音楽とは全然関係ないのですが、昨日のオーストラリア戦はストレスが残る試合でしたね~。もちろんあの酷い審判のせいで…。
相手の監督まで「PKは誤審」と認めちゃうくらいのレベルだし、ラストの本田選手のフリーキック直前に「終了~」というのはもっとビックリ!
あんなの見たことありません。蹴ってからワンプレーして相手ボールになった瞬間に終了!が普通ですから。

選手の努力を無にしかねないような素人審判のほうこそ退場して欲しいですね。
日本が2連勝した後だったから余裕だけど、もしも昨日がW杯出場をかけた最終試合で、引き分けになったせいでブラジルに行けない、みたいなことになったら「ドーハの悲劇」以上の悲劇だと思います。

かつて世界最優秀審判を獲りまくったコリーナ氏(スキンヘッドの名物審判)みたいに、選手もファンも皆がリスペクトできる人がいいですね。2002年のW杯決勝は僕も見に行きましたが、コリーナ主審のおかげで引き締まった、とても良い試合でした(^_^)。



では本題に戻って…
前々回書いたスタイリスティックス「愛がすべて」の話の続きです。




元々大好きな曲だったし、当時所属していたビクターが日本の版権を持ってることはわかっていました。それで簡単なデモを作って、「こういう感じでサンプリングして向こうに許諾取れますか?」とスタッフに相談したら「これは良い!面白い!」ということになって頑張ってくれたわけです。

それで原盤使用料を数十万払う他に、作曲の印税を半分渡すってことで正式に許諾がもらえました。なのでCDやカラオケのクレジットでは僕の作詞作曲になってますが、JASRAC的には「愛がすべて」の作曲者と共作になってます。作曲の半分はわかるけど、なぜか関係ない作詞まで共作に…。向こうは日本みたいに詞曲を分けてないので仕方ないですが(笑)。


サンプリングはイントロの美しいストリングス・ラインをメインで使い、ド頭のトランペットは間奏に持って来て「わかる人には楽しんでもらえる」ように仕上げました。
ただ、どんなに名曲であってもバックトラックのサンプリングに使うだけで、歌メロは新しく作るというのが僕のポリシーだったので、そこは一番頑張りました。
90年代のヒップホップでよくあった、原曲のイントロを4小節サンプリングしてすっとループし、スクラッチとラップを乗せて一丁上がり!…というのは嫌いだったので。

正直、サンプリングなど使わず、自由にゼロから新曲を作るほうがずっとラクなのですが、それではKey of Lifeとしてのアイデンティティーがない…と。
4つしかコードを使わずに、どうやって起承転結のある5分間のドラマを作れるか?ということに命をかけて作ったのがこの「But My Love」です。

僕もキーボードでちょこっと出演してます。




ラップはデビュー曲「ASAYAKEの中で」と同じGAKU-MC。すでにイーストエンド+ユリとして紅白出場も果たし、某有名女子アナとのデートをフライデーされるような人気者でしたが、以前と全く変わらない感じで嬉しかったことを覚えてます。
ラップの詞も素晴らしく、当時GAKUちゃんがハマっていた「相田みつを」さんっぽいフレーズも入り、レコーディングの時から感動してました(「人間だから矛盾があって…」とか)。

フィーチャリング・ボーカルは前作シングル「pain」の時に某専門学校でオーディションして選ばせてもらった白木由美さん。
綺麗で切ない歌声が良かったと思います。

この時にGAKUちゃんに紹介してもらった元ソニーのエンジニア、松本靖雄さんが天才的な人で、
デモのショボかったサウンドをかなりカッコ良くしてくれました。それまでほとんど自分でミックスをやってたのでこの衝撃はすごかった…。
ベース音源なんて元はKORG M1のプリセットなのに、アナログテープとPULTEQのビンテージEQなどを駆使したらブリブリのランニング・ベースに変身!
AKAI S3000でサンプリングした音も豪華になりました。

それ以降、ミックスは松本さんしかいない!とアルバムも含めてしばらくお願いしてましたが、超一流の方はギャラも一流だったので、メジャー落ちしてからは起用できなくなってしまいました。こればかりは仕方ないです…(^_^;)(^_^;)。


「But My Love」は宣伝予算もかなり出たようですが、制作と宣伝の意志がイマイチ噛み合わず、売り上げ的には惨敗してしまいました…。もちろん当時はアーティストの立場なので具体的な金額はわからず、後から当時のマネージャーさん(今はAIちゃんの社長)が教えてくれたのですが。
クレーンまで使った大掛かりなPVや、特別仕様の凝ったジャケットデザイン(信藤三雄さんという有名なアートディレクター)で2~300万円もかかったそうです。

でも、社内全体の宣伝会議に出たら、「ラップなんかブームは終わったから女性ボーカルだけのほうがいい」とか、「フィーチャリングやサンプリングの意味がわかりづらい」と不評で、「このヒトたち、クラブムーブメントを知らないのかな?」とガッカリしました。
m-floとかがデビューする前の時代だから今考えると仕方ないし、直属のディレクターやプロモーターさんは理解してくれたのですが…。

一応タイアップはついたものの、日曜昼のバラエティーなんて音楽ファンは誰も見ません。
それでも出版の権利をテレビ曲系出版社に持っていかれたため、肝心のFMプロモーションが弱くなってしまったらしいです。FMで洋楽を聞いてる音楽ファンにこそ聞いて欲しかったのに…。

(※普通のミュージシャン・ブログならこんな内幕やお金の話はタブーですが、10年以上前の時効みたいな話だし、ギャラの話は同業者や後輩には「聞きたいけど聞けない」話だとわかってるのであえて参考に、書いてみました。
決してビクターの当時のスタッフの悪口ではありません。みんなが一生懸命に頑張ってもダメな時はいくらでもありますから)


自分では1か月自宅スタジオにこもって作業し、「これ以上のものはできない最高傑作」だと思った曲が左ページ(オリコン50位)にも入らなかったのでショックでした(笑)。
でも「一喜一憂しないで次の仕事を頑張る」ことが大事だ!とこの経験から学びました。


実際、「捨てる神あれば拾う神」というわけではないですが、Key of Lifeで出した2年後くらいに、有名な芸能事務所に紹介されました。たしかユーロビート曲がメインでしたが、ついでにこの曲も聞いてもらったら、T社長(安室ちゃんなど育てた業界では超有名な方)に「これウチのアーティストでカバーさせるから」と一発で気に入って頂けました。

それがMAXさんによるカバーです。ラップはISSA(DA PUMP)さん。




ジャズ・ヒップホップ寄りの、とてもオシャレなカバーです。
ただ「コレ最高!」とは言いにくい…。YouTubeのコメントで誰か書いてましたが、やっぱり原曲のほうが良い出来なんじゃないかなと思います(^_^;)(^_^;)。

最初に芸能事務所で「アレンジは違う方にお願いしていいですね?」と言われた時に「僕がやります!」と言えば良かったのですが、Key of Lifeの時にエネルギーを使い果たしていたので「お願いします」と言ってしまった(笑)。

いや、アレンジそのものは良いのですが、MAXさんとの相性がイマイチな気がして。やっぱり素直にダンスビート、4つ打ちでガツンといって欲しかったなあ、と。

アレンジして頂いた河辺健宏さんは元SUGAR SOULのキーボードだし、アニソンで活躍中の作家集団Elements Gardenの生みの親(上松範康君の師匠)。才能あふれるミュージシャンで、僕も別件のアニソン仕事で面識あるので、同業者批判と取られてしまうと困るのですが…(^_^;)。


それと最初はシングルの予定で、ISSAさんまで引っ張ってきたのに、元の出版社が権利を譲らずタイアップが付かない、みたいな(大人の)事情でボツになったそうです。
プロモーション用のアナログレコードも割と好評だったのにちょっと残念でした。アルバムのリード曲ということで多少の宣伝はあったみたいですが、

EMOTIONAL HISTORY/MAX

¥3,059
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ところが、半年後に届いた印税はKey of Lifeのシングルの10倍以上…。
嬉しいけど嬉しくない、みたいな複雑な気持ちでした。
シングル曲とアルバム曲はメディア露出や二次使用料が全然違うのですが、それだけセールス枚数が違ったということです。
「どうしてMAXばかりそんなに売れるんだ~!?」と叫んだことは内緒です(笑)。
ただ山下達郎さんがかつて言ったように、「音楽の価値と売り上げは無関係」ですね。じゃなかったら、アイドルやK-POPが日本で最高の音楽ということになってしまう…。


…ダラダラ長文を書いてしまいましたが、ニコニコ動画の初音ミクなどで僕のブログを知ってくれた中高生にはワケのわからない話ばかりでゴメンなさい!
今回は大人の方や、同業のミュージシャン、スタッフを想定して書いてるので(笑)。


こんな感じで、このブログでは従来タブーとされてきたことも書いていこうと思ってます。
常識をどんどん崩していかないとツマラナイし、シーンも活性化しないし。
人格そのものの攻撃は絶対ダメだけど、愛情やリスペクトを持ちながらの批判なら許されると思います。

日本だとヒップホップでも「みんな仲間だ」とか言ってるミュージシャンが多いけど、「仲間を大切に」とか「キズナ」とか「出会った奇跡」とか、当たり前のフレーズを安売りするのはやめませんか?(笑)
普段は言わずに、ためておいて、ここぞという時にポロッと「ありがとう」と言うならグッと来るけどね。

友人ミュージシャンのライブやレコーディングでも、僕は「良かったよ~」と安易に言わずに、「ここは良かったけど、ここは良くないと思うから直してみたら?」と言うようにしています。
そのほうが相手のためになるし、ホントの愛情だと思うので。

ではまた来週くらいに書きます。今度は昔話じゃない予定です。

またブログのインターバルが大きく空いてしまいました…。一番忙しい時期はやっと終わったので、これからはマメに更新していきます(^_^;)。

私生活は相変わらずボロボロですが仕事はそこそこ順調になってきた今日この頃。新しい出会いや旧交を温めたりもしてます。
でも作曲やレコーディングの仕事は発売が数ヶ月先だったりすると情報が書けない…。ライブができるミュージシャンなら「いつ、どこでライブやるから来てね!」と告知できるからうらやましいなあ(^_^;)。


そういえば、AKBサンのシングルがダブルミリオンに認定された、とネット・ニュースで先ほど見ました。僕は全然関係ないのですが、すごい数字ですね。1万枚売るのも大変な時代なのに…。
選挙の投票券付きCD(逆かな?)のビジネスの是非については何も語れません。僕の先輩や知人もスタッフで関わってるし、CDショップやレコード会社が潤ってくれれば他のアーティストの宣伝費も多少は増えるでしょうし。

ただ、音楽そのものにとっては大変な時代になってしまったな、と改めて感じます。1700万枚もアルバムが売れたアデルなどとは違って、純粋に音楽作品として売れたわけではないので。
グループ内の人気投票が国民的関心事(?)になり、数十億円を越えるビジネスになるというシステムは外国人には理解しがたいでしょうね(^_^;)。
これから日本はどうなってゆくのだろう…?
アイドルやアニメやK-POPもいいけど、いろんな音楽を並行して楽しめるような、多様性のある音楽文化が復活することを心から願っています。




話は変わりますが、友人ミュージシャンたちのライブが2本続けてあったので久しぶりに見に行きました。
(※これ、実は先週土曜日の話で、途中までブログ書いてたのですが、その後で激多忙になってしまい、やっと今日続きを書けました…。)


まず、原宿アストロホールで『4人でSUPER TEUCHI MIX』。アニメ『ふたりはプリキュア Splash☆Star』 の女性声優さん&アニソンシンガーさん4人が自主的にやってるライブです。
今軽く「自主的に」と書いたけど、実はアニメ業界ではすごく希有なこと。それぞれ別の事務所に所属してるにも関わらず、自分たちでライブを企画&ブッキングし、グッズも制作し、バックミュージシャンへのギャラや打ち上げ会場の手配まで、フロントの4人だけでやってます(ほとんど五條真由美さんと榎本温子さんの二人が中心で…)。こんなライブ、他では聞いたことがありません。

そのおかげで、企業主催のイベントとは全然違った、手作りで温かい雰囲気が生まれ、毎回楽しいライブになります。
しかも同期モノ一切なしのオール生音ライブ! これも最近では貴重ですね。
ヒップホップやR&B系ではカラオケがほとんどだし、アニソンでも数千人規模の大イベント以外は生バンドは経費削減のために使われません(アーティストが多いイベントだとPAやリハの準備が大変だから無理という理由も)。

でも、やっぱり生だと迫力も違うし、いろんなハプニングも含めてライブ感が全然違いますね! バンドもすごく上手かったし…。
楽曲もプリキュアのアニメテーマ曲以外はメンバーによるオリジナルがほとんど。ウチのレーベルから出ているCDの曲もたくさん歌ってくれました。

Friend×Friend/樹元オリエ,榎本温子,五條真由美,うちやえゆか

¥1,500
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僕はこれまでメジャー、インディーズ含めて数十枚のアルバムをプロデュースしているのですが、自作曲が1曲も入ってないのはコレだけです。
プロデュースなどと偉そうにいっても、ほとんどは作曲&アレンジの延長上にあり、その先の宣伝や営業まではなかなか手が回らないのですが、このアルバムは逆にレコーディングと全体のプロデュースだけ…。

最初の企画段階では当然1~2曲書こうと思っていたのですが、4人のメンバーさんが持って来た楽曲が全部良いので僕の出番がなくなってしまいました(^_^;)。
特に、やえサン(うちやえゆかサン)の曲は素晴らしく、普段の天然ボケ全開のキャラとは真逆のクレバーな好曲ばかりでビックリ。

今回のライブでも五條さんと息の合ったデュエットを聞かせてくれました。本職がシンガーの二人なので当然ながらメチャクチャ上手い。
榎本さんとオリエちゃんの声優チーム二人も可愛いオーラを振りまいて、とても良いライブだったと思います。

ちなみに初音ミクCDでスタッフに加わったI君を誘って一緒に昼の部を見たのですが、彼はプリキュアが大好きで、テウチ・イベントも毎回見てるくらいの大ファン(当日知ったのですが…)。
夜の部にはゲスト・スタッフとして入らず、ちゃんとチケットを買ってました。
榎本さんに伝えたら「教えてくれてたら招待しましたのに~」と言って頂けましたが、やっぱり自分のお金で入場しないとファンと言えませんよね!
I君はしっかり「ファン」でした(^_^)。

ライブでは歌わなかったのに、榎本温子さんの別名儀BABY ALICEのCDも物販でかなり売れてました。
購入して頂けた方、ありがとうございます(こちらは僕が全10曲を作っています)。


Let me know!/BABY ALICE

¥2,200
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それから夜の部を見るために原宿に残ったI君と別れ、一人で渋谷に向かいました。ゆっくり明治通りをテクテク歩くのは久しぶり。
途中でタワーレコードに寄り、お客さんが思ったよりも多かったので何となくホッとしながら、道玄坂のクラブ「WOMB」へ。おなじみの人気イベント、元2BACKKAのHAMMERがオーガノイズするUNITYです。
作曲仕事の締め切りが半日伸びたので、BiG BENのリリース・パーティーを見ることができました(^_^)。

HAMMERや社長の前田さんに挨拶し、George-K、TSUYOSHI、大神:OHGAなど毎度おなじみのアーティストのステージを堪能しました。みんな持ち味全開で素晴らしい! やっぱりUNITYはすごいなあ…と思ったところで、今回の主役・BiG BENの登場。
ウチのスタジオでアルバム2枚作ったので、嫌というほど彼の歌を聞いているのですが、今回のライブはかなり感動的でした。

マッキーの名曲「僕が一番欲しかったもの」のカバーも良かったし、アコースティックでセルフカバーした「誓い2012」なども。
ピッチやリズム感が抜群なのは前々からですが、年齢や経験を重ねて歌ごころに磨きがかかって来た感じです(^_^)。

CD発売当日に100枚も手売りできたのはすごい。最近の事情を考えるとありがたいことですね。
僕もライブ終わってから1枚協力してサインをもらいました(^_^;)。

$坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

ニューマキシシングル 「今、僕ができること。」 はライブ会場以外に、GHPショップでも買えます。
GHPさんは元々HAMMERたちが中心になって作ったプロダクションですが、いつのまにかアーティストがたくさん増えて充実してますね。

BENの「誓い」のオリジナルバージョンが入ったアルバムはこちら。

Treasure/BiG BEN

¥1,500
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ファーストではほとんど僕の楽曲だったのですが、このセカンド・アルバムでは「One for all , All for one」、「運命の人」など、BEN本人が作詞作曲した曲のほうが良い出来です(^_^;)。
「誓い」の大サビだけ僕のメロディーですが…。


この日は昼から9時間以上立ちっぱなしだったのに加え、締め切り時間も迫っていたので最後までいられませんでした(>_<)。
フランス人にも認められたHAMMER(ViRGO)パフォーマンス、見たかったのですが残念…。


久しぶりのブログで近況報告と言いながらCDの宣伝が多くなってしまってすみませんでした(^_^;)。

「ノージャンル・ミュージック」というブログ・タイトルにもあるように、僕はどんな音楽でも曲さえ良ければ聞く!という雑食タイプだし、ひとつばかりに固執して他のジャンルを聞かないのはもったいないと思っています。

作る音楽も、最近は日替わりランチのようにバラバラです。
R&B、Hip-Hop、ロック、ジャズ、クラシック、ボサノバ、ムード歌謡w、そしてボーカロイドと…こんなに幅広くやってる音楽家は間違いなく少数派でしょうね(笑)。


でも、やっぱりサウンドの好みというのはあって、自分で買うCDの7~8割は洋楽R&B系で、ダントツ多いです。ブラック・ミュージック(白人も含む)というのは一度ハマると抜け出せないくらい魅力的で、60年代から現在に至るまでの歴史がわかってくると、ますます面白くなります。

簡単にいうと歴史がつながってる感じ。互いに影響しあいながら、時代ごとのテクノロジーを吸収して進化していく過程は、知れば知るほど面白い!
ヒップホップから始まったサンプリングのブームなどは、まさに温故知新そのものですね。


…という感じで、久々にR&B曲を作る仕事があったので、CDラックからいろいろ選んで2~3時間浴びるように聞いていました。YouTubeでも別にいいんだけど、やっぱり音が良いCDで聞いたほうがガツンと来るし、制作の気持ちも高まりますね。

そこで、久々に聞いて、改めて魅力を再確認したのがスタイリスティックス。


¥2,000
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名曲ばかりだけど、やっぱりコレ。「愛がすべて」ですね。
ビジーフォーさんの物真似とかギャッツビーのCMなどで、若い人もたぶん知ってると思います。

1975年なのでPVもダサダサ(^_^;)。たぶんレコード会社の屋上で一発撮りしたものでしょう。
マイケル・ジャクソンがソロでブレイクする1979年までは、黒人ミュージシャンのPVはテレビでオンエアされる機会がほとんどなかったので、仕方ないですね。
PVはダサいけど、楽曲と歌の素晴らしさは最近のR&Bと比較になりません。




トランペットとハープによるインパクトあるイントロ。それに続く美しいストリングス。R&B、というよりポピュラーミュージック全体の歴史に残る、素晴らしいイントロだと思います。
はるか昔の高校1年の頃、連れて行かれたディスコでこのイントロがかかって、みんなが一斉にフロアに飛び出して踊り始めた、みたいな記憶があります(^_^;)。
ダンス・クラシック(ダンクラ)という言葉はなかったけどディスコの定番曲でした…。

そしてイントロに続く歌ですが、実は大したことありません(…なんて僕なんかが言っていいのかどうかわからないけど)。マイナー感が漂う暗くて地味なメロディーです。
Bメロはさらに暗い。R&Bやファンク系ではあまり使われない、マイナーコードのドミナント(AmでいうとEのコード)によって、Aメロ以上に暗く印象です。
つまり、AメロはBメロは70年代フォークや演歌みたいなコード進行、といえますね。

ところが、それを補って余りあるのが、サビの素晴らしさ!
このメロディーとこのコード、そしてコーラスの美しさといったら…もう確実に昇天しますね(笑)。
サビ頭の「アーーーーィ、キャントゥギーブユー、エーニスィーング」…マイナーセブンスならではの、美しく切ないハーモニー。何度も聞いてもヤラれます。

超有名アレンジャーのヴァン・マッコイ(ハッスルでも有名)もこのサビメロが気に入ってイントロに流用したのは間違いありません。
サビ1小節前から急にメジャーに転調しつつ、ストリングスの駆け上がりで高揚感を持たせているのもポイントですね。

逆に考えたら、このサビで一気に盛り上げるために、わざと前半を暗くしたのかも。
作曲家的に言うと、イントロ100点、Aメロ50点、Bメロ40点、サビ120点…みたいな感じですが、全パートが70~80点くらいの曲よりも、サビがガツンと抜けているほうが印象に残りやすく、ヒットしやすいとも言えます。

ZARDのヒット曲をほとんど作った織田哲郎さんが「サビを盛り上げるために、Bメロはわざと難しく、覚えにくくする」みたいなことを仰ってましたが、「愛がすべて」はまさに「サビがすべて」みたいな名曲だと思います。

ちなみにこの曲、日本とイギリスでは1位になって大ヒットしたわけですが、アメリカでは51位と惨敗でした。
いつだったか、アメリカ人ミュージシャンとスタイリスティックスの話をしたら「愛がすべて」は知らなかった(笑)。
向こうでは、
ダイアナ・ロス&マーヴィン・ゲイがカバーした「ユー・アー・エヴリシング」、
プリンスがカバーした「ゴーリー・ワウ」、
ベイビーフェイスがカバーした「誓い」
…など、ソウル・バラードのグループという認識らしいです。
カバーしたメンツがスゴすぎるけど…。

Diana Ross and Marvin Gaye/Ross/Gaye

¥841
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実は歌詞があまりにも貧乏くさいので、それがアメリカ人にはウケなかった原因だと思います。

日本での題名は「愛がすべて」と美しいイメージですが、原題は違います。
「Can't Give You Anything(But My Love)」=君に何もあげられない(僕の愛情以外は)

「僕にお金があったら君に女王様みたいな服を買ってあげられるのに。そしてリムジンに乗ったら最高だろうね。でも僕は平凡な男で、ポケットの中身はカラッポ。
僕は君に何もあげられない。でも僕の愛情だけはあげられるよ」

…という内容で、普通の日本女性だったら「そんな貧乏な男、嫌だ」と引かれそう(^_^;)。
「君に愛情以外はあげられない」→「愛がすべて」と無理矢理こじつけた、レコード会社(日本ではビクター)宣伝マンの勝利ですね(笑)。

そして、この超名曲をサンプリングさせてもらったのが、僕のユニットKey of Lifeの「But My Love」という曲です。同じビクターだったので許諾申請はスムーズにいったのですが裏話もいろいろ…。
でも長文になってしまったので今度書きます。
さすがに仕事に戻らないと…ヤバい(^_^;)!


前回の記事に対して、とても感動的なコメントを頂きました。
このブログを見に来てる同業のミュージシャンやシンガー、スタッフの人たちにもぜひ読んでもらいたい!と思って(無断ですが)コピペしました。

毎月のお小遣いが3000円の立場としては、タダで高音質フルサイズの曲が、簡単にDLできるのは本当に魅力的ですし、みんながやってることなんだから私もタダでDLしてみようか…と何度も思ったことがあります。
しかし、自分は新しく買ったCDを棚に並べて、少しずつ宝物のような大好きな音楽を増やしていく感覚が好きなので、いつもCDで買います。
お金を払うと、音楽が自分のモノになる気がするんです。

違法DLに慣れたらお金払って曲買うなんて馬鹿みたい…と思うようになるかもしれませんが、大好きな音楽には、素敵な時間を提供してくれたお礼としてお金を払いたいです。
コンサートのあと、素晴らしい演奏をした演奏家に拍手をするのが当たり前であるように、素晴らしい曲を提供したミュージシャンや音楽業界にお金を払うのは当たり前なんじゃないでしょうか。


…初めて赤文字使った(^_^;)。
Bmさん、お小遣いが3000円ということは中学生くらいでしょうか…?
すごくしっかりした考え方、文章で、自分が中学生の頃のことを考えると驚いてしまいます。
どうもありがとう!
あなたのような方が増えてくれると、良い音楽も映像も、もっとたくさん生まれてくるでしょう(^_^)。

エンターテインメントの仕事をしている人間は、「こういう若い人たちがいる」ということをしっかり肝に命じて、良い作品を生み出すためにベストを尽くさなければダメです。
少ないお小遣いの中からお金を出してもらうのだから。
ちなみに、僕のアニソン系楽曲やボカロ系で時々ギターを弾いてくれるRYO★T君も「気に入ったら必ずCDを買う」派ですが、21才の彼の周りでは変人扱いされてしまうそうです(^_^;)。


うーん。
僕が今中学生だったら、たぶん友達同士でファイル交換したり「コレいいじゃん!」とコピーしまくってると思います(^_^;)。
実際、昔はレコードやCDを借りまくってたし…。
でも、ホントに好きになった曲や、お気に入りのアーティストの作品だったら、応援したくなるので買うでしょうね。その人たちが活動を続けることができるように。

逆に言えば、そういう風に思ってもらえる音楽を作らないとダメですね!
僕みたいなノージャンルで雑多な音楽を作っている人間がこういうことを言っても説得力に欠けてしまいますが、少なくとも「やっつけ仕事」をしたことはない、と断言できます。


それと、CD売り上げ激減の一員として、ミュージシャン自身がCDをあまり買わなくなったということもあると思います。
90年代は1か月で20~30枚のCDを買ったりしてました。タワレコの試聴機コーナーで3時間粘って新譜をチェック、なんてこともザラでした。1曲でも気に入ったらアルバムを買うしかなかった…。
今だったら、iTunesで90秒も試聴してバラで買うことができますが。

制作会議とかで「今度は○○みたいな感じでいきたいんだよね~」という話が出れば、自分がほとんど知らないアーティストでも「ああ、アレね~、いいよね~!」とか言って、帰りにタワレコに速攻で行ってまとめて買ったり、とかね(笑)。

僕だけでなく、周りもみんな膨大に買ってました。
5千枚~1万枚のレコード持ってるDJなんてゴロゴロいたし、Key of LifeのメンバーだったDJ MOCHIDAなんか、レコード置き場のためだけに自宅以外に部屋を借りたりして…。
僕のアレンジ師匠の清水信之さんや、「踊る大捜査線」の松本晃彦さんとかも、CDショップの新譜コーナーで店員を呼んで、「ココからココまで全部!」と50枚くらい、まとめ買いするとか言ってました。
さすがに売れっ子アレンジャーは違うなあ…!と感心した記憶が…(^_^;)。

制作費が潤沢にあってギャラも多かったからこそ、そういうことができたわけですが、時代とともに、だんだん変わってきました。
某作家事務所に業務委託してた時は「今度のコンペはこういう感じでお願いします」とmp3ファイルが送られてくるようになり、そのうち、mp3さえもなくなって、メールに参考曲のYouTubeアドレスが書いてあるだけ、とか…。
ちなみに、僕はこの「参考曲」システムというのが大嫌いで、そのせいでコンペをやらなくなってしまったのですが、それは本題と外れるのでいつか書きます(笑)。

そういうわけで、昔は1曲だけのためにCDを買ったり、友達が出したCDや小説などは必ず買ってましたが、最近ではiTunesかAmazon MP3がほとんど。あとはYouTubeですね。
友達のCDでも「いいね!」と思わなければ買わなくなってしまいました。ゴメン…。
HAMMER君とか、あれだけアーティスト仲間が多いのに、全部CDを買ってるというからホントに偉い!と思います。


ミュージシャンやDJが買わなくなったCD枚数って統計では全然出ていませんが、けっこう影響あるんじゃないかなあ…。
DJたちも最近はbeatportとかでWAVを買ったりしてますね。彼らはmp3やAACの圧縮音源は基本的に買いません(フロアで流すと低音がカスカスで踊れないので…)。

あれ?やっぱりなんか本題からズレてしまいました(^_^;)。
CDでもダウンロードでも、「ホントに気に入った作品」ならぜひ買って下さいね。
僕らも頑張りますので…。


最近はスタジオで寝泊まりしてしまう日が多く、テレビも新聞もないのでニュースに疎くなってしまっています。
休憩時間になるべくネット・ニュースを読むようにしてますが、今朝のトップニュースに「無許可ダウンロードに罰則」という記事がありました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120414-00000375-yom-pol

法案成立すれば、音楽や映像をコンテンツ権利者に無断でダウンロードした違反者は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」とか。

僕は学生時代に著作権法を専攻していたので多少の知識はありますが、ちょっとこの罰金には驚きました。窃盗罪の罰金でも50万円以下なのに…。
つまり罰金だけ見ると、タワレコとかからCDを万引きするより、違法ダウンロードしたほうが重い罪になってしまいます。

一応僕もコンテンツ供給側の人間なので、レコード協会や音事協のお偉方が政治家に働きかけて議員立法した法案にあからさまな反対はできません。
ただ、メリットよりも社会全体にとってのデメリットが多くなる懸念はあります。

一番怖いのは、こういうことがエスカレートすると、国家が個人の趣味志向を監視するような体制になりかねないということ。時の政権を持つ人たちにとって都合の悪い考えを持つ人間を「違反の疑いがある」ということで、「どこそこにアクセスした」とか調べられてしまうような社会は怖いです。
えん罪も簡単に作れてしまいそうだし。

今のところ、「親告罪」という形なので、コンテンツの権利を持つ被害者、企業が警察に通報しなければ犯罪は成立しません。
それなら、レコード会社がダミーで自社コンテンツをダウンロードさせるサイトを作って、違反者のIPアドレスを通報しまくる「おとり捜査」的なことは許されるのか? …という問題もありますね。


もちろん、刑事罰規定を導入することで違法ダウンロードの抑止力になると期待しているのでしょうけど、実際問題どうなのかな…。
今回の法案の根拠になった「違法ダウンロードで被害総額7000億円」という数字だけ見ると、そんなにひどいのか!?と思ってしまいますが、これはトリックですね。

「タダだからダウンロードした」という人も多いだろうし、法案が成立したところで、コンテンツの売り上げが劇的に増えるわけはありません。
http://yamadashoji.blog84.fc2.com/blog-entry-533.html
(この方のブログがとてもわかりやすいです)


なんか刑事罰法案よりも、もっと根本的な問題がたくさんあると思います。
まず、業界全体が90年代のようなCDバブルの記憶は捨て去ること。
売上げ激減の数字を見て頭ではわかっていても、自分も含めてCDビジネスで良い思いをした記憶はなかなか消せません。

「音楽なんてタダで落とせばいい」のが当たり前になってしまった人たちにお金を出してもらうなら、もっともっと努力して魅力のあるコンテンツを作らないと。
それでスタッフも少数精鋭にして、アイディアも出さずにダラダラ働いて人はさっさと違う業界に行っていただきましょう。厳しいようだけど、現実を受け入れて頑張らないとダメですね。

そして、ダウンロードではなくアップロードのほうを厳罰化するほうが先決です。彼らはボランティアでやってるわけではなく、アフィリエイトやダウンロードサイトから利益を得ている場合がほとんどらしいので、「これは割りに合わない」というくらいの罰金にすればかなり減ると思います。
違法アップロードがなくなれば自動的にダウンロードもなくなるわけで…。


ダウンロードするほうには罪の意識がほとんどありません。
人のものを盗った、という感覚がないので。
もともと日本人はとても倫理観に優れた民族だと思います。
田舎の街道沿いによくある無人ショップが良い例で、「ミカン200円」とか書いてあって、農家の人が作った野菜や果物の横にお金を入れる箱が置いてあったりしますが、ほとんどの人はちゃんとお金を入れていくそうです。
それにアメリカ人が日本に来て必ず驚くのが自動販売機の多さ。向こうだったら、販売機を壊して商品やお金を持って泥棒が多発するので、商売にはならない、とか。

それだけ倫理観の高い日本人でも違法ダウンロードが多いのは、「別に自分が持っていっても誰も困らない」と思っているから、という面もあると思います。
ミカンを黙って持っていけば、必ず減ってしまうから後ろめたいけど、デジタルコンテンツは減ることはありません。CDショップの万引きは絶対にしない人でも、ダウンロードはバレなければやってしまう人も大勢いますよね。

かなり前からJASRACは「みんなが勝手にダウンロードすると、クリエイターにお金が入らず、質の良い作品が減って結局みんなが損をする」みたいな論調で啓蒙活動をしてますし、もちろんそれは正しいのですが、イマイチ説得力と実効力に欠けます。
やるなら小学生の道徳の時間に入れるくらいやって欲しいけど、今さら無理ですね。


それと、違法ダウンロードがなくなっても、YouTubeやニコ動を見れば、いくらでも音楽が聞けるわけだから、わざわざお金を出してまで買おうと思いません。
僕自身、大好きなアーティストか、これは高音質で聞きたいと思う曲以外は、CDでもダウンロードでも買いません。YouTubeを見れば普通に満足してしまうので(^_^;)。
それにちょっと知識があれば、YouTubeやニコ動から音源をダウンロードすることも簡単です(僕も違法ダウンローダーになってしまう時もあります)。

リスナーとしてはいいけど、コンテンツ供給側としては今の状況は確かに困りますね。
僕の意見としては、正規版を買ってくれた人がちゃんと満足感を得てもらうことが大切だと思います。
今のところはiTunesなどから買っても、YouTubeから落としても音質的にはほとんど変わりません。

レコード協会のお偉方に考えて欲しいのは、監視社会になる危険性を内包した法案より、YouTubeやニコ動の音質コントロールです。
実際、YouTubeにアップする時はレベルを低く設定しているメーカー(ユニバーサルやワーナーなど)もありますが、他社アーティストの音源がフルビットだと、地味に聞こえてしまいます。YouTubeを宣伝ツールだと考えると地味に聞こえるのは不利なので、他社では普通に音圧を上げてアップしてる場合が多いです。さすがにフルサイズでPVアップするケースは減ってきましたが。


マスタリングの音圧競争と同じで、他がやるからこっちも…と考えて結局自分たちの首を締めてしまうので、レコ協&音事協の力で、例えば「動画サイトのアップ時はマイナス6デシベルを越えないように」とか決めてしまえばどうでしょう?

普通にYouTubeで聞いたりダウンロードもできるけど、正規版で買ったらもっとカッコいい音で聞ける、ということが常識化されれば意識も多少は変わってくると思います。
(PC内のiTunesなどに並べたときに正規版のものは大きく、迫力ある音で聞こえる)


僕が中高生の頃、「レコードレンタル→カセットにダビング」や「CDレンタル→MDにダビング」をしょっちゅうやってましたが、1~10枚に1枚くらいはレンタルでは飽き足らず、結局CDを買うことになりました。
歌詞カードや(洋楽の)解説を読みたい、という気持ちもあったけど、一番はCD音質でガツンと聞きたい、とか気に入ったアーティストだから手元に持っておきたい!というのが大きな動機でした。

正規版を買った人が不公平感を持たないようなルールが作られればいいですね。
ウチのスタジオにPro Toolsを導入した当時、プラグイン(WavesのDiamondなど)だけで120万円以上買いました。
でも後日、それのクラック版がほとんど出回ってると知った時の虚しさといったら…(^_^;)。

いくらでもコピーできてしまうデジタル時代だからこそ、みんなでアイディアを出し合って、音楽文化、映像文化が廃れないようにしたいですね。
もちろんクリエイターは死ぬ思いで頑張って、ベストの作品を出す事が大前提ですけど。


…などと、久しぶりに固い話をダラダラ書いてしまいました(笑)。



おかげさまで忙しい毎日を過ごしています。
ブログ、また遅れがちですみません(作曲やレコーディングなどいろいろあっても発売日まで3か月以上あるとまだ書けなかったり…)。

ところで、4/1に「45分の恋人」というボーカロイド曲のPVがニコニコ動画で公開されました。SAKAMOTO-P feat.初音ミク、という名義でCDに収録されていた曲です。
すでに2万回以上の再生数ということで、多くの方に見てもらっています。



(※YouTubeはコチラ


「R-18」と銘打ってあるように、大人向けの内容です。
風俗嬢が主役なのですが、エロさより「切なさ」を表現したいと思って仲間たちと作りました。
(18才未満でもちゃんと理解できる人も多いので別に問題ないのですが、一応R-18で)

作曲は1日、アレンジ演奏は2日間という通常ペースでしたが、初音ミクの音声編集(調教って呼びます)とミックスに5日もかかってしまいました(笑)。

最初は普通のミク声を使ってたのですが、どう調教しても自分が思い描く雰囲気にならず、世界観がブチ壊しになってしまいます。それで、それまで使ってなかった追加音声ライブラリ「初音ミク・アペンド」を使い、その中のsweetというウィスパー・ボイスを使ったらバッチリはまってくれました。

2年前に調教してニコニコ動画1位になった「LOL~Lots of lough」の時は機械的な歌声のほうが曲に合っていたのでラクだったのですが、「45分の恋人」は人間っぽくないとダメなのでけっこう限界まで頑張りました。

ただ、ウィスパーなのでそのままでは音量も小さく、コンプ、リミッター、EQ、ディエッサー、ディレイ、リバーブを何度も調整!
特にサ行の言葉(「シャワー」とか「背中」)はウィスパー系の歌に色気を出す大切な要素なので、ディエッサーの調整には時間がかかりました。このへんはプロ生活20年のワザがいろいろ生きてます。
逆に、今はプロもアマも関係ない時代なので、それくらい頑張らないとダメでしょうね(^_^;)。

アレンジのほうでもボーカルの邪魔になるサウンドは全部カットして、必要最小限の音数にしました。
ある種の懐かしさ出すために、ソフトシンセは極力使わず、ハードシンセでビンテージ系の音色を中心に作りました。ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」で使われたフルート(サンプラーの元祖・メロトロンによる演奏)の音や、ジャズ系オルガンの音など。

ただそのままだと「ただのレトロ」で終わってしまうので、リズム・アレンジはティンバランドやポロウ・ダ・ドンなどHIP HOP系プロデューサーがよく使う新しめのドラム音色を隠し味的に使ってたりします。
懐かしさと新しさが同居する音楽、というのが僕がKey of Lifeでデビューした頃から一貫して考えてるテーマなので…。


元々この曲は、僕がプロデュースした初めてのボーカロイド・アルバム、
Lots of Love feat.初音ミク/初音ミク

¥2,000
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…を制作してる時に、友人の作詞家・エンドケイプさんと1曲共作しようという話になり、どんな曲がいいかな?と考えていた時に、彼が4、5年前に発表した「イメクラの血液。」という小説のことが浮かびました。

$坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

池袋の風俗店に勤める女の子が日記風に綴った短編です。金原ひとみさんの芥川賞受賞作「蛇にピアス」に通じる、暗くて切ない世界観…。短編なのでストーリー展開は少ないのですが、あまりにリアリティーがあるので、「これホントに男が書いたの?」と驚いた記憶があります。

それで、せっかくエンドケイプさんとコラボするなら、今までの初音ミク曲になかったパターンにしようと、風俗嬢をテーマに選んだわけです。
最初にメロディーラインと「45分の恋人」というフレーズだけ作って渡したら、すごく良い歌詞が送られてきました。「歪んだ笑み=笑い方忘れたから」とか「2人の声 有線さえ掻き消して過ぎてゆくの 45分の空白」とかグッときます。

僕自身も時々作詞をするので、メロディーとの絡みにはかなりうるさいのですが、自分には絶対書けないフレーズが出てくるとすごく嬉しくなります(^_^)。
「割チケで愛を交わす」とか「喘ぐ」「白濁」とか、あまりに直裁的なフレーズはカットさせてもらいましたが…(^_^;)。

そういうフレーズも小説だったら全然問題ないのですが、歌だとちょっと…。
同様に、ヒロヨシ氏のイラストのほうも最初は18禁ゲームみたいな感じで、ミクが誘ってるみたいな表情だったので「もっと切ないテイストでお願いします」と書き直してもらいました。

$坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

曲とイラストが完成するまで紆余曲折ありましたが、天才動画師「三重の人」のPVによってアートっぽいイメージになり、報われた思いがします。PVの最初に出てくるベッドの3Dモデリングなど、ちょいちょいと作ってしまう早業はホントにすごいです。
センスとテクニックが両方ともトップレベルにある動画クリエイターはホントに希少なので、そのうちホントにハリウッドに持っていかれてしまうかもしれません。

でも、ニコニコ動画は辛辣なコメントが付く場合も多いので、「エロを売り物にした」とか「そこまでしてCD売りたいか?」みたいな批判が出る事は覚悟していましたが、ほとんどの人が好評価だったので安心しました。制作者の思いがちゃんと伝わってくれた~」と(^_^)。

ただ、念のために書いておくと、この曲は決してそういう職業に就いている女性を礼参しているわけではありません。
もし僕の知人や親戚だったら「お金以上に失うものが多いからやめたほうがいい」と言うかも。
(偉そうなこと言えるほど清廉潔白な人間ではないけれどw)
「職業に貴賤無し」という言葉のとおり肯定も否定もしませんが、いくら不景気といっても今の日本なら普通のバイトしても食べていくことはできるはずだし…。

ただ、何らかの事情で、どうしてもそういう仕事をせざるを得ない女の子もいるかもしれない。
身内が重い病気とか、借金を背負わされてしまったとか…。
「45分の恋人」の主人公のミクにはそういう事情があると思って、「バーチャル的な切なさ」を感じていただけたら…と思います。





セガさんから3DSゲームのスペシャル法人特典「LOLテレカ」が送られてきました。
ウサギをかぶったミクがとっても可愛いです(笑)。

$坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

でもテレカってここ10年くらい使ってないですね。電話ボックスも見ないし。
ノベルティ・グッズとして生き残っているのかな。
この曲「LOL」が初収録されたCDはこちらですね。何回目の宣伝かな?(^_^;)

Lots of Love feat.初音ミク/初音ミク

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さて、話は180度変わって前回のジョー山中さんの話の続きです。
百数十人のシンガーの人たちと仕事してきた中で、なぜ何度もブログに書くほどジョーさんは特別だったのか?
それは最初に認めてくれた一人だったからです。
どんな業界でも同じだと思いますが、クリエイターにとって、無名で駆け出しの頃に仕事を頂けた方には足を向けて眠れません。それほど最初の仕事を得るのは大変です。

逆の立場になって考えればわかりますが、実績がないクリエイターに仕事を発注するのはすごく勇気が必要。サラリーマン的なディレクターではまず無理でしょうね。もしも失敗すれば、実績のない新人を使った側の責任になってしまうので…。

僕は今でこそ、音楽業界に300人以上の知人・友人がいますが、大学三年くらいまではほとんどコネがありませんでした。CM音楽プロダクションに数人に知り合いがいる程度で、もらう仕事といえばCMやテレビ、ラジオ、ビデオのBGMばかり。

インストよりも歌ものが好きだったので、早くレコード会社やプロダクションの人と知り合いになりたかったのですが、なかなかチャンスが来ませんでした。営業やオーディションも全く行かなかったので仕方ないといえば仕方ないですが(笑)。
今だったらボーカロイド&ニコ動で簡単に作曲家デビューできてしまいますが、当時はそんなもの影も形もなかったし…。

そんな20代半ばの頃、最初にアレンジャーとして使ってくれたのがNSPの天野滋さん、そして作・編曲家として起用してくれたのが、すでにベテラン・シンガーだったジョー山中さんでした。
(二人とも若くして鬼籍に入られたのがすごく悲しいし残念です)

天野さんはアルバムがトータル250万枚も売れたフォークグループ「NSP」のボーカルでしたが、ジョーさんとテレビの歌番組で一緒になった時にあまりにも歌唱力が違うのですごく嫌だったそうです(^_^;)。
若い人は知らないと思いますが、それくらいジョーさんの歌声は凄かった…。
日本で最初に武道館ライブをやったり、カナダや中国で大ヒットしたり、ジャパニーズ・ロック&ソウルの先駆者でした(半分黒人だけど…)。

ジョーさんの歌声の凄さはこの動画を見てもらえるとちょっとだけわかります。



「人間の証明」などバラードはソウルフルでもっと素晴らしいのですが、この「SATORI」は欧米人が驚いたくらいロックの名曲なのでぜひ!(イントロ長いので忙しい人は1分半くらいからでも)

ちなみにこの曲は、ジョーさんがソロ・デビュー前にやっていたフラワー・トラベリン・バンド時代の曲で、カナダ&アメリカでチャートインしました。プロデュースは内田裕也さん&折田育造さんといういろんな意味でスゴいお二人です…(^_^;)。



僕のブログはアニメ・ファンの方も見てくれているので、他では読めない裏話も書きましょう。

こういうハードなロック系と、僕のアニメ仕事や初音ミク楽曲は一見、180度違いますね。
でも、ジョーさんもアニメ映画「あしたジョー2」でエンディングテーマを歌いつつ、声優もやっています。カーロス・リベラという敵の黒人ボクサー役でした。自分がジョーなのに、アニメの中では「(矢吹)ジョー、お前を必ず倒す」とか言ってて面白かったです。
他にも「エイトマン」のサントラも(こちらは僕もアレンジで参加)。

さらに、上の動画でジョーさんの横でギターを弾いてる丹波さんは、高橋洋子さんのエヴァンゲリオン主題歌「残酷…」や「魂のルフラン」のギタリスト(矢沢永吉さんのバンドでもずっと活躍されてました)。
ジョーさんを通じて知り合い、僕のプロデュース楽曲でも時々ギターをお願いしてます。ルックスはロンゲのチョイ悪オジサンという雰囲気wですが、センスとテクニックは抜群!

ブロッコリーさんのカードゲーム『アクエリアンエイジ』のテーマソングを僕が作ると決まった時、歌は高橋洋子さん、バックのギターは丹波さんというエヴァのお二人に依頼しました。
僕は特に「魂のルフラン」が好きで、大森俊之さん(ルフラン作曲)に負けないような曲を作ろう!と思ったわけです。
曲のタイトルや、サビ始まりの雰囲気もちょっと似てますけど…(^_^;)。



携帯の方はコチラで。

ただ似せてもオリジナリティーがないので、メロディーは音数多めで畳み掛けました。歌唱力がないと難しい曲です。
アレンジ的にはモロコのヒット曲「Swing It Back」(クラブ・ミュージックに詳しい人は知っているはず)のラテンハウス風味を加えています。男性コーラスは「Heart of Africa」というサンプリング音源です。カッコいいギターソロは3分すぎに出てきます。
でも歌手とギタリストが同じでも、セールスはエヴァの1000の1以下でしょう…(^_^;)(^_^;)。


高橋洋子さんは昔ユーミンのバックコーラスをしていたそうで、お酒の席でユーミンのモノマネをしてくれました(笑)。ちなみに当時のコーラスの同僚が「デ・ジ・キャラット」主題歌も歌ってた奥井雅美さん。高橋さんがアニソン業界に引っ張ったとか…。

今考えると、すごいメンバーがコーラスをやっていたんですね~。
そういえば竹内まりやさんもデビュー前はユーミンのコーラスやってた…ということは一番すごいのはユーミンさんかな(笑)。

僕が会った日本人女性シンガーの中でも一、ニを争う超・超実力派の高橋洋子さんですが、偶然ですが、ジョーさんの代表曲「人間の証明」をカバーしています。



これは大御所・佐藤準さんのアレンジですね。

ただ、さすがの高橋さんでも原曲には勝てていないようです。
あの歌は誰が歌っても越えられないでしょう。歌唱力の問題ではなく。
映画の役柄も歌詞の内容もジョーさんにピッタリ合いすぎていたので…。

「人間の証明」はいろんなバージョンが出てますが、やっぱり最初の映画版が一番でしょう。



サビの、高いBの音が出てくる所は何度聞いても泣けてきます。
兄弟7人で自分だけ肌の色が違ってたというジョーさん、天国ではMAMAと会えたのかな…。

あ、DATテープの発見の件は、さらに次回に…(^_^;)。







「3・11」一周年から、あっと言う間に数日過ぎてしまいました。

自分なりに考えることも多かったのですが、軽はずみなことは書けません。だいたい、当日の昼までその日が「3月11日」ということも忘れ、あわててテレビの黙祷に参加した自分のような偽善者、いや非国民には何も書く資格はないです。わずかな募金やCD売り上げの寄付をしただけで一度も被災地に行けなかったし…。

ただ、原発に関してはほとんど人災だと思うので、責任を取るべき人たちは真実を伝えて、きちんと責任を取って欲しいですね。僕ら庶民だって、人生で何かミスをした時は結局自分で責任を取る以外に方法はないので(僕も自分のミスのせいで、けっこう苦しんでいます…)。

だいたい世界で一番地震が多い日本みたいな国に原発を作ろうなんて最初に言い出した人たちはどう思っているのでしょう? 処理施設のことも考えず、経済効率で突っ走ったあげくに取り返しのつかない事態になったわけで…。
でも、そういうことにまるで無頓着だった僕たちにも責任はあるし、マスコミもそう。

僕は幸い東電関連のCM仕事をしたことはなかったけど、友人たちによれば「非常に高いギャラ」が出ていたそうです。テレビCMに限らず、ラジオ、イベント、雑誌などあらゆる媒体で他企業の5~10割増しの宣伝費が出ていたとか…。
事故当初、テレビがあれだけ東電の言い分を垂れ流しにしたのも納得できてしまうような話ですね。そして、スポンサーから降りたとたんに批判ができるようになってきた、と…(^_^;)。


…なんてことを考えていると、だんだん日本の嫌な部分も見えてきてしまいますが、氷室さんをはじめ有名ミュージシャンの寄付、義援金はすごいですね!(事故責任がある人たちや企業が責任を取っていないのに…)
20世紀と違ってCDが売れない時代にあんな大金…。ファンじゃなくてもファンになってしまいそうなくらい素晴らしいことです。
自分に置き換えると、ちょっとだけ無力感に襲われますが(^_^;)。

いや、置き換えちゃダメです。
僕が尊敬するボランティアの先生、アジア・チャイルド・サポートの池間哲郎氏は「毎日を一生懸命生きること。そして幸せの数パーセントを誰かに分けること」がボランティアだとおっしゃっていました。その言葉を胸に一生懸命頑張っていきたいと思ってます。

最も大切なボランティアは、自分自身が一生懸命に生きること (DVD付)/池間 哲郎

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(DVDの音楽を担当させて頂きました)



ひとりの日本人としては悲しみ、苦しみに暮れた一年でしたが、個人的にはここ10年で一番、新しい出会いが充実してました。10代から50代まで老若男女いろいろな方たちです。ミュージシャン&シンガーはもちろん、音楽以外のクリエイター、スタッフ、新人さん、そして上記の池間先生のような指針となる方まで。

震災のことはこの上なく不幸なことですが、素晴らしい出会いが多かったことは本当に嬉しく思います。もちろん、新しく出会った人だけでなく、今まで付き合いのあるすべての方が幸せになるよう、微力を尽くしたいと思っています。もちろん毎日そんなことを考えて生きてるわけではないですが、少なくとも今はそう考えています…(^_^;)。



個人的には去年の8月にジョー山中さんが亡くなられたのはとても悲しい出来事でした。最初に僕を作曲家として認めてくれた歌手の方だったし、それから20数年ファミリー的にお付き合いさせてもらっていたので…。

実は3月11日にスタジオの倉庫を整理していたら、20年前に僕が作詞作曲してジョーさんが歌ったマスターテープが出てきました。DATのテープです。
30才以上のミュージシャンや音楽業界人なら必ずと言ってよいほど知ってますが、一般の方は見たこともないテープでしょうね。

$坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

5~10年前からwavファイルの受け渡しが普通になったので、業務用レコーディング・スタジオでも滅多に使われなくなりました。
カセットの3/4のサイズですが、音はCDよりも良いです(デジタルの周波数的に)。

中でも写真のKAO(花王)KXシリーズがトップブランドでした。ソニーやビクターなど電気メーカーを差し置いて、花王がトップなんて不思議でしたが、石けん製造で培った界面技術がDATテープと相性が良かったとか…。
あ、このブログ読んで「懐かしい~」と思った方はコメントorメールして下さい。
一緒に古き良き時代を懐かしみましょう(笑)。


ウチのスタジオには今でもDATデッキが2台あるのですが、普段はデジタル変換くらいしか使っていません。テープも200本以上あるし、他の使ってない機材と一緒に処分してしまおう!と思って整理したら出てきたのが写真の1本。

しかも、ただのマスターではなく大発見!(もちろん超個人的に)がありました。
仕事に戻らなければならないので、この続きは次回に…!
今日3月9日は「ミクの日」ってことで、セガのゲームも含め、いろいろな所で初音ミク関連の宣伝がされてたみたいですね。
僕がプロデュースしたミクCDが発売されたのを記念して、昨日ウチのスタジオでリリースパーティーをやりました。音楽業界で通常リリースパーティーといえば、CD発売直後にやるプロモーション・ライブ(昔風に言えばレコ発ライブ)のことですが、昨日のは単に参加クリエイターが集まったピザ・パーティー、というか飲み会です。
KeNちゃんが来られなかったので作曲家は僕だけでしたが、クリエイター17人のうち、首都圏在住の6人が来てくれて、久々に楽しく飲めました。最近仕事漬けだったし…(^_^;)。

まず、「ゆきゆっき」ちゃん。今回のCDでは2曲作詞しましたが本来は実力派シンガーです。
ニコニコ動画の第5期で優勝し、ドリーム・ボーカリストの一人としてSMEからメジャーリリース!
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CDもいいですが、ニコ動にアップされている「創聖のアクエリオン」はさらに素晴らしい歌唱です(^_^)。

そして、ハリウッドからも注目されてるという噂のスーパー動画師「三重の人」さん。
まだ若いけどホントにすごい才能で、インディーズ、メジャー問わず、PVのオファーが殺到してます。
前回書いた小室哲哉さんのボカロ動画も三重サンが担当するそうです。さすが!
良い意味でプロ意識が高く、冷静で謙虚な制作姿勢はジャンルを越えてリスペクトできます。

作詞家&小説家、マルチクリエイターのエンドケイプさん。僕が言うのもなんですが、かなり変わった人です(笑)。でもすごく言葉に関しての才能がすごいし、ファッションセンスも。
僕と彼がコラボした「45分の恋人」というアルバム収録曲があるのですが、かなり評判が良いので三重サンに頼んで動画を作ることになりました。楽しみです。

作詞家&シンガーのMORICOさん。僕とは長年の制作パートナーで、作詞作曲のコンビとして350曲もリリースされてます(9割くらいがアニメ、ゲーム、声優さん系)。アニメ系ではMORICOではなく「森ユキ」と名乗ってますが、最近ボーダーがなくなってきて、よくわからなくなってます(^_^;)。
元々はKey of Lifeのフィーチャリング・シンガーとしてデビューし、KI☆LAというユニットでも可愛い歌声を披露してます。

そして敏腕女性プロデューサー&作詞家のMAKIさん。敏腕なのに私生活ではドジ(?)というギャップが面白いし、異性関係の話は一同唖然としてここでは書けません(笑)。
今回のCDでは1曲だけの提供ですが、今後はMAKIさんがオーガナイズするライブ出演など、いろいろコラボする予定です。


…という感じで、従来のクラブ、R&B系の人脈とは全く違いますが、今すごく勢いのある人たちと接するのは刺激になるし、若いクリエイターから学ぶことのほうが、自分が教えることより増えてきたな~と実感する今日この頃です(笑)。



ところで、ミクの日の前日に『初音ミク and Future Stars Project mirai』の3DSゲームが発売されましたね。
エンドケイプさんとKeNちゃんが共作した「LOL -lots of love」が収録されています。音楽プロデュースと編集&ミックスを僕がやったので、セガさんからゲームが送られてきました(^_^)。

坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

ジャケット、可愛いですね! 発売初日からかなり売れているようです。
でも僕は3DSはおろか、普通のDSも持ってない(笑)。自宅にWiiがありますが、ゲームをする時間がこの1年はほとんど作れませんでした…。
でもせっかくだし、これを機会に3DS買っちゃおうかな~? いや、ただでさえ3時間しか寝てないのに、いろんなゲームにハマってこれ以上寝ないとちょっとヤバイ(^_^;)。

そういえば、「三重の人」さんは2日間で2時間しか寝られないペースの時期もあると言ってました。
さすがに若い!(彼女はもっと若い!)
それにしても3DS、モノが売れないと言われるこの時代に500万台も売れたなんて…ちょっと信じられませんね(^_^;)。今までのゲーム機で最速記録だそうです。



話は変わりますが、セガさんといえば、子会社のWAVE MASTERさんから声優・近藤佳奈子さんのファースト・アルバムが発売されてます。

Album♪/近藤佳奈子

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この『Album♪』というアルバムの中の「Album♪」という曲を僕が作・編曲しました(ややこしいなあ…)。いわゆるタイトル・ナンバーというヤツですね。
作詞は森ユキさんで、卒業アルバムをテーマにした、かなり胸キュンな歌詞です(^_^)。
曲調はポップなハウスという感じかな。レコーディング&ミックスも僕です。

コチラでショートバージョンが聞けます。



近藤さんは最近では人気アーケードゲーム『BLAZBLUE』(ブレイブルー)のヒロイン役として有名ですが、デビューした頃はブロッコリーさんの声優ユニット「G.G.F」として活躍してました。
G.G.Fとは「Gamers Guardian Fairies」の略。9人の声優さんがゲーマーズさんの守護妖精として、自分の地元の店舗を担当する、というユニークなコンセプト。元々は当時の木谷社長(現在はブシロード社長です…)が「声優界のモーニング娘。を作りたい」と言って始まった9人のユニットでした。
CDを3、4枚出しましたが、僕と作詞家・森ユキのコンビで全曲制作させていただきました。

当時印象的だったのは、デビューシングルのレコーディングの時、全員泣いてしまったことです。
ヘッドフォンを付けてブースで歌うという経験がみんな初めてで、自分の順番を待っているだけでガクブル、歌い終わると開放感でワッと泣き出すという妙な空気が生まれてしまい、僕もスタッフも思わず苦笑いしてしまいました(^_^;)。

でも女性というのは男より数倍順応性が高い生き物らしく、2回目のレコーディングでは全くトラブルなく歌入れをこなし、3回目ではもうベテランみたいな余裕で歌ってました(笑)。横浜アリーナのイベントなどではファンとの対応も完璧だったし、短期間でなぜこんなに変われるんだろう?とビックリさせられた記憶があります。

G.G.F当時は新人や無名だったのが現在はほとんど一線で活躍してる声優さんばかり…。近藤さんの他、井口裕香さんや後藤沙緒里さん、阿澄佳奈さん、廣田詩夢さんなど、ブロッコリー・スタッフさんのスカウティング能力はホントにすごいですね!
そういえば『けいおん!』さわ子先生役の真田アサミちゃんや、年間No.1声優に輝いた沢城みゆきちゃんなどもブロッコリーさんが最初の仕事、つまり初レコーディングは僕の自宅にあったスタジオでした。防音設備がない環境で、よく何十曲もレコーディングしたなあ…と自分で感心します(^_^;)。


近藤佳奈子さんはG.G.F時代の曲が好きだったそうで、自分のソロCDを出すのなら、坂本&森コンビの新曲を歌いたい!とプロデューサーに頼んでくれたそうです。いや~作曲家冥利に尽きるなあ。
そのへんはプロデューサーのむらさきさんが面白い記事を書いてくれてます。僕のスタジオ写真もいつのまにか出てるので、興味あるという奇特な方は見て下さい。
http://ameblo.jp/noise-bandaisan/entry-11081123837.html

むらさきさんは、セガグループの社員プロデューサーでありながら担当アーティストのアレンジやベースまで弾いてしまうミュージシャン、という面白い方です。
僕と同世代だったので、レコーディングの時は古き良き時代(80年代など)の音楽談義で盛り上がってしまいました(近藤さんそっちのけで…)。

今週の日曜日にリリース・ライブがあったので見に行きましたが、ライブハウスが熱気ムンムンですごかったです。ちょっと遅く行ったら、黒山の人だかりでステージが全く見えない(笑)。
演奏はカラオケではなく、むらさきさんをリーダーとする生バンドによる、同期モノ一切なしのライブでした。これは最近のアイドルや声優さんのライブでは希有なことで、近藤さんの歌唱力(とバンドを雇う予算)がなければ成立しません。

バンドも特にリズムセクションがメチャクチャ上手い! でも寿司詰め状態で聞くのは辛い!
何とか少しずつ場所を移動して見てましたが、まさに酸欠ライブで、ミュージシャンの譜面が湿気でシワシワになる状態…。すごいね(^_^;)。

ロック・テイストの曲が多いなかで、最後にやった僕の「Album♪」だけ妙にポップで浮いてました。
だいたい、ハウスの曲を生バンドで(しかもコーラスなしで)やろうというのが無理です(笑)。
次回、曲を提供する機会があったら、絶対生バンドが映える、TOTOとかジャーニーなど80年代っぽいロック曲を書こうと決意しました(^_^;)。
終わってから楽屋で挨拶に行き、「ファンの数に比べてキャパが小さすぎるから、もっと大きな所でやって下さい!」と思わず進言してしまいました…。


ところで、近藤さんは元々ゲーマーズ池袋店の守護妖精役だったのですが、今回のミクCDが一番売れてるのが、その池袋店さんらしいです。
グランミューズ・レーベルのスタッフが出向いたら、こんな感じで陳列されてたそうで…。
$坂本裕介(Key of Life)のノージャンル・ミュージック

ジャケット面出しで2段並びなんて、ちょっとビックリの優遇ですね。
スタッフさん、ありがとうございます!
もしかしたら池袋店の妖精だった近藤さんに守られてるおかげかも…? なんて中年男にあるまじきアホな妄想が浮かんでしまいました。
いや、もちろんただの偶然とわかっているんですが…(^_^;)。
(ブログ3回連続でCDの宣伝はさすがにしつこいので、これで終わりにします!)
ニュースで見ましたが小室哲哉さんも初音ミクとコラボしたアルバムも出されるようですね。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2012/03/03/kiji/K20120303002751630.html

ネット界隈では案の定賛否両論で、ミクの権利を持っているクリプトン社に無断でやったとかやらないとかで、ちょっとした騒ぎになっているみたいです(笑)。


僕は小室ファミリーのブームになるずっと以前、TMネットワークの初期のアルバムが大好きでした。
『Rainbow Rainbow』とか『Self Control』とか、今聞いてもすごくカッコいいし、勢いにあふれてますね。

大昔の話になってしまいますが、あるアマチュア・コンテストがあって、当時僕がやってたユニットも応募したのですが、初応募でレベルも低かったので当然のように予選落ち…(^_^;)。
で、応募者には決勝コンテストの招待券が送られてきたので「どんなバンドが優勝するんだろう?」と思って行ってみました(確か中野サンプラザだったかな)。
そこで、優勝したのがTMネットワークだったわけです。

後で聞いた話ですが、小室さんはすでにプロ活動されていて、24チャンネルを駆使してデモテープを作ったそうで、カセット4チャンネルでシコシコ作ってた僕らとはハナからレベルが違いました(笑)。音質もそうですが、シーケンサーがまだ一般的ではなかった時代に聞いたTM初期の名曲「1974」は圧巻の一言!

ちなみにコンテスト当時は小室さん本人の作詞で、16才(小室さんにとって1974年)の時の思い出を書いた味のある詞でしたが、リリース時はなぜか別の作詞家さんがついてました。
コンテストの模様はラジオでも放送され、「1974」はすぐに大ヒットするような気がしましたが、時代が早すぎたせいか、華々しくデビューした割にはブレイクするまでに意外と時間がかかったみたいですね…(^_^;)。

ちなみにTMネットワークの「1974」のPVはここです。
デビュー直後でまだ予算がなかったんだなあ…と思ってしまいますが、学生服姿の若い小室さんやウツが見られる貴重なPVですね。



時は流れて…。
僕も大学時代に作ったCM音楽がきっかけでプロ・ミュージシャン(作・編曲家)になり、副業で音楽雑誌「キーボード・スペシャル」のライターもやってたのですが、そこで小室さんとは数回インタビューさせてもらって、作曲や機材のことはもちろん、例のコンテストの裏話など色々聞いたりしました。ライブの取材でボーカルの宇都宮さんや、TMのバック・ギタリストだった松本さん(B'z結成直後)にインタビューしたり…。

1989年の小室さんの最初のソロ・アルバム『Digitalian is eating breakfast』はプロデューサー&エンジニア日向大介さん(ロンバケで有名)の超豪華なプライベート・スタジオでレコーディングされたのですが、その取材でびっくりしたのは日向さんが小室さんのボーカルを「1曲平均200か所くらい切り刻んで」音質やピッチ調整をしたということです。

コンピューターによるDAWが進化した今ではよくある話ですが、当時はPro Toolsの前身Sound Toolsがやっと生まれるかどうか、という時代です。つまり、Perfumeや初音ミクでやってるようなことを20年以上前から小室さんはやってたというわけですね。
そのレコーディングで使われていたシンクラヴィアというマシンは何と1億円!
CDよりずっと音が良い100kHzで録音できるというお化けレコーダーでしたw
(ちなみに今ウチのPro Toolsでは192kHzで録音できますが、ここまで来ると録音されている音とリアルタイムで歌っている音の区別が付きません)

ただ、小室さんの声はちょっと変わってるので「この曲、こんなふうにエディットしないで、他の歌手が普通に歌ったらもっとヒットするかも…なんて思ったりしませんか?」と、ついつい聞いてしまい、本人もスタッフも爆笑(苦笑)みたいなこともあったり…。もちろん、そんなこと雑誌に書いたら事務所やレコード会社から苦情が来るので誌面では全部カットです(笑)。

…とまあ、それだけ小室さんは時代の先駆者だったわけで、音楽面だけでなくビジネス面でもオリコン5位まで独占という空前絶後な実績を作り、まさにスーパー・プロデューサーでしたよね。
なぜか僕の周りのDJたちは嫌ってましたが、たぶん嫉妬心とか、売れてるものに対するアンチ姿勢を取るほうがカッコいい、という風潮からきたものだったのでしょう…。


それからしばらくして、僕の先輩の某有名ミュージシャンの結婚式が都内のホテルであって、その帰りに地下駐車場に向かうエレベーターで小室さんと偶然二人きりになってしまったことがあります。取材をやってた頃からかなり時間がたってたので、おそるおそる「キーボード・スペシャルで取材させてもらってた坂本ですけど、覚えてないですよね…?」と言ったら「いや、キースペさんですよね。もちろん覚えてますよ。その節はお世話になりました」とニコッと笑ってくれました。

当時は何百というメディアが殺到していたので「覚えてる」というのは嘘だと思いますが、とても優しい笑顔でした。小室ブームの真っ最中だったのに、なぜかマネージャーやボディガードもつけず、さっそうと一人でフェラーリ(ポルシェだったかな?)で帰られていきました。

誰に対しても腰が低く、温厚なイメージしかなかったので、あの事件の時にはびっくりしましたが、「小室さんも半分被害者だったのでないか?」と個人的には思っています。
お金って、無いと困るけど、ありすぎると悪い人たちが寄ってきて怖いですから……。

今回ネットでは「小室も初音ミクに手を出して落ちぶれた」なんてメチャクチャなことを書いてる人もいますが、実際は時代がやっと小室さんに追いついた、というほうが正しいです。
できればボーカロイド・ブームに乗るのではなく、また時代をリードして欲しいですけど(笑)。


実は、2年前にニコニコ動画でヒットした「LOL」に続いて、僕自身のオリジナルでミク楽曲を作ろうと思った時、ふっと思い出したがTMネットワークの「1974」でした。
個人的なオマージュですが、そのエッセンスを入れて作ったのが「ワスレナイデ -Song of the Earth-」という曲(SAKAMOTO-P feat.初音ミク名義)です。
シーケンスとかBメロの流れが「1974」によく似てます。「自分でパクリのネタを紹介してどうする!?」なんて言われそうですが、本気でパクったらこんなレベルじゃないので(笑)。



埋め込みが見られない方はコチラで。

これは動画(特に2番以降)が本当に素晴らしいのでぜひ見て下さい!
映像クリエーターのしろもちさん(会ったことないけど)と何度も何度も打ち合わせして完成したのですが「粘って良かったなあ」と思いました。
ニコ動では「絵は素晴らしいけど曲は普通」とか書かれたりしてますが、プロデューサーとしては、むしろ本望だったりします。逆だと悲しいですから。「もっと良い動画だったら曲も生きたのに…」なんてね。



そして、「ワスレナイデ」のネタ元である「1974」のネタ元、と教えてもらったのがELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)の1981年の名曲「Twilight」です。



「1974」のAメロや、他のTMネットワーク楽曲によく似てますね(笑)。ELOはバグルスなどと並んで、エレクトロ・ポップの元祖といえるバンドです。Perfume(というか中田ヤスタカさん)もバグルスの「ラジオ・スターの悲劇」に間違いなく影響を受けてますね(もちろんパクリではなく、完全に消化しきっています)。


ELOのジェフ・リンはオリビア・ニュートン・ジョンの「ザナドゥ」(ソフトバンクCMでもおなじみ)の作者としても有名ですが、ビートルズの各メンバーのプロデューサーもやっていました。
才能あるなあ…。

そして、ビートルズの最後のアルバムといえば、この名盤ですね。

レット・イット・ビー/ザ・ビートルズ

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アレ!?
さっきの「ワスレナイデ -Song of the Earth-」が収録されているアルバムに似ているような…。

Lots of Love feat.初音ミク/初音ミク

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偶然だなあ(^_^;)。

まあ、音楽文化はいろいろつながってるからこそ面白い!というわけで…。
アルバム『Lots of Love feat.初音ミク』、本日発売ですので、よろしくお願いしますね(^_^;)。