アルフレッド・アドラーは
言いました。

「人の価値は、
属する共同体で
自分がどんな役割を引き受けるか、
ではなく、
その役割をどのように果たすか、
によって決まる。」



人の価値は
「職業」や「する仕事」
ではなくて、
自分の仕事に向き合う態度によって
決まりますよ、ということです。

価値のない人は存在しませんが、
その価値の多い少ないは
仕事に向き合う態度によって
変化します。



例えば
橋をつくる仕事で
材料を運ぶ役割を
引き受けた人。

一人目
「私は材料を
運ぶ仕事をしています。
なぜなら運ぶと
お金をもらえる
契約をしてますから。」

二人目
「私は橋をつくる仕事を
しています。
なぜなら、私が運んだ材料で
橋がつくられるからです。」

三人目
「私は快適な暮らしをつくる
仕事をしています。
なぜなら、川を楽に越すのに
とても役立つ橋をつくる仕事の
ひとつを担っていますから。」



私は、
大きなホテルの厨房で
アルバイトしていた頃に
いろんな人に会いました。

スープやシチューを
つくる厨房で会ったAさん。

何百人分もつくるので
お風呂みたいな鍋があります。

使う材料も多いし
洗い物も多いし
出るゴミの量もすごいです。

ゴミをまとめて
ゴミ出しするのも
とても重いので
台車を使うほど。

自分の役割を果たさなくちゃと
動き回る私にAさんは言いました。

「おい、お前アルバイトなんだろ?
一生懸命にやらなくても
もらえる金は変わらないんだから
そんなに動き回らないでくれよ。
こっちが動かないのが目立つだろ。」

「俺はどうせ出世しても
職場長どまりだから、
一生懸命はたらきたくねーんだよ。
だから、お前もそんなにはたらくな。」

そう言われても
すごい量なので
やらないと終わりません。

でも動く量を減らせと
言われたので
それに従ってみました。

そしたら
「ここでは使えない人」と
判断されて、部署を変えられました。



次に配属されたのが
サラダをつくる部署です。
そこでBさんに会いました。

サラダの量もすごいです。
大きなシンクに水を張って
一面にレタスなどの葉っぱを
水にひたします。

使うときにザルを引き上げて
一人分の皿に盛りつけていきます。

皿に盛りつける流れ作業を
Bさんと並んでやっていました。

Bさんはさすが慣れていて
私の倍速で並べていきます。

「急がなくていいよ。
急いで乱暴になるより、
ちゃんと盛り付けられる方が
大切だからね。」

そんな指導をいただきながら
やってる中でいろいろと
話をしてくれました。

「ここの料理長には
ここの社員からでは
なれないんだよ。
みんな他から来る。
だから自分が料理長に
なれないことはわかってるんだ。」

「自分には人生計画があって
今ここで仕事や料理を憶えながら
お金を貯めているんだ。」

「目標額がたまったら
ここ辞めて次にいくんだ。」

目を輝かせて話してくれました。



当時の私は
スピードより丁寧さを評価
されていたので、
新しい補充要因が確保できると
スピード重視の宴会料理から
丁寧さが大切な仕込みの部署に
回されました。
そこでCさんに会いました。

そこでは出汁をとる用の
ヒラメを準備したり、
太いカニの足や伊勢海老や
ホタテの貝柱を
料理にあわせて切ったり、
エビの殻をむいたり
そのエビでエビフライの下準備したり
大きなとげぬきで
魚の切り身から骨抜きしたり
してました。

Cさんはそこの職場長で
このホテルの厨房には
学校卒業してからずっと
勤務している超ベテランの人。

当時の感覚では50歳を
越えていた感じ。
気さくな方で
いろいろとお話しして
くださいました。

「おお、いいね」
「上手に切るね」
「それ違う、こうやってみな」

「あんまりキレイに準備してあるから
これお前(他のベテラン社員)が
やったのか?ってきいたら
違います、中村がやりましたって
聞いたからびっくりしたよ。」

そしてこんなことも。

「俺はずっとこのホテルだから
他を知らない。
この先、これ以上は昇進しないと
思うけど今さら変えようと思わない。
今、自分のできることで
やりたいことは
一緒にはたらくみんなが
しあわせになっていくこと。
そんな職場を提供できたら
俺の勝ちだ。」



今、自分の引き受けてる仕事が
何かで自分の価値は決まりません。

その仕事に
どんな態度で向き合うかによって
決まります。

その仕事で
利益を得られる人は
誰なのか。

その仕事で得られる利益とは
具体的に何なのか。

その仕事が継続されると
何が起きると思っているのか。

そしてそれらは
自分にふさわしいものなのか。

着心地の良い服を着るように
今の自分にふさわしい態度で
仕事に向き合えると
楽しくなりますね。




お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ8年目、常楽でした。



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