はいどうも。
今回は恒例のディズニー・トゥーン・スタジオ回です。トゥーン・スタジオについてはこちらの記事を参照。
いっとき巷に溢れた所謂「ディズニーヒット作のひどい続編」の主犯格としても名高いこのスタジオですが、これまでも語ってきたように実はとても素敵な作品もいくつも世に送り出しています。
特に今回語らせて頂くティンカー・ベルシリーズは、そんなトゥーン末期の作品でありながら、特に評価と人気の高い代表作として沢山の人々に愛されているコンテンツです。
今回はそんなティンカー・ベルシリーズの第5作目となるこちらの作品について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ティンカー・ベルとネバーランドの海賊船
(原題:The Pirate Fairy)
2014年
監督
ペギー・ホームズ
データ
「ピーター・パン」シリーズに登場する妖精ティンカー・ベルが彼に出会う前の物語を描いたシリーズの第五作目。
本国アメリカの一部や数カ国等では劇場公開が実施され、日本では前作同様ソフトリリースでの公開となりました。
前作「輝く羽の秘密」がシリーズ最大収益を記録した為、今作も当初はアメリカで全国公開が予定されましたが、結局ジョン・ラセターの判断で「プレーンズ」が優先され、極一部の劇場のみとソフトリリースでの公開に変更されました。
妖精の谷ピクシー・ホロウとネバーランドを舞台に、ティンカー・ベルら妖精達と海賊との闘いを描いたファンタジーアドベンチャー。
原作はピーター・パンと同様イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーの有名な戯曲「Peter Pan; or, the Boy Who Wouldn't Grow Up」及び同作を小説化した「Peter and Wendy」ですが共通点は極一部のキャラクターと設定のみで、ストーリー含め基本的には大半がディズニーのオリジナル。
ただし、今作は原作やディズニー映画ピーター・パンとの繋がりが強い作品になっており、キャラクターや設定のいくつかが大きく踏襲されています。
監督は「リトル・マーメイド3」等も手掛けたペギー・ホームズ。前作「輝く羽の秘密」からの続投となりました。
脚本は前作の監督であるボブス・ガナウェイや一作目でも脚本を務めたジェフリー・M・ハワード、「ちいさなプリンセスソフィア」等のクレイグ・ガーバー等に、総指揮のジョン・ラセターも加わった計6名。
音楽は実に様々なディズニー続編作品を手掛け、ティンカー・ベルシリーズにとって無くてはならない存在であるジョエル・マクニーリー。
主題歌や挿入歌は実力派ミュージシャンであるナターシャ・ベディングフィールドが担当しました。
ティンカー・ベル役を務めたのはテレビや映画で女優としても活躍するメイ・ホイットマン。
日本語版はオーディションで大抜擢された新人の深町彩里さん。
今作で準主役を務める粉の番人ザリーナ役にテレビドラマ「マッドメン」でも有名なクリスティーナ・ヘンドリックス。日本語版は植竹香菜さん。
若き日のフック船長・ジェームズを演じたのはアベンジャーズ等のマーベルシリーズで今や世界的な著名俳優となったトム・ヒドルストン。
日本語版は内田直哉さん。
ピーター・パン2から多数の作品でフック船長役を務めています。
さらに、、今や売れっ子女優の一人でもあるルーシー・リュー、「レイヴン」シリーズや「チーター・ガールズ」等ディズニーチャンネルでの活躍で知られるレイヴン・シモーネ、数多くのディズニーキャラクターをこなすベテラン声優ジェフ・ベネットとロブ・ポールセン、さらにディズニーボイスレジェンドの1人ジム・カミングス等…
メインキャラクターのほとんどが前作からの続投キャストとなっています。
前作の高収益を受けての第五作目となりましたが、収益的には前作には及ばないもののシリーズ中二番目の高数字を達成。
特に各国での劇場収益が高成績を記録します。
評価面では一本調子の展開や教訓的テーマ性の欠如等で多少賛否を分けましたが、ピーター・パンとのリンクを多分に盛り込んだストーリー、レギュラー妖精達の能力の交換によるサブプロット等は好評を博し、シリーズでも特にライト層からの注目度の高い一本となっています。
現在ではどちらかといえば知る人ぞ知るコアなディズニーシリーズという立ち位置にはあるものの、じわじわと大人達やファン達からの再評価も進んでいて、さらに2024年今シリーズを題材としたアトラクションが東京ディズニーシーに登場した事で再び注目を集めるなど、未だに人気の高いシリーズとして特にディズニーファンから非常に愛されており、制作スタジオが閉鎖されても尚、さらなる続編を望む声は未だに上がり続けています。
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あらすじ
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感想
予定された四季を描く四部作は終了したので今回はシリーズ初の季節から離れた物語。
したがってテーマになる季節はありません。
これまでの四作と違ってティンカー・ベルはストーリーの主役ではなく、今作のメインを務めるのは新キャラクターである粉の番人の妖精『ザリーナ』。
これぞまさに「THE 第5作目」
…といった感じで、これまでの四作を活かしつつ、しっかりと新鮮味も詰まった渾身の出来栄えになっています。
シリーズにありがちなマンネリ化の回避に見事に成功してますよね。
細かい部分も含めてこれまでの4作でやっていなかった様々な事も試みていて、それが見事にハマっています。
新章としての新鮮なプロット
これまでの四作はどれもティンカー・ベルを物語の起点に置き【彼女が問題を起こしそれを仲間たちの協力と自身の才能で解決→成長していく】というパターンで確立されていました。
安定している一方で「いつも一緒」という批判も少なからずありましたが、、
今回は新たなトラブルメーカーとなる妖精を登場させ、そのキャラクターが起こす騒動が物語のメインになります。
「キャラクターを替えただけでやってる事は一緒」と思うかもしれませんがそうではなく、これによって主人公のティンカー・ベルの立ち位置と魅せ方が大きく変わっています。
今回はこれまで助けてくれた仲間たちと一丸になって問題解決(自分のわがままではなく誰かのため)に奮闘する様子と、大きく成長した姿が描かれました。
そしてメインを新キャラクターにすることで、ティンクでは不可能だった大胆な行動とスケールの大きな問題を描く事にも成功しています。
流石のティンクでも「青い妖精の粉を盗んで海賊になる」という破天荒は無理がありますからね。。
そしてこれまで登場してきた妖精達の冒険に関しては「能力が入れ替わる」というトピックでしっかりと新鮮味を与えています。
それぞれの新たな表情が次々に観れるのでこれは非常に楽しかったですね。
あとはやはりフック船長の登場ですよね。
これまで第一作のファンサービス以外「ピーター・パン」との直接的なリンクはほぼ無かったこのシリーズですが、今作は満を持してガッツリ絡んできます。
フック船長だけではなくて、ピーター・パンファンなら思わずニヤリとしてしまう仕掛けが随所に散りばめられています。
これもまたマンネリ化打破の大きな一手になってますね。
このように様々な新要素を加えることでこれまでの四作とは一味違う新章として、見る者を引き込む事に成功している今作。
プロット会議がシリーズで最も難航した作品だそうですが、その成果が出た見事な組み立てです。
過去作をうまく活かした展開
そして今作ではこれまで以上に過去作の設定や出来事を活かした描写や展開がとても多いのも大きなポイントです。
今作の主役である妖精の異端児ザリーナですが、彼女の行動の大元に実はティンカー・ベルのこれまでの異端児ぶりをお手本にしているという側面がある事が本人から語られます。
ティンクが破天荒妖精のスターみたいな扱いになってて、ちょっと面白かったですね。
そしてそんな会話の中でちゃっかり前作の「冬の森」に関する設定矛盾のフォローを入れていたり、冬の妖精の登場シーンではしっかり前作に登場した雪製造機で雪を降らしている描写があったりと、これまで作品間であった曖昧さを反省したのか、かなり細かく過去作とのリンクが描写されています。
(ただ、細かいところにはまた結構矛盾も生まれていますが、そこはもう御愛嬌ですw)
今回のキーアイテムである「青い妖精の粉」も第二作目からの引き継ぎですし、各キャラクターの性格や能力等もこれまで以上に観ている側が知っている前提で作られています。
そういう意味で今作はティンカー・ベルシリーズでほぼはじめて明確に「過去作を観ていた方が楽しめる作品」でもあると言えますね。
と同時にライト層も見易い作品ですが。
過去四作で四季のストーリーが終わったということで今回は4つの季節が集まる「フォーシーズンズフェスティバル」という催しも描かれます。
この辺の細かな繋がりとかは全作品観てきた人には嬉しいところですね。
スピード感のある秀逸なストーリー
今作は個人的にはストーリーの展開が全作品の中でもピカイチなんですよね。
エンタメとして。
遊び心を沢山盛込みつつも無駄なく、観ている人が興味を無くさないスピード感で小気味よく話が展開されていきます。
話しが一年後に飛んだりとか、フック船長の正体を隠しておいて、ここぞという時に観ている人に明確に解らせる描写を入れたりとか、演出の工夫も効いています。
あと何気に大きいと思うのがシリーズ初のミュージカルシーンの導入です。
海賊と来たらやっぱり歌わなくちゃ!
という期待に見事に応えてくれました。
シーン自体のクオリティはけっして高くはないですが、これはファンには非常に大きな要素だったと思います。
トム・ヒドルストンの歌声も堪能できますしね。
それとやはりティンカー・ベルが他のレギュラー妖精達と終始一緒に冒険するのは新鮮で楽しかったですね。
ティンクがここまで皆と行動を共にするのはシリーズ初ですからね。
心理描写の不足
今作で唯一気になったのが主役であるザリーナに代表されるキャラクターの心理描写の不足です。
特に後半の改心する部分がやはりちょっと強引ですね。
これまでも強引なところはいくつかありつつ2作目のテレンス、3三作目のリジー、4作目のペリウィンクル等ティンクと関わる主たる人物の描写は丁寧に行われていたのですが、今回のザリーナは特になんの伏線もなく、海賊に裏切られた事で突然改心します。
はたから見ていると海賊に裏切られたから受動的に流れで妖精側についたようにも見えてしまうので、もうちょっとこう、、ティンク達とのやりとりでの伏線とかが欲しかったなぁとは思います。
まぁただ、ティンク達の受け入れる姿勢で最後ピクシーホロウに帰ることを決断しているのがちゃんとフォローにはなってはいますが。
あとこれはいつも思うんですがピクシーホロウの首脳陣ってかなり寛大というか緩いというか…
タブーを破りまくってる粉の錬金術という新たな才能をあっさり認めてましたね。
最後のティンクの「粉を取り返しました!」に対してのクラリオン女王の「無くなって…いたのですか?」には思わず笑ってしまいました。
全体的に今作はシリーズでは珍しく子供へのメッセージがちょっと明確じゃない部分があるのですが、これまでのティンクと違ってザリーナがしっかり皆に謝罪してたのは良かったです。
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まとめ
いやぁ…シリーズモノのエンターテイメントとしては非常に良く出来た作品ですね。
前作とこれまでの反省点をちゃんと改善してきた感じです。
個人的には「妖精の家」と肩を並べるシリーズ屈指の傑作だと思います。
子供も大人も、シリーズファンもライト層も、そしてピーター・パンファンも、それぞれが楽しめるバランスの良さが素晴らしいです。
このシリーズは回を重ねる毎にちゃんと一回一回試行錯誤してるのが観て取れるのが素敵なんですよね。
粗も多いシリーズではありますが、ちゃんと一作一作情熱かけて作っているのが伝わります。
それだけに…六作で打ち切りになってしまったのが本当に今でも残念でなりませんね…
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特に今作はピーター・パンとの繋がりも多いためライト層が見易い一本になってると思います。
「このシリーズ、なんかとっつきにくいな…」という方は、この作品から入ってみるのも有りかもしれませんね!
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