21編を収録した短編集。
1作目、亡くしてしまった愛犬が姿を変えて現れる話、「デューク」。
2作目、小学校の時に憧れていた男の子と、時空を越えて人生を歩む話、「夏の少し前」。
現実と非現実の透明な世界をふっと行き来する江國ワールドにひきこまれました。
解説には、次のように書かれています。
映画のカメラマンの専門用語に「マジック・アワー」という不思議な言葉がある。太陽が沈んだあと、数分間だけ、まだ光が残る。その短い時間は、光が最もきれいなときで、この時間に撮影すると信じられないような美しい映像が得られるという。ただ、これはほんとうに短い時間なので誰にでも出来ることではない。奇跡のような瞬間。だから「マジック・アワー」と呼ばれる。
デュークと「私」が別れるのもマジック・アワーのなか。昼でも夜でもない「うす青い夕暮れ」の時間の中で、夢と現実、生と死がやさしく溶け合っていく。
(川本三郎さんの解説から)
『すきまのじかん』に通じるものを感じました。