美徳の承認その51/52
【礼儀:Coutesy】

■礼儀とは

礼儀とは
相手のことが大切だと
その相手に伝える力です。

ただ思っていたり
ただ感じていたり
するだけではなく
実際に相手にわかるように
示します。

丁寧に振舞ったり
その場の行儀作法に
即した所作を適用することです。

そんな礼儀の力は
あなたも私も
誰でも持っている力です。

失礼な人や
乱暴な人や
その場の行儀作法を
適用しない人は
礼儀を持っていないのではなく
ただ使っていないだけです。

礼儀は
あらゆる人が
生まれながらにして
持っている力です。

いつでも使える力です。


■共通認識と恥

礼儀を使う上で
大切なのが
「共通認識」と「恥」です。

共通認識は
よくカタカナで
「コモンセンス」と
言われるものです。

その場であったり
その共同体(人の集まり)によって
その場の人々が共通して
持っている認識です。

畳の上は土足で歩かない、とか
宴会部長といえば〇〇さん、とか
この場では〇〇は禁句、とかです。

そして恥とは
恥ずかしい思いを
すること/させること、です。

礼儀作法に即していても
相手に恥をかかせてしまったら
相手を大切にすることが
できなくなるため、

相手が恥ずかしい思いを
しないようにする配慮が大切です。

例えば
個人的な話を
みんなの前で
「こないだは聞かせてくれて
ありがとうございました。」
などと言って

みんなから「なにそれ?」と
興味を持たれてしまったりして
相手を困らせてしまったり、

みんなに知られたくなかったのに
知られそうになったりするのは
礼儀を適切に使えていません。

いくら丁寧でも
それでは相手に迷惑を
かけてしまうかもしれないし、
場合によっては
恥ずかしい思いを
させてしまうかもしれません。

礼儀を使うときは
「共通認識」と
「恥」について
配慮する方が
より効果的に使えます。


■近しい人から示す

礼儀は近しい人ほど
示すことが大切です。

なぜなら
自分に近ければ近いほど
自分に大切な人だからです。

人のつながりは
3種類です。

①家族、恋人(愛)
②友人(交友)
③職場や学校(仕事)

近い人ほど
一緒に居る時間が長いため
丁寧に接していると
「いちいちそこまでせずとも」と
省略することが多いです。

ですが、それは
礼儀を「省略」しているだけで
「なくても良い」わけでは
ありません。

家族に乱暴に接するのに
たまにしか会わない人に
丁寧に接するのは
「相手より自分優先」な行為です。

たまにしか会わない人は
会ったときの印象が
その後の会わない期間も
続きます。

しかし家族なら
何度も会いますから
一度礼儀を使って
好評価を得ても、
その後礼儀を使わないと
その評価は崩れてしまいます。

崩れてしまって
「化けの皮がはがれた感じ」
になると、

取り繕ってもまたすぐはがれるため
礼儀を使うことを
諦めてしまったりします。

礼儀を適切に使えない人は
こうして「相手より自分優先」な
やり方しか知らない人です。


■礼儀とはまず対等であること

礼儀を使うのは
相手が上で
自分が下になる
上下関係を成立させること
ではありません。

礼儀とは
自分は相手を大切に思っていて
それを示したいから
礼儀作法などの共通認識を
利用することです。

その基礎には
「対等であること」
があります。

上下関係では
自分と相手の
どちらが上で
どちらが下かを
その場の都合で
選びたくなります。

例えば
自分が忘れ物したら
自分が下になって
「忘れて悪かったな。
自分はあなたみたいに
優秀じゃないんだよ。」
なんて言いたくなったり、

相手が忘れ物したら
自分が上になって
「忘れ物するなんて
いったいあなたは何歳なの?」
なんて言いたくなったり。

一方で、
”対等な関係” であれば

「忘れ物したの?
それならこれからどうするかを
一緒に考えよう」と
言いやすくなります。

なぜなら
あなたも私も
「忘れ物することあるよね」と
自然に思えるからです。

対等なら
相手の責任追及より
その場の共通の目的に向けて
今何ができるかに
自然と注意が向きますから。


■心から始まる

仏教に「三業」があります。

その「三業」とは
「さんごう」と読み、
三つの罪、という意味です。

三つとは
身口意のことです。

身とは身体です。
身体でする罪、
つまり行動による罪です。

口とは
言葉で言うことによる罪です。

意とは
心で思ったり感じたりする罪です。

これを裏返すと
心で相手を
大切に思うことができます。

口で話す言葉で
相手を大切にすることができます。

さらに身体を使って
行動を起こして
相手を大切にすることができます。

「慇懃無礼」(いんぎんぶれい)
な状況は、
心では相手を大切に思ってないのに
言葉や行動だけが丁寧なことです。

礼儀を示しているのかもしれませんが
美徳の承認で使う礼儀とは
違います。

美徳の承認で使う礼儀とは
心から出発することです。

相手を大切に思っていて
何と言ったらそれを
伝えられるか?
どう行動したら
それを伝えられるか?

心で大切に思っていて
「ありがとよ」とか
「悪いな」とか言っても
伝わるかもしれませんが、
より受取りやすくなるのは
「ありがとうございます。」
「申し訳ありません。助かります。」など
丁寧な言葉でしょう。

片手をあげて
感謝を示すこともできますが、
深々とお辞儀をされた方が
より丁寧になります。

その姿勢は
「自分より相手優先」な心から
うまれます。

さらに
礼儀作法を学ぶことで
「相手が大切」を
より詳細に相手に示すことが
できるようになります。





お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。


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