今回はディズニーの大人気作品、そして自分も大好きな「リロ&スティッチ」の続編シリーズ語りの第三弾でございます。
三回目の今回は、一作目の雰囲気は残しつつも全く趣旨の異なる展開でスティッチを一躍スターダムへと押し上げた大成功シリーズの幕開けとなるこちらの長編作品について語っていきたいと思います。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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スティッチ!ザ・ムービー
(原題:Stitch! The Movie)
2003年
監督
トニー・クレイグ
ロバーツ・ガナウェイ
データ
一作目「リロ・アンド・スティッチ」の翌年にビデオリリースされた、スティッチシリーズニ作目の長編作品。
ディズニー・トゥーン・スタジオ及びテレビジョン・アニメーションによって制作されました。
※厳密に言うと今作はトゥーン・スタジオ名義の作品ではありませんが、この時期のトゥーンとテレビジョンアニメーションは密接な関係でありクリエイター等も含めて垣根が曖昧な状況だった為【トゥーン・スタジオ】と一纏めで紹介させて頂いています。
詳しくは上述のシリーズ全体像についての記事を参照して欲しいんですが、この作品は後に続くテレビシリーズ「リロ・アンド・スティッチ ザ・シリーズ」そしてその先の「リロイ・アンド・スティッチ」へのプロローグに当たる作品となっています。
この三つの作品を便宜上「イトコ編」としますが、その一番最初のストーリーです。
ちなみに前記事で語った「リロ・アンド・スティッチ2」は時系列で言うとこの作品の前に当たります。
やっぱりややこしいですね〜スティッチシリーズは。
監督は様々なディズニーの続編シリーズに携わってきたトニー・クレイグとロバーツ・ガナウェイ。続く「ザ・シリーズ」と「リロイ〜」も含め、イトコ編の全てを手掛けている二人です。
脚本は監督のガナウェイとリロ・アンド・スティッチの全テレビシリーズの制作を指揮し、その後の日本や中国でのシリーズ展開にも深く携わった言わばスティッチの育ての親とも言えるジェス・ウィンフィールド。
音楽はトムとジェリーシリーズの劇伴等で知られるマイケル・タベラ。
一作目に引き続きエルヴィス・プレスリーの楽曲も使用されています。
今後スティッチのテーマソング的立ち位置で親しまれる事になる楽曲「アロハ・エ・コモ・マイ」の初登場作品でもあります。
スティッチのボイスキャストは引き続き一作目の監督でありスティッチの生みの親クリス・サンダース。日本語版は山寺宏一さん。
リロ役も引き続きデイヴィ・チェイスが務めています。日本語版は山下夏生さん。
その他の主要キャストもデイヴィッド役がディー・ブラッドリー・ベイカーに変更になった以外は大きな変更はありません。
主要のペレカイ家の面々のみならず、コブラ・バブルスやガントゥ、銀河連邦議長等主要キャラ総出演。
さらには新ヴィランのハムスターヴィール博士が今作から初登場。
スティッチの「イトコ」からは試作品221号スパーキーと後に人気キャラクターとなる試作品625号(後のルーベン)が登場します。
ビデオ・テレビ用の低予算続編であり、そのアニメーションや作画クオリティの低さ、子供向けに振りすぎた展開等には一部から批判も上がりましたが、それ以上に、最早すっかり著名になった【スティッチのイトコ集め】の始まりのストーリーとして、この手の続編の中では類を見ない知名度と人気を誇り続ける作品となっています。
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あらすじ
スティッチ達がリロやナニの家族になってしばらくしてからの出来事。
スティッチはカウアイ島の人々に馴染もうとリロのアドバイスで様々な努力を試みるがなかなか上手く行かない。リロ達家族以外の人々とは未だに関係を築けずにいた。
島全体がオハナであり皆がイトコであるという話をリロに聞き、自分にはイトコが居ないと悩むスティッチ。
そんな時、元銀河連邦大尉のガントゥが突然地球へやってきてジャンバを誘拐する事件が発生。
スティッチとリロは救出を試みるが失敗してしまう。
ガントゥはジャンバの元研究仲間であるハムスターヴィール博士に雇われ、スティッチが生まれる前にジャンバに創られた625匹の試作品を狙っていた。
オハナであるジャンバを救うため、そしてスティッチのイトコ達を救うため、リロとスティッチの新たな冒険が始まる…
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感想
一作目や「リロ・アンド・スティッチ2」と比べると作画から構成まで如何にも低予算続編といったクオリティな今作ですが、キャラクター性の強化や子供にもわかりやすい展開の面白さ、シュールなギャグセンス等新たな魅力を沢山盛り込んでカートゥーン用のスティッチとしてしっかりリファインされていて、長期テレビシリーズ用のプロローグとしては非常に優秀な作品でもあります。
「家族愛」というテーマはしっかりと引き継いでいるのですが、一作目のような大人も心を揺さぶられる感動作とかそういう高尚さは一切ないので、一旦切り離して単純な「キャラクターアニメーション」として気軽に観る事をオススメします。
これが面白いもので、ここをしっかり割り切って観ると大人でも好奇心をくすぐられたり、笑えたりする逸品なカートゥーンとしてかなり化けるんですよね。
安直なアイデアと言えばそうなんですが、スティッチの試作品626号というコードネームから【残りの625体】に目を付けたのは、良いとこ拾ったなぁと思いました。
確かこの作品のリリースと同時にテレビシリーズの放送が発表されたと思うんですが、やっぱちょっとワクワクしちゃいましたもんね。
男の子はこういうポ○モン的なコレクタブルな展開に弱いのです。
実際にこの作品から始まるシリーズは、所謂コロコロコミック年齢くらいの子供達やオタク気質の高い大きい子供達に大受けして、新たなファン層も大いに開拓しました。
余談ですが2006〜2007年に開催されたディズニーランドでのイベントは今作とそれに続くテレビシリーズ、つまり【イトコ編】を題材にした内容で、なんと今作から登場したハムスターヴィール博士やルーベン、スパーキー、テレビシリーズで登場した他試作品達が多数登場。
劇場映画ではなくビデオやテレビ続編を題材としたパークでのイベントというのはかなり異例の出来事でした。
それくらい、この作品の知名度が高かったんですよね。
引き継いだ基盤と提示した新たなコンテンツ
上述しましたが基本の大きな作品テーマというのは何気にしっかり引き継いではいます。
リロとスティッチが自分達の家族を見つける話が一作目、そして今作からはもっと広い意味での家族を作っていくお話ですので。
ハワイのカウアイ島という舞台や独特の精神も適度に上手に使っています。
そのうえで、
この手の続編にとっても多い主人公を二世等に挿げ替えた二番煎じやダラダラと愉快な日常を描く等ではなく、全く新たな、しかも623体の試作品の回収という具体的な目的と展開を起こして次に繋げているというのは見事な広げ方だったと思いますね。
この後のテレビシリーズでは必然的にほぼ毎話新しい試作品達、つまり新キャラクターが登場する展開となるわけで、これはなかなか美味しい要素ですよね。
考える方は大変だと思いますが。
まぁあくまでも次に繋げるプロローグ的な作品なのでこの一本で何かが解決するとか何か感動があるとかそういうのはほぼないんですが。
強いて言えばジャンバが自身が誘拐された事とそれを仲間達が必死に助けようとした事で、ペレカイ家が自分にとって家族だったことに改めて気づく下りとかナニがリロにオハナを諭されてジャンバを救う為に動く下り等がさり気なく描かれてはいます。
ギリギリのとこではありますがしっかり一作目の続編として機能はしてると思いますね。
独特なギャグと空気感
個人的にはこの作品から始まったカートゥーンスティッチ全体に言えることですが、ドタバタギャグメインの一作目にはなかった、独特な間や空気感を使ったシュールギャグのセンスが大好きなんですよね。
一作目には無かった新たな魅力だと思います。
ストーリーとは関係ないところで後ろでガサガサ動いてるスティッチとかプリークリーの突っ込み不在のフールギャグとかコメディキャラクターとして生まれ変わったガントゥとルーベンのやり取りとか。
ガントゥの呼び方ジョークとか何気に凄いブラックな部分もあったりしますからね。
なんとなく全体を覆っている空気感が子供向け作品には無いシュールさで、ちょっと魅力的なんですよね。
言葉だとちょっと伝わりにくいですが。
リロの変人さも遺憾なく発揮されています。
この辺はこの後のテレビシリーズでさらに磨きがかかっていくので、なんとなくこの空気が気に入った人は是非観て欲しいですね。