はいどうも。
さて、今回も恒例のディズニーアニメーション映画史。時代は輝かしい黄金期・ディズニールネサンスと言われた1990年代を終えて【ディズニー第3の暗黒期】とも言われている2000年代に突入中です。
前作の「リロ・アンド・スティッチ」は低予算のサブプロジェクトにも関わらず見事なスマッシュヒットを記録し、さらにスティッチの爆発的なキャラクターブーム化で勢いにのるディズニー。
このまま暗黒期脱出なるかという大事なタイミングで間髪入れずに公開されたのは、あのリトル・マーメイドやアラジンを生み出したディズニーきってのゴールデンコンビによるこの作品でした。
…しかし、今回の暗黒期の根は想像以上に深かったのです…。
(※当ブログは基本ネタバレありです。ご了承下さい。)
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トレジャー・プラネット
2002年
監督
ジョン・マスカー
ロン・クレメンツ
データ
ウォルトディズニーアニメーションスタジオ43作目の長編アニメーション。
監督は「アラジン」や「リトル・マーメイド」等の数々の名作を手掛けてきたジョン・マスカとロン・クレメンツによるディズニーを代表する鉄板コンビ。
音楽は「ダイナソー」や「アトランティス」のジェームズ・ニュートン・ハワード。
主題歌及び挿入歌を超メジャーバンドGoo Goo Dollsのジョン・レズニックが手掛けている事でも有名です。
原作はイギリスのロバート・ルイス・スティーヴンソンによる有名小説「宝島」。
ただし、海洋冒険物語から舞台を宇宙へ変更するなど設定やストーリーに大きなアレンジと変更が加えられていて、青年に差し掛かる年頃の少年・ジムを主役に、人間ドラマたっぷりに描かれる一大SFアドベンチャーが展開されています。
監督の二人が実は80年代からずっと作品化を希望・提案し続けていた作品で、90年代後半にようやく許可が降り約4年以上をかけて制作された黄金コンビ渾身の一作でした。
完成された世界観と練り込まれた人間ドラマ、そしてターザンから引き継いだCGとセルアニメを融合させた圧倒的な映像力でファンも多く、多方面から大きな好評化を獲続けている…
と同時に…
収益面では90年代・2000年代を通してみても稀に見る赤字作・大失敗作として不名誉な名の残り方をしてしまっている作品。
特殊な公開の仕方だった「ファンタジア2000」を除くと「ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え!」以来の低収益。
続編専門のサブスタジオ、トゥーン・スタジオの「ピーター・パン2」や「ジャングル・ブック2」にも及ばないという厳しすぎる結果に終わってしまった不遇の作品です。
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あらすじ
惑星モントレッサ。
15歳のジム・ホーキンスは8歳の時に父親が家を出て以降母親と二人で暮らしていた。母親は飲食店を経営しながら女手一つでジムを育ててきたが、ジムは父親を失った事が切っ掛けで事ある毎にサラに反発し非行を繰り返すようになる。
ジムが再び警察沙汰の問題を起こした日、知人のドップラー博士に息子についての心労を打ち明けるサラ。そしてジムもまた現在の自分と母親の状況に悩み苦しんでいた。
そんな時、ジムの目の前に突如宇宙船が墜落する。そこから出てきたのはビリー・ボーンズという手負いの男だった。
ジムの介抱も虚しく、とある地図を残し力尽きるボーンズ。
それがあの有名な昔話に登場する財宝が眠る星、伝説のトレジャープラネットの地図であると知ったジムは、 サラに遅蒔きの親孝行をする為、そして本当の自分を取り戻すため、同じく地図に興味津々なドップラー博士と共に旅に出ることとなった。
宇宙船レガシー号に乗り込むことになったジムは、そこで女性船長アメリアとその右腕のアロー、スライムのような不思議な生命体モーフ、そして船のコックを務めるサイボーグのシルバーと出会い、トレジャー・プラネットを目指して多難な旅へ出発するのであった。
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感想
まぁ色んなところで言われてますが、、
何でこんなに収益失敗してしまったのか全く解らない作品です。
ジョン・マスカーとロン・クレメンツの本気が伝わる半端ないクオリティの高さなんです。
この時代のディズニー作品は人間キャラクターのデザインが独特なのでそこに拒絶反応を示す人が結構居て、それが低収益に繋がっているという話もあるんですが、この作品に限ってはビジュアルから入ってる人も結構いるんですよね…
本当に間違いなくディズニーアニメーション史の七不思議の一つですね。何故なんだろう…
ストーリー、キャラクター、アニメーション、音楽、全てが超のつくハイレベル。
しかも良い塩梅でディズニーらしさが加味されてるので大人向けよりの作品ですが子供も充分楽しめる冒険活劇に仕上がってます。
文句なしに「面白い映画」です。
ただし「ディズニー映画」として観ると少々【押し付けがましい】部分もあり、好みは別れるのかなとは思いますね。
「ディズニー映画に深みを求めるタイプの人達」
からは未だにカルト的人気を獲続けています。
これは納得ですね。
ただそれだけじゃなくディズニー伝統のファミリエンターテイメントームービーとしても充分よく出来ていると思うんですけど、そちら方面の支持はイマイチなんですよね。
個人的には1.2曲でも良いのでやっぱりミュージカルが欲しかったかな、と。
↓詳しくは以外で〜↓
凝縮れたストーリーと人間ドラマ
長い制作期間を用いただけあってストーリープロットと人間ドラマが非常に練り込まれていて見応えがあります。
宝探しの冒険活劇の中で、青年の成長と親子愛という二つのテーマを主題にしていて、それを中心に良くまとまっています。
ドラマ演出も素晴らしく、気付いたら引き込まれているようなストーリー力は凄いです。
特にキャラクター同士が織りなす人間ドラマとしてはディズニー映画随一の完成度だと思います。
ディズニー作品の中では珍しく【魅せたい物】がハッキリしている印象が強い映画なんですが、その中でエンターテイメントとしての一面も忘れずに遊び心もしっかり織り交ぜているのは流石黄金コンビだなと思いました。
ただ、魅せたい物がハッキリし過ぎていて少々「押し付けがましく」そして「あざとく」なってしまっている側面があります。
これはピクサーやジブリにはよくある現象ですが、ディズニー映画では珍しいです。
「ノートルダムの鐘」とかもそうでしたかね。
「ね、良い話でしょ」ていう。
ジムとシルバーの関係性をガッツリ魅力的に描きたいのはわかるのですが、折角他に魅力的な要素が沢山あるのに、ここ一点にピントを合わせ過ぎな気がしました。
例えばドップラーやアメリア等はとても魅力的なパーツなのにジムとの絡みがあまり無く、【ただ物語の端っこで勝手に二人で良い感じになっただけ】みたいな扱いで本当に勿体なかったですね。
この辺のキャラとの絆を描くシーンとかを1シーンでも良いので入れてくれたら、より冒険活劇としての魅力が増したのになとは思いました。
ただアメリア船長が大切な副官アローを失ったとき命綱の確認を怠った(と思われた)ジムを一切責めなかった描写とかはさり気ないシーンだけど凄いよかったです。
ベンとかも物語の重要なキーとなるキャラクターな筈なんですがキャラを強くしてるワリには中途半端なんですよ。
本ヴィランである筈のスクループもバックボーン等描かれないあっさり設定でした。
壮大な設定や魅力的なキャラクターや要素が沢山あるSF冒険活劇の皮は被ってますが結局魅せたいは「ジムとシルバー」の人間ドラマなんですよね。
ただ、この一番魅せたい部分に関しては本当に見応えのある素晴らしい出来栄えになっています。
それだけにもう少しバランス良く全体をカバーして欲しかったなというのも正直なところでした。
間違いなく傑作なんですが、このちょっとしたバランスだけで「大傑作」にさらに化けていた可能性は充分あると思います。
個性の強いキャラクター達
前述しましたが一つ一つのキャラクターは本当に個性的で魅力的に描かれています。
この辺も流石ですね本当に。
それだけにそれぞれの活躍をもう少し見たかったというのはありますね。
中でもモーフは素晴らしいアイデアと個性に満ちたキャラクターだと思いました。
キャラ自体のユニークさと緩和剤としても存在感もそうですが、ジムとシルバーを繋ぐ物語のキーパーソンとしてもとても上手く活用されてましたね。「アラジン」におけるアブーの上位互換のような、本当に素晴らしいキャラクターでしたね。
そして主役のジム・ホーキンス。
思うにジョン・マスカーとロン・クレメンツ作品は、主役をどれだけ許容できるか、感情移入できるかが結構な分れ道だと思います。
勧善懲悪のストーリーでも単純な善として主人公を描かないのがポイントですよね。
アリエル、アラジン、ヘラクレス、そして今回のジム、それぞれに大きな欠点があります。
特に今回のジムはクセモノじゃないでしょうか。
父親が居ないという理由でグレて軽犯罪を繰り返し、さらにディズニーでは珍しい今どきの若者を意識したルックスと振る舞い。
特に大人勢は、この主役をどう捉えるかで作品自体の印象が変わると思いますね。
完成された映像力
最後に、やはりこの作品はその映像力を外しては語れないと思います。
ターザンから受け継いだ系譜ですね。
CGとセルアニメを組み合わせてまるでアトラクションのような没入感と迫力、美しさを見事に表現しています。
ディズニーはこの後間もなくフルCG作品主流の時代へ切り替わっていくのですが、個人的にはこの路線をもっと突き詰めていって欲しかったですね。
それぐらい圧巻の映像世界です。
シルバーのサイボーグ描写なんかは、本当に見事としか言いようがないです。
本当に、こういうCGの使い方を突き詰めてほしかったなぁ、、。
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