はいどうも。
今回は恒例のディズニー・トゥーン・スタジオ回です。トゥーン・スタジオについてはこちらの記事を参照。
いっとき巷に溢れた所謂「ディズニーヒット作のひどい続編」の主犯格としても名高いこのスタジオですが、これまでも語ってきたように実はとても素敵な作品もいくつも世に送り出しています。
特に今回語らせて頂くティンカー・ベルシリーズは、そんなトゥーン末期の作品でありながら、特に評価と人気の高い代表作として沢山の人々に愛されているコンテンツです。
今回はそんなティンカー・ベルシリーズの第3作目となるこちらの作品について語っていきます。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ティンカー・ベルと妖精の家
(原題Tinker Bell and the Great Fairy Rescue)
2010年
監督
ブラッドリー・レイモンド
データ
「ピーター・パン」シリーズに登場する妖精ティンカー・ベルが彼に出会う前の物語を描いたシリーズの第三目。
前二作の好評を受け今作から本国アメリカの一部やイギリス等ではOVAから劇場公開へ昇格が実現。
反対に日本では国内興行収入の振るわなさから、今作から劇場公開からOVAへ変更を余儀なくされています。
夏を届けるためにメイン・ランド(人間界)にやってきたティンカー・ベル達と人間の女の子との交流を描いたファンタジーアドベンチャー。
原作はピーター・パンと同様イギリスの作家ジェームス・マシュー・バリーの有名な戯曲「Peter Pan; or, the Boy Who Wouldn't Grow Up」及び同作を小説化した「Peter and Wendy」ですが共通点は極一部のキャラクターと設定のみで、ストーリー含め基本的には大半がディズニーのオリジナル。
監督はシリーズ一作目の「ティンカー・ベル」も監督したブラッドリー・レイモンドが再登板。
「ポカホンタス2」や「ライオン・キング3」等も手掛けたクリエイターです。
脚本は人気カートゥーンシリーズ「リセス 〜ぼくらの休み時間〜」で知られるジョー・アンソラベヘレとポール・ジャーメインを含めた4名。
音楽は実に様々なディズニー続編作品を手掛け、ティンカー・ベルシリーズにとって無くてはならない存在であるジョエル・マクニーリー。
主題歌や挿入歌は実力派ミュージシャンであるカーラ・ディロンやホリー・ブルック、「レモネードマウス」のブリジット・メンドラー等によって歌われています。
ティンカー・ベル役を務めたのはテレビや映画で女優としても活躍するメイ・ホイットマン。
日本語版はオーディションで大抜擢された新人の深町彩里さん。
今作で準主役を務める風の妖精ヴィディア役にはディズニー作品で実に様々なキャラクターを演じているパメラ・アドロン。日本語版は朴璐美さん。
ティンクと友人になる人間の子供リジーを演じたのはローレン・モート。日本語版は藤崎花音さん。
リジーの父親役には「トロン:レガシー」や「アリス・イン・ワンダーランド」でも知られるマイケル・シーン。日本語版は村治学さん。
さらに、、「ディセンダント」のクリスティン・チェノウェスや今や売れっ子女優の一人でもあるルーシー・リュー、数多くのディズニーキャラクターをこなすベテラン声優ジェフ・ベネットとロブ・ポールセン等…メインキャラクターのほとんどが前作からの続投キャストとなっています。
今作から日本での劇場公開がなくなったシリーズ三作目ですが、世界的に見ると劇場公開数は大幅に増加しており、収益的にも前2作とほぼ同等の数字を記録し、その人気を維持することに成功しています。
評価面では人間親子とティンク達の交流というミニマムな展開が多少賛否を分けましたが、大元であるピーター・パンの本質に近づいたそのテーマやキャラクター描写、丁寧な人間ドラマ等は好評を博し、地味ながらシリーズの隠れた名作とする声も多い一本です。
現在ではどちらかといえば知る人ぞ知るコアなディズニーシリーズという立ち位置にはあるものの、じわじわと大人達やファン達からの再評価も進んでいて、さらに2024年今シリーズを題材としたアトラクションが東京ディズニーシーに登場した事で再び注目を集めるなど、未だに人気の高いシリーズとして特にディズニーファンから非常に愛されており、制作スタジオが閉鎖されても尚、さらなる続編を望む声は未だに上がり続けています。
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あらすじ

夏を届けるためにメインランド(人間世界)にキャンプを張っていたピクシーホロウの妖精達一行。
以前は留守番だった物作りの妖精達も道具の管理や修理の為にメインランドへ同行する事となり、ティンカー・ベルは張り切っていた。
しかし、その好奇心の強さからティンクは人間の居住エリアに近付きすぎてしまう。
それを止めようと追いかけてきた風の妖精・ヴィディアだったが、二人のいざこざと小競り合いが原因となり、ティンクは人間に捕まってしまった。
とある家に連れて行かれたティンクは、そこでリジーという妖精が大好きな女の子と出会う。
そしてヴィディアはティンク拉致の責任を感じつつも、他の妖精達とチームを組んで彼女の救出へと向かうのであった…
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感想

第三作目にして傑作の登場です。
さて、今回のテーマは【妖精と人間】
ティンカー・ベルが、実はピーター・パンに会うもっと前に人間の少女と出会っていた事実が明らかになります。
まず最初に言わせていただくと、、
こっちが二作目だったんじゃないかなぁ…と。。
本当これ、ちょっと勿体ないと思うんですよね。
内容的にも季節の順番的にも(一作目が「春」で今作は「夏」ちなみに二作目は「秋」)おそらく当初はこっちが二作目の予定だったと思うんですよ。
正直非常に良くできているこのシリーズがイマイチ勢いに乗りきれなかったのは、二作目が原因だと個人的には思うんですよね。
いや決して二作目が悪いとかではないんですけど。
キッズに好評だった一方で大人達からの関心が大きく離れちゃったような感じがしたんですよね。
多分何か理由があって公開の予定を変えたんだろうな、と個人的に勝手に思っています。
(実際この三作目は当初公開された予告と実際の内容に大きな違いがあります。大規模な作り直しが行われたんでしょうね。)
二作目に本作を持ってこれていればシリーズ全体の評価や勢いがだいぶ変わってたんじゃないかな…とちょっと思うんです。
実は最初プロットだけ知った時は凄い不安でした正直。
いやだってピーターに会う前に実は人間と交流していた…というのは地味に全体の世界感や設定に関わる結構大胆なを事やっちゃってるわけじゃないですか。
何かやらかすんじゃないか…という思いが拭えなかったですよね、観るまで。
だって二作目がほら、結構大味だったし…
しかし蓋を開けてみたら、、
もう…ただの傑作でしたね。
二作目とは反対に、派手さは無いけれど心理描写等の脚本が丁寧で、妖精と人間の交流ドラマとして見応えのある内容になっていました。
それと後述しますが、ティンクだけじゃなく各レギュラーキャラクターの個性や魅力がしっかり描かれていたのもとても良かったです。
なんかこう、あれですねーやっぱりトゥーン・スタジオはピーター・パン系とプーさん系だけクオリティーが頭一つ抜けてるんですよね。
個人的に…ですが。
兎に角世界感を良く理解しているし、それを壊さないギリギリのラインでの大胆なストーリープロットとか。。
色々ハマるんですよ。
今作も、もちろん基本は子供が楽しめるファミリームービーなんですが、ピーター・パン含めこの世界観が好きな人のツボを結構押さえた一本だと感じました。
丁寧な人物描写
まずティンクと少女リジーの関係性の変化、そしてリジーという少女の父親との関係性や妖精への想い等のバックボーンが非常に丁寧に描かれています。
不自然さが全くなく、自然と少女に感情移入できるようにしっかり作られています。
これは見事でした。
一件の家屋が舞台で先もだいたい読めるのに、全然飽きないで見入ってしまう、そんな不思議な魅力に包まれた二人の関係性でした。
空飛んだ時とかちょっと感動しちゃいましたもん。
そしてこのティンクと少女の会話ややりとりの中に、作り込まれた妖精世界の設定やディティールがうまい具合に生かされていて、そこも興味深かったですね。
「季節が変わるのは地球が回ってるからだと思ってた」という少女への「表向きはそういう事にしてるの」というティンクの返答とか、軽く衝撃でした。
そしてティンクの【モノ作りの才能】と【怒りっぽい性格】という特徴を的確に活かした展開も素晴らしかったですね。
今回ティンクが顔を赤くして怒るのは劇中一度のみなのですがその一度がとても効果的なシーンで使われています。
それと今シリーズの見せ場の一つとも言えるモノ作りシーンはやはりこれまで同様力学や物理をしっかり組み込んだ描写になっているので大人が見ても楽しいですね。
見事に描かれた各キャラの個性
あと今回ストーリーラインで一番良いなと思ったのは、ティンクと少女の物語と平行してヴィディア達妖精チームが力を合わせてティンクを救出に向かうエピソードが展開されていて、前作の「月の石」ではまるでモブ扱いだった他のレギュラー妖精達一人一人にしっかり見せ場が用意されていること。
そしてここが同時に「今作を二作目にした方が良かった」と思う一番の理由でもあります。
準主役はヴィディアなんですが、その他の光・水・植物・動物の各妖精達、さらには物作りの仲間クランクとボブルまで、ちゃんと個々がそれぞれの個性を活かした活躍を見せてくれます。

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