はーいどぉもおぉ。
さて、今回は2週目のディズニーアニメーション映画史。時代は正にディズニー長編アニメーション黎明期。全てが始まり動き出した時代です。
史上初の長編カラーアニメーション「白雪姫」が空前の大ヒットを記録したディズニーでしたが、続けざまに公開した超大作「ピノキオ」「ファンタジア」はいずれも収益面では失敗。
苦肉の策として制作されたローコスト作品の「ダンボ」に、評価面でも財政面でも大きく救われることとなります。
「ダンボ」により首の皮が繋がった形となったディズニーは「ピノキオ」や「ファンタジア」の公開前からゆっくりと膨大な時間と制作費をかけて制作していた大作をここで満を持して公開に踏み切ります。
それは、これまでのディズニーの長編アニメーションとはまるで一線を画する意欲作となったのでした。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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バンビ
(原題:Bambi)
1942年
監督
デイヴィッド・ハンド
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ5作目の長編アニメーション。
第二次世界大戦が過激化を辿る1942年に公開されました。
当初は「白雪姫」に次ぐディズニー2番目の長編アニメーション映画として企画されましたが、原作の重い空気をディズニーテイストに調整する作業やメインキャラクターとなる鹿のアニメーション化が難航した為、他の「ピノキオ」や「ファンタジア」を優先させ、水面下でゆっくりと制作される事になった作品でした。
監督はディズニーレジェンドのデイヴィッド・ハンド。ディズニーのもとで様々な短編作品を作り上げ、後に「白雪姫」の監督を担当した事でも知られています。
脚本は「白雪姫」の楽曲制作でも知られるラリー・モーリーや初期のディズニー作品のストーリーマンであるジョージ・スターリング、今作からディズニー作品デビューを果たし1994年の「ライオン・キング」まで長期に渡り活躍し続けたメルヴィン・ショウ等の錚々たる顔ぶれで練り上げられました。
音楽は1940〜50年代のディズニー音楽のスコアを数多く手掛けたエドワード・H・プラム。
楽曲は「白雪姫」をはじめ黎明期ディズニーの音楽の屋台骨を支えたフランク・チャーチルと脚本にも参加したラリー・モーリー。
原作はオーストリアの作家フェリックス・サルテンによる1923年の小説「バンビ 森の生活」。
最初期の環境小説と言われている作品です。
基本的な大筋は踏襲していますが、キャラクターや設定に大きな変更がかけられている他、映画は原作の中盤程までの物語しか描かれません。
鹿の王の子供、バンビが森での厳しく辛い経験を経てプリンスとして成長していく姿を描いたアニマルドラマ。
主人公のバンビはその成長段階によって4人の役者により演じ分けられています。
幼少期=ボビー・スチュワート
少年期=ドニー・ドゥナガン
青年期=ハーディー・オルブライト
成熟期=ジョン・サザーランド
但しこの時期のディズニー映画には声優クレジットが無い為、真偽の不確かな物もあったりします。今では考えられないことですね。
日本語版では幼少期〜少年期までを後にピーター・パン役などでも著名となる林勇さん。
青年期〜成熟期までを依田有滋さんが演じています。
初代プーさん役のスターリング・ホロウェイ、同じくドナルドを50年以上演じたクラレンス・ナッシュ、名優ウィル・ライト等、脇を固めるキャストも実力派揃いでした。
興行収入としては一概に失敗とは言えませんが期待していた数字には届かず、折角持ち直したディズニーの財政難も引き続き継続していく事になります。
評価面でも公開当初は批判的な声が非常に多く、その理由として最も大きかった論点は【写実性や芸術性に特化しすぎてディズニーの特徴でもあったファンタジー性と子供の視聴へ向けた配慮の欠如】にありました。
アカデミー賞も全部門受賞を逃しています。
しかし時が経つとその評価は大きく見直される事になります。
そのこだわり抜かれたアニメーションと音楽の美しさ、そして現実的で厳しくもありながらその中でも逞しく時に可愛らしく生きるバンビ達動物の描写性の高さ、ドラマチックな展開を巧妙に演出する見事な構成等が多方面から圧倒的な支持と評価を集め、現在では「ウォルト・ディズニーの最も偉大な功績」と評されるほどの伝説的な名作として認知されるまでにいたっています。
この作品に影響をうけた後続の映画や漫画は後を絶たず、あの世界的に有名な漫画家手塚治虫さんの「ジャングル大帝」やジブリの「もののけ姫」ディズニー内でも「ライオン・キング」や「ベイマックス」「ズートピア」等数え切れない程です。
日本でもウサギの「とんすけ」(※現在は日本でもサンパーと呼ばれることが多くなりました)や「ミス・バニー」等がキャラクター的人気を集め、ピノキオや白雪姫にはやや劣るものの、現在でも高い認知度を維持しています。
又、「バンビ」という名称は【可愛い子鹿のような様子】として比喩表現にもよく使われるようになりました。
余談ではありますが2018年アメリカでは鹿の密猟者に対しての裁判にて【バンビを月に1度必ず鑑賞すること】という判決が下されたことがあります。
この映画の認知度と評価の高さが伺えるエピソードですね。
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あらすじ
まとめ
↑このラストシーン本当に好きです。
エンターテイメントやファンタジー性の希薄さがやはり気になるし、個人的には他作品と比べると音楽もちょっとだけイマイチで(但し【四月の雨】は大好きです)、ディズニー映画としては正直「白雪姫」「ピノキオ」「ダンボ」等と比べると手放しで激押しできないという部分は確かにあります。
ディズニー映画としては、、ですよ。
ただそれを補って余りある、いちネイチャードラマアニメーションとして圧倒的な素晴らしさを誇る作品です。
異常なくらいこだわって表現された自然と動物、そして人間。
この三つが織りなす、自然と命の普遍的なドラマ。
ダンボとは違う意味で、映画界やファンからカリスマ的な支持を長年集め続けているのも納得ですね。
芸術性という意味では他の追随を許さない圧倒的人気を維持し続けているディズニー映画です。
ディズニーはこういう作品も作れるんだという事を、世間に証明し続けているような画期的な一本だったんですよね。
エンタメやファンタジーとは違う充実感や感動を心に与えてくれる、大人向けの一つの映画として素直に名作だと思います。
これは良いことかどうかはわかりませんが、現代の社会では、どちらかというとダンボよりこのバンビのような作品の方が需要がある流れに変わってきている気もします。
エンタメ界、アニメ界全体がやはり大人趣向化しているのは間違いないですからね。
古臭い子供向けの古典アニメーションだと食わず嫌いで観ていないような方で、最近のディズニーアニメーションが好きな方にはもしかしたらこのバンビはガッツリハマるんじゃないかと密かに思ったりしてます。

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