昨日も紹介した徳川夢声さんの『話術』。この本は、いろいろなエピソードを取り上げながら、「話すとはいかなるものか」を説いています。
例えば、よく知られている豊臣秀吉と石田三成のお茶の話。─ 鷹狩りにでて喉の渇いた秀吉があるお寺でお茶を所望したところ、三成は、一杯目は大きな茶碗にぬるいお茶を点て、続けて少し熱いお茶を半分ぐらい、最後に熱いお茶を小茶碗に少量点ててお出しした、という話です。
この話を、夢声さんは、話術になぞらえます。
始めにぬるくしてタップリ、次が少し熱くして量を減らし、最後にとても熱くしてチョッピリなどは、これをこのまま話術に応用してしかるべしである。
(徳川夢声、『話術』より)
一見関係のないものごとをつないで本質を説く、こういう発想がこの本の面白さでもあります。
およそ70年前の本が文庫化されたものです。最先端がもてはやされる世の中ですが、昔に学ぶことはまだまだ多いようです。