はいどうも。
今回は恒例のディズニー・トゥーン・スタジオ回です。トゥーン・スタジオについてはこちらの記事を参照。
いっとき巷に溢れた所謂「ディズニーヒット作のひどい続編」の主犯格としても名高いこのスタジオですが、これまでも語ってきたように実はとても素敵な作品もいくつも世に送り出しています。
特に今回語らせて頂くティンカー・ベルシリーズは、そんなトゥーン末期の作品でありながら、特に評価と人気の高い代表作として沢山の人々に愛されているコンテンツです。
今回はそんなティンカー・ベルシリーズの第4作目となるこちらの作品について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ティンカーベルと輝く羽の秘密
(原題:Secret of the Wings)
2012年
監督
ペギー・ホルムズ
ボブス・ギャナウェイ
データ
「ピーター・パン」シリーズに登場する妖精ティンカー・ベルが彼に出会う前の物語を描いたシリーズの第四作目。
本国アメリカの一部や数カ国等では劇場公開が実施され、日本では前作同様ソフトリリースでの公開となりました。
妖精の谷ピクシー・ホロウを舞台に、ティンカー・ベルと冬の妖精、そして双子の姉妹と邂逅を描いたファンタジーアドベンチャー。
原作はピーター・パンと同様イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーの有名な戯曲「Peter Pan; or, the Boy Who Wouldn't Grow Up」及び同作を小説化した「Peter and Wendy」ですが共通点は極一部のキャラクターと設定のみで、ストーリー含め基本的には大半がディズニーのオリジナル。
監督は「リトル・マーメイド3」等も手掛けたペギー・ホームズと「プレーンズ」シリーズのボブス・ガナウェイ。
脚本は監督の2人を含めた4名が共同執筆しています。
音楽は実に様々なディズニー続編作品を手掛け、ティンカー・ベルシリーズにとって無くてはならない存在であるジョエル・マクニーリー。
主題歌や挿入歌は実力派ミュージシャンであるシドニー・シエロタやマクレイン・シスターズが担当しました。
ティンカー・ベル役を務めたのはテレビや映画で女優としても活躍するメイ・ホイットマン。
日本語版はオーディションで大抜擢された新人の深町彩里さん。
今作で準主役を務めるティンクの妹ペリウィンクル役に女優として多方面で活躍中のルーシー・ヘイル。日本語版は中嶋ヒロさん。
冬の森の長ミロリを演じたのはジェームズ・ボンド役で世界的に有名なティモシー・ダルトン。日本語版は堀内賢雄さん。
さらに、、今や売れっ子女優の一人でもあるルーシー・リュー、「レイヴン」シリーズや「チーター・ガールズ」等ディズニーチャンネルでの活躍で知られるレイヴン・シモーネ、数多くのディズニーキャラクターをこなすベテラン声優ジェフ・ベネットとロブ・ポールセン等…メインキャラクターのほとんどが前作からの続投キャストとなっています。
前作から二年の間をあけて公開となったシリーズ四作目。
日本では前作同様劇場公開見送りですが、世界的に見ると劇場公開数は更に増加しており、収益的にはこれまでの前三作を大きく上回る数字を達成。
シリーズ最大収益の大成功作となりました。
さらに、これまでの好調ぶりが評価され、当初四部作、つまり今作で終了予定だったシリーズはなんと無期限の延長が正式決定します。
評価面では過去作との矛盾点やティンクの言動等脚本の粗さが多少賛否を分けましたが、多数投入された新キャラクター達や見応えのある演出、起承転結の効いたストーリー等は好評を博し、シリーズでも特に人気の高い一本となっています。
特に今作から登場したペリウィンクルやミロリは、現在でもファンの多いコアな人気キャラクターとなりました。
現在ではどちらかといえば知る人ぞ知るコアなディズニーシリーズという立ち位置にはあるものの、じわじわと大人達やファン達からの再評価も進んでいて、さらに2024年今シリーズを題材としたアトラクションが東京ディズニーシーに登場した事で再び注目を集めるなど、未だに人気の高いシリーズとして特にディズニーファンから非常に愛されており、制作スタジオが閉鎖されても尚、さらなる続編を望む声は未だに上がり続けています。
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あらすじ
冬のはじまりのある日。
行き来を禁じられている【冬の森】の境界線で自身の羽根が突然光り輝く現象を体験したティンカー・ベル。
その謎を解くため、規則を破り独断で冬の森へ侵入したティンクは、そこで自分と瓜二つの妖精・ペリウィンクルに出会う。
二人の接触と同時に両者の羽根は光り輝き、なんとティンクとペリウィンクルが同じ子供の笑いから生まれた姉妹の関係である事が発覚する。
突然知った姉妹の存在に喜び意気投合する二人だったが、やがて二人の出会いはピクシー・ホロウ全体を揺るがす大事件に発展するのだった…
個人的には前作の「妖精の家」ほどではありませんが、今回もまたなかなかの力作に仕上がっています。
今回のテーマは「異種との共存」
シリーズではじめて明かされる事となる「ティンカー・ベルには実は双子の姉妹がいた」という衝撃の事実が発覚します。
これまた大胆に攻めてきましたよね…
流石トゥーン・スタジオ。
これまでのテレンス、ヴィディアに続き、準主役を務めるのは、新キャラクターである霜の妖精『ペリウィンクル』。
通常の妖精が行き来を禁じられている「冬の森」に住む妖精であり、ティンカー・ベルと同じ赤ちゃんの「笑い」から同時に産まれた姉妹です。
そして今回の季節は『冬』
ただし作中で三作目の「夏」の出来事についての言及がある事から、時系列としては二作目の「秋」の直後ではなく、少なくとも1年以上後の出来事であることがわかります。
今作は特に、一本の映画としての全体の構成が実に見事ですね。
「ティンクに姉妹がいた」という大胆なプロットにロミオとジュリエット的要素を組み込み、さらにはピクシーホロウのディティールを絡ませることでうまく1つの物語として完成させています。
そして今作では「ティンクの姉妹」だけではなく、これまで明確にされていなかった新事実やピクシーホロウの新たな側面等が次々に登場してくるのも大きな魅力の一つとなっています。
その分少々散らかってしまった印象も否めませんが、ミニマム&パーソナル色が強かったこれまでの三作と比べて今作ではシリーズで初めて映画らしいスケールの大きなストーリー展開が成されているので、これまでが【少し退屈】と感じた方には丁度良い四作目になったと思いますね。
次々に明かされる新要素と新事実
そもそも「ピクシーホロウに四季それぞれのエリアがある」ということ自体第一作で明言されてから長らくまともに触れられていませんでした。
それが今回クローズアップされ、さらに「冬の森」は行き来が禁止されているという事実も発覚。
(これに関しては残念ながら第一作目との矛盾があります。それは後で。)
そしてここに来てクラリオン女王の知られざる秘密が明らかになるという驚き続きの展開。
さらに、今作では「病院」や「図書エリア」等ピクシーホロウの新たなディティールが多数初登場。
どれも趣向を凝らした面白いデザインになっています。
そして何気に大きいと思うんですが「妖精の全ての知識の番人」なる何とも興味深い人物も今作ではじめて登場します。
これまでの三作では語られなかった新事実や新要素が次々に発覚していくその展開は、観ていてワクワクしましたね。
魅力的なデザインと演出
今作から新たに登場する冬の妖精達、ペリウィンクルやミロリ等のキャラクターデザインが非常に良くできていて、未だに評価と人気が高いです。
さらに今作でもティンクのファッションショーは健在。冬仕様の衣装も今作の見どころの一つ。
もちろんお決まりの本格物作りシーンもこれまた健在です。
それと冬の森の動物たち(梟や猫等)が通常エリアのおとぎ話風ではなく写実系の描写に統一されているのも拘りを感じました。
そしてやはり冬の森の魅力的な冬の世界の描写力、さらに後半のピクシーホロウを寒波が襲う下りの描写等もとても見応えがあります。
例のごとく本家やピクサーには劣るCG力ながら、似たようなシチュエーションのアナと雪の女王と比べても見劣りしないようなデザイン的魅力は素晴らしかったですね。
力が入っているのが観ていてひしひしと伝わってきました。
うまく纏められたストーリー
前述のように兎に角様々な新要素を詰め込んでいる今作。
過去作同様、多少強引なところもありますが全ての要素を適度に活かしつつ見応えのあるストーリーとしてうまくまとまっています。
これまでで一番起承転結がしっかりしていてわかりやすい山場が用意されているのもポイントです。
主役のティンクとペリウィンクル以外のシリーズお馴染みの妖精達にもそれなりに活躍の場があるのも嬉しい点ですね。
ティンクとの絆や仲間意識が一作毎に強くなっているのを感じました。
散見される脚本の甘さ
さてここからはマイナスな話題。
やはりまず一番気になるのは、作中で行き来禁止のエリアとされる「冬の森」に関するシリーズ内の矛盾。
というのも、第一作目「ティンカー・ベル」でも冬の森は登場しているのですが、ティンク達普通に中に入ってます。
更に冬の妖精も通常エリアに普通に来てティンク誕生の儀式に参加しています。
この大きな矛盾に制作サイドが気付いてなかったとは思えないんですよね。
というのは、1〜2作目に登場していた「冬の大臣」がこの4作目では存在が抹消されているからです。
これは明らかに意図したものであり、ミスではなくおそらくシリーズ途中の設定変更なんですよね。
長いシリーズ物ではよくある話ですが「これくらいの変更くらい別にいいだろう」という姿勢がちょっと残念でしたね。
かなりアメリカ的とも言えますが。
ここまでしっかり拘って設定やディティールを魅せていただけに。気になっちゃいましたね。
※一応この矛盾に関しては第5作目で「禁止ではなくルールが曖昧だった」とフォローが入っています。
それと、もう1つはストーリー。
前述の通り今作には沢山の新要素や新事実、驚きの展開が詰め込まれています。
その上でうまくまとめられているとは思うのですが、反面、それぞれにもう少し説明と奥行きが欲しかったです。
平たく言ってしまえば雑な部分がちょろちょろ散見されます。
クラリオン女王なんか四作目にして初めてスポットが当たったのに、なんか軽く流されちゃいましたよね。
彼女の悲恋は、これだけでスピンオフが一本出来るくらいの重厚なエピソードだったと思うんですけどね。
せめて回想シーンとか欲しかったです。
それとやはり「妖精の知識の番人」デューイ。
彼もなんかその肩書きのわりに普通の名脇役的な立ち位置で終わっちゃいましたがもう少し掘り下げと説明は欲しかったです。
彼の城?宮殿?とか、あのティンクとペリに真実を見せたシステムとか、、何だったんでしょう。
あと冬の森の長的な雰囲気を漂わすミロリは、結局立場的には何に当たるのかとか。
登場しませんでしたが冬の大臣は別にいる筈なので。
それと最後の大事件も、本当にこれはピクシーホロウにとって大事件なわけで、、それにしては何となく描写が軽いというか。
輝く羽根に関しても歴史的な発見であるのはわかるんだけど、もう少し説明というかフォローが欲しかったし…
これはシリーズ全体に対しても言えることなんですがストーリー解決への描写がいつも少し強引なんですよね。
多分設定は全部用意してる筈なんですよね。
ここまでいつも作り込んでるわけだから。
魅せ方が、子供向けなのか大人向けでもあるのかをいつもちょっとフラフラしてる感じがあります。
最後に、今作のティンクの言動。
これはやはり、今作は特にフォローが足りない気がしますね。
「規則を破ったこと」に対して反省がなく、結局規則側が歩み寄る形になってしまっています。
ティンクがやらかし、持ち前の機転と能力で何とかするというのはいつものパターンなのですが、今作の自己中心ぶりはちょっと目立っちゃってますね。
まぁピーター・パンの方のティンクを見るとこれくらいの方が本来の性格かなとかも思いますが。
ただ子供向けであるなら少なくとも反省と謝罪は欲しかったような気がします。
この辺も子供向けの教訓映画なのかそうじゃない単なるファンタジーのか…フラフラ感がちょっとあるんですよね。
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まとめ
と、いった具合で…
総じて良作ですが、やはりこのシリーズは、折角素晴らしい部分が沢山あるんだからもう少し丁寧に扱って欲しかったなぁ…
という所感がより強くなってしまうような、そんな第四作目となりました。
シリーズ物としてそしてファンの視点で観ると、少し残念な部分や粗も目立ち、痒いところに手が届かない作りであることは事実。
ただ、様々な要素に挑戦した意欲作である事は間違いないですし、映画としての演出や構成も含めて、一本のエンタメ作品としてとても良く出来ています。
キャラクター等のデザインも素晴らしいので子供も大人も安心して楽しめる作品です。
何よりティンカー・ベルと新たに発覚した姉妹ペリウィンクルとの関係性や絆はとても丁寧に描かれているのでその点は素晴らしかったですね。
流石はシリーズ最大のヒット作です。
ティンカー・ベルというキャラクターやピクシー・ホロウという世界観を堪能する為にも、欠かすことの出来ないシリーズのマスターピースです!
未見の方は是非一度♪
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