■症状を創出している自分

アルフレッド・アドラー
広場恐怖症について
次のように説明しています。

「この症状は
”他人は敵であり、
外の世界は危険だらけだ”
と信じる人が、
外へ出なくて済む
もっともな理由として
利用するために創出したものだ。」


広場恐怖症は
不安になったらすぐに
避難できない状況や
すぐに助けを得られない状況に
なることを怖れる
神経症(心の病)です。

アドラーは、これを
目的達成の手段として
利用するために症状を
自らつくり出している、と
言っているわけです。

■甘やかされて育った女性の例

アドラー
「甘やかされて育った女性」
を例に続けます。

この
甘やかされて育った女性は
他者の注目の的となるのが当然
となっており、
他者は自分に仕えるものだと
思っています。

育った環境では
自分を注目の的にしてくれた親が
自分に代わって外とのやりとりを
すべてしてくれていました。

そんな自分に仕える親が
いない環境になると、
誰か自分に仕える人を見つけて
自分の代わりに外とのやりとりを
させよう
とするわけです。

つまり、
甘やかされて育つと
自分を注目の的として
扱ってくれる人である
「自分に仕える人」
どうしても必要になるのです。

その女性が結婚して
子を身ごもります。

子が生まれると、
この女性はうれしく思わずに
心配になります。

それは、
子がいないときは
夫の注目は自分が
独占していましたが、
子が生まれると
自分が注目の的の座から
降ろされるかもしれない

思ったためです。

その後、
夫は長期の出張に出かけ、
出張先から手紙を
妻であるこの女性に
送ります。

その手紙には
「たくさんの人と出会い
すばらしい時間を過ごしている」

ありました。

それを読んだこの女性は
夫は今まで自分だけに注目を注ぎ
とても愛してくれていたが、
それも失ってしまったのだと思い、
ひどく落ち込んだ末に
とうとう広場恐怖症になります。

広場恐怖症となったこの女性は
一人では外出できなくなり、
外出するためには
常に夫の付き添いが必要となります。

こうしてこの女性は
再び夫の注目の的の座を
取り戻しました。

そしてひそかに
安心もします。

広場恐怖症である限り
夫は自分に仕える
とわかったからです。

■状況への準備

アドラーは、
広場恐怖症は
その不安をどうにかするのではなく
自分が注目の的にならなくても
自分は大丈夫だ、と確認して
怖れを取り除くことだ

のように指摘しています。

広場恐怖症の人は
「世界は危険だらけ」
「人は敵だ」
という理由で出かけないのではなく、

自分が注目の的にならないと
生きていけないと思っており、
実際に出かけると
自分を注目の的として
扱わない人がいる事実と
直面すること
を怖れ、
出かけない状況が必要になるのです。

自分が注目の的にならない状況で
自分はどうしたら良いのかが
準備できていないのです。

その準備をすることで
状況は変わっていくわけです。


お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



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夫が話を聞いてくれないKさん