はいどうも。
さて…時代は長かった暗黒期を終え【ディズニー第3の黄金期】と言われる2010年代に突入中です。
2004年にフルCG映画制作への完全移行を実施してから徐々にその評価と成績を上げてきたディズニーはついにアナと雪の女王で社会現象級の特大メガヒットを達成。
2000年代から10年以上続いた暗黒期をようやく名実ともに完全に吹き飛ばしました。
続くアメコミ+ディズニーな意欲作ベイマックスも評価・収益共に見事な大成功をおさめ…待望のディズニー第3黄金期が名実ともに到来。
そんな中次に公開されたのは…またしても前2作とは趣向や方向性のガラッと異なる作品。黄金期の勢いに乗り…振り幅の広さを徹底的にアピールします。
錚々たる実力者たちが集結し作られた、、チキン・リトル以来約11年ぶりとなる【ディズニー伝統の完全アニマル・ムービー】をついにここで持ってきました。。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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ズートピア
(原題:Zootopia)
2016年
監督
リッチ・ムーア
バイロン・ハワード
ジャレド・ブッシュ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ55作目の長編アニメーション。
〈製作スタッフ〉
あらすじ
感想
良い意味でも悪い意味でも新世代ディズニーアニメーション映画を象徴するような作品です。
黄金期を代表する実力者達が集まり制作された作品なのでトータルクオリティが恐ろしく高く、、全てが総じて非常に良くできています。
なんていうか、、ここ数年では一番作り手の狙い通りに観てもらえて狙い通りの評価を獲られた作品なんじゃないでしょうか。
見た目は可愛らしい動物達による見るからに子供やファミリー向けの定番アニメーションですが、、実際は社会派映画の要素が非常に強く、かなり大胆な大人向けに振った内容になっていますね。
所謂「アニメーションに意味を求める人達」からはノートルダムの鐘等と並んで圧倒的な人気を誇るカリスマ性の強い作品。
しかしそれだけではなくエンターテイメント映画として音楽、映像、ギャグ、アクション、全てがかなりのハイレベルでまとまっているので間口は広く敷居は低く…その人気も頷けます。
やはりロビン・フッド方式の擬人化アニマルの手法がとても効いているのと、ただの擬人化ではなく徹底的にその動きや習性を研究し落とし込んだギミックやギャグが逸品です。
決して一部の人しか楽しめないような作品になっていない所が流石。
ただ、、個人的にはやはりディズニーは「メッセージ性」や「社会性」を考え過ぎた映画はどうしても似合わない&得意ではないっていうのは間違いないと思ってて、、今作も本当にその部分は顕著に出ていたなと。。
こういう映画を否定してる訳ではなくて…単純にディズニーが評価されてきたエンターテインメントって絶対そこじゃないじゃないですか。もっと言うとディズニーの本質ってわりと真逆だと思うんですよね。
だからハッキリ言うと、、社会性やメッセージ性に傾倒しすぎると、、粗が出ちゃうんですよ。。
まぁでもそれを差し引いても間違いなく完成度のべらぼうに高い素晴らしいアニメーション映画ではあるんですが。
エンタメ映画として隙のないクオリティ
これは本当に感服しました。
コレまでに無い程の強いメッセージ性と程よいミステリー要素の内包されたぶ厚い脚本に頼り切らない、、キャラ力の追求や音楽と演出、、シリアスな本線と非常にバランスのとれた軽妙なコメディ要素。そして街や設定等の細部のギミック。
どれをとっても隙のない一級のエンターテイメントです。スマホやipod、冷凍食品など、、細かい所も現代の人間社会を投影させているので軽い気持ちで映画を観る若者世代からの共感度が高いのもポイント。
各動物達の特性を上手に落とし込んだアクションシーンも本当に素晴らしいです。
脇を固めるキャラ達の個性とその使い所もとても良くて、、それぞれがキッチリと役割を果たしています。
特に、、
鋭い社会風刺からこぼれ落ちるもの
ここらは少しネガティブな話題。。
前述の通りこの映画は現代の人間社会を擬人化した動物達で表現し、、その問題をあぶり出す事が物語の核となっています。
具体的に言ってしまえば大きく扱っているのは、、【人種問題】。
もっと具体的に言ってしまえば1960年代アメリカの公民権運動を物語のベースとしています。
あらゆる動物が集まる大都会【ズートピア】。
あらゆる動物が平等で「何にでもなれる街」とされながらも、、【ウサギの警官】というだけでまともに扱われないジュディや【キツネだから】というだけで酷い扱いを受けて夢を失ったニック、、種類ごとに別けられた居住エリア、、そして人々の根底に引かれている【肉食動物】と【草食動物】の境界線。
人々の深層心理にある差別感情。
擬人化動物で表現しているという事もありここにかなり遠慮なしに切り込んでいます。
もちろん重たくならないようにユーモアやエンタメを織り交ぜながらうまくやっていて、これ自体は成功していると思います。
観客の反応も概ね期待通りだったのではないでしょうか。
後述しますがこのズートピアでの【社会性を強く内包させたアニメーション】の大成功は今後のディズニー全体の作品の方向性に大きな影響を与えていくことになります。
しかしその一方で。。
前述しましたが、、ディズニーはこういう事をやると所謂ファミリーエンタメ映画では隠れていた他のストーリー上の粗を浮き彫りにしてしまう傾向があります。
今回自分がどうしても気になってしまったのは作品全体に見え隠れする【職業差別傾向】です。
主人公ジュディは田舎育ちですが、、大都会ズートピアで警官をする事になります。
着任初日の仕事が交通違反係な事を【差別的なひどい仕打ち】と描いていますが、、新人警官の初日に複雑な捜査ではなく交通違反係をやらせるのはそんなにおかしな事でしょうか?
「そんな仕事じゃなく警察官らしい仕事がしたい!」と抗議するジュディですが、、交通違反係は警察官らしい仕事じゃないのでしょうか?
田舎で農業をして生活している両親を終始【どこか間の抜けた存在】として描いてるのは何故でしょうか?田舎での農業を【冴えない生活】という前提で描いてるのは何故でしょうか。
きっとそこに他意はなく、描きたい所が違うだけというのが正解でしょう。
ただ、、これだけ露骨に【差別】をテーマとして押し出されると逆にどうしても気になってしまうのが正直なところです。
魅せたい【差別批判】の為にまったく【別の差別】を無意識に描いちゃってませんか?
と。
ディズニーが社会性作品をやるとどうしてもこういう事が端々で起こってしまうんです。
そしてそれの最たるものが次のトピック、、↓↓
今一度問われるディズニーの倫理観
この作品は、、ザックリ言うと【種族や偏見ではなくその人を見よう】という大きなメッセージと共に締めくくられます。
これを言われてしまうとどうしても気になってしまうのは、、ニックの存在です。
彼は良いヤツです。キツネというだけで迫害を受けて育った可哀想な良いヤツです。
でも、、どうしても犯罪者です。
直近でバリバリ詐欺を働いていた人間がなんのお咎めも受けずにすんなりと警察官になっています。
【ファンタジーなんだし過去ではなく今のその人が大事なんだから…】というのも分かります。
というかだからこそ今まであまり気にしないようにしてました。アラジンもユージーンも。。
昔々のおとぎ話の世界だから、、と。
だけどこの作品はここまで大体的に人間社会のリアルさを掲げています。
しかも現代社会を。
となるとこの辺の違和感というのが否応無くどうしても目立ってきちゃうんですよね。
もともとディズニーは犯罪、、特に詐欺や窃盗を少々軽んじる作風が昔からあります。
ただ社会的な強いメッセージ性や複雑な深いストーリー等に重点を置かず、、あくまでファンタジーエンターテイメントを追求してきたからこそ、、言い方は悪いですが今まである意味誤魔化せてきました。
これが、、【ディズニーには社会派作品が合わない】と感じる個人的な一番の理由ですね。。
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まとめ
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