しかも「この続きは明日書きます」と書いておきながら(^_^;)。すみません…。
仕事が一段落して、今度から頻繁に更新するのでよろしくお願いします。
震災後のどん底から日本全体も音楽業界も少しずつ元気を取り戻したようで、昨年秋から超多忙になってしまいました。多い時は6つのプロジェクトを同時に抱えてたり…。
Pro Toolsで一つの曲を途中までアレンジしたら、今度は別の仕事のボーカル・レコーディング&編集、と思ったら声優さんのレコーディング打ち合わせがあったり、その次は別のCM仕事でビデオトラックを同期させながらインストを作る…など、頭をどんどん切り変えなければならない日々が続きました。ノージャンル・ミュージックといっても、こんなこと続けてたら多重人格になりそう(^_^;)。
中でも大変だったのが前回でも触れた初音ミクのプロジェクト。これは音楽制作より全体のプロデュースのほうが数倍大変で、すごく時間を取られました。イラストレーター(絵師)さんや映像制作者(動画師)さんなど、音楽以外の10数人のクリエイターさんとそれぞれメールや電話、打ち合わせ、さらにレーベル側との予算やスケジュール管理、宣伝会議などなど。
自分が直接関わってない楽曲でも作詞やアレンジ、動画のチェックや修正の依頼などしたので、毎日がメールの嵐!
多い時は30通以上も長文メール書いていた時期もありました。
東京近辺に住んでいるクリエイターとは実際に会って打ち合わせするほうが好きですが、地方在住の方とはそうもいきません。なので、必然的にメール中心になります。
firestorageでやりとりした音楽やイラスト、動画のファイルをお互いに見ながら徐々に作り上げる、という、良く言えば21世紀らしいプロダクションですね。中には50通以上もメール交換したのに、相手の本名や年齢、性別さえも知らないクリエイターさんもいます。
僕は昔、雑誌のライターをやってた時期もあったので、パソコンで文章を書くのは割と早いほうですが、そこまでメールばかり書くと、もうPCキーボードに触る気力が残りません。
仕事が早めに終わって「いろいろ面白いことあったからブログでも書こうかな」と思っても書く元気がないので、小説やマンガ読んだり、DVDを見たりしちゃって…というのが現実。いや、言い訳ですね(笑)。
まあ、そんな甲斐もあって、当初予想より3ヶ月以上遅れたけど、なかなか良いアルバムが作れたんじゃないかな。
ボーカロイドの場合は音楽だけでなく、ビジュアルも含めた上での作品だと思っていますが、歌詞カードのデザインも含めて、そういう意味では満足できるアルバムです。ジャケットの元ネタは35才以上の人なら誰でも知ってるであろう、ビートルズのアレです(笑)。
Lots of Love feat.初音ミク

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ボーカロイドはシンセサイザー、リズムマシン、サンプラーと匹敵するくらいの大発明だと思っています。音楽の作り方はもちろん、音楽ビジネスそのものにも大きく影響を与えているので。
なんといっても「初音ミク」の声とキャラクター、それとニコニコ動画の存在が大きかったですね。
僕の高校時代には、周りに歌ってくれるシンガーがいない場合は友達に紹介してもらうか、雑誌のメンバー募集や楽器店の張り紙などで探すしかなかったわけです(笑)。それでやっとシンガーが見つかっても、いざ歌ったら音程が悪かったり、歌が上手くても性格が合わなかったり、逆に合いすぎて恋仲になり、三角関係のトラブルになったり…とか、いろいろ大変でした。
それでやっと曲を作って、バンドでスタジオをレンタルしてリハーサル、それでデモテープを作ってレコード会社やライブハウスに送ってやっと発表できる、と。
ふう。書くだけでも疲れますね(笑)。
それが今や、自宅で音ネタをちょいちょい組み合わせてオケを作り、歌詞を書いてソフトに流し込んだらボーカロイドが完璧な音程で歌ってくれます。完成したら即座にニコニコ動画にアップして、何万人もの人が聞いたり、コメントをくれたりしますね。
ニコ動ではボーカロイド以外に、ボカロ曲を「歌ってみた」という人たちがあっと言う間にスターになるケースが頻繁におこります。その中で人気の曲はオリコンやカラオケチャートでも大ヒット!
バンドがブレイクするまでにライブハウスで何年も苦労するのに比べると、あまりにも簡単すぎて、レコード会社って何のために必要なの?と言われてしまう時代です(^_^;)。
とにかくここ数年の変化は激動といえるくらいすごかったですね…。
僕はこの2年近く、自分で投稿はしませんでしたが、時間があったらニコ動(もちろんYouTubeもだけど)はよく見てました。誰でも投稿できるので、正直つまらない作品も多いのですが、人気上位に入る動画&音楽はプロ並み、いやプロでも作れないスゴイ作品がたくさんありました。特にCG関連はテレビより進化のスピードが明らかに早いと思います。
それに加えて素晴らしいのは「歌ってみた」動画で、シンガーのルックスや年齢に全く関係なくヒットが生まれること。
従来の音楽業界では「女性ソロでデビューできるのはは22才まで」とか「やっぱりルックスが良くないと」とか、「事務所の力でウン千万円かけて宣伝体勢」みたいな会話が飛び交って、歌そのものの魅力を語る業界人がほとんどいませんでした。
地上波テレビは一部の大手事務所が独占してる状態(深夜帯を除いて)だし、FM局さえも「宣伝協力費がすごいから、つまらない曲だけどヘビーローテする」状況…。
そういう中で、全くしがらみに関係なくヒット曲が生まれるニコ動&ボカロ界隈は素晴らしい。ユーザーも結構耳が肥えている人もいるし、弾幕コメントなどの発明?も楽しいです。
ボーカロイドがなかったら世に出てこれなかったプロデューサーも結構いると思うし、そういう才能を輩出するムーブメントがあるのは幸せですね。僕が今高校生だったら、間違いなくボーカロイドにハマって、3日に1曲くらい投稿してると思います(笑)。
ただ、世の中、光があったら闇もあります。
ボーカロイドの人気が出過ぎたことで、声優さんなど可愛い歌声を持つ歌手の需要が落ちているそうです。僕の周りでも「アニ○イトとかのCDコーナーがミクちゃんばっかりで、私たちの居場所がなくなっちゃう」と話してたアニソン系シンガーがいました(^_^;)。
それにライブイベントでボカロ曲を無理やり歌わせられたり、とか。ボカロは超高音の曲でも息継ぎなしで歌えてしまいますが、それを人間にそのまま歌わせるのはダメですね。
あと、アイドル系コンペなどに使われるデモ曲の、仮歌シンガーさんの仕事が激減してるそうです。
全体の予算が減ってるから、作曲家も余計なコストをかけたくないって気持ちはよくわかりますが、なんか哀しいですね…。
ボーカロイドは面白いし、とても便利だけれど、やっぱり飛び道具というか「こういうのも時々聞くのは楽しいよね」くらいにしたいですね。やっぱり人間の歌のほうが素晴らしいし感動する!と信じていたい。
初音ミクCDを明後日売り出すプロデューサーが言うセリフではないかもしれませんが(笑)。