音楽とは全然関係ないのですが、昨日のオーストラリア戦はストレスが残る試合でしたね~。もちろんあの酷い審判のせいで…。
相手の監督まで「PKは誤審」と認めちゃうくらいのレベルだし、ラストの本田選手のフリーキック直前に「終了~」というのはもっとビックリ!
あんなの見たことありません。蹴ってからワンプレーして相手ボールになった瞬間に終了!が普通ですから。

選手の努力を無にしかねないような素人審判のほうこそ退場して欲しいですね。
日本が2連勝した後だったから余裕だけど、もしも昨日がW杯出場をかけた最終試合で、引き分けになったせいでブラジルに行けない、みたいなことになったら「ドーハの悲劇」以上の悲劇だと思います。

かつて世界最優秀審判を獲りまくったコリーナ氏(スキンヘッドの名物審判)みたいに、選手もファンも皆がリスペクトできる人がいいですね。2002年のW杯決勝は僕も見に行きましたが、コリーナ主審のおかげで引き締まった、とても良い試合でした(^_^)。



では本題に戻って…
前々回書いたスタイリスティックス「愛がすべて」の話の続きです。




元々大好きな曲だったし、当時所属していたビクターが日本の版権を持ってることはわかっていました。それで簡単なデモを作って、「こういう感じでサンプリングして向こうに許諾取れますか?」とスタッフに相談したら「これは良い!面白い!」ということになって頑張ってくれたわけです。

それで原盤使用料を数十万払う他に、作曲の印税を半分渡すってことで正式に許諾がもらえました。なのでCDやカラオケのクレジットでは僕の作詞作曲になってますが、JASRAC的には「愛がすべて」の作曲者と共作になってます。作曲の半分はわかるけど、なぜか関係ない作詞まで共作に…。向こうは日本みたいに詞曲を分けてないので仕方ないですが(笑)。


サンプリングはイントロの美しいストリングス・ラインをメインで使い、ド頭のトランペットは間奏に持って来て「わかる人には楽しんでもらえる」ように仕上げました。
ただ、どんなに名曲であってもバックトラックのサンプリングに使うだけで、歌メロは新しく作るというのが僕のポリシーだったので、そこは一番頑張りました。
90年代のヒップホップでよくあった、原曲のイントロを4小節サンプリングしてすっとループし、スクラッチとラップを乗せて一丁上がり!…というのは嫌いだったので。

正直、サンプリングなど使わず、自由にゼロから新曲を作るほうがずっとラクなのですが、それではKey of Lifeとしてのアイデンティティーがない…と。
4つしかコードを使わずに、どうやって起承転結のある5分間のドラマを作れるか?ということに命をかけて作ったのがこの「But My Love」です。

僕もキーボードでちょこっと出演してます。




ラップはデビュー曲「ASAYAKEの中で」と同じGAKU-MC。すでにイーストエンド+ユリとして紅白出場も果たし、某有名女子アナとのデートをフライデーされるような人気者でしたが、以前と全く変わらない感じで嬉しかったことを覚えてます。
ラップの詞も素晴らしく、当時GAKUちゃんがハマっていた「相田みつを」さんっぽいフレーズも入り、レコーディングの時から感動してました(「人間だから矛盾があって…」とか)。

フィーチャリング・ボーカルは前作シングル「pain」の時に某専門学校でオーディションして選ばせてもらった白木由美さん。
綺麗で切ない歌声が良かったと思います。

この時にGAKUちゃんに紹介してもらった元ソニーのエンジニア、松本靖雄さんが天才的な人で、
デモのショボかったサウンドをかなりカッコ良くしてくれました。それまでほとんど自分でミックスをやってたのでこの衝撃はすごかった…。
ベース音源なんて元はKORG M1のプリセットなのに、アナログテープとPULTEQのビンテージEQなどを駆使したらブリブリのランニング・ベースに変身!
AKAI S3000でサンプリングした音も豪華になりました。

それ以降、ミックスは松本さんしかいない!とアルバムも含めてしばらくお願いしてましたが、超一流の方はギャラも一流だったので、メジャー落ちしてからは起用できなくなってしまいました。こればかりは仕方ないです…(^_^;)(^_^;)。


「But My Love」は宣伝予算もかなり出たようですが、制作と宣伝の意志がイマイチ噛み合わず、売り上げ的には惨敗してしまいました…。もちろん当時はアーティストの立場なので具体的な金額はわからず、後から当時のマネージャーさん(今はAIちゃんの社長)が教えてくれたのですが。
クレーンまで使った大掛かりなPVや、特別仕様の凝ったジャケットデザイン(信藤三雄さんという有名なアートディレクター)で2~300万円もかかったそうです。

でも、社内全体の宣伝会議に出たら、「ラップなんかブームは終わったから女性ボーカルだけのほうがいい」とか、「フィーチャリングやサンプリングの意味がわかりづらい」と不評で、「このヒトたち、クラブムーブメントを知らないのかな?」とガッカリしました。
m-floとかがデビューする前の時代だから今考えると仕方ないし、直属のディレクターやプロモーターさんは理解してくれたのですが…。

一応タイアップはついたものの、日曜昼のバラエティーなんて音楽ファンは誰も見ません。
それでも出版の権利をテレビ曲系出版社に持っていかれたため、肝心のFMプロモーションが弱くなってしまったらしいです。FMで洋楽を聞いてる音楽ファンにこそ聞いて欲しかったのに…。

(※普通のミュージシャン・ブログならこんな内幕やお金の話はタブーですが、10年以上前の時効みたいな話だし、ギャラの話は同業者や後輩には「聞きたいけど聞けない」話だとわかってるのであえて参考に、書いてみました。
決してビクターの当時のスタッフの悪口ではありません。みんなが一生懸命に頑張ってもダメな時はいくらでもありますから)


自分では1か月自宅スタジオにこもって作業し、「これ以上のものはできない最高傑作」だと思った曲が左ページ(オリコン50位)にも入らなかったのでショックでした(笑)。
でも「一喜一憂しないで次の仕事を頑張る」ことが大事だ!とこの経験から学びました。


実際、「捨てる神あれば拾う神」というわけではないですが、Key of Lifeで出した2年後くらいに、有名な芸能事務所に紹介されました。たしかユーロビート曲がメインでしたが、ついでにこの曲も聞いてもらったら、T社長(安室ちゃんなど育てた業界では超有名な方)に「これウチのアーティストでカバーさせるから」と一発で気に入って頂けました。

それがMAXさんによるカバーです。ラップはISSA(DA PUMP)さん。




ジャズ・ヒップホップ寄りの、とてもオシャレなカバーです。
ただ「コレ最高!」とは言いにくい…。YouTubeのコメントで誰か書いてましたが、やっぱり原曲のほうが良い出来なんじゃないかなと思います(^_^;)(^_^;)。

最初に芸能事務所で「アレンジは違う方にお願いしていいですね?」と言われた時に「僕がやります!」と言えば良かったのですが、Key of Lifeの時にエネルギーを使い果たしていたので「お願いします」と言ってしまった(笑)。

いや、アレンジそのものは良いのですが、MAXさんとの相性がイマイチな気がして。やっぱり素直にダンスビート、4つ打ちでガツンといって欲しかったなあ、と。

アレンジして頂いた河辺健宏さんは元SUGAR SOULのキーボードだし、アニソンで活躍中の作家集団Elements Gardenの生みの親(上松範康君の師匠)。才能あふれるミュージシャンで、僕も別件のアニソン仕事で面識あるので、同業者批判と取られてしまうと困るのですが…(^_^;)。


それと最初はシングルの予定で、ISSAさんまで引っ張ってきたのに、元の出版社が権利を譲らずタイアップが付かない、みたいな(大人の)事情でボツになったそうです。
プロモーション用のアナログレコードも割と好評だったのにちょっと残念でした。アルバムのリード曲ということで多少の宣伝はあったみたいですが、

EMOTIONAL HISTORY/MAX

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ところが、半年後に届いた印税はKey of Lifeのシングルの10倍以上…。
嬉しいけど嬉しくない、みたいな複雑な気持ちでした。
シングル曲とアルバム曲はメディア露出や二次使用料が全然違うのですが、それだけセールス枚数が違ったということです。
「どうしてMAXばかりそんなに売れるんだ~!?」と叫んだことは内緒です(笑)。
ただ山下達郎さんがかつて言ったように、「音楽の価値と売り上げは無関係」ですね。じゃなかったら、アイドルやK-POPが日本で最高の音楽ということになってしまう…。


…ダラダラ長文を書いてしまいましたが、ニコニコ動画の初音ミクなどで僕のブログを知ってくれた中高生にはワケのわからない話ばかりでゴメンなさい!
今回は大人の方や、同業のミュージシャン、スタッフを想定して書いてるので(笑)。


こんな感じで、このブログでは従来タブーとされてきたことも書いていこうと思ってます。
常識をどんどん崩していかないとツマラナイし、シーンも活性化しないし。
人格そのものの攻撃は絶対ダメだけど、愛情やリスペクトを持ちながらの批判なら許されると思います。

日本だとヒップホップでも「みんな仲間だ」とか言ってるミュージシャンが多いけど、「仲間を大切に」とか「キズナ」とか「出会った奇跡」とか、当たり前のフレーズを安売りするのはやめませんか?(笑)
普段は言わずに、ためておいて、ここぞという時にポロッと「ありがとう」と言うならグッと来るけどね。

友人ミュージシャンのライブやレコーディングでも、僕は「良かったよ~」と安易に言わずに、「ここは良かったけど、ここは良くないと思うから直してみたら?」と言うようにしています。
そのほうが相手のためになるし、ホントの愛情だと思うので。

ではまた来週くらいに書きます。今度は昔話じゃない予定です。