かれた水彩画でのアニメーション、シンプルで明るい雰囲気やストレートなプロット、悲しみを抱えながらも明るく元気なキャラクター性。
言われてみると共通点が沢山あるんです。
そしてこの作品は図らずもダンボと同じように、ディズニーの窮地を救うことになるんです。
困った時こそ原点に立ち返る。
往々にして大事な物はそこに置き忘れてたりするんですよね。
そして最後に、この「ダンボ」という作品はウォルトが最初から最後まで制作の全てに直接関与した最後の作品と言われています。
この後はウォルトはテレビやパークなど他事業が忙しくなりスタジオと距離を取り始めることになります。
なので実質的に「ウォルトの作品」と言えるのはダンボまでなんですよね。
これを知った時、なんか凄い納得したんですよね。
ウォルトの本当にやりたかった根底は、多分このダンボまででほぼ一つの完成を迎えてたんじゃないかな、と。
勝手にそう思ってます。
それが納得できるほどこの「ダンボ」というのはディズニーの全てが詰まった作品に思えるんです。
「ダンボ」は現在ディズニープラスで配信中です♪
はい。
というわけで!
今回はこの辺で。
いつも長文駄文にお付き合い頂き本当にありがとうございます。感謝です!
では、また次回!
しーゆーねくすとたぁーいむ。
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