はいどうも。
今回は恒例のディズニー・トゥーン・スタジオ回です。トゥーン・スタジオについてはこちらの記事を参照。
いっとき巷に溢れた所謂「ディズニーヒット作のひどい続編」の主犯格としても名高いこのスタジオですが、これまでも語ってきたように実はとても素敵な作品もいくつも世に送り出しています。
特にこのティンカー・ベルシリーズは、そんなトゥーン末期の作品でありながら、特に評価と人気の高い代表作です。
人気キャラクター「ティンカー・ベル」の原作ピーター・パンでも描かれていなかったバックボーンを描くという事で最初は賛否を巻き起こしたこのシリーズですが、その作り込まれた世界感と大人も子供も楽しめる安定した内容で、作品が公開される毎にその評価と認知度を上げ、沢山のファンから愛される人気コンテンツへ成長しました。
今回はその第6弾。つまり最終作です。
そして同時に今作は、ディズニー・トゥーン・スタジオが制作した最後の作品ともなりました。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ティンカー・ベルと流れ星の伝説
(原題:Tinker Bell and the Legend of the NeverBeast)
2015年
監督
スティーブ・ローター
データ
「ピーター・パン」シリーズに登場する妖精ティンカー・ベルが彼に出会う前の物語を描いたシリーズの第六作目。
前作まで同様、本国アメリカの一部や数カ国等では劇場公開が実施。
日本ではソフトリリースのみで公開されています。
妖精の谷ピクシー・ホロウとネバーランドを舞台に、ティンカー・ベルら妖精達と伝説のネバービースト・グラフとの交流を描いたファンタジーアドベンチャー。
原作はピーター・パンと同様イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーの有名な戯曲「Peter Pan; or, the Boy Who Wouldn't Grow Up」及び同作を小説化した「Peter and Wendy」ですが共通点は極一部のキャラクターと設定のみで、ストーリー含め基本的には大半がディズニーのオリジナル。
監督は「リトル・マーメイド3」等も手掛けた
スティーブ・ローター。
脚本は前作から続投のケイト・コンデルの他、監督のスティーブ同様大人気テレビシリーズ「キム・ポッシブル」を手掛けたマーク・マッコークル、ロバート・スクーリー、さらにトゥーン作品の脚本をこれまでいくつも執筆してきトム・ロジャースも参加しています。
音楽はこれまでティンカー・ベルシリーズの全作品を手掛け、シリーズにとって無くてはならない存在となったジョエル・マクニーリー。
主題歌や挿入歌は「プラダを着た悪魔」等でお馴染みのKTタンストールが担当しています。
ティンカー・ベル役を務めたのはテレビや映画で女優としても活躍するメイ・ホイットマン。
日本語版はオーディションで大抜擢された新人の深町彩里さん。
シリーズ全6作品に渡ってティンカー・ベルを演じきりました。
今作で準主役を務める動物の妖精フォーン役はこれまでのアンジェラ・バーティスに代わり人気ドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」の白雪姫役、そして「ズートピア」ジュディ役で有名なジェニファー・グッドウィンにバトンタッチ。
日本語版は坂本真綾さん。
新キャラクターである護りの妖精ニックス役にはスター・ウォーズシリーズのロザリオ・ドーソン。日本語版は宇乃音亜季さん。
さらに、、
水の妖精シルバーミスト役のルーシー・リュー
光の妖精イリデッサ役レイヴン・シモーネ
風の妖精ヴィディア役のパメラ・アドロン
植物の妖精ロゼッタ役メーガン・ヒルティ
と、最終作となった今作でもメインキャラクターのほとんどがシリーズお馴染みの続投キャストとなっています。
特にルーシー・リューとパメラ・アドロン、レイヴン・シモーネはシリーズ全六作品皆勤賞で同役を演じきりました。
前作の「ネバーランドの海賊船」から1年ぶりとなったシリーズ第六作目。
そして同時にこれがシリーズの最終作(現段階での…と言わせて下さい!)となり、公開前からその旨がアナウンスされていた事もあってかその注目度と収益はこれまでに比べガクッと数字を落としてしまいました。
しかし評価面ではシリーズ最高クラスの高評価を獲得しており、特に子供だけではなく大人の心をも揺さぶるそのストーリーと演出は多方面から高い称賛を獲得。
一方でシリーズの最終作品としては、レギュラーキャラクターの未登場やティンク達の扱いに少なからず批判の声も上がりました。
現在ではどちらかといえば知る人ぞ知るコアなディズニーシリーズという立ち位置にはあるこのコンテンツ。
しかし、じわじわと大人達やファン達からの再評価も進んでいて、さらに2024年今シリーズを題材としたアトラクションが東京ディズニーシーに登場した事で再び注目を集めるなど、未だに人気の高いシリーズとして特にディズニーファンから非常に愛され続けてています。
7作目以降も企画されていた志半ばでのシリーズ終了というその経緯もあり、制作スタジオが閉鎖された現在でも尚、さらなる続編を望む声も未だに上がり続けています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あらすじ
ある夜ピクシー・ホロウに緑に輝く謎の流れ星が現れる。
その直後、動物の妖精フォーンは森の奥の洞穴で怪我をした謎の生物と出会った。
戸惑うフォーンだが好奇心と優しさからその生物にグラフと名前をつけ交流をはかり、二人は次第にゆっくりと心を通わせていく。
ティンカー・ベル達にグラフを紹介し、クラリオン女王に認めてもらおうと計画するフォーン。
しかし、妖精達を守るのが仕事である護りの妖精ニックスは謎の生物に危機感を持ち、独自に調査を進めていく。
その中でついにグラフのある秘密が明らかになる…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
感想
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240528/19/yuzupill/53/24/p/o1080059715444567855.png?caw=800)
いやぁ…泣いた泣いた。
初見時は本当に洒落にならないくらい泣きましたw
今回も季節から離れた物語。
4つの季節全てのエリアが登場する為テーマになる季節は特にありません。
今作の主役は動物の妖精フォーン。
第一作目から全ての作品に登場しているレギュラー妖精の一人です。今作ではアンジェラ・バーティスから著名女優のジェニファー・グッドウィンにキャストがバトンタッチ。
そして新キャラクターのグラフ。
突如現れた謎の生物で、今作のストーリーの核となる重要なキャラクターです。
ティンカー・ベルは前作に引き続きストーリーのメインではありません。
いやぁ本当に泣きました。
グラフ側の視点で見ちゃうともう駄目ですね。。
いや内容としてはわりと教科書通りの「未知の生物との交流モノ」といった感じであまり新鮮味も捻りもあまりないんですよ。
ただ、、あたくし個人的に動物モノにめっぽう弱いもので…w
それと後述しますが核となるフォーンとグラフの交流がとてつもなく丁寧に描写してあるのでどうしても感情移入しちゃうんですよね。
あのゆるゆるクールカートゥーン「キム・ポッシブル」を手掛けていた陣営だとはとても思えないくらいですw
他の部分を捨ててここに脚本全振りしちゃってるくらいの力の入りようなんです。
それとこれも後述しますがそこにしっかり子供にもわかる【物の見方によって'正しいこと`は変わる】というパブリックテーマをしっかり絡めているのも実に見事でした。
ティンカー・ベルシリーズとして観ると色々物足りない部分もあり、ましてや最終作となると尚更なんですが、ただ一本の作品として観ると子供も大人も感動できる
、間違いなくとても良くできたエンタメ作品となっています。
シリーズモノとしての不足感
今回はまずマイナスなお話から。
今作のメイン製作陣は「キム・ポッシブル」等カートゥーンTVシリーズを主に制作している面々で、これまでのティンカー・ベルシリーズにはあまり関わっていない方々となっています。
なのでこれまでの設定や積み上げはあまり活かされておらず、どちらかというと監督達がやりたかったストーリーを「無理にティンカー・ベルに組み込んだ」感が少し透けて見えてしまう作りになっています。
メインであるグラフとフォーンのストーリーはとても良く出来ているので、長いシリーズの中の一作品、もしくはスピンオフとしては最適なのですが、、
やはり流れとは言えこれがシリーズ最終作となるとずっと観てきたファンからしたら少し物足りない気持ちは出てきちゃいますよね…。
ペリウィンクルやザリーナだけならまだしも、これまでほぼ皆勤賞だったボブルとクランク、テレンスやフェアリー・メアリー等のレギュラー妖精達が軒並み登場しません。
登場させる余地は全然あったのに…です。
これは残念でしたね。
終始ピクシー・ホロウが舞台で、モブ妖精は沢山登場するのでそこを彼らにすれば良いだけだと思うんですが…。
なんか不自然なんですよね。
それとピクシー・ホロウの流れ星の伝説とか突如現れた護りの妖精(これまで何してたの…)とか、、とって付けたような新しい設定もちょっと気になりました。
そして前作以上にティンカー・ベルの脇役感が強くなっています。
前作「ネバーランドの海賊船」くらいの感じは全然良かったんですが、ここまでだとちょっと、、折角ティンカー・ベルという世界的キャラクターを扱っているのになぁ…となっちゃいますね。ここでやる必要はあったのかなぁ、と。
ティンカー・ベルの性格や能力を活かしたシーンもほぼありませんでしたしね。
急遽のシリーズ終了決定だったことは理解していますが、それでもずっと観てきた人へのご褒美がちょっとは欲しかったですかね。
あとまたこれどうでも良いですが相変わらずピクシー・ホロウの首脳陣(というか今回はクラリオン女王だけでしたが)がゆるゆるで…
もうこれは逆に面白かったですけどねw
丁寧に描かれた「未知との遭遇」
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240528/19/yuzupill/ec/2e/j/o1080060115444578583.jpg?caw=800)
しかし今作はそれらを補って余りある程本筋の描写が非常に丁寧に作られています。
まず未知の生物グラフの造形と動作描写の巧みさ。ここをしっかり写実的な描写としてリアルに描いてるので、ちゃんとそこに居る生物として観ている者が引き込まれちゃうんですよね。
これはウォルトがずっと言っていた「リアルな描写がなければファンタジーは描けない」という、典型の一つですよね。
そして何よりもフォーンとグラフの関係性の緻密な描写。
これがもう見事としか言いようがありません。
三作目「妖精の家」のティンクとリジーも良かったですが、今回はそれ以上ですね。
少しずつ距離を縮め、お互いを必要としていく二人の変化や気持ちがとっても丁寧に時間を使って描かれています。
特にグラフ視点のフォーンへの感情描写がホントに素晴らしすぎるんですよね。。
見事な心情描写
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240529/07/yuzupill/84/97/j/o1024057615444724250.jpg?caw=800)
使命を果たすため独りで黙々と塔を立てていたグラフが最初邪魔だとしか思ってなかったフォーンに対して次第に心を開いていくんですが、言葉が喋れない代わりに音楽とその歌詞が彼の心情を上手に代弁してくれるシーンがいくつかあります。
もちろんグラフの【写実的な描写なのにビシビシ感情が伝わる】表情の演技もホントに素晴らしくて、中盤くらいになると見てる側はまんまとグラフの虜になっちゃってるんですよね。
「媚びるわけじゃない、ただ大切に思う」というグラフの感情がちゃんと伝わるんですよ。
そして何よりも素晴らしいと思ったのがグラフの「瞳」を使った演出。
作中何度もグラフの目がクローズアップなり、グラフの瞳に今何がどう見えているのかを適確に表現してる描写が沢山あるんですよね。
これが作品全体にホントに効いています。
特に…
【中盤フォーンに裏切られて眠らされる直前、目が見えない中フォーンを必死に探し、その目にハッキリ捉えられないまま悲しみと不安の中眠りにつくグラフ】
【役目を終えて眠りにつく直前、朦朧とした意識の中目の前にいる笑顔のフォーンを見ながら安心しきった表情で1000年の眠りにつくグラフ】
この対比が本当に素晴らしくて…。
この演出、動物がお好きな方にとっては特にヤバイんじゃないでしょうか…
両方ともグラフの瞳のアップを使った演出なんですけどこの対比は見事ですし、後者の方の【ぼやけたフォーンの笑顔を観ながら瞼がゆっくり閉じられてそのままスタッフロール】という演出はとても美しかったですね。
総じて何が言いたいかというと、「動物が人間に心を許し信頼する」という描写を様々な方法を使って巧みに表現しているってことなんですよね。
言葉で通じ合えない、異種の生物同士が心を通わせるという事がどういう事なのか、この部分にとても真摯に向き合っている作品なんです。
その中でも瞳に写るものの描写を使った演出はなんか本当にリアルな動物を見ているようで、、
ちょっと自分はこの瞳の描写で軽く号泣してしまいましたね…
物語を厚くするサブ要素
そしてこのストーリーにはもう1つ【物の見方によって'正しいこと`は変わる】というパブリックテーマが設けられています。
このテーマの為に「護りの妖精ニックス」が立ってくるわけですが、これがまた説教臭くない丁度良いバランスでわかりやすく差し込まれてるんですよ。
フォーンもニックスも自分が感じる正しいことをしようと動くわけでどちらも間違ってないんですけど、見方によって「正しさ」か変わる事に気付くのがニックスの方が遅かったんですよね。
その前にフォーンとグラフが星空を観るシーンでこのテーマを観てる側に絶妙に伝えているのがうまいなぁと思いましたね。
そんでまたこの星空のシーンが、なかなか良いシーンなんですよね。
それと、ティンカー・ベル達は確かに見せ場があまり無いんですけど、フォーンを全面的に信じて賢明にバックアップする姿に絆を感じて、そこは良かったですね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まとめ
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240528/22/yuzupill/50/53/p/o1080059715444643757.png?caw=800)
メインとなるストーリーの描写はほんとに細かく丁寧で演出も拘り抜かれている、、一本の作品としては本当に良く出来た作品です。
シリーズ一番の感動作じゃないでしょうかね。
前述通り異種間同士の心の交流という題材にとても真摯にこだわって向き合った傑作なんですよね。
そしてシリーズで最も大人にも楽しめるバランスの作品にもなっていた思います。
これまで脇を固めていたレギュラー妖精の1人にスポットを当てたのも良かったです。
ただ反面、シリーズモノとしては色々物足りない部分がある事も事実でした。
それだけにやはり、ここでシリーズが終わってしまったのは本当に残念でなりません。
まだまだこの先何本も作ると思っていたからこそのこの内容だったと思うので。絶対。
全作品語って思いましたが、改めて本当に良いシリーズでした。
ティンカー・ベルという誰もが知るキャラクターを使ってここまで濃厚な新たな世界を創り上げて定着させた、この功績は本当に大きかったと思います。
ティンカー・ベルも然ることながら、他の妖精も含めたピクシー・ホロウの世界の魅力を十分に創り上げて楽しませてくれました。
何よりも昨今のディズニー作品のようにメッセージ性や社会性にとらわれず、ファミリーエンターテインメントを追求した楽しいファンタジーの世界に溢れていて…今観ると改めて尚更素晴らしいんですよね…。
欲を言えば、、
やはり本当のシリーズ完結作が見たかった!
これまでの妖精達オールスターで登場して、んでもって最後はピーター・パンとティンクが出会うとこまで…
やっぱり見たかったですね。
これは本当に今でも思います。
色々な会社の事情で仕方なかったのはわかりますが…全体的にもう少し大事に扱ってほしかったですよね。
折角本当に良いシリーズだったので。
TVシリーズでも良いのでいつか帰ってきてほしいです。
というか、全6作と言ってきましたが実はこのシリーズは他に30分の中編1本と、30〜40本の短編が作られています。
そしてそのほとんどが日本で観ることが難しい状況です。
またどこかでこのシリーズが復活してくれたら良いなと…
今も心のどこかでずっと期待してます。
気長に待ちたいと思いますね。
では!これを持って「ティンカー・ベルシリーズ」語りは終了です!
「ティンカー・ベルと流れ星の伝説」及びティンカー・ベルシリーズはディズニープラスにて全作配信中です!
![にほんブログ村 映画ブログ ディズニー映画へ](https://b.blogmura.com/movie/movie_disney/88_31.gif)
にほんブログ村