■感情の緊張

アルフレッド・アドラー
感情の緊張は、三叉神経痛、
偏頭痛、癇癪発作を実際に
引き起こす、と言っています。

感情の緊張とは
怒りの感情を出すことです。

そして、
その結果に上記のような
症状を得るわけです。

その目的は
状況を自分に有利にすることであり、
相手を自分の思う通りに
動かそうとすることです。

これを、ある女性を例にとって
アドラーは説明しています。

■ある女性の患者

その女性は生まれてから
父親には大切にされなかったものの
母親にはとても大切にされました。

しかし、妹の誕生で
状況が一変します。

家庭での居場所を失ったと
思ったその女性は問題行動を
起こします。

そうすることで
妹の手に渡った玉座を
自分の手に取り戻そうと
したわけです。

しかし
どんなに努力しても取り戻せず、
妹に敗北し続けることになります。

いつしか妹に勝利することが
人生の目標となっていきます。

自分の力を示すことで
母親の愛を取り戻し、
その玉座を取り戻すべく、
その女性は働きました。

そして恋愛を繰り返し、
ついに年配の既婚男性の
愛人となりました。

母親はその女性を非難しましたが
母親の注目を得られたその女性は
ひとまず満足したに違いありません。

しかし、その男性は
その女性を結婚したいほど
好きではなかったため
離婚してくれずに、
その女性の結婚相手には
とうとうなりませんでした。

そうこうしている間に
妹が婚約をします。

それを知ったその女性は
妹に対する闘争心が
さぞ燃え上がったことでしょう。

その後の恋愛で
別の既婚男性と関係を持ちます。

その男性は離婚してまで
その女性と結婚しようとまでは
思わない人でした。

おそらく結婚して欲しいと求めると
耳障りの良い言葉で
のらりくらりとかわして
いたのでしょう。

そんな状況が嫌になったその女性は
その既婚男性を見限って
他の男性と結婚しようとしました。

しかし、
その結婚しようとした男性が
あまりに教養がないと気づき
恋愛の熱も一気に冷めて
元の既婚男性のところに戻ります。

その男性と結婚しても
妹に勝利したとはならないと
感じたのかもしれません。

戻ったあとのその女性の態度は
断固とした決意を持って
その既婚男性に結婚を迫ります。

その迫る過程において
その女性は自分の頭痛という
症状を既婚男性に見せます。

アドラーは
頭痛を見せるのは
相手に結婚を急がせるため、
と言っています。

つまり、妹に負けないという
目標を達成するためには
その男性との結婚が必要で、
結婚できる状態になるには
その男性が離婚する必要が
必要になるわけであって、
それを急がせるためには
急ぐ必要があると相手に
思ってもらう必要があります。

そこで頭痛を見せる
という手段を利用したわけです。

その後、
頭痛を繰り返し見せられて
迫られた既婚男性は
とうとう自分も決意を固め
離婚手続きを開始しました。

するとアドラーの想定通りに
その女性の頭痛は消えました。

後日アドラーは
その女性に話を聞きました。

すると、その女性は
その既婚男性を好きではなく、
妹に勝利するために
その既婚男性との結婚するほかない、
と認めた、と。

■他者への関心が幸せの鍵

神経症者(心の病を持つ人)は、
優越性の追求の方法に
その症状を利用することが
特徴です。

優越性の追求、つまり、
よくよくなりたい、と
誰もが思う中で、
自分にしか関心がなく、
対人関係をなるべく持たないように
実現しようとすると
神経症者的になります。

相手の課題を神経症の症状を
利用して自分に都合の良い選択を
相手にさせたりするわけです。

今回の例の女性も
自分自身が「妹に勝利する」を
認めたことで神経症のループから
抜け出す糸口を得たかもしれません。

まずは自分を知ることで
自分はこれからどうしたいと
思っているのかも見えてきます。

その目的が
自分にしか関心がない状態、
すなわち、
自分の利益ばかりで
他者の利益や損失は関係ないと
していたら、そこに改善の余地が
見えてきます。

自分にしか向いていない関心を
他者へと向けてみることで
状況は改善するから
です。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



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