■水の力

アルフレッド・アドラーが
「水の力」と呼んだのは
涙を見せて相手を支配する力
のことです。

相手が自分に
従わなかったりして
それ以上どうすることも
できなくなると

怒り出して問題の解決を
相手にさせようとすることは、

横から見てて
相手を支配しようとしていると
わかりやすい状況です。

怒りを見せられると
身の危険を感じて
危険を回避するため
やむなく相手の軍門に
下ります。

こうした精神的・物理的暴力を
利用して相手を屈服させる行為は
社会的に避難されがちです。

する方が「悪い人」と
扱われがちなので、
社会との調和を維持するには
暴力を利用した方法は
選ばない方が良いと
我々は学びます。

一方で
怒りの場合と同じく
相手が自分の
思い通りにならないとき

悲しくて泣いたら
相手が自分の
思い通りになったりします。

こうして
涙を利用する方法は
「泣かせた方が悪い」みたいになって
思い通りにならない相手の方が
社会的に避難されがちです。

そんな「悪い人」に
なりたくない心理的な作用で
涙を見た人は
その人の支配下に入りやすくなります。

同じ相手を支配する方法でも
涙を使う方がなにかと便利なわけです。



■目的は相手を支配すること

人は生まれたときに
最初から涙の力を利用しています。

泣かない赤ちゃんがいないのは
泣くことで生き延びようと
しているからです。

成長して
「泣く」以外の
やりとりの手段を習得すると
わざわざ「水の力」を使わずとも
生き延びることを覚えます。

例えば
「おなかすいた」とか
「ねむい」とか
言葉で伝えたり、
不安なときに抱き着いて
安心させてもらおうとすることです。

そうして
やりとりの手段も成長していって
やがては「水の力」に依存せずとも
相手と効率的にやりとりしていける
ようになります。

しかし
成長する過程のどこかで
「泣くと相手を支配できる」
「しかも相手に不利で自分に有利」
などと学ぶと
成長が進んで「水の力」など
なくてもやりとりできるのに
わざと「水の力」を使ったりします。

そうして
「水の力」を使った
成功体験が増えていくと
「水の力」への依存が深まっていきます。

「水の力を使う」
イコール
「相手を支配できる」ので

「水の力」を使っても
相手が自分の支配下に入らない場合は
他の方法ではなく
「水の力」の強度を強めようとします。

いかに自分が弱いか、
相手が自分を助けないことで
いかに自分が不利益を被っているか、
助けない相手がいかに
社会的に悪い存在であるか、などを
懸命に示したりします。

「自分がこれ以上
不幸になってもいいのか?」
みたいに、自分を人質にとった
脅迫のような状況になることも。



■水の力を使われる人

「水の力」を使う立場ではなく
使われる立場で
「泣く人の支配下に入らないといけない」
という学習をする人もいます。

生育過程で
泣く相手を目の前に
何もしないでいたら
それを見た周囲の人に
「なんで泣かすの」などと責められて
泣く人を放置すると
自分が責められる、

すなわち
「泣かせてはいけない」と
学ぶわけです。

相手が泣くと
自分が窮地に立たされると
学ぶため、

その後も
相手が泣きそうになると
自ら進んで相手の支配下に入ります。

相手はそれがわかると
自分の課題を相手に
肩代わりさせたくなると
「泣く」をちらつかせます。

泣かれると困る相手は
その課題を肩代わりしてしまうわけです。

当然、
課題の所有者は何もしないので
課題は解決も克服もされません。

同じ課題をまた抱えるため
同じようにまた「泣く」を
ちらつかせて相手に肩代わりさせ、
相手は自ら肩代わりを申し出て
懸命に解決しようとします。

そんな共依存の
無限連鎖状態になってしまいます。

そんな無限連鎖を断ち切るときに
使う勇気が「嫌われる勇気」です。

「もう相手が泣こうがわめこうが
相手の課題の肩代わりなんてもうイヤだ。
私は自分の人生を生きる!」
みたいに周囲にどう見られようとも
連鎖を断ち切ろうとします。

こんな一連のやりとりが
その後に「泣く人」を見ると
心によみがえります。

そのため
「泣く人」を見ると
「自分は何も悪くないのに
責められるかもしれない」という
恐怖を感じたりして
ひどく疲れたりします。



■泣く人

泣くことは
くしゃみやせきをするのと同じ
生理現象です。

支配/被支配の関係に
見えてしまうのは、
自分がそう見ているからです。

「泣く人」は
ただ悲しい気持ちを感じてる人です。
善も悪もありません。

相手が自分に
「水の力」を使おうとしていても
「ただ悲しい気持ちを感じてる人」と扱うと
「水の力」は無力になります。

また、
泣いているときは
感情が出ており
内面の整理が進んでいる状態です。

冷えた水が常温に戻るのを
待つかのように
その整理が済むのを傍らで
穏やかに待つことは
その整理を助ける効果があります。

なので
「泣く人」の状態を改善したいなら
泣き止ませる努力より
気持ちよく泣ける配慮をする方が
効果的です。

逆に自分が「泣く人」なら
「何も言わずにそこにいて」など
自分の整理が進めやすくなる状況づくりに
協力してもらえるように
相手に伝えられると効果的です。





お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



赤ちゃん化して相手を支配する人
赤ちゃんは支配できない。そこは赤ちゃんに学べ。
泣いてはいけない理由はあるのか?
泣いている人には、泣きたいだけ泣かせてあげる